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大岡 昇平 「野火」


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昭和二十六年「展望」に連載。

読売文学賞受賞。

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致命的な宣告を受けてるのは私であるのに、

何故彼がこれほど激昂しなければならないかは不明であるが、

たぶん声を高めるとともに、

感情をつのらせる軍人の習性によるものであろう。



情況が悪化して以来、

彼らが軍人のマスクの下に隠さねばならなかた不安は、

我々兵士に向かって爆発するのが常であった。


この時わが分隊長がもっぱら食糧を語ったのは、

むろんこれが彼の最大の不安だったからであろう・・・


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大岡 昇平


 1909年、東京都生まれ。

京都大卒。在学中より文学を志す。

四十四年召集を受け、

赴任地のフィリピン・ミンドロ島で敗戦を迎え、

米軍捕虜となる。

生還後、

「俘虜記」「野火」「ミンドロ島ふたたび」等、

戦争体験に基づく生々しい作品を多数発表。

恋愛小説・翻訳・評伝などの著作もある。

六十二年芸術員会員に選ばれるが辞退。

文学者としての良心に従い、

率直な文筆活動を続けて、

さまざまなジャンルに及び高い世評を受けた。

八十八年、永眠。



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安住 洋子 「しずり雪」




1999年第三回長塚節文学賞短編小説部門大賞受賞!

安住洋子
 1958年兵庫県尼崎市生まれ。
大阪信愛女学院短期大学卒。
学習塾で国語科教材作成に携わる。
現在サンフランシスコ在住。


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しずり雪

寒月冴(さ)える

昇り龍

城沼の風


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安住さんの物語は、共通して

やりきれなさと悔恨を土台に

日々をぎりぎり乗り切る人々が描かれています。

どうしようもない事をあきらめるかふんばるか・・・

守り・勝ち抜き、それぞれが最低限の暮らしでも何とか

生きていけるよう賭けにも似た姿が描かれています。



また自分の事だけで悩み苦しむのではなく、

家族・友人・はては全くの他人の為に

自分を犠牲にしてまで奔走する姿に、

芯の強さと底力を感じ、励まされる思いと、

決して不幸で終わらせない安住さんの小説に

せつなさを感じつつも希望を感じとりました。


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しずり雪とは・・・

樹々に積もった雪が陽光を受けてしずり落ちること。


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「しずり雪」


一人で死んでいったのか、作次・・・

雪の重みでしなっていた椿の枝が

身震いするように跳ね上がり、雪が舞った。

孝太の顔に雪がかかる。

脳裏に幼い顔の笑顔の作次や、

遠慮気味に裏店にやってきては上目遣いに窺っていた作次が、

浮かび上がってくる。

孝太は感覚のなくなった手を握りしめ、

堪えきれずに嗚咽した。

顔を上げると、

枝から絶え間なく雪がこぼれ落ちていた・・・



安住 洋子 「日無坂(ひなしざか)」

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親と子のすれ違い

謎解きが感涙に変わる・・・


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非常に読みやすい小説です。

初めの方は、切ない少年期の伊佐次が描かれています。

どんなに頑張っても出来て当たり前で、父親に認めてもらえず、

薬種問屋の跡取りとして厳しくしつけられます。

父親は婿の為、亡くなった嫁の母親に大変気を使い、

母親の手前、厳しく冷たい目で伊佐次に接します。

弟の栄次郎は、体が弱く頼りないですが、

素直で甘え上手の為、祖母は栄次郎ばかりを可愛がります。

伊佐次は、父親に愛情を期待しますが、受け入れてもらえず、

青年期にぐれてしまい、とうとう勘当されてしまいます。

勘当されてからの伊佐次は、当時の遊びで世話になった

賭場の親分の所で働き始め、後の後継者と噂される程にまでなり、

頼りにされる存在になってしまいますが、

親分が余命わずかとなり、亡くなった後は、

自分は足を洗って、江戸から離れる心づもりでいました。


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そんな中、勘当された実家の父親が亡くなったと知らせが・・・

前日の夜に、偶然「日無坂」で見かけた父親は、

悲愴な顔をしており、すれ違っても息子に気づくことはありませんでした・・・

そして・・・次の日には川に落ちて亡くなったとの知らせが・・・


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伊佐次は、父親の亡くなり方に疑問を持ちます。

前日の夜、父親とすれ違った後に、

見知らぬ狐顔の男が父親の後を追っていたからです。


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父親は同業の薬種問屋の大店から、

妙薬と言われる高価な「龍氣散」を仕入れるよう勧められており、

断れない付きあいの為仕方なく仕入れていました。

しかし、成分に疑問を持った父親は、一人調べており、

結果・・・

効き目の効果が見られない成分で調合されていることが判明・・・

それを大店に覚書として提出した矢先の父親の死・・・

父親は消されたのではないか・・・


また、偶然日無坂で尾行していた狐顔の男が

すれ違った伊佐次の事を知っており、

父親と結託しているのではないかと疑い、

伊佐次も狙われることに・・・


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伊佐次は、父親の無念を晴らすべく

犯人探しに奔走します。


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父親に叱られても謝らない程の頑固な少年だった伊佐次。

実は、自分の思いが伝わらない事で、

言葉に出来ず、口をつぐんでしまっていただけでした。

素直ではないと祖母になじられ、ますますかたくなになる少年伊佐次・・・

その頑固さゆえ、父親への反発を勘当されるというところまで

ひきずってしまい、離れて暮らすことになりましたが、

心の中では、いつも何かしら、父親・弟を気にしていました。

賭場の借金で息子と女房をおいて逃げた男の家に行った際には、

父親に捨てられた幼い子供の目を見て、

自分の幼い時の事を思い出し、

子供を奉公させて欲しいと、

将来の面倒を弟の栄次郎に託します。


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弟栄次郎は、伊佐次が勘当された後、正式に跡取りとして

父親と店をやるのですが、兄と違い優柔不断で、覚えも悪く、

父親に、将来を不安視されていました。

しかし、父親が亡くなった事で、栄次郎もしっかりと自覚し

成長していきます。

兄の伊佐次に対しては、江戸を離れず、自分たちをいつまでも

見守って欲しいと願い出ます。

伊佐次と栄次郎の正反対の人間性も興味深く描かれています。

男ぶりも良い伊佐次ですが、

この物語の中では、女性の存在は一切描かれていません。

めずらしいですね。

ですので色っぽいシーンは皆無です。

好きだ嫌いだ、ホレたはれたという

恋愛物をあまり読まない自分としては、

好みの物語でした。





プロフィール

cn7145

Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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