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宮本 輝 「胸の香り」

20201014胸の香り

大人の物語短編集という感じでしょうか。

不倫相手との物語などあり、苦手分野でした。

恋愛物自体がイマイチ好きではないのですが、

ストーリーより言葉や情景の美しさの表現は

さすが宮本輝さんと思いました。

短編集なのですが、

残念ながら何編か挫折しました・・・

感受性が短気になっているのかもしれません・・・






いつもありがとうございます
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宮本 輝 「草原の椅子」

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憲太郎50歳。

取引会社社長の重蔵という親友を得てからの

お互いの人生感や出会い・別れ・葛藤・

そして希望と再生を描いています。

・・・・・・・・・・・・・・

物語の中に出て来る重要な役割を果たす

圭輔君5歳。

たった5年しか生きていない圭輔。

よくぞ生きていてくれた圭輔。

母親からの虐待により心を閉ざしてしまった圭輔君が

憲太郎や重蔵など周りの大人たちによって

じょじょに生きる意欲が生まれ

子供らしく快活になって行く様子が

丁寧に細やかに描かれています。

・・・・・・・・・・・・・・

上下巻と長い物語なんですが、

上巻だけでまとめても良かったように思いました。

長すぎる物語かなぁ・・・

・・・・・・・・・・・・・・

宮本さんの人生感が哲学のように

憲太郎や重蔵のセリフから発せられています。

「人生の大事に対して、

感情で対処した人間は、

所詮、それだけの人間でしかない。」

・・・・・・・・・・・・・・・

「人間は弱くて脆い。

だが、不思議な強さと復元力もまた隠し持っている。

そうでなくてどうして、この矛盾に満ちた人生を

生き抜いて行くことができよう。」

・・・・・・・・・・・・・・

憲太郎・重蔵・5歳の圭輔くん・

そして憲太郎の恋人になるであろう貴志子の

4人で旅をする場所が

「生きてかえらざる海・タクラマカン砂漠」と

「世界の桃源郷・フンザ」。

かなり壮大な物語になっています。





いつもありがとうございます

宮本 輝 「水のかたち・上下巻」

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東京の下町に暮らす主婦・志乃子は50歳。

近所の喫茶店で、

年代ものの文机と茶碗と手文庫を貰い受ける。

やがてそこから予期せぬ出会いと

新たな人生の喜びが…。
(あらすじより)

・・・・・・・

「水のかたち」って何かなぁと考えながら読んでいました。

『水は流れて来て落ちて・・・
水の道へと向かって行って、
水の道の形になり、
水草の繁っているところでは水草の形になり、
石と石とに挟まれた細い水路では、
水路の形になり・・・
それなのに、水であることをやめない。
他のどんな形に変化しようとも、
水でありつづける。』

水の流れと言う表現ではなく、

水のかたちと言う表現の意味が分かりました。

・・・・・・・

『人間に生まれたから人間になるのではない。
人間になるための教育を受けなければ
人間になれないのだ。』

・・・・・・・

作中に終戦直後の北朝鮮から

38度線を日本に引き揚げる家族の話が登場しますが、

お名前以外は全て実話で登場します。

過酷過ぎる当時の様子が胸を締め付けられます。

・・・・・・・

『信じるというのは心の問題だ。
世のあらゆる物事や事象に、
自然に信じられることなど
ひとつもない。
信じると決心したら
信じられるようになっていく。
私はこの半年間で、
そのことを学んだのではないか。』

・・・・・・・

この物語の主人公「志乃子」と言う女性は、

自分を善人に仕立てあげようという気なんて、

ひとかけらも持っていない。

自然にすなおで、

自然に謙虚で、

自然に礼儀正しい。

と表現していました。

とても素敵な魅力的な女性像です。

・・・・・・・

沢山の心に残る言葉があって書ききれない・・・

ストーリーよりも

言葉の美しさ、事象への奥深い表現に

しみじみ読み終えました。




いつもありがとうございます

宮本 輝 「いのちの姿」

いのちの姿

宮本さんの自伝的エッセイ集5篇。

1947年生まれですから今年73歳。

とても精力的とお見受けしている宮本さんですが、

40年位パニック障害の持病を抱えながら

暮らしているそうです。

幼少の貧しかった時代。

10歳の時に叔母のアパートに一年間預けられ、

その同じアパートの奇妙な住人達との日常。

阪神淡路大震災の年に

40日間をかけて旅したシルクロード。

両親、義叔父、腹違いの兄、会社の社長…

出会った人それぞれの「いのちの姿」を

物悲しくも尊く静かに語ります。

宮本さんは持病のパニック障害を抱えた事で

「得た宝もの」があると言います。

「他者の痛みが少しはわかるようになったということだけでも

充分ではないだろうか。」

「それからもう一つ、

心の力というもののすごさをわが身で知ったこと」

「さらに、悪いことが起こったり、

うまくいかない時期がつづいても、

それは、思いもかけない良いことが

突如として訪れるために必要な前段階だと

信じられるようになったのだ」

と語っています。

宮本さんは「ひらがな」を多用する事で、

噛み砕いて読み手に分らせてくれていると思いました。




いつもありがとうございます

宮本 輝 「命の器」

キャプチャ

どんな人と出会うかは その人の命の器次第なのだ。

私は最近、やっとこの人間世界に存在する

数ある法則の中のひとつに気づいた。

「出会い」とは、決して偶然ではないのだ。

でなければどうして、「出会い」が、

ひとりの人間の転機と成り得よう(本文より)。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

宮本輝さんのエッセイはお初読み。

小さい頃から大学そして社会人になってからの話。

一人っ子で存分に甘やかされて育ったという宮本さん。

お父さんの事業が失敗してどん底の貧乏を味わい

数年間を親戚に預けられた事。

お父さんの晩年は悲しいもので終わる。

宮本さんは若いころは飲む・遊ぶ・スポーツをする・・・

と活動的で大学の時はテニスクラブに入っていたそうですが、

同好会のような甘いものではなくハードな本格的なクラブ。

大学を卒業して就職はしたけど、

「不安神経症」というノイローゼ、

今でいうパニック障害とかうつ病となるのでしょうか、

その病気も発症した事と、

どうしても小説家になりたいと言う思いが強く

5年で退職して本格的に物書きになったそうです。

『泥の河』で太宰治賞。

『螢川』で芥川賞。

泥の河に関してはかなりご苦労されての執筆だっただけに

小説家としての原点となった作品とお見受けしました。

エッセイの中に犬好きの様子が描かれていたのですが、

昔の動物の飼い方でもあり、

大らかな育て方と哀しい看取りも胸を打ちました。

表題の「命の器」の章での名言とも言える言葉に

すっと胸の奥に入って心に留めておきたくなります。

「出会い」とは偶然ではなく「必然」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

自分という人間を徹底的に分析し、

自分の妻を、あるいは自分の友人を、

徹底的に分析してみるといい。

「出会い」が断じて偶然ではなかったことに

気づくだろう。(本文より)




いつもありがとうございます

宮本 輝 「彗星物語」


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城田家にハンガリーからの留学生がやってきた。
総勢十三人と犬一匹。
ただでさえ騒動続きの大家族に、あらたな波瀾が巻きおこる。
異文化へのとまどい、肉親ゆえの愛憎。
泣き、笑い、時に激しく衝突しながら、
家族一人ひとりは、それぞれの生の新しい手がかりを得る。
そして別れ―。
人と人の絆とはなにかを問う長篇小説。


・・・・・・・・・・・・・・・

家族物語です。

和やかなホームドラマ系の物語とも言えますが、

政治や思想などの深い内容も含まれています。

まだソビエトがあった頃の物語なので、

ハンガリーという国が共産主義国家として縛られていた時代の青年が

日本へ留学しに来ます。期間は三年。

文化の違いから度々衝突もしますが、

お互いが思いやり腹を割って言いたい事を言い合う仲になる頃にお別れ。

ハンガリー青年のボヤージュは城田家の人々に視野を広げさせます。

家族一人一人がいろいろ抱える悩みや問題を

母親を中心に語られますが、

犬のフックがその度に吠えたり・オシッコを漏らしたり、逃げたり、

飛び掛かったりと家族にとってのキーパーソンになっています。

哀しい事も、嬉しい事も、楽しい事も、辛い事も・・・

全てフックは受け入れ家族一人一人と関わって行きます。

城田家にとってのフックは、誰よりも優しく慰めてくれる存在。

舅・夫・妻・長男・長女・次女・次男・夫の妹家族5人・ボラージュ・

そして犬のフック。

騒がしく物語は進みますが、最後の最後で、時が止まるような

静寂が訪れます。

ほろっと涙がこぼれる最後でした・・・。



いつもありがとうございます
プロフィール

cn7145

Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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