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北 重人 「火の闇」


火の闇 飴売り三左事件帖 (徳間文庫)火の闇 飴売り三左事件帖 (徳間文庫)
(2011/09/02)
北 重人

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金が、金のあるところにしか 回らない。盗人も横行、百姓が逃散する時代、家中の権力争いに巻き込まれ、武士を捨てた飴売り三左。顔はいかついが、笑顔は天下一品。腕が立ち、肝も据わり、頼りになる。市井のもめ事・難事件を鮮やかに処理。殺人事件の下手人捜しから、敵討ちの助っ人、よろず決着。 三左がなぜ、武士から飴売りになったのかといういきさつを描いた絶筆118枚の「火の闇」他、5編を収録。 その急逝が惜しまれる珠玉の作品集。

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三左がなぜ武士を捨てたのか・・・

妻の小紋と後輩の与十郎との関わりは・・・

短編になっていて、最後の章で明かされます。

きっぱり武士を捨てた潔い三左。

与十郎の思いと小紋への想いを身を持って守り抜いた三左。

良い物語でした・・・。

北重人さんはこの小説を最期にガンで亡くなりました・・・。

そう思うと、しんみりとした気持ちになりました・・・。



いつもありがとうございます
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北 重人 「汐のなごり」

汐のなごり (徳間文庫)汐のなごり (徳間文庫)
(2010/02/05)
北 重人

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北前船が着き、米相場が開かれていた北の湊。

銭と汗の匂いのする町を舞台に運命に翻弄されながらもしなやかに生き抜く人々。


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1.海上神火(かいじょうしんか)

想い人を待ち続ける元遊女。

2.海羽山

飢餓で逃散以来、行方不明の兄と邂逅する古手問屋。

「酸っぱい味がしたように思えた。

だが、すぐに涙が溢れ、黒い物を漏らした。

その涙が黒い物の味を消した。

辰吉は噛んだ。

噛むたびに、母を想い浮かべまいとした。

そうだ。兄と別れわかれになって、辰吉は、あの黒い物を

噛みしめ噛みしめ、そのたびに母の姿を消し、

海へとたどり着いたのだ。

喜三郎の目からとめどなく涙が流れ出た。」


3.木洩陽の雪

叔母と弟を亡くし、自分の子供も亡くした知世の自責の念と孫への想い。

4.歳月の船

敵討ちのため30年間、漂泊した果てに、故郷に戻ってきた絵師。

5.合百(ごうびゃく)の藤次

米相場の修羅に生きる男。

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いつもありがとうございます。

北 重人 「夏の椿」

夏の椿 (文春文庫)夏の椿 (文春文庫)
(2008/01/10)
北 重人

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天明六年。
江戸が大雨に襲われた日、甥の定次郎を何者かに斬殺された旗本の三男坊である
立原周乃介は、その原因を調べるうちに、
定次郎が米問屋柏木屋のことを探っていたことを知る。
柏木屋の主人、仁三郎には暗い陰が見え隠れしているようだ。
核心に迫りだした周乃介の周りで不審な事件が起き始めた。

・・・・・・・・・・・・・・・・

雨はいよいよ繁くなっていた。
木立や築地(ついじ)を打つ音が、両側から圧(お)しかかってくる。
風が出て、時折、あおられた梢から雨が滝のように落ちてきた。
そのたびに、定次郎の傘が激しく鳴った。
坂下で、辻番の灯りが滲んで揺れている。
それはひどく遠くに見えたかと思うと、
番屋の戸口が浮き出るかと思うほど近くに見えたりした。
降った雨が坂を流れ下っていく。
地面に食い込んだ高下駄の歯先で、土が抉(えぐ)られていくのがわかる。

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海賊橋から見る楓川の水面は、すっかり色を失っていた。
それでも、堀と落ち合う小網町の辺りは、
空の残り陽を映して青い色を帯びていた。
河岸蔵(かしくら)の屋根が、大鋸(おおのこ)の歯のような影絵を描いている。

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伝通院は岡の上にある。
岡は、小石川と江戸川の谷に挟まれている。
門前の安藤坂に立てば、牛込御門のお堀まで見通せる。
番町から牛込辺りの武家屋敷の屋根屋根が、
きらきらと秋の西陽を浴びていた。
周乃介は伝通院を過ぎ、
江戸川に向かって細い道を折れる。
片側に寺があり、張り出した梢が空を覆っている。

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周乃介は、稲荷新道の五十鈴屋の二階に居た。
露地庭に面した、いつもの部屋である。
形の佳い楓が枝を広げている。
この間は、萌え出た緑がみずみずしかった。
いま、楓は露地の空を埋め、窓際から部屋に入り込んできそうだ。
傾いた陽射しが、細かな葉の間から洩れている。
微かな風で葉は揺れ、畳の上に光の漣(さざなみ)が立つ。

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両側は武家屋敷である。
坂を秋風が走って、頭上で梢が騒いだ。
坂下では外堀が陽を浴び、手前には辻番の小屋が見えている。
坂を下りきって左手に折れる。
牛込の河岸と揚場町の片町が続く。
河岸には木材やら俵物が積み上げられていた。
河岸が尽きると橋がある。
船河原橋である。
北から流れてくる江戸川が、橋のすぐ下手で外堀と落ち合う。
江戸川と外堀の間に落差がある。
外堀に引き込まれるように、江戸川の水は落ちていく。
水勢に応じて落とし口が盛り上がり、その度に
どぉーん、どぉーんと水音が高まる。
それで近くの者たちは、船河原橋をどんどん橋とも呼んでいた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
夜半、月が出た。
寝待ちの月であった。
月影に両岸の蘆(ろ)が浮かんだ。
川に沿って曲がるたびに、曲がるたびに、
船縁(ふねべり)の間際まで蘆(ろ)の葉が近づく。
時に、船棹が葉を鳴らし、水音を立てた。

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周乃介は暗いうちに須川の旅籠(はたご)を出た。
宿々の門口から洩れた灯りが、道に縞模様を描き出している。
前方に山の気配が蟠って(わだかまって)いた。
陽が昇ると、山並みが迫る。
木々が色づき、真っ青な空が高い。
これならば今日中に越後に入れる、と周乃介は思った。
川を左手に見下ろしつつ、
道は徐々に高くなっていく。
やがて猿ケ京関所を抜け、永井宿に出る。
山腹に貼り付くように家並みが連なっている。
街道はそこから、胸を突く登りになる。


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北重人さんの文章表現が素晴らしくて、
一ページ一ページゆっくり楽しみながら読んでいます。
物語の面白さで読む本もありますが、
重人さんのような魅力的な文章で読む本もあります。
もう亡くなられているので、限られた作品となりましたが、
じっくり味わいながら読ませて頂いています。
本当に素晴らしい作家さんでしたね・・・。



いつもありがとうございます。


蝶が舞うリースの時計
プロフィール

cn7145

Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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