伊吹 有喜 「なでし子物語」

いじめに遭っている少女・耀子、
居所のない思いを抱え過去の思い出の中にだけ生きている未亡人・照子、
生い立ちゆえの重圧やいじめに苦しむ少年・立海。
三人の出会いが、それぞれの人生を少しずつ動かし始める。(あらすじより)
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かわいい表紙のカバーをはずすと、
本自体にも切り絵のような装丁があります。
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なかなかハードな物語でした。
いじめられている「耀子(ようこ)ちゃん」。
体の弱いお金持ちの「立海(ちゅうかい)くん」。
自己再生と成長を誓う物語。
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決してハッピーエンドではないと思います。
これからも続く「いじめ」に対して
「耀子ちゃん」自身が顔をあげ、
美しく生きて行こうと誓う姿で続きます。
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小さい男の子「立海くん」との
短い期間の触れ合いは
一生二人にとって強く生きる支えになります。
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父親が亡くなり、
だらしのない母親から見捨てられ、
ひとりぽっちで暮らしていた耀子ちゃん・・・
これだけでもありえない程泣けちゃうんですよ・・・
お風呂の焚き方でミスってボヤを出し、
やっと幼い女の子一人で暮らしていたと発覚。
それからは親戚に預けられるも
養育放棄され祖父が暮らす田舎に連れて行かれます。
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結構長い物語の中で印象に残った所は、
祖父が学校でいじめられている耀子ちゃんの事を
先生に話す場面。
身近な親でもここまで子供の心情で
言葉に出来るかなぁと思うほど
祖父の耀子ちゃんを守る姿が感動しました。
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そんな中、いつもいじめられていたと思っていた
同級生の男子が実は耀子ちゃんを
助けようとしていた事から仲良しになり
クリスマス会に立海くんと二人で招待されます。
その時に、いつもすり切れたみすぼらしい服の
耀子ちゃんの為に服や靴全て買いそろえた祖父。
プレゼントの袋を開ける所から
驚きと感激の耀子ちゃんのシーンがとても素敵です。
耀子ちゃんの喜びの描写が静かでありながらも
読み手に実際手に取るように伝わりました。
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大人の事情で振り回される幼い二人。
しかし、それだからこそ守ってくれる大人たちもいます。
そしていじめられるだけではない
毅然とした態度で学校に通う耀子ちゃんの姿が
あふれんばかりの希望と幸運を感じました。
いつもありがとうございます

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