fc2ブログ

伊吹 有喜 「なでし子物語」

2022050601.png


いじめに遭っている少女・耀子、
居所のない思いを抱え過去の思い出の中にだけ生きている未亡人・照子、
生い立ちゆえの重圧やいじめに苦しむ少年・立海。
三人の出会いが、それぞれの人生を少しずつ動かし始める。(あらすじより)

・・・・・・・・・・・・・・

かわいい表紙のカバーをはずすと、

本自体にも切り絵のような装丁があります。

・・・・・・・・・・・・・・

なかなかハードな物語でした。

いじめられている「耀子(ようこ)ちゃん」。

体の弱いお金持ちの「立海(ちゅうかい)くん」。

自己再生と成長を誓う物語。

・・・・・・・・・・・・・

決してハッピーエンドではないと思います。

これからも続く「いじめ」に対して

「耀子ちゃん」自身が顔をあげ、

美しく生きて行こうと誓う姿で続きます。

・・・・・・・・・・・・・

小さい男の子「立海くん」との

短い期間の触れ合いは

一生二人にとって強く生きる支えになります。

・・・・・・・・・・・

父親が亡くなり、

だらしのない母親から見捨てられ、

ひとりぽっちで暮らしていた耀子ちゃん・・・

これだけでもありえない程泣けちゃうんですよ・・・

お風呂の焚き方でミスってボヤを出し、

やっと幼い女の子一人で暮らしていたと発覚。

それからは親戚に預けられるも

養育放棄され祖父が暮らす田舎に連れて行かれます。

・・・・・・・・・・・・・

結構長い物語の中で印象に残った所は、

祖父が学校でいじめられている耀子ちゃんの事を

先生に話す場面。

身近な親でもここまで子供の心情で

言葉に出来るかなぁと思うほど

祖父の耀子ちゃんを守る姿が感動しました。

・・・・・・・・・・・・・

そんな中、いつもいじめられていたと思っていた

同級生の男子が実は耀子ちゃんを

助けようとしていた事から仲良しになり

クリスマス会に立海くんと二人で招待されます。

その時に、いつもすり切れたみすぼらしい服の

耀子ちゃんの為に服や靴全て買いそろえた祖父。

プレゼントの袋を開ける所から

驚きと感激の耀子ちゃんのシーンがとても素敵です。

耀子ちゃんの喜びの描写が静かでありながらも

読み手に実際手に取るように伝わりました。

・・・・・・・・・・・・・・

大人の事情で振り回される幼い二人。

しかし、それだからこそ守ってくれる大人たちもいます。

そしていじめられるだけではない

毅然とした態度で学校に通う耀子ちゃんの姿が

あふれんばかりの希望と幸運を感じました。







いつもありがとうございます
スポンサーサイト



伊吹 有喜  「今はちょっと、ついてないでけ」

無題

バブル期に活躍した元カメラマンの浩樹。

バブル崩壊と共に転落。

保証人になったばかりに

事務所社長の負債を全部背負い込み、

田舎に帰って、朝から晩まで色々な仕事をしながら

返済に明け暮れます。

15年かけて借金を完済する浩樹。

ここからが彼の敗者復活物語となります。

浩樹と同じように

世間や会社からリストラなどで転落する登場人物が、

浩樹とのさりげない触れ合いの縁によって仲間となり、

再起をかけ出発する!

という所で物語が終わります。

転落したと言っても

誰一人自堕落な人はいません。

皆んな一生懸命真面目に働き

社会へ尽くした人ばかり。

ほんの少し世間との歯車がずれただけで

「負け組」となってしまいました。

一人一人は技術も社会性もレベルが高いのですが、

人生には時々「ついてない」時期が来てしまうものです。

再起をかけるべく積極的に動くのは

浩樹ではなく周りの人達でした。

浩樹はもう少し時が遅かったら

奮起もせず再起など考えもしなかったでしょう。

背が高くイケメンの浩樹の設定なので

40代の阿部寛をイメージしました。

題名の「ついてないだけ」と言う言い方を

「い抜き言葉」で使用しているのが

最近の作家さんらしいなぁと思いました(^^)

伊吹さん今年50歳だけど(^^)



いつもありがとうございます

伊吹 有喜 「四十九日のレシピ」

i_20170516132101dd0.png

妻の乙美を亡くし気力を失ってしまった良平のもとへ、
娘の百合子もまた傷心を抱え出戻ってきた。
そこにやってきたのは、
真っ黒に日焼けした金髪の女の子・井本。
乙美の教え子だったという彼女は、
乙美が作っていた、
ある「レシピ」の存在を伝えにきたのだった。

・・・・・・・・・・・・
「失って初めて気が付いた。
望んだ花はなくとも、
別の美しい花がいつも咲いていたことに。
差し出された愛情を当たり前のように受け取り、
ないがしろにしていたことに。
怒りより強く後悔ばかりがわきあがり、
思いはつのる。」

・・・・・・・・・・・・
「私ね、思い出した。
レシピってお父さん、
処方箋って意味もあったね。
四十九日のレシピ。
乙母(おっかぁ)さんが私たちが
立ち直れるように残してくれた、
四十九日の暮らしの処方箋(レシピ)」

・・・・・・・・・・・
読み進めるうちにあるページから

しみじみとホロっとして行きます。

親が子を想う・・・

妻が夫を想う・・・

亡くなった後も想いつづける妻であり母である乙美へ

感謝の気持ちが溢れるせつなくも美しい物語です。



いつもありがとうございます

伊吹 有喜 「風待ちのひと」

i_20170512140038939.png

心の風邪”で休職中の男と、

家族を失った傷を抱える女。

海辺の町で偶然出会った同い年のふたりは、

39歳の夏を共に過ごすことに。


・・・・・・・・・・・・

大人の恋愛小説なんですが

ドロドロした描写は皆無。

お疲れの心を癒す女性の存在が光っています。

「人間には四つの季節があるんだって。
青春、朱夏、白秋、玄冬。
十代が青春。
二十代が朱夏。
四十、五十が白秋で、
それからが玄冬」



いつもありがとうございます
プロフィール

cn7145

Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

カレンダー
05 | 2023/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
日記
3084位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
その他
1266位
アクセスランキングを見る>>
最新コメント