日村誠司が代貸を務める阿岐本組は、
ちっぽけながら独立独歩、
任侠と人情を重んじる正統派のヤクザだ。
そんな組を率いる阿岐本雄造は、
度胸も人望も申し分のない頼れる組長だが、
文化的事業に目のないところが困りもの。
今回引き受けてきたのは、
潰れかかった私立高校の運営だった。
百戦錬磨のヤクザも嘆くほど荒廃した学園を、
日村たちは建て直すことができるのか。
大人気の「任侠」シリーズ第二弾。・・・・・・・・・・・・・・・・・
だが、教頭は勘違いしている。
ヤクザは時間を無駄にしない。
二度手間になることはしないのだ。
校長に何か用事があっても、
そちらを後回しにしてもらうように交渉する。
そして、素人はたいていそれを呑む。・・・・・・・・・・・・・・・・・
「私は二つの大きな時代的な要因があると思います。
一つは戦後の民主教育、
一つは70年安保闘争や学園紛争です。
双方とも旧秩序を破壊したのです。
新たな価値観を獲得したかもしれませんが、
同時に重要なものを失ってしまった。」・・・・・・・・・・・・・・・・・
「恥じですよ。
いつの頃からか、日本人は恥を知らなくなりました。
昔はよく言われたものです。
恥を知れってね。
人間として恥ずかしくない行いというものがあった。
だが、今の日本人からはそれが欠落している。
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「生徒というのは、大人が本気かそうでないかを敏感に見抜きます。
あたなは、常に本気だった。
だから、関わる生徒たちが変わっていったんです。」
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別にヤクザを美化しているのではなく、
風刺が効いているんですね。
ヤクザのしきたりや対応力が教育や仕事や
人との関わり方を皮肉っていると思います。
ヤクザに教えてもらう事なんて本来は全くないのですが、
人を傷つけない、暴力を振るわない、
素人さんには手を出さない、
地元の人の困り事に対応すると言うのが一流のヤクザなのだそうです。
もちろんシノギですから、そこにはお金が絡みます。
慈善事業ではないので、お金にならない交渉事はしない。
しかし、今回の学校の再建に関しては組が自腹を出す事ばかり。
何が得になるのか。
ナンバーツーの代貸(だいがし)の日村の苦労は尽きません。
それでもここ一番の肝心な所でヤクザの本領を発揮します。
交渉事に関しては脅しのプロ。
本気度が違うので迫力があります。
この学園は生徒が皆んな絵に描いたような今どきの若者で
やる気がなく、生意気で大人と社会を舐めすぎていますが、
それよりもタチが悪いのは、そんな子供の躾も出来ない保護者達。
ギャーギャー騒ぎたて、対局するような対策は棚に上げ、
自分達の都合の良い事だけを主張し、
あげくのはてに暴力団追放運動もします。
それもこれも、保護者に負けている校長はじめ教師たちが
言いなりになっているから。
言いたい事は山ほどあるが、私立高校の場合の
バックにいる権力者に頭があがらないという大人の事情。
そんな汚い事情にもヤクザは斬り込みます。
何だか、どっちが正義だかわけわかりません。
そんな皮肉でユーモアのある物語でした。
出版社・高校と来て、
次は、病院編です。
ナンバーツーの代貸(だいがし)の日村の苦労は、
まだまだ続くシリーズです(^^)
いつもありがとうございます