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山本 甲士 「ALWAYS 三丁目の夕日」







傘をなくして町内中を探し回る和広君の章が好き。

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和広の家には傘が一本しかない。

黒い綿の洋傘で、何度も修繕してあるせいで、

つぎはぎや違う色の縫い目がある。

お母ちゃんによると、ナイロンの洋傘一本を買うおカネがあったら、

コメを七升ぐらい買えるらしい。

洋傘はそれぐらい高い、簡単には買えないものだ・・・


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映画でこの和広君の傘のシーンがないのが残念・・・

お給料は安いが一生懸命働いてくれるお父さんが大好きな和広君。

大事な傘を学校帰りにどこかに忘れて来てしまい、

町内中を探し歩く。

途中、和広君と同じ傘を持っていた上級生を盗んだと誤解してケンカしたり・・・

結局傘は見つからなかった・・・

和広君は、お父さんを迎えに駅まで行き泣き出してしまう。

事情を知ったお父さんは、近くの傘屋さんへ連れて行き、

新しい傘を3本買ってくれる。

「そろそろみんなの分の傘を買うつもりだったんだ。くたびれてたからな。」

と言って笑った。

ちょっと無理した笑顔だったが・・・

和広君は心の中で言った。

おとうちゃんごめんなさい。

おとうちゃんありがとう。



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福井 晴敏 「川の深さは」



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彼女を守る。

それが、おれの任務だ!


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昏い(くらい)澱み(よどみ)の中を、

鮮烈に走り抜ける命。

明日知れぬ逃亡、そして戦い・・・

熱く、切なく、深い・・・

失われた誇りを蘇らせる修羅の軌跡・・・


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手負いの獣となって、

追手から逃げ延びてきた少年。

傷だらけの体に自動拳銃(クロック17)。

世界を敵に回して。

その瞳にかつての自分を見た警備員は、

彼を匿う(かくまう)ことで底なしの川に引き込まれていった・・・

少年を追う者たちはやがてその姿を現し、

風化しかけた地下鉄テロ事件の真相が封印されたこの国の亀裂とともに、

白日の下に曝(さら)される・・・


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「助けて・・・くれますか?」

落ち着いた問いかけだった。

思わず「なに?」と聞き返した桃山に、少女はハサミを捨ててまっすぐな目を向けた。

「お願いします。助けてください。怪我してるんです」

懸命な目と声が、今度ははっきりと耳朶(じだ)を打った。

上げていた手を下して、桃山は一歩、彼女に近づいた。

「怪我って・・・あんたか?」

「いえ・・・」背を伸ばし、その一歩を受け入れた少女の顔が、

苦しそうに伏せられた。

「あたしの・・・友達です」


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「質問!」と不意に口を開いた。

悪戯な笑みを含んだ顔で二人の男を交互に見、

開いた雑誌を胸に隠す。

「あなたの目の前に川が流れています。

深さはどれくらいあるでしょう?

1.足首まで。2.膝まで。3.腰まで。4.肩まで 」

「なんだそりゃ」

「心理テスト」雑誌の巻末をちらと示して、葵(あおい)は文字通り試す目を向けてきた。

「考えちゃダメよ。パッと思いついた印象で答えて」


「肩までだろそりゃ」と桃山が答えたのと、

「肩まで・・・かな」と保が言ったのは、ほとんど同時だった。

「これはね、あなたの情熱度を表しているの。

足首までって答えた人は、あんまり情熱のない人。

膝までは、あるにはあるけどいつも理性の方が先に立つ人。

腰までは、なんにでも精力的で一生懸命、いちばんバランスの取れてる人。

「肩まではどんな人だい?」

「情熱過多。暴走注意だって」


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曙光(しょこう)が水平線の向こうに生まれ、

ゆったり広がる朝の光が雲を薄桃色に染め、

海を金色に染めて、世界の色を変えてゆく。

長い夜の終わりを告げる光。

実体のなかった明日が、確かな今日になる瞬間だった・・・

冷えきった体に朝陽を浴びながら、

桃山は声も涙も出ない、飽和した顔を海と空の界面に向けた。


そうするしかなかったのか保・・・

これでよかったのか。

おまえの川は、このだだっ広い海に流れ着くことができたのか?

今日は、昨日よりマシな今日になったのか・・・?





プロフィール

cn7145

Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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