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福井 晴敏 「川の深さは」



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彼女を守る。

それが、おれの任務だ!


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昏い(くらい)澱み(よどみ)の中を、

鮮烈に走り抜ける命。

明日知れぬ逃亡、そして戦い・・・

熱く、切なく、深い・・・

失われた誇りを蘇らせる修羅の軌跡・・・


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手負いの獣となって、

追手から逃げ延びてきた少年。

傷だらけの体に自動拳銃(クロック17)。

世界を敵に回して。

その瞳にかつての自分を見た警備員は、

彼を匿う(かくまう)ことで底なしの川に引き込まれていった・・・

少年を追う者たちはやがてその姿を現し、

風化しかけた地下鉄テロ事件の真相が封印されたこの国の亀裂とともに、

白日の下に曝(さら)される・・・


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「助けて・・・くれますか?」

落ち着いた問いかけだった。

思わず「なに?」と聞き返した桃山に、少女はハサミを捨ててまっすぐな目を向けた。

「お願いします。助けてください。怪我してるんです」

懸命な目と声が、今度ははっきりと耳朶(じだ)を打った。

上げていた手を下して、桃山は一歩、彼女に近づいた。

「怪我って・・・あんたか?」

「いえ・・・」背を伸ばし、その一歩を受け入れた少女の顔が、

苦しそうに伏せられた。

「あたしの・・・友達です」


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「質問!」と不意に口を開いた。

悪戯な笑みを含んだ顔で二人の男を交互に見、

開いた雑誌を胸に隠す。

「あなたの目の前に川が流れています。

深さはどれくらいあるでしょう?

1.足首まで。2.膝まで。3.腰まで。4.肩まで 」

「なんだそりゃ」

「心理テスト」雑誌の巻末をちらと示して、葵(あおい)は文字通り試す目を向けてきた。

「考えちゃダメよ。パッと思いついた印象で答えて」


「肩までだろそりゃ」と桃山が答えたのと、

「肩まで・・・かな」と保が言ったのは、ほとんど同時だった。

「これはね、あなたの情熱度を表しているの。

足首までって答えた人は、あんまり情熱のない人。

膝までは、あるにはあるけどいつも理性の方が先に立つ人。

腰までは、なんにでも精力的で一生懸命、いちばんバランスの取れてる人。

「肩まではどんな人だい?」

「情熱過多。暴走注意だって」


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曙光(しょこう)が水平線の向こうに生まれ、

ゆったり広がる朝の光が雲を薄桃色に染め、

海を金色に染めて、世界の色を変えてゆく。

長い夜の終わりを告げる光。

実体のなかった明日が、確かな今日になる瞬間だった・・・

冷えきった体に朝陽を浴びながら、

桃山は声も涙も出ない、飽和した顔を海と空の界面に向けた。


そうするしかなかったのか保・・・

これでよかったのか。

おまえの川は、このだだっ広い海に流れ着くことができたのか?

今日は、昨日よりマシな今日になったのか・・・?





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山本 幸久 「幸福ロケット」


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クラスで八番目にカワイイ「あたし」(山田香な子、小五♀)と

深夜ラジオ好きでマユゲの太いコーモリ(小森裕樹、小五♂)の

可笑しくて切ない初恋未満の物語。



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ふたり同じ未来を見てた。

京成電車にガタゴト揺られながら・・・



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「コーモリ、あのあと、なにをいおうとしたの?

あれは別れの言葉だったの?

わかりづらいよ!」


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京成電車のなかで、ホームの白い光のしたで、

言葉にならない言葉がこぼれてく。

時間はもう止まらない。

胸にこみあげてくるものを感じながら、

あたしは走り続ける。

確かめなくちゃ、聞かなくちゃ・・・

誰も知るはずのない

“未来の笑顔”をコーモリがくれたから・・・


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「おれはいつか山田の前にふたたびあらわれる。

一年後か、二年後、もっとさきかもしれない。

でも必ずだ。

そのときおれの顔がわかるようにそれをもっていてくれ。

山田の未来の似顔絵は、おれ、もっておくから・・・」


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山本幸久

1966年、東京都八王子市生まれ。

中央大学文学部卒。

「笑う招き猫」で第16回小説すばる新人賞受賞。

他に「はなうた日和」「凸凹デイズ」など。



プロフィール

cn7145

Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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