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藤井 邦夫 「五月雨-知らぬが半兵衛手控帖⑮」


五月雨-知らぬが半兵衛手控帖(15) (双葉文庫)五月雨-知らぬが半兵衛手控帖(15) (双葉文庫)
(2011/08/11)
藤井 邦夫

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4話収録。

1.五月雨(さみだれ)
2.身代わり
3.腐れ縁
4.妻恋坂

・・・・・・・・・・・・・・・

「腐れ縁」


「おかよちゃん、文七は人を殺したんだ。
神妙にお裁きを受けて罪を償わなきゃあならないんだ」

「おかよちゃん、文七は金をせびり、博奕や女遊びに現を抜かしている。
それでも文七を庇うのか・・・」

「腐れ縁なのよ・・・」おかよは言い放った。

「子供の頃からの腐れ縁なのよ。
文七が博奕や女に私のお金を注ぎ込もうが、
どうだっていいのよ。
いろいろあっても、文七には私しかいないし、
私には文七しかいないんです」

「半次さん、私と文七は、お互いに傷つけあって生きていく腐れ縁。
昔の事なんかもう忘れて下さい」

十四、五歳お頃から付き合ったおかよと文七に何があったのかは知らない。
だが、男と女の事だ。
何があってもおかしくないし、何があったのかも分からない。
そこに、他人には分からない男と女の関わりが秘められている。
それが、男と女の腐れ縁と云うものなのかもしれない。
腐れ縁・・・
おかよの言葉は夜の静けさに木霊した。

・・・・・・・・・・・・・・・

今回も半兵衛の粋な裁量が際立ちます。

それぞれが、哀しく切ない事件なので、

心ある半兵衛ならではの事件解決とはいえ、

後味すっきりばかりではない物語もあります。

特に「3.腐れ縁」はやりきれない悲しい物語でした。

このお話は、半次が活躍します。

幼馴染で初恋のおかよと文七の腐れ縁を切らしてやりたく、

半次が奔走しますが、

おかよ自身が文七に刃物で始末することで終わりにします。

半兵衛は、おかよが文七を殺したとなっては、

死人とは言え、おかよも人殺しの咎人(とがにん)として扱われ、

まともに埋葬する事は許されないと言い、

文七は追い詰められて自害し、おかよは悲観して後を追った事にします。

真実を公にする事がすべて良いと限らない。

「世の中には、私たちが知らん顔した方が

良い事もあるさ・・・」と半兵衛はうそぶきます。






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藤井 邦夫 「詫び状-知らぬが半兵衛手控帖⑭」

詫び状-知らぬが半兵衛手控帖(14) (双葉文庫)詫び状-知らぬが半兵衛手控帖(14) (双葉文庫)
(2011/05/11)
藤井 邦夫

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酒に酔って刀を振り回した下総佐倉藩士を一刀のもとに斬り倒した浪人者がいた。
太刀筋から田宮流抜刀術の遣い手と睨み、
男の探索を開始した北町奉行所臨時廻り同心白縫半兵衛だったが、
大店の米問屋で台所奉公する男の女房の周辺で
押し込み強盗の影がちらつきはじめる・・・

懸命に幸せを求め全てを捨てて一緒になった
糟糠(そうこう)の妻への最後の憐情(れんじょう)・・・。

※糟糠(そうこう)の妻とは、
 貧しいときから一緒に苦労を重ねてきた妻の事。

・・・・・・・・・・・・・・・・

「すまぬ、おたえ・・・」
速水は、駆け落ちをしてから仕官先を求めて懸命に運動した。
おたえは、そんな速水を支えて働いた。
だが、速水に仕官の口はなく、
次第に身を落とした。
おたえは、そんな速水を責めず、
身を粉にして働き続けた。

速水は駆け落ちして以来、
苦労を強い続けて来たおたえに詫びた。
そして、筆を取り、懐紙に三行半を書き始めた。

三行半とは、夫から妻に出す離縁状であり、
離婚を告げ、再婚するのに問題ない事を三行半で
書き記したものだ。

速水は「玉泉堂」喜左衛門から受け取って来た四つの切り餅百両を、
書き終えた三行半に添えて風呂敷に包んだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・

今回も4話収録。
1.冬の夜
2.詫び状
3.貧乏神
4.花吹雪

・・・・・・・・・・・・・・・・

せつない物語4編です。

半兵衛の下で働く半次・鶴次郎・房吉が、

ちょっとした出会いの相手に気を付けて探りをかけたところ

大きな事件の手がかりになっていたというお話が続きました。

半兵衛の昔の岡っ引きが亡くなり、その娘にお金を渡して

独り立ちさせ、看板もない質素な飲み屋を開いたお夕も登場。

人と人の出逢いはほんのちょっとした偶然と気遣いだなぁと思いました。

特に「貧乏神」に出て来る善六親父に至っては、

自分が手掛けた仕事をするとその店や主人が悪い方向に行き、

人から貧乏神と言われ仕事をもらえることが出来なくなり、

やけになって橋から身投げしようとしたところを鶴次郎に助けられます。

その縁から、善六が事件解決を導いてくれます。

貧乏神は、人を救う神へと変わる善六に半兵衛は、


「善六に貧乏神が取り憑いたのは、

運が悪いと云うだけではなく、

自信のなさや卑屈さが招いた処もあるのだ。

今、善六に必要なのは、己に自信を持つ事なのだ。」


と言います。


良い言葉ですねぇ。




藤井 邦夫 「秋日和―知らぬが半兵衛手控帖⑬」


秋日和ー知らぬが半兵衛手控帖(13) (双葉文庫)秋日和ー知らぬが半兵衛手控帖(13) (双葉文庫)
(2010/10/13)
藤井 邦夫

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4話収録。

1. 秋日和
2. 雪時雨(ゆきしぐれ)
3. 罰当たり
4. 冬の日
・・・・・・・・・・・
1.秋日和

父親が病に倒れ大工「大宗」がつぶれた。
息子清助は立て直そうと大工仕事に精を出す。
嫁いで間もない嫁の「おしず」は、かいがいしく義父の
世話をしていた。
ある日、女衒の栄吉が殺された。
江の島から栄吉を追って三人の男が「おみつ」を探している・・・
「おしず」という女は女郎屋で病でなくなっていた。
「おしず」になりすました「おみつ」・・・
栄吉殺しとおしず・おみつ・そして三人の男の関係は・・・


「お役人さま、私は、私は・・・」
おしずは、半兵衛に何か云おうとした。
刹那、唸り声をあげた宗平が、半身不随の不自由な身体で
おしずを庇い、半兵衛をにらみつけた。
宗平は半兵衛を見据えて唸り、懸命に何事かを訴えた。
おしずはおしずだ。倅の清助の女房であっしの義理の娘だ・・・。

「お父っつぁん、短い間でしたが、清助さんのおかみさんになれて
嬉しかった。お父っつぁんの娘になれて良かった」
おしずは、宗平に深々と頭を下げて泣いた。

「おしず、きっと先は長いだろう。
お前も身体に気をつけ、お父っつぁんの看病をするんだね。
それから、清助と仲良くな・・・」
半兵衛は笑った。
「お役人さま・・・」
おしずは驚いた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

寝たきりの義父を懸命に支える親孝行な嫁が負った

哀しい過去・・・

もらい泣きのお話でしたヨ。

自分の親だって世話するのは大変なのに、

寝たきりの義父の世話をする嫁の姿には、

いままでのつらい過去から解き放された喜びと

助けてくれた義父と亭主への感謝の思いが伝わってきます。

半兵衛は、女衒の栄吉殺しが「おみつ」であると判明しても、

女衒の男たちへのこらしめをこめ

今回の事件を未解決と報告します。

労咳の身を看病してもらった女郎屋で亡くなった「おしず」が、

身代わりになった「おみつ」に出来るただ一つの礼だったのだろう・・・

と半兵衛が最後に言います。



藤井 邦夫 「迷い猫―知らぬが半兵衛手控帖⑫」


迷い猫ー知らぬが半兵衛手控帖(12) (双葉文庫)迷い猫ー知らぬが半兵衛手控帖(12) (双葉文庫)
(2010/05/13)
藤井 邦夫

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4話収録。

1.裏の裏

  大名旗本だけを狙う盗賊「天狗の仙蔵」。
  盗賊に忍び込まれ家宝を盗まれる事は武家の恥。
  五年前忍び込まれ家宝を盗まれた松岡家では、
  宿直の御家来衆を追放した・・・
  またそれを諌めた御家来の乾も暇をだされた・・・

  「新吾、おそらく乾は仙蔵を恨んでいた。
  そしてこれ以上、自分のような浪人をださない為に、
  仙蔵を斬った。違うかな」

  「お父上は武士としての矜持を守り、
  無念を晴らしたのです。」
  新吾はおかよを励ました。

  「武士としての矜持や無念を晴らすより、
  私は父に生きていて欲しかった」
  おかよは涙を零し続けた。
  新吾に慰める言葉はなかった。
 


2.迷い猫

  患者に毒を盛ったとして捕えられた御家人あがりの
  医者である囚人田中玄庵。
  ある日親しくしていた牢屋同心の堀田が殺された・・・

  「おなつ、子供の頃から好きだったのかい」
  半兵衛は微笑んだ。
  「貧乏御家人の三男坊、狭い家に居場所はなく、
  私は隣のおなつの家に入り浸っていました。」
  「おなつの婿養子になる話はなかったのかい」
  「ありました。ですが、島谷のおじさんが急に
  病で亡くなり、立ち消えになりました。」
  おなつの父親さえ生きていれば
  玄庵とおなつの運命は変わった。
  おなつは玄庵を裏切り、利用しただけだ。
  玄庵に悔しさは窺えず、哀しさだけが溢れていた。
  

   
3.半端者

  半端な博打打ちで強請りたかりを働く小悪党に過ぎない捨吉が、
  口入屋「吉野屋」の吉五郎を殺し、金を奪って逃げた・・・
  半次と鶴次郎は戸惑い、驚かずにはいられなかった。

  「捨吉。口入屋吉野屋の吉五郎を殺した咎でお縄を受けて貰うぜ」
  「うるせえ。悪いのは吉五郎だ。
  吉五郎たちがおしんとお師匠さまを騙したからだ。」

  「鶴次郎、世の中には私たちが知らん顔した方がいい事もある。
  そうしなければ、二十両の為に吉五郎を殺め、
  死んでいった捨吉、いや松吉が浮かばれないよ」

  「捨吉は子供の頃、妹のおみよと父親に捨てられた。
  それ以来、松吉って本名を使わず、捨吉と名乗ったそうだ」
  「哀れな話ですね・・・」
  半次は吐息を漏らした。


4.三行半

  鶴次郎の死んだ兄の元女房が、今の亭主伊佐吉を刺した・・・
  伊佐吉は、なにかというと女房おすみに殴る蹴るの
  暴力をふるっていた・・・
  伊佐吉が死んでしまえば女房おすみが罪になる。
  鶴次郎・半次は必死に伊佐吉を看病し命を助けようとする。
  一方おすみは、二年前に養子にだした文吉を一目見てから
  死のうと覚悟していた・・・

  
  「伊佐吉が助かれば、お前さんは亭主殺しじゃない。
  そして、お前さんが刺したのは、伊佐吉の乱暴から
  我が身を護ろうとした挙句に起きた事。
  そいつを伊佐吉は認めれば、お前さんは咎人じゃあないし、
  一件は事件にしないで済むんだよ」

  「義姉さん、伊佐吉は必ず命を取りとめる。
  だから、身投げをして死のうとなんか考えないでくれ。
  文吉もいつかは大人になり、自分が養子だと知り、
  実の親を探すかもしれない。
  その時、実の母親が罪人として死んだと知ったら哀しむだけだ。
  だから、死ぬな。
  文吉の為にも頼むから死なないでくれ」
  鶴次郎は必死に訴えた。

  おすみの頬に一筋の涙が伝った・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・

この時代は、離婚する時って、

旦那から女房へ「三行半」という離縁状を出さないと離婚に

ならなかったそうです。

女房が一方的に離婚したいと言っても認められなかったと。

女房は、逃げるか耐えるかだったのですねぇ。

「2.迷い猫」の中に出て来た猫ちゃんは、飾り紐をつけられた猫で、

半兵衛の家に入ってきたのがきっかけで事件解決へと続きます。

「3.半端者」では、ま~た半次が脇腹を刺されちゃいます。

何回半次を傷ものにするんでしょうねぇ。

読むこっち側の身にもなってもらいたいもんですよ。

まさか半次が殉職する設定にしないでしょうねぇ。

と思いながら読んでいます(^^)

「4.三行半」は、鶴次郎の義姉と言っても、

亡くなった兄の元女房ですから、付き合いはないに等しいのに、

おすみが今の亭主を刺して逃げた事を誰よりも早く情報を得、

半兵衛に探索依頼をお願いします。

のちに半次は、鶴次郎は、義姉に惚れていたのではないかと、

半兵衛に言います。

今も時々おすみの様子を気にかけていたからこそ、

今回の事がおおごとにならずに事件解決できたと推測しますが、

本人に確かめるような野暮なことはしないわけです(^^)



藤井 邦夫 「雪見酒-知らぬが半兵衛手控帖⑪」


雪見酒ー知らぬが半兵衛手控帖(11) (双葉文庫)雪見酒ー知らぬが半兵衛手控帖(11) (双葉文庫)
(2010/01/07)
藤井邦夫

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支配与力の大久保忠左衛門から、
大身旗本の本多家を逐電した女中探しを
命じられた北町奉行所臨時廻り同心の白縫半兵衛。
役目違いと言いつつ不承不承本多家を訪ねた半兵衛だったが、
用人の早川久右衛門の話に疑いを抱き始める。
そんな折り、消えた女中の行方を探していた
岡っ引きの半次が凶刃(きょうじん)に倒れ・・・
(雪見酒)

・・・・・・・・・・・・・・・・
4編収録。

1.律儀者

  騙り(かたり)に遭って小間物問屋の身代を取られ、
  首を括った父親の敵を絞め殺した娘おみちと
  昔の奉公先のお嬢さんのおみちに力を貸し、
  おみちの代わりに絞め殺したと罪をかぶろうとする平吉。

  「お役人さま、貉(むじな)の潮五郎の手足となってお父っつぁんを
  騙した源七を、梅村の手拭で絞め殺したのは私です。
  平吉は私が源七を絞め殺した後に来て、
  死体を真福寺の墓地に埋めてくれたんです。
  そして、もう奉公人でもないのに律儀に私を手伝い、
  庇ってくれて・・・」

  貉(むじな)の潮五郎は伝馬町の牢屋敷に繋がれ、
  おみちは両親の仇を討ったとして減刑され、江戸追放となった。
  そして、半兵衛は平吉を放免した。



2.逆恨み(さかうらみ)

  五年前の盗賊・
  蝮の重吉を斬り棄てた与力秋山を逆恨みした重吉の兄が、
  秋山に毒薬を盛る為に薬種問屋の文吉の倅を勾わかし、
  毒薬を手に入れるのだが・・・

  「盗賊の蝮(まむし)の重吉・・・」
  「ああ、押し込み先の者を情け容赦なく殺した外道だ」
  「それで秋山さまに毒を盛ろうとは、
  外道の逆恨みですか」
  「ま、悪党の考える事だ。
  真っ当な者には訳の分からねえ理屈で動く・・・」
  


3.雪見酒

  旗本早川家勤めの女中おふみが屋敷から二十五両もの金を持って
  逐電したわけとは・・・

  
  「私、五年前に早川さまに手込めにされ、以来、時々・・・
  私、早川さまとのそんな関わりが嫌になり、
  もう許してくださいと頼みました。
  ですが、早川さまはお許しくださらず、
  思い余って私は、お殿さまに訴えると云ったのです。

  「早川久右衛門は、どうしたんだい」

  「驚き恐れ、私に二十五両を渡して
  妻恋町の小料理屋に来いと・・・」

  「二十五両は口止め料かな・・・」

  「早川さまにとり、私はもう都合のいい女ではなく、
  危ない女になりました。
  だから行けば殺されると・・・」



4.父ゃん(ちゃん)

  半年前に下っ引きの丑松と手を組み、
  柿ノ木長屋の太一を勾引し(かどわかし)、
  米問屋の高砂屋の孫に仕立てて礼金を受け取った酒井。

  半年もの間、朝から一日中駆けずり回って倅の太一をさがす定吉。
  丑松には「神隠しだ」と言われ三日で探索を打ち切られてしまう。
  定吉は、いつしか太一がいなくなった淋しさと悲しさを忘れる為に
  酒に酔い痴れるようになるのだが・・・

  ある日、酔いつぶれていた定吉を介抱した同心の神代新吾によって
  太一救出が始まる。

  「ちゃん・・・」
  『高砂屋』の母屋から、太一が定吉を目掛けて走って来た。
  「太一・・・」
  定吉の顔は嬉し涙にまみれた。
  「ちゃん」
  太一は大声で叫び、定吉に飛びついた。
  「太一・・・」
  定吉は嬉し涙を零し、太一を抱きしめた。
  「ちゃん・・・」
  太一は、定吉にしがみついて大声で泣き出した。

  定吉は酔っ払いから“ちゃん”に戻り、
  酒浸りの暮らしは終わった。


・・・・・・・・・・・・・・・・

今回は、半兵衛の手下である半次が4話中、

2回も斬られ、瀕死の重傷を負ってしまいます。

しかも、二回とも冷たい川に落ち、

傷の深さに加え冷え切ってしまった体で

命の危険にさらされながらも助かります。

身の危険を感じながらも命がけの捜査に、

半兵衛も静かな面持ちながら、

半次を斬った相手は、自分で始末するから

手を出すなと皆に言います。

事件解決が最優先ですが、

誰よりも身内を守る半兵衛の姿に感動します。


藤井 邦夫 「無縁坂―知らぬが半兵衛手控帖⑩」

無縁坂 知らぬが半兵衛手控帖(10) (双葉文庫)無縁坂 知らぬが半兵衛手控帖(10) (双葉文庫)
(2009/10/15)
藤井邦夫

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北町奉行所例繰与力の松岡兵庫の妻女が行方知れずになった。
北町与力大久保忠左衛門の命を受け、
密かに松岡の妻女芳乃を探しはじめた臨時廻り同心白縫半兵衛だったが、
芳乃の足取りが明らかになるにつれ、
ある浪人者の影がちらつきはじめる・・・
(無縁坂)
・・・・・・・・・・・・・・・・


4編収録。

1.「無縁坂」
 定められた嫁ぎ先からの覚悟の逃亡の妻。
 
  「心中・・・」
  鶴次郎はつぶやいた。
  「山岸と芳乃は人としての想いを遂げ、
  人としての道を踏み外した責めを取った」
  半兵衛は、微笑を浮かべて死んでいる芳乃の顔を見つめた。
  山岸新八郎と過ごした数日間は、芳乃の短い生涯のすべてだった。
 

2.「赤い花」
   長年奉公したお店がはめられ、
   つぶされたことへの彦七の復讐とお嬢様救出。
  
  酌婦のおふみは姿を消していた。
  房吉は、飲み屋の女将におふみの行方を尋ねた。
  京一郎と金の受け渡しがあった日の夜、
  彦七と名乗る父っつぁんが訪れ、
  おふみの三十両の借金を返して連れ去っていた。
  彦七・・・
  その昔、菓子屋『桜花堂』の下男だった彦七は、
  かつてのお嬢さまおふみを身請けして消え去った。
  彦七とおふみの間に何があるのか、誰も知らない。
  幸せならば知る必要もない・・・。


3.「勾引し(かどわかし)」̚
   かどわかした子を13年も育てあげた親と
   真実がわかっても育ての親への恩を忘れない娘。
  
   「勾引しは重罪。おまさは、自分をどう裁いて、どう責めをとるのか・・・」
   吉次郎は動揺した。
   「いずれにしろおまさは、覚悟を決めておみよを返したんだ。
   私はそいつを大切にしてやりたいと思う」
   「白縫さま・・・」吉次郎は困惑した。
   「吉次郎、おまさがおみよを菱乃屋に奉公させたのは、
   おみよがどんな気立ての娘に育ったか、
   知って欲しかったからじゃあないかな」
  
   吉次郎とおとよ夫婦は、おみよを“娘のおその”と認め
   『菱乃屋』に引き取った。
   だが、おみよは奉公人として働き続けた。
   吉次郎とおとよは無理強いせず、
   おみよが“娘のおその”になってくれるのを
   気長に待つ事にしていた。


4.「戻り橋」
   罪人の夫の為に多額の借金をした妻の苦労と健気に父親を待つ子。
  
 「白縫の旦那、あっしは人殺しです」
  峰吉は、哀しげに顔を歪めた。
  「峰吉、お前は立派に罪を償った。
  それに私が見たところ、
  悪いのは因縁を付けて来て溺れ死んだ地回りだよ。
  女房子供の許に帰るのに誰に遠慮がいるものか」

  「峰吉、渡るんだよ、思案橋を・・・。
  渡っておまちと正太の処に帰るんだよ。
  お前の居場所は思案橋の袂じゃあない。
  おまちと正太の傍なんだ」
  「白縫さま・・・」峰吉は泣き崩れた。


・・・・・・・・・・・・・・・・

母もこのシリーズがお気に入りで、私が読み終わった分を読書中。

読むの早くてそろそろ追いつかれそうです。

昨年、白内障の手術をしてバッチリ見えるようになった母。

新田次郎と並行して読んでいるって言うからスゴイなぁ。

我が家で一番の読書家になりつつあります(^^)







メイとフード


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耳にフードをちょいかぶり。


藤井 邦夫 「離縁状―知らぬが半兵衛手控帖⑧」

離縁状―知らぬが半兵衛手控帖 (双葉文庫)離縁状―知らぬが半兵衛手控帖 (双葉文庫)
(2009/02)
藤井 邦夫

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音羽町の玩具屋「童へ」の娘おみよが、
手込めにされた上に絞め殺され、
江戸川に浮かんだ。

北町同心の白縫半兵衛は、「童や」に
内職の凧を納める浪人、
山崎平四郎に目をつけるが、
その山崎には労咳を患う妻がおり・・・


>>>>>>>>>>>>>>>>

半兵衛シリーズ第8弾。

療養所勤めのお鈴は、

病気療養中の山崎の妻が、

「自分の病気を治したいばかりに

夫は悪事を働くのではないか」と心配しているとの事で、

半兵衛の手下半次に山崎を探ってくれと依頼するわけです。

夫の山崎は、妻に高い薬を飲ませたいばかりに

覚悟の罪を犯すことに・・・

妻に迷惑がかからないよう三行半をつきつけ

請け負った仕事の50両を渡す。

半次は「悪事をするかもしれない」心配事が

ある大きな事件の犯人の殺害依頼である事を知り

半兵衛と共に夫山崎を追う・・・

妻の為に犯罪を犯してでも助けたいと思う夫。

自分の為に決して犯罪を犯さないで欲しいと願う妻。

結末は、これまた半兵衛の粋な配慮となっているのですが、

もうだいたい最後はこうなるだろうなと分かっちゃいるけど、

面白いんですよねぇ。

水戸黄門みたいなもんですね。

半兵衛はじめ、手下の半次・鶴次郎・房吉も良い味出してます。



ずんずん・・・!

ずんずん・・・


ずんずん・・・




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ジャ~ン!!



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リンダブックス編集部「うちへ帰ろう-家族を想うあなたに贈る短篇小説集」

うちへ帰ろう―家族を想うあなたに贈る短篇小説集 (リンダブックス)うちへ帰ろう―家族を想うあなたに贈る短篇小説集 (リンダブックス)
(2012/12)
リンダブックス編集部

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①谷口雅美「タラレバ」

②佐藤万里「母の結婚」

③金広賢介「かぞえ歌」

④田中孝博「おにいちゃん記念日」

⑤関口暁「ばかばかしくて楽しくて」

⑥小松知佳「パン屋のケーキ」

⑦源祥子「さよなら、俺のマタニティブルー」

⑧野坂律子「ローマの一日」

⑨池田晴海「神様を待っている」

⑩甲木千絵「姉のコーヒー」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

①「タラレバ」

不慮の事故で死んだ息子を、
東京まで迎えにきた夫婦。

昔に家を飛び出したきりの息子だった。

息子にかけてやれなかった愛情を悔やむ夫婦の
想いがせつない・・・

②「母の結婚」

六十歳をすぎて、突然再婚を宣言した母。
自分のことや世間体ばかりを気にしているうち、
母の幸せを忘れていたことに
気づかされる兄弟たち・・・

③このごろ姉の様子が変だ。
しかし姉の変化に真っ先に気づいたのは父だった。
子供たちの挫折や失敗を温かく包んでくれる
家族を描いた「姉のコーヒー」


>>>>>>>>>>>>>>>

いや~この短編集は、

のっけの第一章「タラレバ」から

泣かされてしまいました・・・

ほんとに短い濃縮された文面でありますが、

抒情的で目に浮かぶ風景や人物像が、秀逸です。

素行不良の子供たちに対して更生させる教育者として

長年携わって来た父親でしたが、

自分の息子に対してじっくり話を聞く事はせず、

反発した息子は家を出て、オレオレ詐欺の組織に入り、

犯罪を犯してしまいます。

三年ぶりに会った両親とは、刑務所の面会室・・・

その時に父親から言われた言葉は・・・

「おまえなんか、ロクな死に方せぇへんぞ」だった。

そして、その後、息子は・・・不慮の事故で死んでしまいます。

その息子が浮遊霊として死んだ自分と両親を眺めながら、

自分へ、そして両親へ語りかけます。

息子の遺体の対面に田舎から出てきた両親。

住んでいたアパートへ行き遺品の整理をしているうちに、

あぁすれば良かった、こぅすればこんなことにならなかった・・・

と自分達の息子へ対する不甲斐なさを嘆く・・・

父親は、「タラレバは嫌いや」と強い口調で言う。

両親はオレオレ詐欺被害者へ対する弁償金550万を払っており、

その事に対して息子は気持を改め、

せめて両親へ返そうと、月々1万ずつ貯金をしていました。

両親へのお詫びの手紙も添えて・・・

まだ3万しか貯まっていなかった通帳を見た母親は、

「ねぇ、この3万であの子が好きやったもん買うて
お供えしたげてもええ?
あの子、あんパン好きやったよね」

父親「そうしてやれ、俺らにできることは
そんなことぐらいしかないんやから」

「そうやね・・・。
もっともっとしてあげられることあったのにね。
550万の弁償だけやなしに、もっともっと・・・
・・・帰って、おいでって・・・言うたげられたら・・・」


両親が息子の骨壺を抱いて、

電車を待っている駅のホームの場面が最後なのですが、

もう・・・

たった一言のお父さんとお母さんの言葉に泣きました・・・

とてもせつない物語でした・・・。










手編み

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妹が手編みのメイ服を編んでくれました。

クビの所が伸縮になっていて、

猫背で背が丸まっても背中まですっぽりになるように

お腹部分より長く編んでくれていました。

今までの服の中で一番実用的で

メイに合う服でありました(^^)



毛糸が余ってたんだって~(^^)




どうりで色合いが婆臭い・・・






蝶が舞うリースの時計
プロフィール

cn7145

Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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