山本周五郎 「萱笠」
![]() | 髪かざり (新潮文庫) (1987/09/30) 山本 周五郎 商品詳細を見る |
「髪かざり」の中の一遍。
「萱笠(かやかさ)」
ふとした弾みで言い交わした相手がいると嘘をついてしまう「あきつ」
相手の男は、
武芸には長けているが粗暴であるとの噂の「吉村大三郎」。
足軽で戦に出陣中。
嫁の来てがなく困っていた大三郎の母親「より女」は大層喜ぶ。
そうして話は本人たちの思惑とは裏腹にトントン拍子に進んでしまい、
あきつは大三郎の家に嫁として暮らすこととなる・・・
大三郎は畑をこよなく愛しており、
「土というものは耕す者の心をうつす、
自分はものを作るというより、
その土に映る自分の心をみるのが目的だ・・・」
と姑から大三郎の思いを聞かされる。
あきつは、巷の噂と違う大三郎の心根を感じ、
「そのお心にあやかりたいと存じますけれど・・・」
と姑に願いでて大三郎が大事にしている畑を耕すことにより、
本当の嫁として暮らすようになる。
戦に出陣していた大三郎は、
仏となって帰って来る。
一度も会った事のない夫と妻・・・
しかし、あきつはすでに丹精込めて作った畑と
萱笠に自分の夫であると肌身に感じていた・・・。
「これから畑へまいるときはわたくしこれを冠らせて頂きます。
そうしたらいつもお側にいるようでございましょうから・・・」
・・・・・・・・・・・・・・
「あきつ」と姑の関係が大変うまく行っている事が、
この物語の中で自分としては、折り合いのつく部分でした。
息子が戦死して一人残された母親のはずが、
ふとした誤解がきっかけで嫁を授かることになったのは、
息子の唯一の親孝行だと思います。
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