宮部 みゆき 「鬼子母火(きしぼび)」(幻色江戸ごよみより)

短編時代小説。
「鬼子母火」が良かった。
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奉公先の酒問屋で神棚から火が出た。
幸いボヤで済んだが、
神棚のしめ縄から何故か髪の毛の束が見つかる・・・
いったいこれはどういう意味なのか・・・
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しめ縄に髪の毛を隠したのは、
ひと月前に女中として奉公してきた
まだ12歳の幼い「お勝」だった・・・
なぜ髪の毛をしめ縄に隠したのか・・・
それは、
お勝が病で亡くなった母親を想う気持ちからだった・・・
神棚に祀った行いで供養しようとした・・・
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奉公に来る前に村で起きた流行り病により
お勝の母親は苦しんだ挙げ句に亡くなった・・・
土葬は禁止とされ、母親は燃やされた・・・
お勝は、母親が燃やされたら
土に還れないと泣き悲しむ・・・
祖母や早死にした兄のそばに
一緒に眠れないと・・・
お勝は、悲しい思いを抱えながら
奉公に出る事になった・・・
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それでも母親への想いを残したかったお勝は
ひっそりと母親の髪の毛を隠し持ち
着物の襟に縫い付けて大切にしていた・・・
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貧しく食べる事にも事欠く暮らしだったから
奉公先の神棚に祀れば
日々手を合わせ水も食べ物もあげてもらえる・・・
お勝の幼い思いつきが、
後にボヤ騒ぎで大事になるところだった・・・
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この物語に登場する
女中頭の「おとよ」がお勝に愛情深く
面倒をみます。
お勝への気持ちを込めた一言一言が
しみじみ感動します。
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謎が解ける過程がホロリとなりました。
静かで優しい物語に感動しました。
いつもありがとうございます

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