志川 節子 「煌(きらり)」

装丁の美しい本です。
徳間書店さんの心意気を感じます。
表紙は日本画家の小村雪岱(せったい)

花火が織りなす六つの人間模様時代小説。
人間模様だけではない詳細に描かれた
それぞれの職人たちの技。
作家志川節子さんの
職人たちへの尊敬の思いが伝わる一冊です。
物語は余韻を残し、
喜怒哀楽を読み手に想像させ考えさせます。
美しい丁寧なプロ中のプロの
本作りの徳間書店さん尊敬いたします。
本を手に取るかどうかは装丁にかかっていると言っても
過言ではないと思います。
職人技の本作りに感動致します。

読後、我が家の地味な棚に飾って置こうと思います。
華やかになり嬉しいです。
徳間書店さんの本作りに感動した一冊でした。
いつもありがとうございます

志川 節子 「花鳥茶屋せせらぎ」

花鳥茶屋「せせらぎ」は上野不忍池に面したおよそ六百坪の敷地に、珍しい鳥を集めた禽舎や植物を配した行楽の苑であった。いかがわしさとは縁遠く、女子供にもたいそう受けがよい。子供のころ、手習いの師匠が語ってくれたさまざまな鳥の話に、足が痺れるのも忘れて幼馴染みたちと聞き入った勝次は、ここ「せせらぎ」で鳥かご職人の修業中だった。弟子入りして五年、仲間も皆、巣立ちの時を迎えようとしていた…。
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まだ16~18歳の幼なじみ男女5人の成長物語です。
女の子は嫁入り話しも来ます。
男の子は奉公先でも半人前とは言え、
自分の仕事も出来るようになって来ました。
それぞれが技術を磨きながら・・・
商売のいろはを勉強しながら・・・
失敗しながらも挑戦する少年少女を
とても応援したくなります。
また、理解を示し協力する周りの大人たちが、
鳥を題材にした6つの物語を引き締めています。
若いって素晴らしい!
未来への目標と夢を実現する為、
努力する姿がすがすがしいですヨ(^^)
若者の一人「勝次」が、
人のせいばかりにして、
自分は全く悪くないとグダグダ言う大人に向かって
きっぱりと言う言葉に目が覚める思いです。
「いつまで、手前自身の落とし前をつけることから
逃げるつもりなんですかい!」
いつもありがとうございます

志川 節子 「ご縁の糸」

不貞を疑われ、夫に三行半を突き付けられて
一人長屋住まいをする「おえん」。
ふとしたことから今で言うところの仲人稼業を始めます。
6編それぞれの「ご縁」に繋がるまでの流れが
ホロっとしたり、ちょっと笑ったり・・・。
夫に離縁されてしまった「おえん」には残していった息子が・・・
思い悲しむ「おえん」の気持ちが切ないです。
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「我が子の名を胸に呼んで、おえんは橋の下を流れる川面を見つめた。吹き抜ける風が水面に細かなさざ波をおこし、日射しが砕けて白く輝いている。河岸に植えられた柳が水辺に覆い被さるように枝を垂らし、そこだけ黒い影をこしらえていた。」
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「おえんは下に置かれた桶に視線を落とした。湯呑みについたしずくに星が映り、涙みたいに光っている。器用に立ち回ることができない己れに嘆息したくなった。
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「一緒にいる理由(わけ)をさがすようになったら、男と女は汐どきじゃないのかねえ。」
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「なあ、おえんさん。手前(てめえ)が手を伸ばしてつかんだ明日に、正しいも正しくもねえもないんじゃねえかな」
いつもありがとうございます
