宮本 輝 「水のかたち・上下巻」

東京の下町に暮らす主婦・志乃子は50歳。
近所の喫茶店で、
年代ものの文机と茶碗と手文庫を貰い受ける。
やがてそこから予期せぬ出会いと
新たな人生の喜びが…。
(あらすじより)
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「水のかたち」って何かなぁと考えながら読んでいました。
『水は流れて来て落ちて・・・
水の道へと向かって行って、
水の道の形になり、
水草の繁っているところでは水草の形になり、
石と石とに挟まれた細い水路では、
水路の形になり・・・
それなのに、水であることをやめない。
他のどんな形に変化しようとも、
水でありつづける。』
水の流れと言う表現ではなく、
水のかたちと言う表現の意味が分かりました。
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『人間に生まれたから人間になるのではない。
人間になるための教育を受けなければ
人間になれないのだ。』
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作中に終戦直後の北朝鮮から
38度線を日本に引き揚げる家族の話が登場しますが、
お名前以外は全て実話で登場します。
過酷過ぎる当時の様子が胸を締め付けられます。
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『信じるというのは心の問題だ。
世のあらゆる物事や事象に、
自然に信じられることなど
ひとつもない。
信じると決心したら
信じられるようになっていく。
私はこの半年間で、
そのことを学んだのではないか。』
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この物語の主人公「志乃子」と言う女性は、
自分を善人に仕立てあげようという気なんて、
ひとかけらも持っていない。
自然にすなおで、
自然に謙虚で、
自然に礼儀正しい。
と表現していました。
とても素敵な魅力的な女性像です。
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沢山の心に残る言葉があって書ききれない・・・
ストーリーよりも
言葉の美しさ、事象への奥深い表現に
しみじみ読み終えました。
いつもありがとうございます

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