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向田 邦子 「夜中の薔薇」

向田邦子夜中の薔薇

ほんとにお勧めのエッセイ集です!

60編程の短いエッセイに美しい言葉がてんこ盛り。

向田さんの男前な言い回しや表現が気持ち良いです。

いつもバッグに入れて何気ない時に適当なページを

開いて読むとほんわか心が落ち着く一冊です。

・・・・・・・

一章ごとの題名が趣があって興味をそそられます。

「心にしみ通る幸福」

「ことばのお洒落」

「下駄の上の卵酒」

「食らわんか」

「早いが取得手抜き風」

「時計なんか恐くない」

「女を斬るな狐を斬れ」

「ホームドラマのお父さん役にお願いしたい三人」

などなど・・・

・・・・・・・

「海苔と卵の朝めし」では、のり弁を作りたくなります!

・・・・・・・

「箸置」では、

仕事と家庭を両立させて忙しくしていた女友達が、

仕事を減らした時に言った一言

「箸置も置かずに、

せかせか食事をするのが嫌になったのよ」。

向田さんは、

ときどき箸を休めながら食事をする、

それが人間の暮らしだと

彼女の言葉から改めて気が付いたとの事・・・

・・・・・・・

「ことばのお洒落」では、

渋谷駅で切符売り場の駅員さんに

「渋谷一枚!」と言ってしまった時に

駅員さんが「無料ですよ!」と言って

笑顔になったとの事。

気の利いた洒落た言いかえしに

一瞬惚れてしまったと(^^)

「ことばのお洒落は、

ファッションのように遠目で人を引きつけはしない。

無料で手に入る最高のアクセサリーである。

流行もなく、

一生使えるお得な品である。」

との向田さんの表現が素敵です!

・・・・・・・

「心にしみ通る幸福」では、

「読書は開く前も

読んでいる最中もいい気持ちだが、

読んでいる途中、

あるいは読み終わってから、

ぼんやりするのがすきだ。

砂地に水がしみ通るように、

からだの中に何かが広がって行くようで

「幸福」とはこれをいうのかと思うことがある。」

・・・・・・・

「手袋をさがす」では、

向田さんご自身の価値観を

凝縮していて興味深いです。

面白い視点でご自身を分析し

その後の人生にも

変わらぬ価値観で貫き通した向田さん。

・・・・・・・・

台湾での取材旅行中、

墜落事故にて51歳で亡くなられた向田邦子さん・・・

いつまでも心に残る一冊となりました・・・

新装版なので文字が大きくて読みやすいです。






いつもありがとうございます

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向田 邦子 「男どき 女どき」

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何事も成功する時を「男時(おどき)」。

・・・・

めぐり合わせの悪い時を「女時(めどき)」と言う。

・・・・

25編の平凡な人々の一瞬の生を描いています。

・・・・

向田さんの緻密な人間観察力と描写が詩的です。

・・・・

作品の中で「ゆでたまご」が印象的でした。

「愛はぬくもりです」。

この言葉の意味が

たった1ページ半の物語に集約されています。

泣ける物語でした。

・・・・・・・・・・・・・・

「無口な手紙」も好きな作品でした。


戦時中、疎開する向田さんの妹さんが、

お父さんへ毎日はがきを書きます。

まだ字も書けない幼い妹さんは、

はがきに大きな〇を描きます。

お父さんは大きな〇の大きさで

娘の元気な様子を知るのですが、

ある時から〇が小さくなり、

最後には×を描くようになったそうです。

娘に何かあったと思ったお父さんは、

疎開先から娘を引き取るのですが、

娘は病気になっていたと・・・

お父さんは大量に自分宛てのはがきを用意して、

娘さんに渡していたのだそうです。

親が子を思う形に泣けるお話でした・・・







いつもありがとうございます

向田 邦子 「父の詫び状」


父の詫び状 <新装版> (文春文庫)父の詫び状 <新装版> (文春文庫)
(2005/08/03)
向田 邦子

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宴会帰りの父の赤い顔、母に威張り散らす父の高声、
朝の食卓で父が広げた新聞…
だれの胸の中にもある父のいる懐かしい家庭の息遣いを
ユーモアを交じえて見事に描き出し、
“真打ち”と絶賛されたエッセイの最高傑作。
また、生活人の昭和史としても評価が高い。
航空機事故で急逝した著者の第一エッセイ集。


・・・・・・・・・・・・・・・

祖母が「お父さんから手紙が来てるよ」というのである。
巻紙に筆で、いつもより改まった文面で、
しっかり勉強するようにと書いてあった。
終わりの方にこれだけは今でも覚えているのだが、
「此の度は格別の御働き」という一行があり、
そこだけ朱筆で傍線が引かれてあった。
それが父の詫び状であった。

・・・・・・・・・・・・・・・

父は昔の人間としては体も大きく、
野球やピンポンは子供たちが束になってかかっても
かなわなかったが、自転車だけは駄目だった。
関東大震災の時、
逃げる時は友人の自転車を借りて逃げたが、
返す段になったらどうしても乗れない。
仕方がないので一日がかりでかついで返しにいった
と言う人である。
自分が不得手だったせいか、
女の子が自転車に乗ることをひどく嫌った。
「あれは女が乗るものじゃない。
どうしても乗りたいのなら
自動車か馬に乗れ」

・・・・・・・・・・・・・・・

暗い不幸な生い立ち、
ひがみっぽい性格。
人の長所を見る前に欠点が目につく父にとって、
時々、間の抜けた失敗をしでかして、
自分を十二分に怒らせてくれる母は、
何よりの緩和剤になっていたのではないだろうか。
「お母さんに当たれば、
その分会社の人が叱られなくてすむからね」
と母はいっていた。

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いつもありがとうございます


向田 邦子 「愛という字」 


愛という字 (文春文庫)愛という字 (文春文庫)
(1996/09)
向田 邦子

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意外なきっかけで知り合った男は画家だった。
繊細な指、しゃれた服装、そして胃を病んでいる。
丈夫で平凡なサラリーマンの夫とは何から何まで違っていた。
魅力的な男の出現に揺れる微妙な女心を描いた表題作の他、
温かくてちょっとホロ苦い向田ドラマの秀作
「びっくり箱」「母上様・赤沢良雄」を収録。

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1.びっくり箱

「お母ちゃん、それでいいの、寂しくないの」

「もともと一人だもの。
一日ミシンガタガタやってりゃ、何とか生きてゆけるよ」

とし江は気丈に応えた。
しかし厚子は、とし江の瞳に浮かぶ哀しみの色を見逃さなかった。
淋しさとあきらめ・・・。
つい最近同じ表情を見たような気がした。
どこだったか。
そう考えた時、厚子はハッと息をのんだ。
小塚やすの遺影、あの表情である。
女が女であることをあきらめた時、
その表情は何と暗く悲しく見えるものか。

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2.母上様・赤澤良雄

「うちの正一ったらね、一番おしまいの手紙に
『日本へ帰って、おっかさんと一緒にカエルの声を聞きたいです』って・・・」

しまはハッとして、仏壇の中の遺影に目をやった。
供えたばかりの白菊の花陰から、うら若い特攻隊員が、
しまに向かってテレくさそうな微笑みを投げかけている。
形の良い口許からほんの少しこぼれた歯が、
白菊よりも白く清々しく見えた。


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3.愛という字

「初めて聞いた色の名前だから、新鮮に聞こえたのね。
パープルレーキは、とりレバーの色・・・
モーブは、うちの庭に咲くスミレの色だわ。
毎日の暮らしの中にあったのよ」

直子は、睫毛を瞬いて、雨の雫を払った。

「・・・・そうかもしれないな。
病院で僕の手首をつかんだあの力は、愛だなんて言ったけど、
『空巣』と間違えて、僕の手首をつかんだときの方が、
強かったかもしれない」

「・・・・・」

「ご主人への愛の方が強かったわけだ」

「物欲じゃないかしら。女はケチだから・・・」

守田は苦笑すると、直子も自嘲の笑いを浮かべた。
雨が激しくなっている。

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いつもありがとうございます

向田 邦子 「思い出トランプ」

思い出トランプ (新潮文庫)思い出トランプ (新潮文庫)
(1983/05)
向田 邦子

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浮気の相手であった部下の結婚式に、妻と出席する男。

おきゃんで、かわうそのような残忍さを持つ人妻。

毒牙を心に抱くエリートサラリーマン。

やむを得ない事故で、子どもの指を切ってしまった母親。

日常生活の中で、誰もがひとつやふたつは持っている弱さや、

狡さ、後めたさを、人間の愛しさとして捉えた13編、

直木賞受賞作「花の名前」「犬小屋」「かわうそ」を収録。


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「犬小屋」が面白かったです。


かっちゃんは、三日にあげず顔を出すようになった。
お見舞いと称して、白身の魚を持ってきては、
景虎に食べさせていた。
恐縮する達子の母に、残りものだから、
好きでやっているのだから、と言い訳を言い、
「大丈夫。わたはちゃんと抜いてありますよ」
食べさせる前に必ず見せに来た。
現金なもので、犬はカっちゃんになつき、
アラを入れる石油カンを持った彼の姿が見えると、
大人の腕ほどもある太い尻尾を、
犬小屋の羽目板に打ち付ける音が、
茶の間にいても聞こえるほどだった。


話題がと切れて、じゃあそろそろ、
と言われるのがこわい、といった風に、
引っ切りなしにしゃべり、煙草に火をつけた。
煙草が煙を立てている間は、
お開きにしましょうと言われない事を知って、
そうしているように思えた。

こういうとき、カッちゃんの目は笑っている癖に
泣きべそをかいているようにみえた。
泣きべその目で、カッちゃんは犬地図のはなしをした。
誰かの受け売りらしいのだが、
犬には犬地図というのがあるという。
これは人間の考える地図とは全く別のもので、
どことどこの電柱と垣根にはおれの匂いをつけてある。
どこにいじめっ子がいて、
どこにご馳走をくれるうちがあり、
どこに憧れの牝がいるか、
ちゃんと頭の中に描いてあるのだ、としゃべった。

「犬地図ねぇ」と呟いた母に、
「ありゃ自分のことだな」
父は、よく判っているようであった・・・。




いつもありがとうございます。

向田 邦子 「寺内貫太郎一家」


寺内貫太郎一家 (新潮文庫)寺内貫太郎一家 (新潮文庫)
(1983/03)
向田 邦子

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口下手で怒りっぽいくせに涙もろい、
日本の愛すべき“お父さん"とその家族をユーモアとペーソスで捉え、
きめ細かな筆致で下町の人情を刻み、
東京・谷中に暮す庶民の真情溢れる生活を描いた幻の処女長編小説。

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こういうホームドラマ小説良いですよねぇ。
向田邦子さんのお父さんがモデルだそうです。
昭和の家族風景が懐かしく憧れますね。
笑えて、ホロッと泣けて、ほっこりの物語ばかりです。

ドラマもとっても面白かったですよねぇ。
頑固親父が小林亜星。
いたずら好きのいじわるばあさんが樹木希林。
優しいお母さんが加藤治子。
小さい時に怪我で足を引きずるようになった長女が梶芽衣子。
二浪の息子に西城秀樹。
お手伝いさんが浅田美代子。

ドラマまた観たくなったなぁ。



いつもありがとうございます。

向田 邦子 「あ・うん」   2013.12.8(日)


あ・うん (文春文庫)あ・うん (文春文庫)
(2003/08)
向田 邦子

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 つましい月給暮らしの水田仙吉と
軍需景気で羽振りのいい中小企業の社長門倉修造との間の友情は、
まるで神社の鳥居に並んだ
一対の狛犬阿、呍(あ、うん)のように親密なものであった。
太平洋戦争をひかえた世相を背景に
男の熱い友情と、親友の妻への密かな思慕が織りなす
市井の家族の情景を鮮やかに描いた著者唯一の長編小説。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
社長である門倉には、女性関係が多く、
二号さん、三号さんもいる。
二号さんとのには子供も出来る。
本妻さんとの間には子供がいない。
時代だなぁと思うのは、周りも二号さん三号さんに対しても
おおらかである事。
こんなに女性関係が多い門倉だが、
とても優しくて思いやりのある人物。
親友仙吉の妻「たみ」を密かに想い続けている事は、
周り全員が知るところなのに、いやらしさがない。
門倉がおせっかいを焼き過ぎ、
仙吉の妻たみに叱られる事を、
この上なくうれしく感じる門倉。
飾らない「たみ」の人柄がこの物語の一番の魅力と思いました。



いつもありがとうございます。

向田邦子 「冬の運動会」

冬の運動会 (文春文庫)冬の運動会 (文春文庫)
(1998/01/10)
向田 邦子

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高校時代の万引事件のため
エリート家庭から落ちこぼれた菊男は、
ガード下の靴修理店の老夫婦のもとに
入りびたっていた。
そんなある日、ふとしたきっかけから、
菊男は謹厳な祖父や、
一流ビジネスマンの父の
もうひとつの姿を知ってしまう・・・

人間の本質と家族のあり方を追求して
話題を呼んだ名作ドラマの小説化。

>>>>>>>>>>>>>>

1977年1月放送されたテレビドラマ。

志村喬・木村功・加藤治子・赤木春恵・市原悦子・

大滝秀冶・いしだあゆみ・根津甚八・藤田弓子・風吹ジュン・・・

そうそうたるメンバーでのドラマだったんだなぁ・・・。

今、こういうドラマやってくんないかな・・・。

昭和40年代頃にさかのぼった雰囲気の

ドラマ映像も見たいものだ。



プロフィール

cn7145

Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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