原 尞 「それまでの明日」

14年ぶりの刊行。
遅い・・・遅すぎるぜ原さんよう・・・
次回新刊では、ワタクシは既に鬼籍の人か・・・
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待ちに待った原ファンにとっての探偵沢崎シリーズ。
ところが・・・
評判とは裏腹にワタクシはあまり面白くなかったんです・・・
分厚い単行本の一ページ一ページを
時間をかけ楽しみながら読んだんですが、
読み終わってもイマイチ面白くなかった・・・
もともと原尞さんのセリフや文章表現が好きだったので
ストーリーよりそちらを楽しんでいたのですが・・・
今回はセリフもイマイチ・・・
文章表現も印象的な所がなくて
結局読み切った感の満足だけでした・・・
どうしたんだろう・・・
たぶんこの14年のうちで
ワタクシの方の感受性が合わなくなったのだと思います。
老化したんですねぇ・・・
沢崎さんもすでに50代に入りました。
息子のような協力者が登場します。
彼の存在が今回の事件の大きな位置づけになります。
依頼人が結局誰なのか分からず仕舞いと言うのも
面白い設定ではあります。
沢崎らしい言い回しは昔より優しくなったかも。
暴力団清和会の橋爪や相楽も登場しますが
昔の勢いは全くなくて橋爪との緊迫したやりとりが
かっこ良かったのに今回は期待する程ではなかったし、
相楽に至っては「え~っ!」みたいな現在になってたし・・・
なんだか時代と歳を感じました・・・
警部の錦織さんだけは変わらずお元気(^^)
でも次回はもう退職しているな・・・
沢崎は昔のような暴力的な事はなくなりました。
今どき携帯も持たない探偵・・・
相変わらずタバコは吸っていますが
なんとブルーバードに乗らなくなっていました・・・
とりあえずこれからも一人で淡々と仕事をして行く沢崎。
次回の刊行がいつになるか分かりませんが
やっぱり楽しみにしているので
どうかワタクシの生きているうちに執筆して下さいませ(頼む!)
いつもありがとうございます

原 りょう「さらば長き眠り」
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400日ぶりに東京に帰ってきた私立探偵沢崎を待っていたのは、
浮浪者の男だった。
男の導きで、沢崎は元高校野球選手の魚住からの調査を請け負う。
11年前、魚住に八百長試合の誘いがあったのが発端で、
彼の義姉が自殺した真相を突き止めてほしいというのだ。
調査を開始した沢崎は、やがて八百長事件の背後にある、
驚愕の事実に突き当たる・・・。
原 りょう 「私が殺した少女」

原 りょう
1946年生まれ。
九州大学文学部卒。
ジャズピアニストとして活躍。
この作品で直木賞受賞。
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原りょうさんの作品は、
すべて「探偵沢崎」シリーズ。
渡辺探偵事務所の孤独な私立探偵:沢崎。
動くというだけの理由で乗っているブルーバード。
たばこは、フィルターなし。
パートナーである渡辺は、八年前に「清和会」の
覚醒剤取り引きに警察の囮(おとり)として協力するはずが、
取り引き現場の三キロのシャブを強奪して逃亡中。
当時その事件を担当した錦織(にしごり)や、
渡辺を追ってこの事務所に押しかけて来た清和会の橋爪(はしづめ)との
腐れ縁もいまだに継続中。
渡辺とは事件の日以来一度も顔を合わせていないが、
忘れた頃に紙ヒコーキの便りを事務所の郵便受けに残して去って行く。
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今回の依頼は、依頼人の娘が誘拐され、
身代金と娘を交換条件に娘を依頼人に引き渡す事。
しかし・・・
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今回は、「清和会」の橋爪が敵対する何者かに銃弾を二発撃たれ
瀕死の重傷に・・・
渡辺の件で、沢崎を事務所に監禁し拷問にかけた。
今では、清和会の幹部。
その橋爪が、沢崎に「自分を狙ったのは、誰なのか徹底的に調べてくれ。
但し、俺が死んでからだ。
おれを消そうとした張本人は意外なところに、
とんでもねえ近くに、いるような気がする・・・」
と、分厚い封筒を出し、依頼する。
「断る。自業自得だ。おまえがどこの誰に殺されようと、
気にする人間は一人もいない」
と、いったんは断るが、橋爪の本気の依頼に
「いいだろう」と承諾する・・・
彼の全身から死の匂いが、死への恐怖の匂いが漂ってくるような気がしたから・・・
それは、少女の誘拐事件の悲しい結果が頭に甦り、
少女もこのように「自分を殺害した誰か」を知りたかっただろう、
との思いが重なったから・・・。
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出だしから引き込まれる作品。
夏の初めの昼下がり頃だった。
新緑の刺激的な匂いが、
ほとんど自然を喪失しかけているこの都会(まち)にさえ
充ちていた・・・
原 りょう 「そして夜は甦る」
![]() 【中古】 そして夜は甦る (ハヤカワ文庫 JA (501)) |
西新宿の高層ビル街のはずれに事務所を構える私立探偵沢崎の許へ
海部と名乗る男が訪れる。
男はルポライターの佐伯が先週ここへ来たかどうかを知りたがり、
二十万円入った封筒を沢崎に預けて立ち去った・・・
かくして沢崎は行方不明となった佐伯の調査に乗り出し、
事件はやがて過去の東京都知事狙撃事件の全貌と繋がっていく・・・
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さて、原りょう ですね
ハードボイルド私立探偵小説
派手なドンパチやらグロい場面やら込み入ったトリックがない
時代を感じさせるアナログな私立探偵物語
まずこの物語に出てくる人物のキャラクターが良い!
一人一人個性をはっきりさせていて全て魅力的
むしろこの時代の探偵物の方が読み手をわくわくさせるなぁ
携帯もなければPCも使わず、個人情報の規制もゆるい時代だから
人物特定からたぐり寄せる事件解決のプロットが面白い
二十万入った都市銀行の封筒から
「海部マサミ」なる預けた人物を探しあてるなんて、考えただけでも面倒くさい
それを電話帳から同性同名の海部マサミを尋ねる
電話口での会話からカンを働かせながら特定させて行く
セリフ回しが粋で無駄がなく
皮肉なジョークがこれまた面白い
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秋の終わりの午前十時頃だった。
三階建モルタル塗りの雑居ビルの裏の駐車場は、毎年のことだが、
あたりに一本の樹木も見当たらないのに落ち葉だらけになっていた。
私は、まだ走るというだけの理由で乗っているブルーバードをバッグで駐車して
ビルの正面にまわった。
鍵のかからない郵便受けの中のものを取り、
一人しか通れない階段を昇り、
決して陽の射さない二階の廊下の奥にある自分の事務所へ向かった。
なにしろ東京オリンピックの年に
マラソンの未公認世界記録なみの早さで建てられた代物なのだ。
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「更科氏は貴重な時間をさいて君と話しておられる。
きみの好奇心については、のちほど私のほうから差支えない範囲で話しても構わない。
しかし、ここはすみやかに氏の質問に答えてもらいたい。
そのほうが君にとっても効率のいい仕事をすることになるはずだ。」
私は更科氏に言った。
「弁護士を雇えるような身分ではないので、
彼のいまの忠告を正しく理解できたかどうか
自信がないのですが・・・
要するに彼は、
ぐずぐず言わずに知ってることを喋ったほうがてっとりばやく
金になるぞ、と言ってくれているのですか」
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橋爪は即座にナイフの刃を元に戻し、
私のあごの下に切っ先を当てた。
「おれがなぜおまえを殺らねえか解るか。
ヤクザが誰かを殺るときは、自分よりも相手のほうが
失うものが大きいという損得勘定があるからだ。
世間のやつらがヤクザを恐れるのも、
その損得勘定からさ。
ヤクザと殺り合っても、向こうが丸損だからな。
悲しむ親がいるし、仕返しを恐れる妻がいるし、
路頭に迷う子供がいるし、馬鹿げたことをしたと言う友達もいる。
だから、ヤクザには逆らわないでおこうってわけだ。
ところが、おまえはどうだ。
ここでおまえを殺ったって、
おまえよりおれのほうが失うものが大きいような気がするのは、
一体どういうわけだ?」