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ジョン・スタインベック 「ハツカネズミと人間」

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ノーベル文学賞受賞作家ジョン・スタインベック。

からだも知恵も対照的な
のっぽのレニーとちびのジョージ。

渡り鳥のような二人の労働者のささやかな夢。
カリフォルニアの農場を転々として働く男たちの友情、
たくましい生命力、
そして苛酷な現実と悲劇・・・

久しぶりの外国作家作品を読みました。
大浦暁生氏の翻訳が素晴らしいと思いました。
風景描写・人物描写が秀逸で読みやすかったです。

知能が遅れている大男のレニー
そのレニーを邪魔に思いながらも
常に守り寄り添うジョージ。

生き物に対して執着するレニー。

しかし生き物への愛情の注ぎ方が異常で
自分でも分からない可愛がり方をする。

気づけばネズミも子犬も死んでいた・・・
いや、レニーが無意識に殺してしまった・・・

自分に対しても人や動物に対しても
レニーは普通の感情や行動を起こせない・・・

レニーにとってジョージがぎりぎり人として
暮らしていける砦だった・・・

ジョージはレニーを可哀想がるのではなく、
自分にとってもかけがえのない相棒である。

農場から農場へ過酷な重労働の日雇い仕事で
日々を凌いでいる二人にも夢がある。

自分達の土地を買い、動物を飼って、
雇われるのではなく
自由に楽しく暮らす人生・・・

その夢は現実となる事はなかった・・・

夢を語り合う二人の活き活きとした描写が美しいです。

ある日レニーが事件を起こしてしまう・・・

誰かではなくジョージ自身がレニーと向き合う・・・

最後に悲しい結末がありますが、
それよりも周りの人物たちの冷ややかな眼差しに
残酷で悲しくなりました・・・

不思議と安らかな読後感でした・・・





いつもありがとうございます



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エクトール・マロ 「家なき子」

エクトール・マロ
「家なき子」

2019100901.png
捨て子のレミ少年のさまざまな困難を乗り越える逞しい物語。

児童文学として愛され続けている有名な作品。

上・下巻と長い物語ですが、

いっきに読み終えたくページをめくる手が進みます。

・・・・・・

たった8歳のレミが旅芸人の師匠と動物たちとの

貧しく厳しい暮らしの中でも、

常に向上心と愛情を持ち、

師匠から受けた恩恵を忘れない。

・・・・・・

いくつもの困難に遭っても

賢明さと明るさと行動力で乗り越えます。

・・・・・・

生涯の友となるマルティアと出会ったレミ少年は、

大人たちに騙される事もあり、

死に直面する事もありましたが、

マルティアと共に乗り越えます。

・・・・・・

子供を奴隷のように使う大人がいたり、

泥棒一家の一員として働かされたり、

冷たい世間の風に絶望したり・・・

・・・・・・

しかしレミ少年を救い

愛情を注ぎ助ける大人たちや仲間もいます。

彼らのお陰で、本当の家族を探し

出会う事になり幸福へ導かれます。

・・・・・・

レミ少年とマルティア少年の友情の厚さ。

瀕死のレミ少年を助けてくれ、

家族同様に愛情を注いでくれたアキャン一家。

捨て子のレミを自分の子供のように

深い愛情で育ててくれたバルブラン母さん。

レミ少年の恩を受けた相手に対する

感謝と恩返しに感動します。

・・・・・・

長い長いこの物語は、

行く先々の土地の描写や

当時のフランスやイギリスの人々の暮らしも

リアルに描いていて興味深いです。

・・・・・・

要所要所に描かれている挿絵が美しいです。

・・・・・・

感動の一冊でした。



いつもありがとうございます

ビクトル・ユゴー  「ああ無情」

ビクトル・ユゴー 
  「ああ無情」

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原題「レ・ミゼラブル」

フランス語で「悲惨な人々、哀れな人々」

と言う意味だそうです。

何十年ぶりに再読(^^)

長い物語だし難しいので子供向けで読みました(^^)

主人公のジャン・バルジャンの46歳から物語が始まります。

一本のパンを盗んだ事により19年間も監獄生活をしたジャン。

この物語で作家のビクトルユゴーは、正義とは何か…

倫理とは何か…

無償の愛への救いとは…

を風刺を交えて辛辣にこれでもかと

悲惨な状況をジャンに与えます。

しかし、ジャン一人だけが

悲惨で哀れではありませんでした。

娘として育てるコゼットや

コゼットと愛し合うマリウス…

コゼットの母親のフォンティーヌ…

身を犠牲にしてまで

マリウスを想い続けたエポニーヌ…

果てはジャンを執拗に追い続けた

刑事ジャベール警部もある意味哀れな人でした…

ジャンが人を信じ無償の愛を与え続ける事ができたのは、

ミリエル司教の教えを受けたから。

長い長い物語には

フランスでの革命運動も描かれていて、

歴史的視点も難しくて…

再読してジャンやコゼットは勿論ですが、

マリウスを慕い続け、

身を犠牲にしてマリウスの為に亡くなった

エポニーヌがなんだかとても印象に残りました…

エポニーヌは、まだ16歳でした…

彼女のマリウスに対する愛を

マリウスに伝わることなく亡くなります…

エポニーヌの家族とコゼットには

深い縁がある事も哀しいと言うか切ないと言うか…

あまりに有名な物語なので、感想は割愛…(^^)

エポニーヌへの哀しみが切なかった

今回の再読でした…



いつもありがとうございます

ルイス・セプルベダ  「カモメに飛ぶことを教えた猫」

ルイス・セプルベダ

「カモメに飛ぶことを教えた猫」

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猫とカモメの「異種愛」を描いています。

ドイツの作家ルイスさんは、

活動家として投獄された経験もある人。

物語を通して人種、文化、価値観の異なる者同士を

排斥するのではなく、

尊重しあい共存することの大切さを訴えています。

・・・・・・・・・・・・・・

人間が垂れ流した原油を浴びて

瀕死になった母カモメ。

命の尽きる寸前に産んだ卵を、

太った黒猫「ゾルバ」に託すところから

物語が始まります。

・・・・・・・・・

母カモメは「無事育てて欲しい。」

「成長したらこの子に飛ぶことを教えて欲しい。」

と、黒猫「ゾルバ」に頼んだあと息を引取ります。

・・・・・・・・・

オスの太った黒猫「ゾルバ」と

事情を聞いた港の猫仲間達が協力し合います。

・・・・・・・・・

無事育ったカモメの「フォルトゥナータ」に

語りかける黒猫「ゾルバ」の言葉が

この物語のテーマです。

・・・・・・・・・

「きみのおかげでぼくたちは、

自分とは違っている者を認め、

尊重し、愛することを、知ったんだ。」

・・・・・・・・・

いよいよカモメのフォルトゥナータが、

飛ぶ時が来ましたが、怖がり躊躇します。

・・・・・・・・・

その時の「ゾルバ」の思いがこもった叫びに感動します。

・・・・・・・・・

カモメのフォルトゥナータが飛ぶまでの

風景描写が大変美しく描かれています。




いつもありがとうございます

ユベール・マンガレリ 「しずかに流れるみどりの川」

ユベール・マンガレリ 
 「しずかに流れるみどりの川」

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見渡すかぎりどこまでも「ふしぎな草」が生いしげる、
原っぱのまんなかの小さな町。

電気も止められてしまうような貧しさの中で寄り添う少年プリモと父親は、
裏庭に自生する〈つるばら〉をそだててひと稼ぎしようと夢みる。

親子は、形のふぞろいな百個のびんに植えられたばらを、
毎日丁寧に世話をする。

水は1日2回。
朝、びんを家の外に出し、
決まった場所に正確に並べていく。

陽が沈んだら、またびんを家の中に入れる。

そしてふたりいっしょにいつものお祈り。

来る日も来る日も、すべてはひそやかに、
そして神聖なまでの厳密さで繰り返されていく。

ばらの世話をする以外の時間、
プリモは歩く。
ひたすら歩く。

歩きながら雨や風、
太陽の陽射しに親しみ、
まわりの自然と対話しながら科学する。

また自由な空想をくりひろげてひとり楽しむ。

たとえば、記憶の中のみどり色で
しずかだった川を思い浮かべてみたりして……。

そんな父と子のささやかな日常は、
ほろ苦いユーモアに彩られながら、
一切の装飾を削ぎとった抑制の効いた文体や
驚くほど多くを語る著者独特の沈黙の作法によって、
切ないほど美しい輝きを放ちだす。
〈出版社内容紹介より〉


・・・・・・・・・・・・・・・・・

幼い息子と父親だけの貧しくも静かな日々を描いています。

自然の描写・息子プリモの心情と空想・

プリモから見た父親の姿の描写が言葉少ないながらも

鮮やかに目に浮かびます。

自分より丈の高い草むらをひたすら歩くプリモ。

プリモは自然への壮大な空想をする事で

現実の寂しさや貧しさをオブラートに包み、

父親との暮らしにみじめさを感じないようにしているようでした。

しっかり者で優しいプリモ。

不器用な生き方しか出来ない父親ですが、

息子プリモへの深い愛情が支えとなっています。

結末はありませんが、

不思議と未来への絶望や不安を感じません。

プリモが成長して行く過程で、

彼なりに現実と空想を繰り返し、

置かれた状況をしっかり受け止めながら

生きて行くのだろうとの余韻を感じました。



いつもありがとうございます

デボラ・インストール  「ロボットイン・ザ・ハウス」

デボラ・インストール

「ロボットイン・ザ・ハウス」

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ポンコツロボット「タング」とベン家族の物語。

今回はなんと!もう一機ロボットが登場します。

タングの悪徳作り主「ボリンジャー」が送り込んだ

球体系ロボット「ジャスミン」

悪徳作り主🆚ベン家族!

ロボットと心を通わせ家族になる姿を描いています。

ジャスミンはベン家族の味方になるのか

悪徳作り主の忠誠ロボットに徹するのか?

可愛い赤ちゃんボニーが生まれ、

お兄ちゃんの役割を果たすタングですが、

まだまだお子ちゃまなタングの反抗が

微笑ましく可愛いです(^^)

ベンとよりを戻していない元妻のエイミーとの仲もどうなるのか…

今回もハチャメチャなタングが物語をワクワクさせてくれました。

ベンに叱られて反抗したタングが家出したり…

1時間後には戻ってきますが、酔っ払っていたり(笑笑)

タングがペットを欲しがり、魚や猫を飼ったり…(^^)

赤ちゃんボニーのタングに対するイタズラが

眼に浮かぶようで笑っちゃいました(^^)

タングと同じロボットのジャスミンとの関係が、

今回の物語の大きなポイントとなります。

ジャスミンはタングのように

人の気持ちを分かるロボットであるのか…

人間が作ったロボットへの敬意と愛情を感じる

優しくも感動する物語でした(^^)

作者のデボラインストールさんは、

日本が大好きなんだそうです。

来日の際、翻訳の松原さんとお会いした場所は

秋葉原のお好み焼き屋さんだったそうです。

新婚旅行も日本で、

今でも自宅でお好み焼きを作って楽しむのだそうです。

作品の中でも、東京が登場しますし、

日本のことを良く描いて下さっています(^^)

そんな所も親近感が湧き楽しめました(^^)




いつもありがとうございます

デボラ・インストール  「ロボット・イン・ザ・ガーデン」

デボラ・インストール 
 「ロボット・イン・ザ・ガーデン」

2019081401.png

AI開発が進み、アンドロイドが普及している近未来のイギリスでのお話。

表紙の絵の通りの旧型と言うかポンコツロボット「タング」が

ある日、主人公「ベン」の自宅庭に忽然と現れます。

アンドロイドが普及している時代に旧型ロボットに戸惑うベンですが、

他のアンドロイドにはない「何か」をタングに感じるベン。

ボロボロのタングを捨てる事は出来ず、

製造元に修理を依頼しようとしますが、

消えかけのイニシャルしか情報がありません。

少ないヒントを頼りに作り主を探す旅に出る「ベン」と「タング」。

イギリスからアメリカ縦断し何と日本は東京にまでやって来ます。

そしてパラオにて作り主に会う事が出来ましたが、

「タング」にとって作り主は非情な人間だった為、

二人で逃げ出します。

2ケ月に渡るタングとの旅を通して、

ベンは別れた妻エイミーの事、

無職の自分の暮らしの事を考え直し、

自分の生き方を変えられるようになっていました。

ロボットとは言え、タングの子供のような幼さと行動、

頑固で我がままで寂しがり屋のとっても可愛いタング!

人間とロボットが心を通わせる描写にホロっとしたり、

クスっとしたり、ハラハラしたりと、

展開の面白さとストーリーの暖かさがあります。

ベンと別れた直後に妊娠が分かった妻エイミー。

当初タングを毛嫌いしていたエイミーでしたが、

妊娠中のタングのエイミーへの献身的なケアに、

エイミーはタングへ、そして別れた夫ベンに対して感謝し、

出産後、同居する事になるのでした。

ベンとエイミーとタングの触れ合いが、

生まれた赤ちゃんへも良い影響を与えそうと言う所で物語はおしまい。

続編で赤ちゃんやベンとエイミーの家族としての物語が始まります(^^)

またまたいろんな騒動を起こすタングが楽しみです!(^^)



いつもありがとうございます

アレン・エスケンス 「償いの雪が降る」

アレン・エスケンス

 「償いの雪が降る」

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授業で身近な年長者の伝記を書くことになった大学生のジョーは、

訪れた介護施設で、末期がん患者のカールを紹介される。

カールは三十数年前に少女暴行殺人で有罪となった男で、

仮釈放され施設で最後の時を過ごしていた。

カールは臨終の供述をしたいとインタビューに応じる。

話を聴いてジョーは事件に疑問を抱き、真相を探り始めるが…。


・・・・・・・・・・・・・・・・・

「殺しと殺害は違う」

カールの言った意味とは・・・

カールは本当に少女を殺害したのか・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・

この事件の真実を突き止めるにあたり

大学生のジョーの弟ジェレミーが大きな役割を果たします。

自閉症の弟を守るジョーと後に恋人となる隣人の大学生ライラ。

三人の役割は危険を伴いながらも

少女殺害事件への大きな解決へ向かいます。

・・・・・・・・・・・・・・・・

「カールは無実だ!」と

三十数年前当時から訴えるカールのベトナム戦争時の戦友ヴァージル。

・・・・・・・・・・・・・・・

カールが少女をレイプし殺害するわけがない根拠は、

ベトナム戦争時代にあると彼は言います。

・・・・・・・・・・・・・・・

カールとベトナム戦争・・・

カールと少女へのレイプ殺害疑惑・・・

カールの無実を信じ続ける戦友・・・

・・・・・・・・・・・・・・

大学生ジョーは偏見を捨て真実を追求する為に

身の危険に晒されながらも奔走します。

・・・・・・・・・・・・・・

ジョーの真実の事件追及と並行して

自閉症の弟ジェレミーとネグレクトをする母親との

闘いも描いています。

・・・・・・・・・・・・・・

弟の事を「よう!相棒!」と呼ぶジョー。

弟ジェレミーは18歳。

「できるかも」「食べたかも」など語尾に「・・・かも」と言います。

この言い方が優しくて可愛いです。

母親は酒・ギャンブル・男狂いでジョレミーをネグレクト扱い。

母親の男からの暴力に耐えるジェレミー。

どうしようもなくなり兄のジョーに電話するジェレミー。

「殴られたかも・・・」

そのたった一言で兄ジョーは弟を救いに向かいます。

その時点で母親との決別となります。

・・・・・・・・・・・・・・

カールは「雪が降らないかな・・・」

と雪が降る事を望んでいました。

雪が降り・・・積り・・・やがて溶けて・・・

カールの償いは雪が溶かしてくれるのか・・・

カールにとって生きて苦しむ事が償いだったのか・・・

ジョーの活躍が一人の人生を大きく変えると言う壮大なサスペンスでした。




いつもありがとうございます

ユベーリ・マンガレリ  「おわりの雪」

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小さな町の片隅で暮らす、

病床の父と、

父を支える母と、

「ぼく」の生と死をめぐる物語。

「ぼく」は養老院の老人たちの手伝いをしながら、

生活を支えています。

ある日、古道具屋の店先で売られていた

「トビ」に心を奪われます。

「トビ」を売ってもらうにはお金が足りない。

養老院の主は、

親戚から頼まれた子猫の処分と、

養老院で亡くなった老婆の老犬の処分を、

「ぼく」に依頼します。

念願の「トビ」を買う事が出来る程のお金と引き換えに、

「ぼく」は子猫と老犬を処分します・・・

亡くした子猫は土に埋めます・・・

老犬は雪の丘陵の彼方へ捨ててしまいます・・・

「ぼく」も養老院の主も、

深く長く罪悪感を持ちます・・・

父親の死。

トビの生。

子猫と老犬への残酷な仕打ち・・・

矛盾する「生と死」。

しんしんと降りしきる雪の風景描写が、

寂しく悲しく心に残りました。



いつもありがとうございます

ユベール・マンガレリ 「四人の兵士」

20190220.png

フランスで最も権威ある文学賞の一つ

「メディシス賞」受賞作品。

ロシア軍の若い兵士4人の物語。

主人公の「ベニア」は天涯孤独。

行き場のないベニアは志願して

ロシア赤軍に所属します。

戦いは過酷を極め敵軍から敗走する途中に

仲間となった4人で過ごす数年間。

戦場の過酷な出来事よりも、

4人で過ごした束の間の安らぎを

ベニアの一人称で語られています。

戦争を通して得られた、

かけがえのない友となる4人。

途中、まだ幼い少年が志願兵となり

ベニア達と行動を共にするのですが、

後に少年は銃弾を浴び亡くなります。

少年は、ノートにベニア達と過ごした日々を

事細かに日記として綴っていました。

少年が亡くなり、遺品のノートを開けると…

少年は、教育を受けていなかったので、

言葉を書けていませんでした…

言葉にならない読めないスペルが、

びっしりとノートに書いてありました…

兄とも言える大切な存在のベニア達4人との交流や、

過酷な戦況の中のひと時の楽しかった事を、

少年なりの言葉で綴る日記が切なかったです…

全体を通して戦争の悲惨さより、

むしろ孤独に対する恐怖を

淡々と語るベニアが悲しいです…



いつもありがとうございます

ピーター・キャメロン 「最終目的地」

無題

久々に分厚い本。

その割にはあまり時間かからず読了。

小説にはストーリーの面白さと

文章の面白さがあると思うのですが、

今作品は後者。

・・・・・・・・・・・・・・・

会話形式のセリフに惹き込まれました。

ストーリーとしては面白さはあまり感じませんが

読み終えたら不思議と人生観を見直したくなりました。

・・・・・・・・・・・・・・・

最終目的地と言うのは、

今現在置かれている環境や立場や人生について、

立ち止まっている人、

あきらめている人、

先を迷っている人へ改めて見つめ直し、

一歩思いを進め

最終的に落ち着ける幸せへの行動の事。

・・・・・・・・・・・・・・・

読み終えたら問い掛けられます。

「あなたにとっての最終目的地はどこ?何?」

・・・・・・・・・・・・・・・

物語の中にゲイのカップルが登場します。

年老いたアダムと親子ほど歳の離れたピート。

・・・・・・・・・・・・・・

アダム「時々思うのだよ。

お前をここに連れて来たのは、

わしの過ちだったのではないかとね」

ピート「たまたまぼくはここが気に入りました。

これまでいたどこの場所よりここが幸せです。

そんなふうにぼくのことを心配しないでほしいな。

ペットじゃないんだから」

アダム「そういうつもりではない」

ピート「そう思っていたでしょう。

あなたはぼくの幸せに責任なんてないんだ。

あなたは自分の幸せを

心配するべきだと思いますけど」

アダム「ああ、そんなものはあきらめたよ」

ピート「あきらめたふりをしているけれど、

あきらめていない。」

アダム「どうしてわかる?」

ピート「臆病なんだと思う。

あなたの中でその部分は好きになれない。

幸せなんて問題じゃないってふりをするところです。

幸せなんて、どういうわけか、

あなたを超えた所に、あるいは、

後ろにあるってふりをするところ。

もうそれは通り過ぎてしまったというところです。

それは安易すぎます。

しかも自分勝手だ。

それは少々意地悪だ。

ぼくはどうなんですか?

ぼくがいても幸せではないんですか。

ぼくでは、幸せになれないんですか?時々でも?」

アダム「もちろん、お前は幸せにしてくれる

もちろんだ」

ピート「それなら、幸せではないなんて

言わないでください。

幸せなんて関係ないなんて言わないでください。」

・・・・・・・・・・・・・・・・

この物語の中で一番迷いがなく真っ直ぐで

幸せを感じているピート。

とてもとても素敵な男性。

・・・・・・・・・・・・・・・

キャロラインとアダムの会話も魅力的。

・・・・・・・・・・・・・・

キャロライン「私、これまで現在のことには

あまり注意を向けずに来たわ。

それがここでの私達の生きかたでしょう?

ただ日々を過ごして、人生なんて、

どこかよその、他の人達の所で起きていると思っている」

アダム「よその連中は人生に歓迎されるからな」

キャロライン「あなたは人生を好きではないの?アダム」

アダム「ああ、好きだ。

永遠に生きたいとは思わないが、

しばらく生きる分には人生は悪くない」

キャロライン「それで、あなたはここに住んでいて

幸せなの?

それとも、違うふうにことが運んでいたらと

思っているのかしら?」

アダム「この歳になると、幸せを探したり、

期待したりはしないものさ」

・・・・・・・・・・・・・・・・

本好きの人でしたら気持ちを共有できるかと思いますが、

感動したり心にずっと留めて置きたい本にめぐり会いますと

読んだ後にその本を胸に抱きしめちゃうんですよねぇ。

読んで良かったなと思い、

しばらくの間とても心豊かな気持ちになります。

そんな本でした(^^)




いつもありがとうございます

ポール・ギャリコ 「スノーグース」

スノーグース

動物と人間の愛と奇跡の短篇集です。

「スノーグース」

スノーグース(白い雁)と孤独な画家と少女の

かなしくも切ない物語。

孤独な画家ラヤダーと少女フリスの交流から

戦争を交えた悲しい物語となっていますが

スノーグースのラヤダーへの忠実な愛が

物語の壮大さと愛の深さを見事に物語っています。

・・・・・・・・・・・

二つ目のお話は「小さな奇跡」

10歳の孤児ペピーノと相棒であり

家族であるロバのヴィオレッタの奇跡のお話。

ペピーノにはロバのヴィオレッタしか

家族がいません。

かけがえのない家族のヴィオレッタと共に

荷物を運んだり雑用をこなして貧しいながら

蓄えも少し出来る程の暮らしをしています。

そんなロバのヴィオレッタがある時から

やせ細り立って歩く事も辛くなります。

懸命に看病するペピーノは神父様に

お願いして寺院の聖堂の地下にある

霊廟(れいびょう)につれて行き聖者様に

病気を治してもらえるようお願いに行きますが

神父様に断られてしまいます。

どうすればお願いを聞いてもらえるのか・・・

神父様の上の人にお願いしよう・・・

「ローマ法王」にお願いすれば

神父様も聞いてくれるに違いない。

そう確信したペピーノはなけなしのお金を持って

ローマ法王に会いに行きます。

法王にお願いする為にお花と手紙を持って行きます。

法王に花と手紙が届くまでに多くの人が関わります。

本来ならゴミとして捨てられてしまい

門前で断られてしまうはずが・・・

ここから奇跡が起きます・・・

ペピーノの行動とヴィオレッタへの愛が

ローマ法王も動かすことになります・・・

小さな子供のペピーノにとって

大事な大事なヴィオレッタ。

苦しんでいるヴィオレッタを助けたい一心で

諦めないペピーノの信念と行動が胸を打ちます。




いつもありがとうございます

ポール・ギャリコ 「さすらいのジェニー」

キャプチャ


ある日、8歳の少年ピーターが事故にあい、

突然真っ白な猫に変身してしまいます。

猫になってしまったピーターは

いつも世話をしてくれる家政婦のばあやから

ロンドンの街へ放り出されてしまいます。

・・・・・・・・・・・・・

途方にくれるピーターを助けたのは

やはり家族から捨てられたメス猫のジェニー。

ジェニーはピーターに野良猫として

生きて行く全てを教えます。

時に過酷で時に楽しく・・・

冒険あり、事故あり、試練あり、別れあり・・・

ジェニーとの暮らしはピーターを

一日一日成長させて行きます。

・・・・・・・・・・・・・

ある日、ジェニーはピーターとの

別れを切りだします。

野良猫の世界で誰も逆らえない

ボス猫のデンプシーがジェニーを

3日後に奪いに来る事になったからです。

もしデンプシーの言う事を聞かなければ

ピーターを殺すと脅されたのです。

泣く泣くジェニーはデンプシーの下へ

行くことを決心しますが・・・

・・・・・・・・・・・・・

ピーターは命をかけて

ボス猫のデンプシーに闘いを挑みます。

ジェニーの為に自分の命をかけて闘ったピーター。

デンプシーとの熾烈な闘いの結果は・・・

そしてピーターは人間に戻れるのか・・・

・・・・・・・・・・・・・

久しぶりの分厚い単行本を読みました。

この物語は単なる猫の冒険ファンタジー

というだけではありません。

猫に変身したピーターの内面の葛藤を

ジェニーの力を借りて成長する物語です。

冒険あり別れあり試練あり・・・

8歳の少年が人間と猫の二つの魂を持ちつつ

多くの経験をします。

相棒であり最愛のジェニーは

少年ピーターにとって、憧れの女性像を現しています。

ジェニーを奪いに来たボス猫との闘いは

ピーター自身の成長への現れとなっています。

優しい語り口とハラハラドキドキする展開。

読後感は満足の物語です。

オススメです(^^)



いつもありがとうございます

ディーレディー 「あたしの一生」

A.png
「あたし」と「あたしの人間」の、
出会いから「あたし」の死までの
17年と4カ月にわたる濃密な時間を、
猫の視点で描いた感動的な物語。

・・・・・・・・・・・・・・
黒白猫の「あたし」。

生まれて間もなくから、死ぬまでの17年以上。

その17年の間には大怪我で尻尾を失ったり、

仲良しになる子猫や、

どうしても受け入れない猫も家族として登場します。

ダルシーこと「あたし」にとっての17年間は、

「あたしの人間」に対する深い愛情表現で満たされていました。

死ぬまでの物語ですから、

覚悟して読まなくてはならないですヨ(^^)

最後に、

巻頭でのメッセージが素敵だったので少しだけ抜粋。

【あたしは、あたしたちが一緒に暮らした
日々の思い出を、
あのひとの胸のなかにちゃんと蒔いておいた。
あたしがいなくなったあとも
その思い出があのひとを、
なぐさめてくれるようにね。】




いつもありがとうございます

レイチェル ウェルズ  「通い猫アルフィーの奇跡」

無題

イギリスはロンドンでのお話し。

優雅に暮らしていたグレー猫のアルフィでしたが、

ある日飼い主のおばあさんが亡くなってしまい、

シェルターに連れて行かれそうになります。

日本で言う所の保健所とか愛護センターですかね。

アルフィーは一人逃げ出し、生まれて初めての野良猫になります。

孤独と恐怖と飢えで何をどうしたら良いのか・・・。

狩りも初めて。

道路を横断するのも初めて。

誰も助けてくれない。

人間も怖い。

野良犬・野良猫からの攻撃もある。

そんな暮らしを続けていくうちに、

自らの居場所を探そうと生きる行動を起こします。

アルフィーは飼い猫ではなく、通い猫として4つの居場所を得ます。

その4家族それぞれが持つ悩みと悲しみを

アルフィーの行動により奇跡を起こします。

自らの体を張って飼い主の一人を守る姿には

アルフィーの飼い主への感謝の気持ちが現れていました。

アルフィー自身の語り口で物語が描かれています。

序盤の野良猫生活の描写を自分に投影させて読むと

いかに過酷であるか実感できると思います。

日本で言うところの地域猫として生きるアルフィー。

4つの家族間を通って好きなように暮らすアルフィー。

怪我をすれば4家族が病院へ連れて行き交代で看病をする。

長い留守をする時はお互いがアルフィーの世話をする。

そこまで愛されるアルフィーはまさに奇跡の猫。

アルフィーがいてくれたお蔭で

悲しみを乗り越え・寂しさを分け合い・

愛情を深めることが出来たからです。

アルフィーも亡くなった飼い主を心から愛していました。

ことあるごとに元飼い主へ感謝の気持ちを現すところが

特に好きな場面でした。

お勧めの一冊です。



いつもありがとうございます
プロフィール

cn7145

Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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