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会川 いち 「座卓と草鞋と桜の枝と」

会川 いち 

「座卓と草鞋と桜の枝と」

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武家もの2つの物語です。

・・・・・・・・・・・・・・・

『座卓と草鞋と桜の枝と』

堅実で質素な夫婦の物語。

身近な物を大切にし、

だからと言って無理な我慢をする事もなく、

置かれた環境を大切にする二人。

姿の良い夫と横幅のある地味な妻。

当たり前の暮らしがいつまでも続くと思っていた・・・

当たり前に妻が傍にいて、

当たり前に夫が傍にいて・・・

題名の「座卓」は夫が仕事の内容をしたためていた机。

「草鞋」は妻が夫の為に丹精込めて沢山作っていました。

「桜の枝」は妻が育てようと大切にしていた桜。

夫婦の日常がこの三つのものから構成され

それぞれにどんな思いが込められていたのか・・・

淡々とした表現の中にじわ~っと沁みる優しさと

悲しさがありました・・・

物語の中の老人の言葉。

「涙の量だけが悲しみを表す術ではないと思うのです」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『笛の音』

藩主代理と側近の物語。

特に目立った才覚のない凡庸として

単純でお人よしで、

謀(はかりごと)には向かない藩主代理。

側近の信次郎は、舌鋒鋭く有能、

容赦も遠慮もなく学問に秀でていました。

藩主の座を巡っての争いの中

二人はお互いを認め合い、

自分に無い才能や特性を活かし

藩主が交代するまでの20年以上の間を

無事に過ごす事が出来ました。

笛は藩主代理が奏でるのですが、

耳障りな程のへたくそさ。

この笛が藩主代理と側近信次郎の絆を深めます。

生涯を通しての物語となっていますが、

心温かになる読後でした。

・・・・・・・・・・・・・



いつもありがとうございます
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朝井 まかて 「福袋」

朝井 まかて 

   「福袋」

2019080901.png

8つの短編集。

1.ぞっこん
2.千両役者
3.晴れ湯
4.漠連あやめ
5.福袋
6.暮れ花火
7.後の祭
8.ひってん

・・・・・・・・・・・・・・・

「ぞっこん」と「ひってん」が印象深くて良かったです。

・・・・・・・・・・・・・・・

「ぞっこん」は読み終えたらまた最初から読み返すと意味が分かります。

と言うか、私が読み返して「あ~そういう事か~」となって

更に面白さが分かりました。

「筆」のお話です。

単なる筆ではなくて有名な書家の使い古した筆を、

懇願し続けて貰い受けた書き物師栄次郎の成功話なんですが、

ぞっこん惚れ込んだ使い古しの筆のお蔭で栄次郎は、

貧乏ながらも「遣り甲斐のある仕事」と言う福が訪れます。

また、栄次郎と幼馴染で今は落語家を挫折した喜楽との触れ合いが

ほんわかしました。

その日暮らしの喜楽がお金をせびりに栄次郎宅へ来たり、

栄次郎のもらった仕事賃をネコババして逃げてしまったりと

迷惑ばかりかける喜楽ですが、栄次郎は怒りません。

それは幼い頃一人寂しく長屋で過ごした栄次郎を

いつも笑わせてくれた喜楽への感謝と友情があるからでした。

のちに出世する栄次郎ですが、喜楽への変わらない友情が

読後さわやかになりました。

・・・・・・・・・・・・・・・

「ひってん」は、「貧乏」と言う意味。

その日暮らしの二人の若者の人生を分ける

「商売」への向き合い方を描いています。

卯吉と兄貴分の寅次。

ある日、売れない櫛100本を只で貰った事で、

卯吉はなぜ売れなかったのかを悩み、

商売に対しての工夫をするようになります。

寅次は、どうせ売れないだろうと品物をぞんざいに扱い、

売れた分だけでその日暮らしを続けます。

商売への向き合い方の違いにより、

卯吉は長屋から出て行き、

以後二度と寅次と会う事はありませんでした…

卯吉の工夫は、

のちに庶民に親しまれるお店を構えるまでになります。

そんなある日、

卯吉は寅次と昔二人で住んだ「ひってん長屋」を訪れますが、

すでに取り壊され住み替えられていました。

あれから寅次は相変わらずその日暮らしをしているのか…

卯吉の現在の成功は、

昔の「ひってん長屋」での貧乏な暮らしのお陰でした。

その日暮らしで貧乏だった寅次との暮らしでしたが、

若かったあの頃の楽しかった思い出を胸に、

卯吉は新たな「ある計画」をするのでした…



ホロっと優しくなる物語でした…






いつもありがとうございます

井上 ひさし  「たそがれやくざブルース」

キャプチャ

表紙の絵と題名で面白そうと思い読みました。

着物姿で電柱に登る老婆は、

有線放送の女社長でした。

敵対するやくざに対抗して電線をすり替えたり、

入会金を上げたり下げたりと、

奇想天外の行動を起こして闘います(笑)

組員の大沢健吾と舎弟5人が作った歌が

なかなか上手いと女社長が売りだすのですが、

その売り出しのグループ名が

「大沢健とファイブシャテーズ」(笑)

「ヤヤンヤ・やくざ…♫」 (笑)

実際の歌を聴いてみたいと思いました(^^)

昭和の歌や歌手がたくさん出てきて

時代を知っている人には、笑える物語です(^^)



いつもありがとうございます

今井 彰 「光の人」

無題

東京には戦争孤児が12万3千人いたそうです。

自ら飯を調達して食べることができず、

寝泊まりする場所すらない子供たち。

巷に10歳前後の痩せこけた孤児が溢れたそうです。

この物語は、実在した若い先生がたった一人で

「命の家」と名付けた家に戦争孤児達を受け入れ救った物語です。

物語は戦後の悲惨な状況が描かれています。

子供達の過酷さと惨めさ、

差別により未来が見えない暗さ…

あの混乱期では自分の身を守ることさえ大人でも大変でしたが、

子供達は尚更過酷でした。

毎日のように多くの孤児が亡くなりました…

ゴミのように記録にも残されない死体が埋められました…

門馬先生はまだ17歳でしたが、教会の先生をしており、

孤児達を受け入れ中学まで面倒を見ました。

教会を卒業し、中学を卒業しても

世間は孤児であると言うだけで差別をし、

まともに受け入れてくれないため、

悪の道に落ちる孤児達が多かったそうです。

国も支援しない世間の差別に苦しむ孤児達を

門馬先生が「命の家」に無償で受け入れます。

「命の家」設立メンバー4人の子供と先生は

人一倍働き技術を磨き、

後に名声を上げるほどになります。

門馬先生の孤児達への救済は、

自分の家族に関係していました。

門馬先生も暖かな家族がいました。

戦争の為に両親や兄弟を失い、

生き別れになり、

たった一人の弟を生涯守り抜くことが出来ませんでした。

門馬先生の弟は、

幼い時のあまりに悲惨な戦争被害場面を経験したことで、

精神的にやられてしまいますが、

弟はある日を境に門馬先生の前から消えてしまいます。

30年以上経ってようやく弟と巡り会えましたが

既に弟は意識を回復することなく亡くなってしまいます。

その弟の遺品の中には、

家族一人一人の品物がありました。

弟はあの悲惨な戦争で亡くした家族の遺品を

生涯大切に持っていたのでした…

病に侵されても兄の門馬先生に頼ろうとせず

家族を持つこともせず、

たった一人で人生を歩んでいた弟の姿に、

戦争の深すぎる傷に泣けて仕方ありませんでした…

戦後の日本の高度成長の縁下には

門馬先生のような子供達を救い、

育て、未来へ繋げてくれた存在があった事を

感謝すると共に

心に留めていたいと思いました。




いつもありがとうございます

内田百閒(うちだひゃっけん)  「クルやお前か」

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内田百閒さんは無類の猫好き。

この作品は、
飼い猫「クル」が亡くなるまでの
看取りの物語です。

もう60年も前のお話ですから
現在の飼い方とは異なり、
寿命も短く、
クルは5年と数ヶ月の猫生でした。

短いとは言え、
内田百閒さん家族の
クルへの愛情のかけ方は大変深く濃密。

百閒さんと奥さんと女中さんの三人で
クルの最後を看取ります。
体中を撫で、
顔におでこをくっつけ、
泣きながら看取ります。

クルが弱くなってから
日記のように細かく書いています。
毎日往診に来てくれる獣医は
「良くなる」とは言いません。
覚悟の上ですが、
百閒さん家族は、
なんとかよくなるよう頼みます…。
薬に注射に惜しみない
治療に願いを込めます…

骨から毛が生えているかのような
やせ細ったクルは、
それでもどこにそんな力があるのか、
今まで暮らして来た
自分のお気に入りの場所を
見て回り歩き回ります。

亡くなった後の悲しみを癒してくれたのは
クルの夢でした。
夢に出て来るクルは懐かしい思い出の姿。

奥さんの腕を枕に寝る事が日課だったクル。
朝起きて、腕に頭を乗せたクルがいません…
改めて亡くなったことを実感し
声を出して泣く奥さん…

本当に愛されたクルの猫生を
情感たっぷりに描いて
もらい泣きします…



いつもありがとうございます

乙一  「暗いところで待ち合わせ」

無題

10何年ぶりかで再読。

面白いです。

オススメです。

「警察に追われている男が

目の見えない女性の家に

黙って勝手に隠れ潜んでしまう」

と、乙一さんはあとがきで言っています。

普段から陰湿な人間関係の先輩を

駅のホームから突き落としてしまう

と言う容疑で大石アキヒロが

逃げてしまった場所は、

駅のホームの目の前の家。

全盲で一人暮らしのミチルの家に隠れて、

ある事実を探すアキヒロ。

アキヒロは隠れながらも

家の目の前のホームを監視します。

何が目的なのか?

本当にアキヒロが先輩を突き落としたのか?


ミステリーですが、

優しいラブストーリーでもあります。

好きだ嫌いだのラブストーリーと言うよりも

お互いの再生物語と思いました。


全盲のミチルがアキヒロの為に

食事を作る場面や

棚から落ちた土鍋を

間一髪アキヒロが受け止める場面や

怖くて一人で外を歩けないミチルが

思い切って歩き出す場面で

アキヒロが言葉を発せず

付き添う場面など…


人の心の中の思いやりを

ミステリー仕立てで物語っています。

全盲のミチルが事件の解明をすると言う

設定に面白さが増します。


文庫の厚さも丁度良く、

くどさやひねりもなくて

とても読みやすいです。


更に最後の乙一さんによる「あとがき」が

面白いです。

クスっと笑います。

エッセイがあったら

ぜひ読みたい作家さんです。



いつもありがとうございます

井上 ひさし 「握手」

本
井上ひさしさんは、

仙台のキリスト教児童養護施設で

中学から高校まで過ごしました。

その時にお世話になった

カナダ人のルロイ修道士との

再会と別れの時を描いています。

………………………

「日本人は先生に対して、

ずいぶんひどい事をしましたね。

木槌で指を叩き潰すに至っては、

もうなんて云っていいか。

申し訳ありません」




「総理大臣のようなことを云ってはいけませんよ。

だいたい日本人を代表して

ものを云ったりするのは傲慢です。

それに日本人とかカナダ人とか

アメリカ人といったようなものがあると

信じてはなりません。

一人一人の人間がいる、

それだけのことですから」

………………………………

「仕事がうまく行かない時は、

この言葉を思い出してください。

『困難は分割せよ』。

焦ってはなりません。

問題を細かく割って

一つ一つ地道に片付けて行くのです。

ルロイのこの言葉を忘れないでください」



いつもありがとうございます

芥川 龍之介  「蜜柑」

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たまたま同じ列車に乗り合わせた「私」と

貧しい身なりの少女のほんの束の間の物語です。

どんよりと曇った冬の日暮れ。

うすぐらいプラットホーム。

悲しげに吠える犬。

車内は一人。

疲労と倦怠の自分。

全てが暗くもやる孤独で静かな風景の中、

慌ただしく乗車して来る

薄汚れてみすぼらしく下品な顔立ちの少女。

列車が走り出し、

暗いトンネルを過ぎる頃に少女が窓を開けます。

窓から見えるのは少女の弟達。

それからの少女の行動は

「私」にも読み手にも色鮮やかに焼き付けられます。

風景画を眺めているような心に残る物語でした。



いつもありがとうございます

有島 武郎 「火事とポチ」

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激しいポチの吠え声で目を覚ます「僕」。

自宅の火事をいち早く知らせてくれたポチ。

命からがら家族が逃げて助かりますが、

ポチが行方不明になります。

必死に探す僕。

やっと見つかったポチは全身火傷で重症。

僕の呼びかけに少しだけ目を開き尻尾を振るポチ。

短いお話ですが、

僕とポチの健気な表現がを誘います。


いつもありがとうございます

小川 糸 「サーカスの夜に」

無題

両親の離婚で一人ぼっちになった少年が、

13歳の誕生日に自ら憧れのサーカス団に入ります。

小さい時の大病治療の副作用により

体が大きくなれず見た目は10歳の子供のよう。

そんな自分がこれから生きて行ける方法を模索していた時に

出会ったレインボーサーカス団。

小さな体で出来る事は何でもしますと団長にお願いします。

少年を通して見る大人の世界と

サーカスへの情熱がファンタジックに描かれています。

少年はトイレが汚いとお客が来ないと

いつもピカピカに掃除をします。

団員の為の食事作りをするコック長の手伝いも一生懸命します。

サーカス団に入って色んな事を学ぶ少年。

楽しい事、辛い事、悲しい事。

日々を一生懸命過ごす少年は

1年後成長した姿でサーカス団員として綱渡りを披露する事に…。

団長が言います。

「綱渡りは高さを競い合っているんじゃない!
サーカスは、詩だよ。人間が体で表現する詩そのものだよ。
美しい詩の一節に触れたような気持ちをプレゼントするのが、
俺達に与えられた仕事なんだ。」




いつもありがとうございます

奥田 英朗 「向田理髪店」

無題
北海道。寂れてしまった炭鉱町。
通りにひと気はないけれど、
中ではみんな、侃々諤々(かんかんがくがく)。
心配性の理髪店主人が暮らす北の町は、案外にぎやか。
身に沁みて、心がほぐれる物語。

・・・・・・・・・・・・・・
過疎の町「苫沢町」で起こる、

過疎ならではの問題を皮肉と笑い、

そしてホロっとさせられる日常を描いています。

年寄りばかりになってしまった町に若者が少なくなるも、

逆に町に戻って自分達で盛り上げようとする者も現れます。

向田康彦の息子和昌もその一人。

戻って来たところで先のない寂れた町に、

父親として息子へ期待するなと言いたいのですが、

青年団の若者たちは

「おれたちだって現実が厳しいことぐらいわかってるべや。

でも何かやりたいのさ。

おじさんたちに迷惑はかけねえから、

好きにやらせてくれてもいいんでないかい」と言います。

父親世代は、何度も町を立ち直らせようと奮起した経験があり、

結局寂れの進行を止める事が出来なかった事を

息子達世代に言って聞かせようとしていたのですが、

自分達が思っている以上に息子達は大人でしっかりしていました。

何より、物語の最後に

「昔は何かあるとつまはじきだったそうだけど、

これからの小さな町はちがうべ。

みんなが仲良く暮らせる偏見のない町作りだべ」と言います。

どのように活性させて行くのか、

また、ちょっとしたいざこざへのお互いの思いやりと団結力に、

続編を期待したいオススメの面白い一冊でした(^^)



いつもありがとうございます

天久聖一編 「挫折を経て猫は丸くなった」

ダウンロード
 
昨日の「アメトーク」で「読書芸人」特集をやっていまして、

光浦靖子さんがオススメしていました。

この本は、ほんの一行二行のみの文章で物語を想像させる

又は創造させると言う視点の面白い本です。

第一弾で「書き出し小説」と言う題名でしたが、

第二弾はこちらの猫の書き出し文章。

可愛い猫の写真にやられたせいもあり

私的にはお高い本でしたが思い切って購入。

買って損なし。

サイトで募集した素人の方々が作った書き出し文なんですが、

笑いあり風刺ありホロリありファンタジックありと

多方面の表現が秀逸揃いです。

大喜利や俳句やボケてに通じる作品集です。

何遍かご紹介します(^^)

「タカシの松葉杖はやたらとしなった」

「音楽性の違いで解散した三人は、同じ工場に就職した」

「父のジョークに風鈴だけが小さく笑った」

「おじいちゃんと子犬の小太郎はいつも別々に帰ってくる」

「追ってきた店員と二人、この山で遭難して今日で一周間になる」。





いつもありがとうございます

大原 久澄 「冨久屋けいあん花暦」

無題

二年前に理由も分からず突然失踪した夫を待ち続けながら

「口入屋」を営んでいる「お勢」。

今で言うところのハローワークの個人経営版ですね。

5話収録の短編集。

それぞれの章は花をモチーフにして語られる物語となっています。

「半夏生(はんげしょう)」「夏椿」「鬼灯(ほおずき)」「夕顔」「蓮華」。

その花の持つ意味合いと話しが繋がっている粋な物語となっています。

それぞれの女達が事情を抱え仕事を求め駆け込んでくる「冨久屋」。

女性ならではの悲しさ・辛さ・せつなさを

女将のお勢は自分の事のように親身に面倒を見ます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夫から謂れなき暴力を受け家臣と共に逃げる妻。「半夏生」

家族を捨て男と逃げた母親に取り残され、

幼い弟と妹、そして病気の父親の為に健気に働く娘が見た

ひと時の儚い夢と再会した母親への思い・・・。「夏椿」

折檻と言う名の虐待を母親から受け続け一人逃げ出した太一を、

夫の親友である同心の高倉から依頼され預かり、

丁稚として育てるお勢の元に太一の母親が現れる・・・

最後に犯す母親の罪に本来の母性が描かれています。「鬼灯(ほおずき)」

幼い頃に両親を亡くした姉妹。

妹の為に女郎屋へ身を売る姉のせつない想い。「夕顔」

貧しい田舎暮らしをしていた母親と幼い息子が見た理不尽な江戸の暮らしぶり。

奉公した先で母親を守る為に放火する幼い息子の母親への願いとは・・・。「蓮華」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一人一人の女達への生き様に

少しでも光明が灯ればとのお勢の思いが優しく伝わる物語です。



いつもありがとうございます

尾崎放哉選句集

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孤独な俳人「尾崎放哉(おざき ほうさい)」

41歳の若さで肺結核にて亡くなる。

最後に看取った人は、隣りに住む老婆一人だったと言う。

東大を卒業した尾崎。

人間関係と酒で、世間から離脱。

終の棲家は、小豆島。

自分の命が短い事を悟った尾崎は、

恩師に「海の見える所で死にたい」と伝える。

たった一人の深い孤独の中から生まれた句は、

自由旋律句。種田山頭火が「動の俳人」なら

尾崎放哉は「静の俳人」と言われた。

現在も尾崎のお墓には、季節の草花とお酒が

欠かさず手向けられているそうです。

「咳をしても一人」
「こんなよい月を一人で寝て見る」
「障子しめきって淋しさをみたす」

などなど、寂寥感溢れる句ばかりだが、

清々しさと包容力のある俳人と思いました。

因みにKindle版で無料で読めます(^^)




いつもありがとうございます

磯田 道史「無私の日本人」

ダウンロード
貧しい宿場町の行く末を心底から憂う商人・穀田屋十三郎が同志と出会い、心願成就のためには自らの破産も一家離散も辞さない決意を固めた時、奇跡への道は開かれた―無名の、ふつうの江戸人に宿っていた深い哲学と、中根東里、大田垣蓮月ら三人の生きざまを通して「日本人の幸福」を発見した感動の傑作評伝。

・・・・・・・・・・・・・・・・

「武士の家計簿」の作家磯田道史さんの元に、

ある人物が手紙を寄越します。

「宮城県黒川郡吉岡に実際にあった9人の篤志家の話を

磯田先生に本にしてもらいたい。

ぜひ後世につたえて欲しい。」

と心を込めてしたためられた手紙に

感銘を受けた磯田さんが史料を集め、

この作品が出来上がったのだそうです。

5月に上映される阿部サダヲさん主演の

「殿、利息でござる!」の原作です。

こんなにも素晴らしいご先祖様がいらした事を誇りに思います。

・・・・・・・・・・・・・・・・

昔、吉岡は貧しい町で、藩の助けもなく、民家も潰れ始め、

住人達が絶望の中暮らしていました。

「このままでは吉岡宿(よしおかじゅく)は亡ぶ。

なんとかできぬか・・・」

そう危惧した9人の篤志家が智恵を絞り奮いたちます。

金を藩に貸し付けて利子を全住民に配る仕組みを考えました。

9人は千両をこしらえ、藩と交渉。

藩との交渉が叶った後、藩からの褒美の金をもらっても

自分達の懐へ入れずに住民に分配します。

吉岡は、江戸時代からずっと人口も減らず、現在に至ります。

地域の活性は、震災を経験した地元民でありますので、

いかに大変な事業であるか痛感しています。

時へ経ても日本人の底力をご先祖様より受け継ぎ、語り継ぎ、

忘れてはいけないのだと思いました。

・・・・・・・・・・・・・・・・

発足人の穀田十三郎さんの遺言には、

「わしのしたことを人前で語ってはならぬ。

わが家が善行を施したなどと、ゆめゆめ思うな。

何事も驕らず、高ぶらず、地道に暮らせ」

と記していたそうです。

・・・・・・・・・・・・・・・

因みに、江戸後期は庶民が輝いた時代なんだって。

「親切・やさしさということでは、この地球上の

あらゆる文明が経験したことがないほどの美しさをみせた。

倫理道徳において、一般人がこれほどまでに、

端然としていた時代もめずらしい。」

と作者の磯田さんが書いていました。

吉岡の発足人9人だけではなく、お金のない

貧しい町の人々も奔走したからこその大偉業だそうです。

ますます吉岡が好きになりますネ!(^^)



いつもありがとうございます

石塚 夢見 「またね!」

またね!またね!
(2012/10/16)
石塚 夢見

商品詳細を見る


猫好きが泣ける21の物語。

猫と暮らす。
猫と遊ぶ。
猫を撫でて、猫に話しかける。
なんでもない時間が、
素晴らしい時間なんです!

6ページで泣ける猫にまつわるショート・ストーリー集!!

・・・・・・・・・・・・・・・・

飼いネコとの別れがテーマとなるマンガです。

ネコちゃん自身が亡くなる物語や、

飼い主が亡くなる物語、

里親が見つかって離れていく物語などなど・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・

前に飼っていたネコちゃんが忘れられなくて、

似ているネコちゃんをボランティアさんから頂いたものの、

どうしても前のネコちゃんと比べてしまい、

今のネコちゃんを可愛いと思えず、

ボランティアさんに帰そうとする飼い主の前で

一生懸命「上手にできるよ!」と「ふみふみ」する猫ちゃん・・・。

しかし飼い主は「だから!やめなさい!」とうるさがり

結局ボランティアさんに返されることに・・・

ボランティアさんは、

里親が見つかるまでの間につけた仮の名「みーちゃん」を返してもらった時、

みーちゃんは、また捨てられないようボランティアさんの前で

一生懸命「ふみふみ」します。

ボランティアさんは、「みーちゃん、ごめんね」と

泣きながら謝り、

里親を探す事はせずに自分が親になる事を決心します・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・


別れや死をテーマにしているので、お涙頂戴的になっていますが、

長年家族として大切に育てたペットとの覚悟の死と別れを経験した人には、

意味深いものになる物語と思いました。



いつもありがとうございます。



井上 登貴 「母子飴(ははこあめ)」

泣きの信吉かわら版 母子飴 (学研M文庫)泣きの信吉かわら版 母子飴 (学研M文庫)
(2013/02/12)
井上 登貴

商品詳細を見る


父亡き後、読売屋「心筆堂」を継いだ信吉だが、
「半ちく(半人前)」と笑われて評判は今ひとつ。
人懐っこい上、生真面目なので、
読売のネタ探しのはずが、
ついついのめり込んでしまい
人助けに駆けずり回る始末。
兄より文才があると戯作者気取りの妹おぶんが書いた
菓子処の引札(チラシのこと)が、
思わぬ事件を巻き起こしてしまう。
妹想いの信吉は必死に奔走するが・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・

井上 登貴(いのうえ とき)

兵庫県生まれ。
甲南大学文学部卒。
会社員を経て、作家活動開始。
本作は小説デビュー作。

・・・・・・・・・・・・・・・

三話収録

1.母子飴
2.美人番付
3.子想い風鈴

・・・・・・・・・・・・・・・

こういう江戸の庶民の物語である市井物は良いですねぇ。

信吉は、今で言う新聞記者。

事件が起きると、所轄の刑事である同心や岡っ引きと一緒に

動きまわり、時に情報を与える事もあります。

三話とも、江戸の職人が出て来て、事件へつながります。

1.母子飴では、飴細工職人。
2.美人番付では、下駄職人。
3.子想い風鈴では、ガラス職人。

職人の仕事ぶりも描かれていて興味深いです。

兄信吉は、イケメンだそうで、もこみち君系。

妹おぶんは、笑顔が可愛い宮崎あおいちゃん系。

ドラマになるといいなぁ。

親子・兄弟・男と女の想いと絆の深さ・・・

ほろっとさせられほっこりになる物語三つでした。



大岡 昇平 「野火」


『野火』大岡昇平:楽オク中古品

『野火』大岡昇平:楽オク中古品
価格:50円(税込、送料別)





昭和二十六年「展望」に連載。

読売文学賞受賞。

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致命的な宣告を受けてるのは私であるのに、

何故彼がこれほど激昂しなければならないかは不明であるが、

たぶん声を高めるとともに、

感情をつのらせる軍人の習性によるものであろう。



情況が悪化して以来、

彼らが軍人のマスクの下に隠さねばならなかた不安は、

我々兵士に向かって爆発するのが常であった。


この時わが分隊長がもっぱら食糧を語ったのは、

むろんこれが彼の最大の不安だったからであろう・・・


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大岡 昇平


 1909年、東京都生まれ。

京都大卒。在学中より文学を志す。

四十四年召集を受け、

赴任地のフィリピン・ミンドロ島で敗戦を迎え、

米軍捕虜となる。

生還後、

「俘虜記」「野火」「ミンドロ島ふたたび」等、

戦争体験に基づく生々しい作品を多数発表。

恋愛小説・翻訳・評伝などの著作もある。

六十二年芸術員会員に選ばれるが辞退。

文学者としての良心に従い、

率直な文筆活動を続けて、

さまざまなジャンルに及び高い世評を受けた。

八十八年、永眠。



蝶が舞うリースの時計
プロフィール

cn7145

Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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