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古内 一絵 「きまぐれ夜食カフェ」

無題

4つの短編集。

それぞれの人が持つ悩み・迷いを
「マカン・マラン」のお店のオーナー「シャールさん」が
食事で前向きにしてくれるお話しです。

70歳過ぎのおばあちゃんの比佐子さんのお話が
身近に感じ、ほんわかしました。

年齢的に近いからか(笑)

比佐子さんは終活の準備を始めていました。

終活ノートに書き込んで行くうちに
小さい頃からを回想して行くのですが、
時代が時代だった事で、
幼い頃から結婚するまで
自分を出せなかった比佐子さん。

中でも悔しい思いをした
お見合い結婚生活は他人の中の自分でした。

昔はそんな結婚生活を我慢しましたもんねぇ・・・

結婚して三年過ぎても子供が出来ない事で、
病院へ行くよう勧められるのですが、
夫と二人で受診するのかと思ったら比佐子さんだけで、
夫は「バカにするな!」と激怒するんですねぇ。

しかも義父母たちからは、
比佐子さんが嫁に来た事を
「外れくじを引いた」と言われてしまいます。

我慢が出来ず嫁ぎ先から逃げ出した
比佐子さんの味方になってくれたのはただ一人「祖父」でした。

「どこへもいく必要はない。
比佐子はここにいればいい」

比佐子さんは終活ノートを作る事で
自分の人生の整理をしようとしますが、
マカン・マランのオーナー「シャール」が言います。

「いくら準備をしたところで、
なにもかもが計画通りにいくわけじゃないわ。
それが人生ってもんじゃないかしら」

そして一つ一つの素材を活かしたお料理を
比佐子さんに食べさせます。

今を大切に・・・
一日一日に喜びと感謝を持って過ごす事の大切さを
お料理を通して励ますんですねぇ。

この物語にキジトラ猫ちゃんが登場するのですが、
比佐子さんは猫の事をこんな風に表現しています。

「この世のすべての可愛らしさを集めて毛糸を作り、
編み上がった個体にほんの一滴 
“陰湿” を垂らすと猫になるのではないかと思う」

おぉ~!言い得て妙であります!(^^)

またシャールさんの人間の再生については・・・

「人間を素粒子レベルで考えると、
一年間で、人ってまったく新しい素粒子に入れ替わるんですって。
そう思うと誕生日っていくつになってもすごいわねぇ」

シリーズになっているこちらの物語は、
いろいろな人の物語が描かれているので、
読み手の年代や状況で琴線に触れる事と思います。

表紙の絵も素敵ですねぇ。



いつもありがとうございます
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細谷 正充編 「情に泣く」アンソロジー

無題

時代小説アンソロジー市井もの7編。

・・・・・・・・・・

●宇江佐真里「隣の聖人」

番頭に掛け取り金を持ち逃げされた

呉服屋一家が夜逃げ同然で

仕舞屋に引っ越して来ます。

その裏に住む儒者一家との交流により、

お互い助け合います。

心の豊かさを気持ちよく描いています。

・・・・・・・・・・・・

●北原亞以子「吹きだまり」

故郷の貧しい暮らしを嫌って

江戸に出て来た作蔵。

日庸取りの左官の仕事をしながら

コツコツ貯めたお金で、

一年に一度料亭での宿泊を楽しみに生きて来た。

しかしその料亭で働く女中の

貧しい家庭環境を盗み聞きした事で、

今までの楽しみに終止符を打ち、

女中にお金を渡します。

作蔵はまだ25歳。

腕の良い左官の仕事を日雇いではなく

天職としてやる覚悟を描いています。

何故吹きだまりと言うタイトルなのか…

北原さんの作蔵の心情が上手いです。

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●杉本苑子「橋のたもと」

失踪した若君を探す流浪の旅の末、

物乞いにまで堕ちた老藩士の物語。

身体も壊し物乞いでなんとか日々を過ごしていた勢州。

何日かに一度必ず一文銭を恵んでくれる

優しい娘との縁をきっかけに、

老藩士勢州の若君を見つけ出すという

本懐を遂げる事に繋がります…

杉本さん流石です。

これは泣けますよ…

・・・・・・・・・・・・

●半村良「じべたの甚六」

どぶどろを読んでいたので、

最後を覚悟して読んだのですが、

こちらはホッとする読後感でした。

馬鹿にされながら

長屋住人の使いなどで小銭稼ぎをしている甚六は、

実は凄腕の…………でした(^^)

半村良さんの

ひねりの持っていきかたが秀逸であります。

・・・・・・・・・・

●平岩弓枝「邪魔っけ」

母親を早くに亡くして弟と妹二人、

体の弱い父親の面倒を見ながら

麦湯店で働く良くできた長女。

一人で苦労を背負って

世間様からも気働きの出来る娘と評判。

弟、妹達は全く手伝うことはせず

姉ばかりが苦労して

いつしか婚期も過ぎてしまう…

と、ここまで読むと

弟妹達のだらしなさや苛立ちを感じるのですが、

さすが平岩さん。

実は姉が邪魔っけだったと言うオチ。

何故邪魔っけなのか……。

なるほど子供を育てることへの

教えにもなっている物語でありました。

「木が大きく枝葉をひろげて

下の者をかばおうとすると、

下の者はお日さまに当たれなくて

伸びようとしても伸びられない。

程よく育ったら一人一人、

根分けして一本立ちになって行く。

お前は少々根分けするのが遅かったんだ。」

・・・・・・・・・・・・

●山本一力「御舟橋の紅花」

江戸の片隅の老いらくの恋。

61歳になる泰蔵は、

自分は年寄りで、

もう恋などできようはずがないと思っている。

真面目で不器用な泰蔵のために

長年付き合って来た長屋の差配。

泰蔵にいつも冷たい態度ながら

泰蔵への尊敬の念を持っていた。

その差配が、

泰蔵にほのかに想っている女性がいることを知り、

密かに老いらくの恋のために奔走します。

今まで真面目に生きて来た泰蔵への

大きなご褒美を友人が贈ると言う

江戸っ子らしい人情物語です。

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●山本周五郎「七日七夜」

旗本の四男坊と言えば単なる穀潰しであり、

下男より下の扱い。

吝嗇家の兄嫁からの

日々の屈辱に耐え兼ねたある日、

憎き兄嫁から金を強奪し出奔した昌平。

積年の鬱憤を晴らすべく遊郭で大騒ぎの遊び三昧。

しかし搾り取られ金が尽きると

世間からも手のひら返しの冷たさを味わいます。

なけなしの銭で入った

居酒屋での縁が昌平の人生を変えます。

昌平は居酒屋でも酔いつぶれ

騒ぎを起こし喧嘩しますが、

殴られ蹴られながらの最中に発した

昌平のある一言で、

喧嘩がおさまります……

悲しいひと言です……

昌平が幼い時から受けた悲しい状況が分かります。

ですが、昌平は世間に出た事で

本当の自分と暮らしを得ます。

劣悪な環境からの昌平の生き返る様が、

心に残る物語でした。



いつもありがとうございます

原田マハ 「星がひとつほしいとの祈り」

原田マハ
7つの短編集です。

表題の作品が不思議な世界へ導かれました。


戦前は令嬢。

戦時中で起こった悲恋。

盲目の令嬢であった彼女に献身的に仕えた女中さんとの絆。

すべてを戦争が変えてしまった……。

盲目のマッサージ師のおばあさんの切なくて悲しい物語でした。

一人語りのおばあさんの言葉使いがとても素敵です。

読後の余韻をしみじみ感じる事が出来る物語でした。



いつもありがとうございます

羽田 圭介 「スクラップ・アンド・ビルド」文芸春秋


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「早う死にたか」
毎日のようにぼやく祖父の願いをかなえてあげようと、
ともに暮らす孫の健斗は、ある計画を思いつく。
日々の筋トレ、転職活動。
肉体も生活も再構築中の青年の心は、
衰えゆく生の隣で次第に変化して…。
閉塞感の中に可笑しみ漂う、
新しい家族小説の誕生!
第153回芥川賞受賞作。


・・・・・・・・・・・・・・・

時間がゆるく流れて行く中での

孫と祖父の関係が描かれています。

死にたい祖父に協力しようと

孫が介護と言う名の「手を貸す事」から物語が始まります。

要は、過剰な手助けが自立力を減退させ

筋肉が衰え、徐々に体も動かなくなり死へ繋がると・・・。

その為にいろいろ介助するという発想が皮肉な面白さです。

何気ない毎日の中での屈折した

ユーモラスさが描かれています。

文芸春秋だと「火花」も読めるのでお徳でした。



いつもありがとうございます

古川 薫 「君死に給うことなかれ  神風特攻龍虎隊」



http://ecx.images-amazon.com/images/I/51tKkpCDBuL._SX338_BO1,204,203,200_.jpg

苦肉の策か、狂気の沙汰か。太平洋戦争終戦間際、20歳に満たない若年兵が乗る布張りの練習用飛行機に250キロ爆弾を抱かせ、敵艦に体当たりさせる特攻作戦が行われた。その特攻隊員と思しきM・Kから手紙を受け取った深田隆平は、戦後、その消息を尋ねる旅に出る。自らも空襲で許嫁を亡くすという辛い過去をもつ隆平が、やがて辿り着いたM・Kの素性。その素顔とは…。著者自らの実体験をもとに綴る奇跡の邂逅譚。

・・・・・・・・・・・・・・・・

今朝のNHKで紹介されていました。

直木賞作家:古川薫さんの実体験の小説。

古川さんが特攻隊員M・Kさんのお墓参りをしている時に

墓石をなで、涙を流している姿が印象的でした。

彼の為にも亡くなった隊員皆さんの為にも

二度とこのような悲惨な事が起こらないようにとの祈りを込め

続編も執筆されているとの事でした。

まだ19歳だった特攻隊員のM・Kさんが

古川さんである作中の深田に贈ったメッセージが泣けます・・・

『間もなく特攻出撃します。

深田さんが誠心整備された栄光の赤トンボで行きます。

貴方の未来に祝福を。

その未来のなかに俺の時間も少しばかり入れてください』





いつもありがとうございます

帚木 蓬生 「逃亡 上・下」


逃亡〈上〉 (新潮文庫)逃亡〈上〉 (新潮文庫)
(2000/07/28)
帚木 蓬生

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1945年8月15日、日本敗戦。国内外の日本人全ての運命が大きく変わろうとしていた――。香港で諜報活動に従事していた憲兵隊の守田軍曹は、戦後次第に反日感情を増す香港に身の危険を感じ、離隊を決意する。本名も身分も隠し、憲兵狩りに怯えつつ、命からがらの帰国。しかし彼を待っていたのは「戦犯」の烙印だった……。「国家と個人」を問う日本人必読の2000枚。柴田錬三郎賞受賞。



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敗戦とともに、お国のための「任務」は「犯罪行為」とされた。国家による戦犯追及。妻子とともに過ごす心安らかな日々も長くは続かなかった。守田はふたたび逃亡生活を余儀なくされる。いったい自分は何のために戦ってきたのか。自分は国に裏切られたのか。一方、男の脳裏からは、香港憲兵隊時代に英国民間人を拷問、死に至らしめた忌まわしい記憶が片時も離れることはなかったが…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

熊谷曹長はまくしたてた。
「俺が捕まって絞首台にのぼらされても
<醜(しこ)の御盾(みたて)>にはならない。
絵空事は絶対に言わん。
大嘘つきの無責任野郎だと絶叫してやるね。
戦犯ほど、あいつの言うことを誠心誠意実行してきたのだ。
一国の頭を勤めた人間なら、
マッカーサーと対等に論戦をいどみ、
広島と長崎の原爆投下を追及しながら、
戦犯の助命にお百度を踏むべきではないか。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「戦勝国に戦犯などひとりもいないだろう。
所詮、戦犯というものは、
勝った国が腹いせに敗けた国に報復をする
リンチのようなものだ。
見映えをよくするために、
法律という台本と法廷という舞台はちゃんと用意してな。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
突然嗚咽がこみ上げてきた。
自分は国からも、そしてあの天皇からも
見捨てられたのだという思いが、
涙とともに溢れ出してくる。

赤紙一枚で兵隊にとられ、
杭州湾に上陸、中国大陸を転戦した。
来る日も来る日も行軍だった。
日照りの日も、雨の日も、風の日も歩いて
大陸の山河を移動した。

二等兵から一等兵、そして上等兵になるまで、
ずっと鉄砲を担いでの歩き通しだったのだ。
長男の出生にも立ち会えなかった。
もともと身体は強いほうではなかった。
このまま兵隊で過ごせばいつかは落伍兵になるか、
中国兵の餌食になると思った。
農村を荒らし、自分と同じ農民たちを串刺しにする
訓練も嫌だった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

国からも天皇からも見捨てられたと、
熊谷曹長は言い、
大前は本間中将の例を上げて、
軍部と天皇から見捨てられたと言った。

事実はそうではなく、
国も軍部も天皇も、
こちらを眼中に入れてはいなかったというのが
正確なのではないか。

ひとりひとりの民、兵など、
叢(くさむら)の虫けらの如く初めから無視されていたのだ。
国の民、天皇の赤子(せきご)と喧伝(けんでん)され、
信じこまされていたが、
実体のない掛け声に過ぎなかったのではないか。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


いつもありがとうございます

福井 晴敏 「川の深さは」



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彼女を守る。

それが、おれの任務だ!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


昏い(くらい)澱み(よどみ)の中を、

鮮烈に走り抜ける命。

明日知れぬ逃亡、そして戦い・・・

熱く、切なく、深い・・・

失われた誇りを蘇らせる修羅の軌跡・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


手負いの獣となって、

追手から逃げ延びてきた少年。

傷だらけの体に自動拳銃(クロック17)。

世界を敵に回して。

その瞳にかつての自分を見た警備員は、

彼を匿う(かくまう)ことで底なしの川に引き込まれていった・・・

少年を追う者たちはやがてその姿を現し、

風化しかけた地下鉄テロ事件の真相が封印されたこの国の亀裂とともに、

白日の下に曝(さら)される・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「助けて・・・くれますか?」

落ち着いた問いかけだった。

思わず「なに?」と聞き返した桃山に、少女はハサミを捨ててまっすぐな目を向けた。

「お願いします。助けてください。怪我してるんです」

懸命な目と声が、今度ははっきりと耳朶(じだ)を打った。

上げていた手を下して、桃山は一歩、彼女に近づいた。

「怪我って・・・あんたか?」

「いえ・・・」背を伸ばし、その一歩を受け入れた少女の顔が、

苦しそうに伏せられた。

「あたしの・・・友達です」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「質問!」と不意に口を開いた。

悪戯な笑みを含んだ顔で二人の男を交互に見、

開いた雑誌を胸に隠す。

「あなたの目の前に川が流れています。

深さはどれくらいあるでしょう?

1.足首まで。2.膝まで。3.腰まで。4.肩まで 」

「なんだそりゃ」

「心理テスト」雑誌の巻末をちらと示して、葵(あおい)は文字通り試す目を向けてきた。

「考えちゃダメよ。パッと思いついた印象で答えて」


「肩までだろそりゃ」と桃山が答えたのと、

「肩まで・・・かな」と保が言ったのは、ほとんど同時だった。

「これはね、あなたの情熱度を表しているの。

足首までって答えた人は、あんまり情熱のない人。

膝までは、あるにはあるけどいつも理性の方が先に立つ人。

腰までは、なんにでも精力的で一生懸命、いちばんバランスの取れてる人。

「肩まではどんな人だい?」

「情熱過多。暴走注意だって」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


曙光(しょこう)が水平線の向こうに生まれ、

ゆったり広がる朝の光が雲を薄桃色に染め、

海を金色に染めて、世界の色を変えてゆく。

長い夜の終わりを告げる光。

実体のなかった明日が、確かな今日になる瞬間だった・・・

冷えきった体に朝陽を浴びながら、

桃山は声も涙も出ない、飽和した顔を海と空の界面に向けた。


そうするしかなかったのか保・・・

これでよかったのか。

おまえの川は、このだだっ広い海に流れ着くことができたのか?

今日は、昨日よりマシな今日になったのか・・・?





蝶が舞うリースの時計
プロフィール

cn7145

Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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