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吉村 昭 「見えない橋」

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吉村昭さん。
1927年東京生まれ。
学習院大学中退。
太宰治賞、菊池寛賞、
吉川英治文学賞、
読売文学賞、
毎日芸術賞、
大沸次郎賞、他受賞有り。
2006年79歳で死去。
…………
それぞれの生と死をテーマにした7編。

①見えない橋
出所した高齢の受刑者の最期を保護司の視点から描いています。

②「都会」
町内の公園に住み着いた孤独なホームレスの死。

③「漁火」
漁村の消防団が遺族に頼まれて投身自殺した息子を捜索する話。

④「消えた町」
小学校の同級生が転校し後に予科練に入り、戦後自殺する…

⑤「夜光虫」
女性に巧みに近づいては詐欺を働き
服役していた男が出所し
図書館主催の読書感想文に応募、
入選した事で読書会に参加するのだが…

⑥「時間」
戦争によって変死した少佐と未亡人との交流…

⑦「夜の道」
この作品は吉村さん25歳の時に執筆した私小説。
母親の壮絶な闘病とその後の死。
重なるように自身も発病し、
療養している最中に母親の死を知らされる…

……………

吉村さんの文章の一節一節には風景が有り、

読後しみじみと心に残ります。素晴らしい作家さん。

今回の作品の中では

孤独なホームレスの死を描いた「都会」が

何とも寂寥感と深い悲しみが刻まれました。

最後の母親の死を描いた「夜の道」は

素晴らしい文章に感動しました。



いつもありがとうございます
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吉村 昭 「仮釈放」

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菊谷50歳。

妻の浮気現場にて包丁で刺殺。

相手の男も負傷させ、右半身が不自由になる。

逆上した菊谷は男の自宅に放火。

男の母親が焼死。

判決は無期懲役。

模範囚となり16年後に仮釈放となり、

保護観察を受けながらも晴れて自由の身に…。

ここまでなら良くある話。

この物語では、

仮釈放になってからの

菊谷の日々が細やかに描かれています。

常に誰かに監視されているような錯覚に怯え、

世間とのズレに戸惑い、

自分の過去を隠しながらの緊張した生活。

後に保護司の勧めにより再婚。

菊谷の過去を承知で妻となった女との夫婦生活は、

ひと時菊谷に心からの癒しを与えてくれた。

しかし…

菊谷には消すことの出来ない凄惨な過去が

夢の中まで喰らいついては離れない…

ある日、妻となった女が

踏み込んではいけない

菊谷の闇の領域に入り込んで来た時、

菊谷の忍耐は限界を超える…

罪を犯す。

罪を償う。

不自由に身を置き、

いつか自由の身への夢を抱いていた…

しかし本当の自由ではなかった…

水上勉の「その橋まで」も同じテーマですが、

吉村昭さんも水上勉さんも

罪を犯した者への描き方と

受け入れない世間との関係性を描いて、

読み手に問いかけるという

重いテーマの物語でした…。



いつもありがとうございます
プロフィール

cn7145

Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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