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北原 亜以子 「たからもの」


たからもの 深川澪通り木戸番小屋たからもの 深川澪通り木戸番小屋
(2013/10/17)
北原 亞以子

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江戸・深川。木戸番の笑兵衛とその妻、お捨は、人にいえない苦労の末に深川に流れてきたと噂されている。
無口だが頼りがいのある笑兵衛と、ふっくらとした優しさで人々を包み込むお捨のもとには、困難な人生に苦しむ人々が日々、訪れる。
悲しみや愁いを抱えた人たちの背中をそっと押す二人。
生きてゆくことにささやかだが確かな希望の灯をともす、八篇を収録。

今年3月に逝去した著者による、このシリーズ最後の1冊。


まだまだ続いて欲しかったなぁこのシリーズ。
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北原 亞以子 「恋情の果て」


恋情の果て恋情の果て
(2014/05/16)
北原 亞以子

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江戸の女も恋に生きた

狂おしい思い やるせない未練

見栄、嫉妬、未練、欲望・・・

静かに熱く葛藤する女たちを描く、

珠玉の時代小説短編集。

・・・・・・・・・・・・・・

手と手を取り合って房州館山から江戸に駆け落ちしてきた三次とおとせ。

掏摸(すり)にあい、公事師(くじし)に騙され(だまされ)、

おとせに代わり妓楼の女主人に買われた三次。

料理屋の女将となったおとせは、

「おらもあとから逃げる」という三次の言葉を信じて、

ひたすら待ち続けた十年の月日。

強引に林之助に口説かれたその日、

偶然三次に会えたおとせの心はなぜか二人の間で揺れる・・・・・。

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いつもありがとうございます

北原 亞以子 「妻恋坂」


妻恋坂 (文春文庫)妻恋坂 (文春文庫)
(2007/11)
北原 亞以子

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お町が番附売りの周二と出会ったのは霞ヶ関の坂道だった。

男振りのいい周二から過去の話を打ち明けられたお町は

いつしか恋心を抱いた。

だが周二の話にはたった一つ、

ついてはならない嘘があった―表題作のほか、

江戸の喧騒の中を懸命に生きる七人の女たちの営みなどを

艶やかな筆で描く著者会心の短編集。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1.妻恋坂
2.仇討心中
3.商売大繁昌
4.道連れ
5.金魚
6.忍ぶ恋
7.薄明り

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4.道連れ


「帰っとくれ」
と、おしんは言った。
「二度とこないでおくれ」
おすえは、黙って火吹竹をおしんの足許に置いた。
上目遣いにおしんを見たが、
おしんが顔をそむけているのを見ると、
板の間に上がってきた。

「世話になったね」
答える気にもならなかった。
おすえは、少しの間立ちどまっていたようだが、
障子の開く音がした。
布の触れ合うような物音が聞こえてくるのは、
着替えを戸棚から取り出しているのかもしれなかった。

「帰るよ」
背後で嗄れた声がした。

「忘れものをしないでおくれ」

「わかってるよ」
茶の間から表口へ出て行ったらしい。
沓脱の下駄をはく音が聞こえて、
格子戸が開いた。
飴の袋をかかえて、横山町二丁目を表通りから裏通りへ、
裏通りから表通りへと、
幾度もまわっていたおすえの姿が目の前に浮かんだ。

ばかやろう。
娘のうちへ行かれなくなったのは、
わたしのせいじゃねえや。

だが、日傘もささずに横山町を歩いていて、
陽に焼けたおすえの姿は目の前から離れない。

顔も知らない母親も、おしんに会いたさに、
叔母の家のまわりを歩いていたことがあるのではないか。

おしんは、表口の三和土に飛び降りて格子戸を開けた。

「ばかやろう。朝めしぐらい食ってゆきな」

小さくなっていたおすえの姿が足をとめ、
おしんをふりかえったようだった。

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いつもありがとうございます

北原 亜以子 「深川澪通り木戸番小屋」

深川澪通り木戸番小屋 (講談社文庫)深川澪通り木戸番小屋 (講談社文庫)
(1993/09/03)
北原 亞以子

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第17回(1989年) 泉鏡花文学賞受賞


川沿いの澪通りの木戸番夫婦は、

人に言えない苦労の末に、深川に流れて来たと噂されている。

思い通りにならない暮らしに苦しむ人々は、

この2人を訪れて知恵を借り、生きる力を取りもどしてゆく。

傷つきながらも、まっとうに生きようとつとめる市井の男女を、

こまやかに暖かく描く、泉鏡花賞受賞の名作集。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1.深川澪通り木戸番小屋
2.両国橋から
3.坂道の冬
4.深川しぐれ
5.ともだち
6.名人かたぎ
7.梅雨の晴れ間
8.わすれもの

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

5.ともだち

 
「おもんさん・・・」
おすまは、お捨のいることも忘れて駆け寄った。

「どうしたのさ。だらしないじゃないか」
知らぬ間に、昔馴染みに会ったような言葉で話しかけていて、
懐かしい人にようやくめぐり合えたような涙がこぼれてきた。

「勘弁しておくれよ」
おもんも、高い熱に息をはずませながら親しげに言った。

「風邪をこじらせちまってさ。ずいぶん待ってくれたんだってね」

「そうさ。来られないのなら、伜さんにでもことづけを頼みゃいいじゃないか。
そうしたら、すぐに見舞いに来られたのに」

「それも、勘弁しておくれよ」
おもんは弱々しく笑った。

「伜なんざいやしない。知らせようがなかったんだよ」

「一人ぽっちだったのかい、おもんさんも」
おすまは遠慮なく涙をこぼしながら、おもんの涙を拭った。
おもんの涙も際限がなかった。

「家ん中を見てごらんよ。何もありゃしないだろ。
着物をとっておいても、くれてやる娘はいない。
金足の簪だって、おっ母さんのかたみだと眺めてくれる者はいやしないよ。
そう考えると、何もかもばかばかしくなっちまってね。」

「わかるよ。わたしの家だって、空っぽだもの」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


いつもありがとうございます

北原 亜以子 「花冷え」

花冷え (講談社文庫)花冷え (講談社文庫)
(2002/02/15)
北原 亞以子

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紺屋の大店の末娘おたえは、幼くして両親を亡くし、

叔父の店で育った。

奉公人の弥吉は、五つ年上の型付け職人。

いい仲になった二人を、

叔父は夫婦養子にと考えていたのだが…。

ささやかな幸せを求め健気に生きている、

そんな女の一途な想いを

情感溢れる筆致で細やかに描いた、

珠玉の時代小説七篇を収録。

・・・・・・・・・・・・・・

いい縁談だと思う時には、

その人に心をひかれているの。

心をひかれている女と、

気がかりな女では勝負になりゃしない。

自分の気持ちをたしかめたいっていうのは嘘で、

ほんとうは、気がかりをなくして

その人と一緒になりたいんでしょう?

ええわたしだって、それぐらいわかる。

だって、二十(はたち)だもの。

・・・・・・・・・・・・・・・


いつもありがとうございます

北原 亞以子 「深川澪通り燈(ひ)ともし頃」


深川澪通り燈ともし頃 (講談社文庫)深川澪通り燈ともし頃 (講談社文庫)
(1997/09/12)
北原 亞以子

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江戸で5指に入る狂歌師となった政吉は、

野心のあまり落ちこぼれて行くが、

唯一救いの燈がともっていて・・・。

幼い頃親を失ったお若は、

腕のよい仕立屋になれたが、

1人の心細さがつのる時は、

まっすぐに深川澪通りに向って・・・。

辛い者、淋しい者に、無条件に手をさしのべる木戸番夫婦を描く

傑作時代長編。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「三ちゃん、お前、姉ちゃんが好きなんだろう?

吾兵衛さんは、その姉ちゃんが好きになった人なんだよ」

吾兵衛が、薄く目を開いた。

三次郎は、姉に会いに行っても、台所にすら上げてもらえなかったことを

思い出していたのかもしれない。

かたくなに押し黙って俯いていた。

「お前は姉ちゃんと甥っ子を、塩売りで食べさせているんだろう?

姉ちゃんの内職で食べさせてもらって、

姉ちゃんに子守歌をうたってもらっているわけじゃないんだろ?

それだけ一人前になった男が、

どうして姉ちゃんの好きな男に愛想のいい顔を向けてやれないんだよ」

だって・・・と、三次郎は言ったように見えた。

が、その言葉は口の中で消えて、

あとにつづく筈だった不平も、胸のうちで呟いているようだった。

お若は、三次郎と膝を突き合わせた。

「お前も来年は十七だろ?

姉ちゃん母子を養ったり、

おみやと所帯をもとうとしたり、

もう立派に一人前じゃないか。

一人前なら、もっと見栄をお張り。

姉ちゃんを吾兵衛さんにとられたのが口惜しくっても、

姉ちゃんに甘ったれられなくって淋しくっても、

そんなことは平気だって顔をおし。

一人前の男が、それくらいの見栄を張れなくってどうするんだよ」

言っているうちに、お若は、自分を叱っているような気がしてきた。




いつもありがとうございます

北原 亞以子 「恋忘れ草」

恋忘れ草 (文春文庫)恋忘れ草 (文春文庫)
(1995/10)
北原 亞以子

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新進気鋭の女流絵師・歌川芳花ことおいちは、
出世作『竹林七美人図』で彫師をつとめた才次郎と
恋におちる。
一途に才次郎を求めるおいちだが、
才次郎には女房と子供が待つ家があった・・・。

江戸の町で恋と仕事に生きた“キャリアウーマン”たちの
哀歓(あいかん)を描いた直木賞受賞作品。

・・・・・・・・・・・・・・・・

おいちはいつも誰かを待っていた。
母のおあさがこの世を去った時、
おいちは七歳だった。

遊び仲間は夕暮れになれば母親に呼ばれ、
家へ帰って行くのだが、
おいちの家には明かりもついていない。

おいちは暗い家へ入るのが怖さに、
いつも地面に絵を描きながら
与兵衛の帰りを待っていた。

六つ(午後六時頃)の鐘が鳴って日が暮れて、
それでも帰って来ない父親を
駒止橋(こまどめばし)の方まで迎えに行って、
涙のにじんできた目に
股引(ももひき)の紺色がにじんで映ったこともある。

無口な与兵衛は、泣いているおいちを
あやすこともできなかった。
「帰って来たじゃねえか」とだけ言って、
抱き上げてくれるのである。

衿首にしがみついて触れた父の頬は、
毎朝剃ってゆく髭が生えかけていた。

簡単な夕飯を食べ終えると、
おいちは、与兵衛の膝に坐った。

与兵衛の膝の上で遊び、
仲間の似顔絵や、
こわごわ見つめていた虫、
飽かずに眺めていた道端の雑草などを
描いていたのだった。

何も言わなかったが、
与兵衛は嬉しそうだった。

おいちの描いた自分の姿を、
お守りのように懐へ入れていったこともある。

後に手間取りの男から聞いたところでは、
普請場の誰かれとなく見せてまわっていたという。


・・・・・・・・・・・・・・・・

物語としては、せつないと言うよりも、
少々相手の男「才次郎」に対して、
情けなさと、憤りに近いもの悲しさを感じ、
「おいち」への共感を高く感じました。

女性が一人立ちして仕事をして行くと言う事は、
現代でも大変なのに、
江戸時代では尚更並大抵の事ではないですよねぇ・・・
何かを得る為に多くの事を我慢し、
失っても来た「おいち」・・・。

おいちが絵師になることを父親は反対しませんでした。
むしろ弟子になるべく師匠を探してくれたりと、
おいちにとって今は亡き父親との生活が
どれほど楽しかったことか・・・。

才次郎の女房と娘を見たおいちが、
一人自分の家に帰って来た場面で、
幼い頃の自分を思い出します。

ストーリーの面白さよりも、
北原さんの深くて美しい文章に
時間を忘れて読み切りました。


蝶が舞うリースの時計
プロフィール

cn7145

Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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