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梶 よう子 「とむらい屋 颯太(そうた)①」 「漣のゆくえ とむらいや颯太②」

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「とむらい屋」 現代で言う所の「葬儀屋」さん。

人は必ず死ぬ。弔う事の重要さは分かっていても、世間の人は「とむらい屋」を縁起が悪いだの、人の死で稼いでいるだのと悪く受け取る。

反面、貧しさや理不尽さで亡くなった人たちにとって、弔う事の有り難さも丁寧に描かれています。

亡くなりかたにも色々あり、事件がらみの死に方をした人に対して、颯太自身が死因を解明するお話など、すこしサスペンス風味もあり、物語の進みが心地良いです。

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颯太自身の生い立ちが悲惨であり、なぜ「とむらい屋」を営もうとしたかが「火屋の華」で語られています。

印象的で泣けました・・・

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「火屋の華」の章より。

颯太の命の恩人である鳶の頭「権次」の言葉。

「命なんてものは、もらいもんだ。いつ何時失くしちまうかわからねぇ。けどよ、もらったもんだからこそ、大ぇ事にしねえとなあ・・・」

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「儒者ふたり」の章より。

「貧しいのは罪ではない。罪なのは、学ぶ意欲を失わせることだ。」

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「三つの殻」の章より。

「あの世で暮らす自分を思うより、逝った者を忘れないでいてやることだ。それが病死であろうと、惨たらしい死であろうと、記憶に留めてやることが、亡者(もうじゃ)を生かすことになるのだ・・・」





いつもありがとうございます
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梶 よう子 「父子(おやこ)ゆえ・摺師安次郎人情暦 1」 (再読)

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浮世絵の摺師(すりし)の世界。

「おまんまの安」こと安次郎と5歳の息子信太。

おまんまの安とは、腕が良い摺師の安次郎は食いっぱぐれがないことの異名。

妻は信太を出産後、産後の肥立ちが悪く亡くなります。

摺師としての仕事をしながら周りの人々との交流や切ない揉め事を安次郎の落ち着いた人柄で解決して行きます。

安次郎を取り巻く人々がとても個性的で親近感があります。

安次郎の息子新太は5歳ながら、周りに気を使い我慢して暮らしていました。

そんな新太も物語が進む程に本来の可愛らしい甘えん坊さが出て来ます。

そんな幼い新太の夢は、彫師になって父親の安次郎に作品を摺ってもらう事。

安次郎と縁を生んだ彫師の伊之助が夢が続くならと弟子として請けあってくれます。

彫師・摺師の世界を丁寧に描いていて、浮世絵の出来の良し悪しは彫師・摺師の技術によるものだと実感。

国貞や広重の力量だけでは作品にならないのだなぁとつくづく感じました。

絵師は下絵を描いて彫師に渡す。

彫師は下絵に描かれていない人の髪の毛の一本一本も彫って行く。

摺師は、髪の毛一本も美しく色をつけ、生きた表情や風景として仕上げる。

物語の流れも面白かったですが、職人の匠な描き方に大変感動しました。





いつもありがとうございます

梶 よう子 「迷子石」

梶よう子迷子石

富山藩のお家騒動に巻き込まれた「孝之助」。

血が嫌いで人見知りの見習い医師。

富山の薬売り用の「おまけ絵」を描く仕事もしながら、

長屋の子供達を自宅に招き、

好きなように絵を描かせる心優しい孝之助。

孝之助が父親の不審な死を

自らの知恵でお家に切り込みます。

決してヒーロー的な突出した人物ではないですが、

孝之助のように地味でひ弱な者でも

心の奥底に秘めた正義の心根を

知恵で解決すると言うのがぐっと来ました。

「迷子石」とは、

迷子になり行方不明になった子供や尋ね人を

張り出して置く場所の事です。

孝之助もまた

自分の人生に迷子になっている状態を現しています。

孝之助は自分を見つける事が出来るのか・・・





いつもありがとうございます

梶 よう子  「父子(おやこ)ゆえ」

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職人の世界の時代小説ホームドラマです。

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浮世絵の摺師(すりし)の安次郎と

5歳の息子信太。

・・・・

妻は信太を出産後、

産後の肥立ちが悪く亡くなります。

・・・・

摺師としての職人の世界と親子の暮らし、

ご近所さんや仕事場の人情味溢れる優しい物語です。

・・・・

5つの安次郎を通しての少し切ない物語もあります。

・・・・

息子の信太がとても可愛らしくて成長が楽しみです。

・・・・

安次郎と幼馴染みの友恵の淡い関係も素敵です。

・・・・

多分シリーズ化されるかと思いますが、

登場人物を丁寧に描いていて読後感も清々しく

これからも楽しみな作品でした(^^)




いつもありがとうございます

梶 よう子 「ふくろう」

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江戸後期に実際あった

「千代田の刃傷」を素材にして描いています。

・・・・・

「いじめ」ですね。

江戸時代の武家の出世にからむ

同僚や上役たちからの理不尽な侮蔑を受ける

書院番「松平外記」が、

江戸城内で刃傷沙汰の復讐を遂げます。

・・・・・

3人が即死、

2人が重傷、

松平外記本人は腹を切る自刃。

・・・・・

松平外記には二人の息子がいました。

嫡男と次男。

次男の鍋次郎がこの物語の主人公です。

・・・・・

鍋次郎は赤ん坊の時に松平家から伴家へ養子に出された為、

実父の刃傷沙汰を知らずに育ちます。

・・・・・

ある日ひょんなことから

自分の出自に疑問を持ち、

調べ始める事から本当の自分の生い立ちや

実父の事件を知ります。

・・・・・

「いじめ」と言うのは幼稚な言葉に思えますが、

よってたかってくだらない嫌がらせや

パワハラは「幼稚」である事この上なしです。

・・・・・

弁当を開けたら馬糞が入っていたとか、

着物に墨を塗りつけ木に縛りつけるとか、

無視・伝聞の間違い・厠へわざと履物を落とす・・・・

とまぁ、あまりに稚拙で情けない・・・

毎日毎日手を変え品を変えての嫌がらせ・・・

・・・・・

それでも松平外記だけが

「いじめ」を受けていたわけではありませんでした。

新任の書院番に対して「いじめ」をしていました。

・・・・・

いつ辞めるかと

お金を賭けて楽しんでいたのです・・・

・・・・・

気鬱になり辞めた前任者は、

精神を痛め寝たきりとなりました。

・・・・・

松平外記が刃傷沙汰にまで至ったわけは、

愛するかけがえのない家族にまで

害が及ぶ事になってしまったから・・・

・・・・・

実父の起こした刃傷沙汰を知った鍋次郎が

どのように思い行動したか・・・

・・・・・

単なる復讐への感情だけで起こした

刃傷事件ではありませんでした。

守るべき者と守るべき事とはなんだったのか・・・

ぐっと悔しさを腹に感じる読後でした・・・

・・・・・

「ふくろう」とは、

実父が鍋次郎の為に思いを込めて作った根付の事です。

意図的にある個所に傷を付けていました・・・




いつもありがとうございます
プロフィール

cn7145

Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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