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山本 一力  「ほかげ橋夕景」

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8つの短編時代小説

表題の「ほかげ橋夕景」と

「泣き笑い」が好きでした。

「泣き笑い」は、

絵札、今で言うポケモンカードのような物で

盛り上がる子供達のお話。

絵札(カード)欲しさに

金持ちの友達から盗んでしまった息子への

強いしつけをする父親。

自身の小さい頃と重なり、

当時親父に叱咤された事を思い出す・・・

「ほかげ橋夕景」は、

若くして女房が亡くなり、

以来一人娘とやもめ暮らしをする大工の傳次郎。

嫁に行く事が決まったと同時に、

自分の事はさて置き、

亭主との暮らしを第一にするべく、

わざと娘との距離を作る父親。

男気があり

父親としての愛情と

プライドとやせ我慢が

不器用に描かれています。

ホロリ切ないながらも

優しくなれる物語でした。





いつもありがとうございます
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山本 一力 「まねき通り十二景」

まねき通り20210225
十四のお店が連なる「まねき通り」での

それぞれの商い人の事情を抱えた物語。

親子・想い人・夫婦・・・

まねき通りの地図も描いていて

想像しながら読めました。

2021032105.png

物語の完結はなくて、

読み手にその先を考えさせる描き方です。

江戸っ子らしい見栄と粋が

商売を通して清々しく描かれています。

短編になっていますが、

最終的に繋がって行きます。





いつもありがとうございます

山本 一力  「落語小説集・芝浜」

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笑わせるためだけの落語ではなく、

それぞれにその人の物語があって、

ホロッとしたり、

クスッとしたりの優しい物語。

一つだけクスッとしたお話。

ある村の竹やぶの具合が悪くなり、

村の男の人が町のお医者さんへ行き、

先生に診てもらいたいとお願いします。

医者は「そういう時は植木屋さんでしょう。

なぜ私の所に来たのですか?」

と聞くと…村人は、

「先生は評判のやぶ医者と聞いたもんですから…」

と言うオチ(笑)





いつもありがとうございます

山本 一力 「あかね空」

無題
直木賞受賞作品。

豆腐職人の家族二代に渡る物語。

それぞれの胸の内がバラバラになったり分かり合えたり…

親が子を思う、子が親を思う、兄と弟、兄と妹…

両親が亡くなってしまい

豆腐屋は順調にやれるのか…

兄と弟と妹三人の仲は戻るのか…

同業の豆腐屋が潰しにかかる…

果たして三人は乗り越えていけるのか…

色んな不思議なご縁のお陰で三人は守られます。

それもこれも必死に守って来た両親のお陰。

前半は両親である永吉とおふみの

出会いと夫婦になってからの豆腐屋稼業の物語。

そこまでは夫婦二人の仲の良さと誠実な働きぶりで

地域又は遠くのお寺へまで商いを広げる事ができ

上々だったのですが、

子供が生まれてからの女房である「おふみ」の

変貌ぶりで夫婦仲まで悪くなります・・・

長男ばかり溺愛し、

次男と末娘に対する無関心が可哀想でしたし、

次男悟郎と末娘おきみの母親への思慕が切ないです・・・

しかし、永吉とおふみが亡くなった中盤からの流れは、

親として子供を、

そして次男の嫁を想う気持ちが深かった事を知ります・・・

長男の栄太郎の素行の悪さで両親から受け継ぐはずの

豆腐屋が危機を迎えますが

そこに登場したのは母親おふみから

「自分が死んだら子供達を見守って欲しい」と託された

幼馴染の鳶の頭「政五郎」でした。

鳶の頭「政五郎」と

長男栄太郎が出入りしていた賭場の頭「傳蔵」の

登場シーンは映像になったら圧巻と思いました。

二代に渡る家族再生物語を読んで、

陰で支えてくれた「ご縁」の有難さを深く感じました。

ただ一つ…

切ないなぁと思ったのは、

賭場の頭である傳蔵の生い立ち・・・

傳蔵も豆腐屋の息子でしたが、

4歳のある日迷い子になった事で

以来両親の元へ戻る事が出来ずに人生を送ります。

傳蔵が実は豆腐屋の息子であった事も知らない・・・

傳蔵の両親の豆腐屋は、永吉とおふみの豆腐屋「京や」を

陰ながら応援し、繁盛させるきっかけを作った事も知らない・・・

素行の悪かった栄太郎のせいで、

「京や」が敵対する同業の豆腐屋に乗っ取られそうになった時も、

自分の出生と「京や」の縁があった事も知らない・・・

ヤクザな世界に身を置きながらも、

「京や」の家族が団結して乗り越えようとする姿に、

乗っ取りを企てた豆腐屋を追い払い助けます。

傳蔵にとって家族は何より欲しいものでした・・・

本来なら傳蔵も同じ豆腐屋稼業で人生を送る事も出来たでしょう。

賭場の頭というヤクザな暮らしを過ごす事はなかったでしょうに・・・

この物語で脇役になっている傳蔵に惹かれました。

傳蔵の事だけは切なすぎて悲しかったです・・・




いつもありがとうございます

山本 一力  「いっぽん桜」

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花にあふれる人情を託した4つの物語。

「いっぽん桜」

長年奉公した大店から突然の暇を言い渡される長兵衛。

自負して来た仕事振りは、辞めた後も誰も困らない。

いつまでも捨てきれない大店勤めのプライド。

請われて勤めた次の仕事場でも何かにつけて

「うちはこうして来た」と

前の大店の仕事振りを出して引きずっていた。

しかし、大店の方ではもう誰も長兵衛に声を

かける事もない。

現代に照らし合わせて読むと頷ける。

会社の為にどんなにか尽くし犠牲もした事でしょう。

だけどリストラされれば今までの功績も不要。

仕事への誇りを持ち続けても次の職場では邪魔なだけ。

仕事への経験よりもその職場での人と人との

信頼と協力で人徳を積んでこそ誇りある

「必要な人材」

長兵衛は、次の職場で

いざと言う時に身を挺して助けに来てくれた若者達によって

改めて大事な事に気づきます。

読後感の良い物語でした。



いつもありがとうございます

山本 一力 「大川わたり」

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賭場で二十両もの借金をした銀次。

「二十両をけえし終わるまでは、

大川を渡るんじゃねぇ。

一歩でも渡ったら始末する」と

博徒の親分に命がけの約束を

させられるところから物語が始まります。

家族もなく一人で行きていた銀次。

物語は血生臭い事はなく、

銀次の人としての成長物語となっています。

博徒の親分も、剣術道場の恩師も

奉公先の主人も銀次の人間性を理解し

見守ります。

奉公先の手代新三郎が銀次を目の敵にするあまり

銀次を貶ようと企てた事により、

あらぬ疑いをかけられ奉公先から

暇を出されてしまった銀次は、

ある決意を持って大川を渡ると言う約束を破ります。

なぜ渡らなければならなかったのか…

周りの大人たちの仕掛けが鍵となります。

物語の後半は、少々強引な持って行き方ですが、

山本一力さんは、大抵こんな感じかな(^^)

な〜んて知ったか感で読了しました。

表紙の絵は葛飾北斎。

装幀が美しいです。



いつもありがとうございます

山本 一力 「辰巳八景」

キャプチャ

手をつないだわけでもない。
好き合っていたのかもわからない。
それでも祝言を挙げると知ったあの時、
涙がどうしても止まらなかった……。
遠い日の思い人と再会する女性の
迷いと喜びを描く「やぐら下の夕照」。
売れない戯作者がボロ雪駄の縁で
一世一代の恋をする「石場の暮雪」。
江戸深川の素朴な泣き笑いを、
温かで懐かしい筆が八つの物語に写し取る。
著者の独擅場、人情の時代短編集!
(アマゾン紹介より)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

八つの江戸は深川を舞台にした物語です。

山本一力さんの文章表現がとても絵になり、

気に入った箇所を何度も読み返してしまいました。

江戸庶民の暮らしの風景が細やかに描かれています。

登場するそれぞれの人の

ぐっと堪える深い思いが、

潔くもあり、切なくもあり・・・

読後感の良い物語でした。

装丁が素敵ですね(^^)


いつもありがとうございます。

山本 一力 「銀しゃり」

無題

直木賞作家の山本一力さんの小説は

職人物の描き方が大変丁寧で分かりやすく

臨場感も味わえると思います。

今作品は鮨職人の物語。

握り寿司ではなく押し鮨職人です。

米の炊き方から酢飯が出来上がるまでなど

細かい描写でご飯の炊きあがりの香りと

湯気まで伝わって来ます。

ストーリーもハッピーエンドで

読後もすっきり爽やか。

少々突っ込み箇所もありますが、

そこもまた面白さの一部と味わえます。

また主人公の新吉は「ご縁」と「ご恩」を大事にします。

職人魂をとことん教え込まれた「ご恩」に感謝し、

ふとした事で知り合った人との「ご縁」を大事する事で、

仕事にも生かせる事になります。

新吉の正直で真面目な生き様が

良い「縁」をもたらします。



いつもありがとうございます
プロフィール

cn7145

Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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