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宇江佐 真里 「日本橋本石町やさぐれ長屋」

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日々カツカツ暮らしの長屋の住民達の物語。

6つの長屋の面々に起こるお話。

①時の鐘
②みそはぎ
③青物茹でて、お魚焼いて
④嫁が君
⑤箕屋町の旦那
⑥店立て騒動

特に
③の青物茹でて、お魚焼いてが好きです。

錺職人の亭主が浮気しちゃって、

家に戻らなくなり離縁の危機・・・

女房の「おとき」が飲み屋で働くようになり、

常連のお店勤めの手代に言い寄られ、

江戸から上方へ行こうと誘われる・・・

口車に乗せられた「おとき」は、

手代のつてで、

幼い息子と娘を奉公に出してしまい

身軽になります・・・

帰らぬ亭主にも見切りをつけ、

邪魔な子供たちもいなくなり、

手代と上方へ行く夜明け近くの朝・・・

奉公先から逃げて来た息子「作次」が

母親の後を付け、

体を張って母親「おとき」を止めます・・・

手代は息子に対して手を上げ罵り、

邪険にする姿を見た「おとき」は、

手代の下心がはっきり見え、

目を覚まします・・・

「おとき」は息子と娘を奉公先からつれ戻し、

今まで通りの暮らしをします。

息子は錺職人として

亭主の親方に住み込み、

亭主はその姿に

浮気相手の女と縁を切り、

「おとき」に詫びて家に戻る事になります。

「おとき」は

今までの当たり前の暮らしに感謝します・・・

亭主の好きな青物茹でて、

お魚焼いての暮らしが

どんなにか幸せであるか・・・

宇江佐さんの言葉や情景や心情表現が

目に見え、心に響くんですよねぇ。

息子「作次」が

母親を上方へ行かせないと

手代は歯向かう場面が泣けます。

親が子を想う気持ちと、

子が親を想う気持ちの深さに、

しみじみと感動しました。

これまた大好きな作品です!




いつもありがとうございます
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宇江佐 真理 「おはぐろとんぼ」

20190514おはぐろとんぼ

江戸下町の堀を舞台にした6編の物語。

・・・・・・・・・・・・・・

①ため息はつかない(薬研堀)
②裾継(油堀)
③おはぐろとんぼ(稲荷堀)
④日向雪(源兵衛堀)
⑤御厩河岸の向こう(夢堀)
⑥隠善資正の娘(八丁堀)

・・・・・・・・・・・・・・

再読です。

すっかり物語を忘れていたので

初読みのような感動がありました。

改めて読み返すと、

以前は、

③「おはぐろとんぼ」が好きでしたが、

今回はダントツで、

⑤「御厩河岸の向こう(夢堀)」が

ホロリ感動しました。

・・・・・・・・・・・・・・・・

歳が八つ離れた弟勇介と姉おゆりの

「生と死」の物語。

弟「勇助」が生まれて、姉のおゆりは

大変可愛がり母親より世話をします。

勇助が物心ついたある日、

「自分が生まれる前にどこにいたか覚えている」と

言い出します。

細かく述べる内容を確かめに「夢堀」へ行くと

勇助の言う通りでした。

不思議な勇助の存在に周りも驚くのでした・・・。

そんな勇助が八つの頃、

十六歳になった姉のおゆりに

魚善の武松との縁談が来ます。

おゆりはまだお嫁に行きたくないと断ろうとすると、

勇助が「心配いらない。頼りになる相手だ」

と勧め、相手の両親の事や

生まれて来る子供の事まで

細やかにおゆりに教えるのでした。

勇助は自分はのの様だから

先の事が見えるのだと言います。

しかし、おゆりはお嫁に行ったら勇助と

頻繁に会えなくなる事が寂しいと泣きます。

勇助は、「おいら、姉ちゃんが大好きだから、

次の世でもきょうだいになるよ。

その次の次の世でも。

だから、おいらに何があっても、泣いたり、

悲しんだりしなくていいよ。

その内にまた会えるから。

おいらの眼が動かなくなっても、

おいらがものを喋らなくなっても、

恐れてはいけないよ」

と言うのでした。

そして・・・

「おいら、十六で死ぬよ。

でもまだまだ先だよ。

姉ちゃんの倖せになるのを見届けてからだ。」

と言うのでした・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

勇助は自分が言った通り十六で亡くなります・・・

最後の看取りの晩に

勇助はおゆりに言います。

「仏壇に毎日ままを供えているかい?

時々なら忘れても構やしないよ。

忙しかったら墓参りも無理にすることはない。

肝腎なのは死んだ者の事を

時々思い出してやることさ。

姉ちゃん、今までありがとう・・・」

そう言ってふわりと笑った後、

勇助は亡くなりました・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

勇助は生まれて16年間しか生きませんでした。

その16年間の姉おゆりと

家族との倖せをしみじみ描いています。

おゆりは、子供を産み育てて行く過程で

折に触れて弟勇助を思い出します。

そしていつも見守ってくれている事を励みに

家族を大切にしながら前向きに生きて行くのでした。

読後しんみりとなり、

胸がいっぱいになる物語でした・・・

やっぱり宇江佐真理さんは良いなぁ~




いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「深川恋物語」

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6つの市井の物語。

①下駄やおけい
②がたくり橋は渡らない
③凧、凧、揚がれ
④さびしい水音
⑤仙台堀
⑥狐拳

・・・・・・・・・・・・・・・

③の「凧、凧、揚れ」が何と言っても良かった!

ホロリホロリとなりました。

凧作り職人のおやじと近所の子供達との触れ合い。

凧作りの師匠である末松の、

子供に対する厳しさが良いですヨ(^^)

涙こぼしながら作る子供達は、

皆んな凧が大好き!

お正月に自分の作った凧を揚げるために

末吉おやじさんの怒鳴り声にも必死に耐え、

歯を食いしばって頑張ります。

ある時「おゆい」と言う体の弱い女の子が

凧作りに加わります。

普通の凧ではなく

「すいか」の凧を作りたいと

一生懸命作りますが、

自分の凧を揚げることは出来ませんでした…

何故おゆいは、

凧を揚げることができなかったのか…

凧職人の末吉は、おゆいの為に

「すいか」の凧を丹精込めて作ります。

末吉の厳しい凧作りに

根を上げず頑張った子供達は、

皆んな、のちに出世したと末吉が話します。

その時の西瓜の凧を作りたいと言っていた

「おゆいちゃん」の言葉が素晴らしいです。

「凧は見掛けよりこさえるのが面倒だから、
辛抱もいるし、工夫もいる。
いずれ空に揚げることができると思えば、
面倒なことも我慢する気になるじゃないの。
世の中と同じだよ。
偉くなるためには辛抱が肝心なんだって、
凧を造りながら覚えるんだよ、きっと…」


吉川英治文学新人賞受賞作品です。

・・・・・・・・・・・・・・・

文庫本と単行本と二冊保存版として持っています。

単行本の方は写真の装丁です。

好きな本は単行本で出版されていたら

文庫と単行本で購入します。

文庫は持ち歩き用。

単行本は書棚に

装丁が見えるように飾って置きます。

好きな本だけ保存するようにしました。

年齢的に最近の本の傾向について行けない・・・

本の装丁がマンガチックで手に取りにくい・・・

製本の雑な本も目につき、安っぽさを感じる。

出版にあたりどれだけ多くの人材が関わっているか、

作家さんの良しあしは出版関係者皆さんに

かかっていると思うほど。

電子書籍を何度か体験しましたが、

体調を崩し肩こり以上の体のだるさで

電子書籍は断念しました。

それだけに余計、紙ベースの製品に

期待と依存が大きいです。

月の自由になる予算で購入するので

新刊を簡単に買う事は出来ません。

単行本数冊購入すると、

あっと言う間に予算オーバー。

それだけに十分吟味して、

どうしてもこの本が欲しいと、

「ピン!」と来た時だけ、

購入しようと思うようになりました。

新刊の香りって素晴らしく大好きです!

作家さんが自分の本が書店に並び

手に取って購入している人を見たら

どれだけ嬉しい事か。

単行本を購入しますと

アンケートはがきが付いて来ます。

感動した点や製本の素晴らしい本の時は

感謝のアンケートを書いて送ります。

ワタクシは何も趣味がなく、

唯一読書だけが楽しみなので、

出版社・製本関係者の

努力と意気込みを感じる本作りに感謝しながら、

大事に読んで、眺めて、楽しみたいと思います(^^)



いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「口入れ屋おふく 昨日みた夢」

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痛快、江戸のお仕事小説!

亭主の勇次が忽然と姿を消し、実家の口入れ屋「きまり屋」に出戻ったおふく。
色気より食い気、働きもので気立てのよいおふくは
助っ人女中として奉公先に出向き、
揃いもそろって偏屈な雇い主たちに憤慨したり同情したり。
一筋縄ではいかない人生模様を目の当たりにするうち、
自分も前を見て歩いていこうと心を決める――。
市井人情小説の名手が渾身の筆で描ききった江戸のお仕事小説。


・・・・・・・・・・・・・・・・

やっぱり宇江佐真理さんは良いですねェ。

流れが良いし淀みない気風の良い口上などはスカっとします(^^)

解説で書かれていましたが、この物語は「江戸の派遣小説」だそうです。

なるほど上手い事言うなぁ~。

仕事斡旋業を営む「きまり屋」。

短期の頼まれ仕事をこなしながら叔父家族・父親と暮らす「おふく」。

この「おふく」がとっても魅力的。

食べる事が大好きで気風が良くて典型的な江戸っ娘。

依頼を受けた家に女中として仕事をこなすのですが、

それぞれの家庭にはそれぞれの問題が・・・。

おふくが何をするという事ではないのですが、

おふくが行く事で救われる人も出て来ます。

7編の中で特に好きな物語りは、

題名にもなっている「昨日みた夢」です。

家族からないがしろにされ、

幼い娘達からも母親ではなく女中として扱われる

武家の若奥さんの「かよ」のお話は、

おふくが助ける事によって本来の幸せを見つける事になります。

おふく自身も離縁した夫との心の澱(おり)を抱えている事で、

かよの気持ちが他人事ではなく理解でき、

「かよ」自身を大切にするよう屈辱の暮らしから救い出します。

「この家を出ましょう。若奥様がいらっしゃらなくても、
この家は回って行くのですよ。
後のことなど、気にする必要はありません」


時代が時代ですので、このように言ってくれる人は稀だったでしょう。

女が一人で生きて行く困難さを百も承知で励ますおふくには、

一生下働きの女中扱いに辛苦する「かよ」に我慢がならなかった。

義母も夫も娘達でさえ「かよ」を家族として扱わない理不尽さを

おふくが成敗する痛快さにむしろホロっとさせられました(^^)

宇江佐真理さんの心根を感じた大好きな作品です!



いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「びんしけん」


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最新の傑作を揃えた魅惑の16編。
日々新たな傑作が生まれ、目が離せない歴史・時代小説界。
短編小説の滋味に触れるのに最適の、平成22年度版珠玉のアンソロジー。
持ち味を出し切って描いた作家は、
荒山徹、泡坂妻夫、岩井三四二、宇江佐真理、海老沢泰久、
乙川優三郎、北重人、北原亞以子、西條奈加、東郷隆、鳴海風、
蜂谷涼、葉室麟、山本一力、山本兼一、好村兼一。


・・・・・・・・・・・・・・・・

宇江佐真理「びんしけん」がやっぱり一番好きでした。

長屋で子供達に学問を教えている小佐衛門と、

盗賊の娘の奇妙な繋がりとほのかな恋の物語です。

盗賊の頭である父親が打ち首獄門で裁きにあったあとの娘お蝶は、

20歳でありながら読み書きが出来ず野放図な暮らしぶりから、

一人前の女性としてのたしなみが出来ませんでした。

ひょんな事からお蝶を預かる事になった小佐衛門は、

お蝶の本来の素直でまっすぐな優しい気性を感じますが、

長屋の住人に盗賊の娘と知れた事でお蝶と住人が喧嘩になり、

お蝶は小佐衛門に迷惑をかけた事で長屋を去って行き、

二度と戻って来る事はありませんでした。

小佐衛門はその時にお蝶を住人から守り通す事が出来ず、

後にお蝶が小佐衛門の嫁になりたいとの胸の内を知りますが、

自ら娘の元へ行き自分の想いを告げる事はありませんでした。

お蝶は小佐衛門の気持ちを知る事なく、その後職人の元へ嫁ぎました。

小佐衛門は・・・

「四十男の分別が邪魔をしたと言えばそれまでだが、

お蝶に対して自分の気持ちを、もっと強く訴えておけばよかったのだ。」

と、ほろ苦い思いになるという切ない物語です。

宇江佐真理さんの小説には気風の良い女性の語り口が度々登場します。

今回もお蝶と長屋のおかみさんとの喧嘩の場面で出て来ます。

「お父っつぁんは確かに悪事を働いた。
だからお裁きを受けたじゃないか。
皆んな、おれのお父っつぁんが引き廻された時、
見物したろ?
いい気味だと石でもついでにぶつけたかえ。」

「子どもは親を選べないのさ。
この先生だってそうさ。
先生は、こんな小汚い裏店住まいするようなお人じゃないんだよ。
てて親は旗本だよ。
それをびんしけんなどと子供の口調を真似て渾名で呼ぶなんざ
無礼千万の話だ。
ああ、そうとも。
おれのおっ母さんはどぶ店の女郎で、
お父っつぁんは盗賊だ。
あはっ、笑っちゃうよ全く。
だけど、それがおれのせいか?
はばかりながら、おれは生まれてからこの方、
人様の物に手をつけたことがないんだ」


宇江佐節と言うのでしょうか、

小気味よい啖呵が気持ち良い物語でした。



いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「雪まろげ」



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浅草は田原町で小さな古着屋を営む喜十は、
北町奉行所隠密廻り同心の上遠野のお勤めの手助けで、
東奔西走する毎日。
店先に捨てられていた赤ん坊の捨吉を養子にした喜十の前に、
捨吉のきょうだいが姿を現した。
上遠野は、その四人の子どもも引き取ってしまえと無茶を言うが…。
日々の暮らしの些細なことに、
人生のほんとうが見えてくる。
はらり涙の、心やすらぐ連作人情捕物帳六編。


・・・・・・・・・・・・・・・・・

大好きな作家さんで、この物語も何度か再読。

一話目の「落ち葉踏み締める」が泣けます。

最終話の「再びの秋」が一話目の続編となり、

離れ離れになった幼い兄弟姉妹が喜十夫婦が縁となり

再会出来るようになります。

そこまでの持って行きようが上手い宇江佐さん。

さすがです。大好きな物語です。



いつもありがとうございます

宇江佐 真理「ウエザ・リポート 見上げた空の色」

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それでお前の一番大事なこととは何かと問われたら、

日常生活と応える。


・・・・・・・・・・・・・・・・

私が恐れるのは未完の作品が残ることではなく、

日常生活が唐突に切断されることにほかならない。

小説の執筆は日常生活の付帯情況に過ぎないのだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・

夜空に限らず、人は空を見上げる機会がままあると思う。

私の場合は将来に不安を感じていた時や、

ものごとがうまく行かなかった時に

空を見上げていたような気がする。

空は人の心を映す鏡である。


・・・・・・・・・・・・・・・・

「一日を大事に生きるなんて大袈裟なことは言わないけれど、

毎朝、目覚める度に思う事は昨日と同じ今日でいい、

というささやかなものだ。

昨日と同じ今日などないとわかっていても、

そう思わずにはいられない。

大きな変化はいらない。

舞い上がるほどの幸運もいらない。

生きているだけでいいと思う。」

・・・・・・・・・・

2015.11.7に亡くなった時代小説家の宇江佐さんのエッセイ集。

乳がん闘病記も掲載されていました。66歳でした。

本当に本当に残念です。

大好きな作家さんだけに、涙涙で読み終えました。



いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「日本橋本石町 やさぐれ長屋」」 


日本橋本石町やさぐれ長屋日本橋本石町やさぐれ長屋
(2014/02/21)
宇江佐 真理

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日本橋本石町に弥三郎店と呼ばれる長屋があった。
事情を抱えた住人ばかりが住んでいて――。

「時の鐘」
 真面目一徹、そろそろ嫁をと周囲から勧められる鉄五郎。
そんな鉄五郎に気になる相手が現れたのだが、
若くして出戻ったおやすという莨屋の女だった。

「みそはぎ」
 おすぎは、老いた母親の面倒をみている。
ある日、勤め先の井筒屋に見慣れぬ男が来るようになった。

「青物茹でて、お魚焼いて」
 おときの旦那は錺職人。
次第に泊まり込みの日数が長くなり、しまいにはひと月にもなった。

「嫁が君」
 おやすはずっと旦那が家にいるおひさのことが羨ましい。
ある日、この旦那が寄せ場からきた人物だと噂になる。

「葺屋町の旦那」
 おすがのかつての奉公先の倅が、弥三郎店にやってきた。
どうやらこの倅、わけありのようで。

「店立て騒動」
 弥三郎店が店立てに?!
住人は緊急事態にてんやわんやの大騒ぎ。
どうにかこの事態をとめられないか。
長屋の住人が一致団結して行ったことは。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「時の鐘」
 
 「鉄五郎さんが出戻りのあたしを女房にしたいって言ってくれるのは涙が出るほど嬉しいよ。だけど、鉄五郎さんがあたしに世間並の女房を求めているのなら願い下げだ。あたしはあたしだ。今も十年先も気性は変わらない。出戻りだからって遠慮するつもりもないのさ。そこを承知してくれるのなら考えてもいいけど」

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「みそはぎ」

 「みそはぎは仏様の花だそうですね」銀助は訳知り顔で言う。「ええ。いつもお盆の頃に咲きます」「仏様はみそはぎの花の露でなければ口にされないそうです」「そうなんですか」おすぎは初めて聞いた。「仏様に供える禊ぎ(みそぎ)の萩だからみそはぎと呼ぶのですよ」

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「青物茹でて、お魚焼いて」

 「ごめんよ、ごめんよ。おっ母さんがばかだった。もう、どこにも行かなくていいからね」おときはおちよを抱き締めて泣いた。作次にも、お前がいてくれたお蔭で、おっ母さんは助かったと言った。「おいら、尾張屋に戻らなくていいのか」作次はそれが肝腎とばかり訊く。「ああ、おちよも一緒だ。でも、おっ母さんは、また夜のお仕事を続けなければならないから、二人とも我慢しておくれよ」「平気だ、おいら。尾張屋にいるより何んぼかましだ」「あたいも、おしょさんの家にいるより留守番するほうがいい」「そうかえ。さあさ、ごはんを炊こうね。作次、通りに出て、納豆売りを見つけたら、買って来ておくれ」「合点!」作次は張り切った声を上げた。ようやくあらぬ夢から覚めた思いだった。うかうかと忠助について行ったら、どんな目に遭ったかわからない。自分は甘い女だった。茂吉が帰って来なくても、自分は子供達の母親でいようと、改めてそう思うのだった。

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「嫁が君」
  「あたし、滅法界もなく倖せ」おやすはうっとりした顔になった。ひと月の間の鬱陶しいものが、俄かに(にわかに)晴れるようだった。井筒屋で鉄五郎の猪口に酌をしながら、六助夫婦のことを話してやろうと思った。(六助さんは寄せ場帰りだけど、お前さんはそんなこと気にしないだろ?あの人はいい人だ。おかみさんのおひささんも亭主思いの女房だよ。ねずみの始末をつけてくれたのも六助さんなのさ)鉄五郎に話す言葉を、おやすはあれこれ考えていた。
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「葦屋町の旦那」

 「この弥三郎店はな、やさぐれ長屋とも呼ばれているんだぜ。だがよ、やさぐれている者なんざ一人もいやしねェ。皆、おまんまを喰うためにあくせくしながら稼いでいるんだ。お前ェ、ひと月余りも新場で働いたから、ちったァ、貧乏人の暮らしがわかったんじゃねェか。それとも、まだわからねェか。」「兄さん、何が言いたい」「実家をおん出て意気がっているお前ェは大ばか野郎だってことよ」

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「店立て騒動」

  「お前さん、あたし、夢を見ているみたい。世の中には、こんなことも起きるのね」その夜、おやすは蒲団に入ってからも興奮して、なかなか眠れなかった。「井戸替えしたから、井戸の神さんのご利益もあったかな」鉄五郎はそんなことを言う。「きっとそうね。自分達のためでなく、後の人のことを考えて井戸替えしたのがよかったのよ。皆んなの優しい気持ちが通じたのよ」「だな」鉄五郎は満足そうに肯く(うなずく)。



いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「おはぐろとんぼ」


おはぐろとんぼ 江戸人情堀物語おはぐろとんぼ 江戸人情堀物語
(2009/01/21)
宇江佐 真理

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父親の跡を継ぎ、日本橋小網町の料理茶屋で料理人を勤めるおせん。上方で修業をし、新しくおせんの親方になった板前の銀助と、上方の料理を店に出すことを嫌うおせんとはたびたび意見が食い違う。そんないらいらした気分の日々が続くとき、おせんは、店にほど近い稲荷堀の水を眺めて心をしずめていたが、ある日湯屋で銀助と娘のおゆみと鉢合わせしたことから心に小さな変化が――仕事一筋に生きてきた女に訪れた転機と心模様を描く、表題作の「おはぐろとんぼ」ほか、薬研堀、油堀、源兵衛堀、八丁堀などを舞台に、江戸下町で堀の水面に映し出される、悲喜交々の人情のかたち六編。江戸市井小説の名手が描く感動の傑作短編集です!

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1.ため息はつかない
 
「お嬢さんは、うちのお袋のことをどんな女だと思っていました?」「柳橋の芸者さんだったってね。普段着を着ていても様子が垢抜けていたよ。勘助の話じゃ、お前を引き取ってからも後添えの話があったらしいよ。だが、皆、先様に子供がいる人ばかりだった。お前を連れて後添えに入れば、お前だけを可愛がる訳には行かない。また、子供のいない男は甲斐性なしで、先行きが不安だった。それでとうとう独り身を通してしまったんだよ」胸が熱くなる。喉が苦しい。豊吉は掌を口許に押し当てて咽んだ。「お前のおっ母さんこそ、ため息をつきたかっただろうね。あたしは、そう思うよ。」

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2.裾継(すそつぎ)
 
彦蔵は大きく肯いた。表櫓と裏櫓を繋ぐ意味の裾継は、まるで何かの象徴のようにも、おなわには思えた。いや、おなわはわかっていた。裾の補強に当てられた布は、おなわ自身であると。おみよが去って行った不足を補うのが、おなわの役目だったからだ。そう考えると、裾継という場所におなわがやって来たことの意味が腑に落ちる。

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3.おはぐろとんぼ
 
「うちがおらんかったら、小母さんはお父ちゃんと一緒になってくれはるの」おゆみは箸を止めて、おせんに訊く。「おゆみちゃん」おせんは何んと応えていいかわからなかった。「そいじゃ、うち、よその子になるし」おゆみが言った途端、おせんはたまらず掌で口許を覆った。父親を思うおゆみの気持が切なかった。「そういうことじゃないのよ、おゆみちゃん。小母さんはおゆみちゃんのおっ母さんになる自信がないだけなのよ」おさとは噛んで含めるように言った。「うち、言うことを聞くよ、小母さん。稲荷湯で百数えるまで湯舟に浸かるよ。それでもあかん?」

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4.日向雪(ひなたゆき)
 
竹蔵は死んで、ようやくほっとしたのかも知れないと梅吉は思った。(もう、金の工面をしなくてもいいぜ。竹、安心したろ?)梅吉は竹蔵の入った棺桶に胸で話し掛けた。荒縄で括られた棺桶は松助と与吉に伴われて静かに助次郎窯を出て行った。梅吉と職人達は掌を合わせて、それを見送った。瓦のけりをつけたら、助蔵に休みを貰い、すぐに梅吉は後を追うつもりだった。春だというのに、ちらちらと雪が舞っていた。空は明るい。それもそのはず、頭上には陽が出ていた。陽射しは源兵衛堀に柔らかな光を落としていた。「日向雪ね。お天道さんも竹蔵さんの供養をしているみたい」潤んだ眼をしたおちよが呟いた。

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5.御厩河岸(おうまやがし)の向こう
 
「向こうのおっ母さんが、ままを炊いて仏壇に供えると、鼻から湯気を呑むようで温かかった。仏さんには温かいものを供えるといいんだよ。線香の煙も温かくてよかったよ」「仏壇に毎日ままを供えているかい」「ええ。時々、忘れてお姑さんに叱られることもあるけどね」「時々なら忘れても構いやしないよ。忙しかったら、墓参りも無理にすることはない。肝腎なのは死んだ者のことを時々、思い出してやることさ」

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6.隠善資生の娘
 
「苦労したのだな」隠善がそう言うと、おみよは泣き笑いの顔で「でも旦那とお知り合いになれて、あたしは嬉しかった。おまけに、旦那の娘じゃないかと思って下さるなんて」と言った。「十六年前におれは前の家内を亡くしておる。家にいた中間に襲われたのだ。家内は助からなかったが、その時、家にいた女中と一緒に娘がいなくなったのだ。未だに行方知れずのままだ。おれも親だから、いつまでも娘のことが忘れられない。おみよを見て、前の家内に似ていると思うと、ここへ通わずにはいられなかったのだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


いつもありがとうございます


 

宇江佐 真理 「雪まろげ・古手屋喜十為事(しごと)覚え」

雪まろげ: 古手屋喜十 為事覚え雪まろげ: 古手屋喜十 為事覚え
(2013/10/22)
宇江佐 真理

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これでまた、一緒にうまい酒が飲める――

心やすらぐ人情捕物帳、第二弾!

浅草・田原町で小さな古着屋を営む喜十。

北町奉行同心の片棒を無理矢理担がされ、

今日もまた、誰かのために東奔西走。

そんな中、店先に捨てられた赤ん坊を女房が引き取ると言い出した。

突然父親に仕立て上げられ、戸惑う喜十だったが――。

店の前に捨てられていた赤ん坊を、

養子にした喜十。

ある日、生き別れになった赤子のきょうだいが突然、姿をあらわした。

北町奉行所隠密廻り同心の上遠野平蔵は

四人の子どもをそのまま引き取れと無茶を言ってくるが…。

心やすらぐ時代連作集。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.落ち葉踏み締める
2.雪まろげ
3.紅唐桟
4.こぎん
5.鬼
6.再びの秋
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1.落ち葉踏みしめる


 父親を病で亡くして母親と兄妹6人のその日暮らしの新太一家。

14才の新太が一家の稼ぎ頭としてしじみ採りをして売り歩く日々。

母親は幼い弟や妹にも強制してあさりのむき身の仕事をさせる。

日々の暮らしに嫌気がさした母親は、長女を吉原へ売る。

そればかりか、生まれたばかりの末っ子「捨吉」を

どこかに養子に出すか、捨てて来いと新太に命じる・・・。


ある日、古手屋の喜十の店に立ち寄り、しじみを買ってもらった時に、

「うちは二人暮らしだから・・・」の言葉を聞き、

新太は、ここの家で捨吉を育ててもらおうと心に決め、

夜遅くに捨吉をおくるみと手紙を添えて店先の陰に置いて立ち去る・・・


日々が流れても、新太は捨吉の事が頭から離れない。

元気でやっているか、あの夫婦は捨吉を育ててくれているだろうか・・・

新太は、弟の幸太としじみ売りに古手屋に行くと、

捨吉をおんぶした女房が出てくる。

二人は、ちゃんと捨吉を育ててくれていた・・・

安心したその時に、弟の幸太が「捨・・・」と声をかけてしまう。


喜十は、二人に事情を聞き、今後この店には来ない事。

捨吉とは縁を切ったものとする事を約束させる。

新太は罪悪感を抱えたままでいた・・・

母親は妹の身売りの金で働かず酒ばかり飲むようになっていた・・・。

酔った勢いで新太に捨吉の養子先を問い詰める母親。

あわよくば、養子先から金を都合させようとする母親に、

新太はいままでの思いも重なり、憤り、

母親につかみかかる・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一章目から、せつなくて悲しい物語なんですが、

新太の苦労と弟妹思いが報われるよう期待しながら読みました。

最後の「6.再びの秋」に新太の弟幸太が登場して、

捨吉や妹たちの今後の行方が描かれています。

おそめは捨吉を育てる事によって新たな生きがいを得ます。

捨吉が近所のこまっしゃくれた遊び友達から教えられた

生意気な言葉を発する場面などは、クスクスとなります。

一番苦労して悲しい思いをした新太と対照的に

捨吉はみんなから可愛がられのびのびと育って行きます。

新太は他の弟妹にも強い思いを残します。

その思いが喜十の心を動かし行動します。

出来ることは限られても、助けてくれる人はいるものです。

そんな喜十の日頃の心がけが思わぬ幸運を招きます。

お兄ちゃんである新太の強い思いが喜十に伝わったような、

そんな報われ、泣ける物語でした・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「無事、これ名馬」


無事、これ名馬 (新潮文庫)無事、これ名馬 (新潮文庫)
(2008/04/25)
宇江佐 真理

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吉蔵は町火消し「は組」の頭。

火の手が上がれば、組を率いて駆け付け、命懸けで火事を鎮める。

そんな吉蔵に、武家の息子・村椿太郎左衛門が弟子入りを志願してきた。

生来の臆病ゆえに、剣術の試合にどうしても勝てない太郎左衛門。

吉蔵の心意気に感化され、生まれ変わることができるのか……。

少年の成長と、彼を見守る大人たちの人生模様を、

哀歓鮮やかに描き上げる、傑作時代小説。

・・・・・・・・・・・・・・・・
お春はひどい難産の末にお栄を産んだ。

一時はお春も命を取られるかと心配したものだ。

「お前さん、あたしが死んだら、この子を立派に育てておくれね。

あたしはこの子さえ無事に生まれたら、死んでも悔やまないよ」

苦しい息遣いでそう言うと、お春は気を失いかけた。

産婆が加減もせずにお春の頬を張った。

「お前が亭主と好きなことをして産む餓鬼だろうが。

最後まで落とし前つけな」

・・・・・・・・・・・・・・・・・


「女はすっこんでいろ!」

由五郎は却って逆上した。

ところが、すっこんでいろと言われたお栄の眼が三角になった。

着物の裾を捌いて(さばいて)片膝を立てた。

お栄が心底腹を立てた時に出る仕種だ。

案の定、「そうかい、お前さんはそんなに喧嘩がしたいのかい。

上等だ。

やって貰おうじゃないか。

ただし、ここであたしに三行半を書き、

は組の纏持ち(まといもち)の看板を下ろしておくれな。

そうしたら、何をやっても構やしない。

おう、お前さんにその覚悟があるならおやりよ。

さあ、さあ」と、凄んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「坊ちゃん、男にとって大事なことは何だと思いやす?」

金次郎は試すように訊いた。

「強くなることですか」

「へへえ、わかっていなさるじゃねぇですか。

男はおなごより強くなけりゃいけやせん。

なぜなら、男はおなごを守るさだめで生まれて来てるんですからね。

ところが坊ちゃんは昨日の試合に負けてしまった。

しかもおなごにね。

さあ、そいつはいったい、どうした訳でござんしょう」

「拙者が弱いからです」

「いいや、そうじゃありやせん。

坊ちゃんには気力がねェからです。

また負けるかも知れねェ、そう思って、試合をする前から及び腰に

なっていたからですぜ。

坊ちゃんは試合をする前に、もやは負けていたんでさァ。

こんな馬鹿なことがありやすかい。

ちょっとでも打ち込んでやろうという気にならねェ限り、

これからも勝つことはありやせん。

さあ、この先、坊ちゃんはどうしなさいやす。

負け続けやすかい」

「い、いやです」

太郎左衛門はその時だけ、きっぱりと応えた。

・・・・・・・・・・・・・・・・


「寝小便はな、心の奥底にある本心がさせるのよ。

いい子ぶっているが、

お前ェは、実は泣き虫の寂しがり屋だろうがってな」

由五郎はつかの間、遠くを見るような眼になって言った。

「確かに拙者は泣き虫の寂しがり屋です」

太郎左衛門は俯きがちになって応えた。

「坊ちゃんは、おっ母様にもっと甘えたいんですよ。

ところが、坊ちゃんには妹も弟もいる。

兄貴らしくしなきゃいけねェ。

それで、つい、気持ちが無理をしちまうんですよ」

由五郎は何も彼も承知している様子で続ける。

さすが寝小便の先輩である。


・・・・・・・・・・・・・・・・

「親馬鹿と笑うてくだされ。

倅は剣術も学問も芳しくござらぬが、

さしたる病もせず、また、人と喧嘩して傷を負うたこともござらぬ。

弟や妹には優しい兄でござる。

拙者は大層苦労して今の役目に就きましたが、

拙者と同じ苦労を倅に味わわせようとは思いませぬ。

いや、この先、倅が大きな失態を演じなければ、

拙者の跡を継いで、しかるべき役職に就くはずでござる。

恐らく倅は真面目にお務めを全うし、

平凡だが倖せな人生を送ることでござろう。

倅を駄馬と悪口を言う御仁もおりまする。

だが、拙者はそうは思いませぬ。

無事、これ名馬のたとえもござる。

倅は拙者にとってかけがえのない名馬でござる」

村椿五郎太はそれを言いたかったとばかり、声を高くした。

お栄と吉蔵は五郎太の親心に胸を詰まらせ、

そっと眼を拭った。


・・・・・・・・・・・・・・・・・

ごろちゃんこと五郎左衛門が7歳から30年後までの成長と

ごろちゃんを見守る火消し組の家族・親戚・近所のひと達のふれあいを、

面白ろ可笑しく、ちょっと悲しく切なく描かれた物語です。

吉蔵一家の一人娘お栄がとても光っています。

お栄にとって悲しい事も起こりますが、

それも人生。

ドラマになったらお栄は、ぜひ尾野真千子さんで!

と思うくらいピッタリな雰囲気です。

最後のごろちゃんの父親五郎太の親心の言葉に

ほろっとしました。

とってもオススメの一冊です!



いつもありがとうございます


宇江佐 真理 「ひょうたん」


ひょうたん (光文社時代小説文庫)ひょうたん (光文社時代小説文庫)
(2009/03/12)
宇江佐 真理

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本書五間堀にある古道具屋・鳳来堂。

借金をこさえ店を潰しそうになった音松と、

将来を誓った手代に捨てられたお鈴の二人が、

縁あって所帯をもち、立て直した古道具屋だった。

ある日、橋から身を投げようとした男を音松が拾ってきた。

親方に盾突いて、男は店を飛び出してきたようなのだが…(表題作)。

江戸に息づく人情を巧みな筆致で描く、時代連作集。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・


五間堀には鳳来堂という古道具屋がある。

主は定式幕で拵えた半纏(はんてん)を年中着ている。

女房は店番の合間に外に七厘を出し、

魚を焼いたり、煮物の鍋を掛けている。

時分刻にはうまそうな匂いが辺りに漂い、

通り過ぎる人々の腹の虫を鳴かせる。

この店には年中、友人達が集い、

なかよく酒を酌み交わしている様子でもある。

夜も更けて通りが静かになると笑い声が外まで聞こえる。

月に一度はそれが啜り泣きに変わることもある。

何でもその日は友人の月命日らしい。

泣いたり、笑ったり。

太平楽なものだと近所は噂する。

音松と友人達は、

そんな噂を意に介する様子もない。

相変わらず泣いたり、笑ったりを繰り返していた。

泣いたり、笑ったり・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

息子の長五郎が泣かせます。

女房のお鈴の料理する描き方がとても良い。

時に先走り、時に歯止めが聞かない所のある音松を

お鈴や息子長五郎、そして毎晩飲みに集まる幼馴染の友人達が

諌めたり、助けたり・・・。

この物語をシリーズ物にして欲しいなぁ。




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cn7145

Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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