どしゃぶりの雨
富樫 倫太郎 「残り火の町」
![]() | 残り火の町 市太郎人情控 (祥伝社文庫) (2013/07/24) 富樫 倫太郎 商品詳細を見る |
命の火が最後に光り輝く・・・。
余命半年と宣告された差配の惣兵衛。
過去のあやまちに向き合おうとするが・・・。
深川今川町にある裏店の差配・惣兵衛は、
ある日突然倒れ、余命半年と宣告されてしまう。
残りの人生を悔いなく生きると決意した惣兵衛。
まずは折り合いの悪い息子。周助との仲を修復しようとするが、
自分には関係ないと拒絶されてします。
実は七年前に起きた出来事のために惣兵衛と家族の心は離れていた・・・
すれ違う家族の再生と絆を描く、感涙の物語。
・・・・・・・・・・・・・・・・
惣兵衛が若い頃に無茶をしたり、
恋した女を二度も捨てたり、
息子を護ってやることができなかったり、
自分の都合だけで今の女房と結婚したりと、
死がすぐそこに来ていることで過去の過失をふりかえり、
詫びを、し許しを請うのですが、
二度も捨てた女とひと時、男と女の関係になったりと、
何となく腑に落ちない部分もありました。
惣兵衛の女房は、所帯を持った時から、
見下されて夫婦関係を続けていたと思っているのですが、
亭主があと半年の命だと聞かされても、
許す事ができないでいます。
惣兵衛が女房に今までの事を詫びる時の女房の言葉・・・
「同情なんかしません。
人は、いつか必ず死ぬんです。
わたしだって、周助だって、いつか死ぬんです。
だからって、それが偉いわけじゃない。
当たり前の話じゃありませんか。
ただ早いか遅いかの違いがあるだけです。
おまえさんという人は、そんなこともわからないから、
自分が死ぬってことを、さも、たいそうなことのように
もったいぶって、人から同情されるのが当たり前のような顔をして、
まるで仏様にでもなったようなつもりで、
今までのことは水に流してやるとか、
いがみ合うのはやめにするとか・・・」
余命いくばくもない亭主に向かっていう女房の言葉に、
非情を感じるかもしれませんが、
よくよく流れを読むと惣兵衛のやって来た事は、
自分に対する正当化ばかりでありましたので、
これくらい言われて当然と思いました。
女房にしてみると今生の別れを承知で
全ての思いを吐き出しました。
ですが、家族はやっぱり家族ですね。
最期の最期に惣兵衛の死を見届ける場面での、
女房のたった一言の言葉がぐっと来ますヨ。
いつもありがとうございます。

乙川 優三郎 「冬の標(しるべ)」
![]() | 冬の標 (文春文庫) (2005/12) 乙川 優三郎 商品詳細を見る |
幕末、小藩の大番頭の娘・明世は南画の自由な世界に魅せられるが、
世間の仕来たりは女子が絵を描くことを許さない。
結婚して夫と姑に仕えることを強いられた二十年を経て、
明世はついに自らの情熱を追う決心をする・・・。
封建の世に真の自立の道を歩もうとする一人の女性の、
凄まじい葛藤と成長を描いた感動長編。
・・・・・・・・・・・・・・・
「世間の常識からすれば、身勝手な悪い嫁でございます」
明世は自然に詫びる目を向けた。
馬島に嫁して二十年、自ら非を口にしたことはなかったが、
そでが折れると言葉はすらすらと出た。
彼女はそでのために何をしてやれるだろうかと思い、
何もしてこなかった自分に気付いた。
「わたくしもそういう目でしか見られませんでした、
それがこんな体になって見たくもない先が見えてくると、
いったい自分は何をして生きてきたのかと考えてしまいます、
嫁いでからというもの家にしがみつき、
夫にしがみついて、ほかのことを考えるゆとりすらありませんでした、
夫がこうしろと言えば何も疑わずに従い、
するなと言えば子供のように恐れて従ってきました、
その結果、夫がいなくなると自分という女もいなくなってしまい、
わけもなく恐ろしく感じたりもしました」
「それが女子というものかもしれません、
もしも絵の世界を知らなければ、
わたくしもそういう生き方しかできなかったでしょう」
そでの言葉に真情を感じるせいか、
明世は自分の言葉も苦にしなかった。
彼女はできるだけ素直にそでの気持ちに応えようとした。
「世の中の仕組みがそうなっていますし、
女子にできることは限られています、
ですが葦秋先生や光岡さまのように勇気をくださる殿方もいらっしゃいます。
わたくしはそういう人に恵まれ、教えられてきました。
よかったのか悪かったのか、
未だに迷うことばかりですが、絵を描くことで救われます」
「描きなさい、好きなだけ描くといいわ」
そでは言うと、庭を満たす陽の濃さに目を当てながら、
どこかで思い切らなければ月日は過ぎてゆくばかりだと付け加えた。
いつもありがとうございます。

乙川 優三郎 「五年の梅」
![]() | 五年の梅 (新潮文庫) (2003/09/28) 乙川 優三郎 商品詳細を見る |
5編収録。
1.後瀬(のちせ)の花。
2.行き道。
3.小田原鰹(おだわらがつお)
4.蟹(かに)
5.五年の梅。
・・・・・・・・・・・・・・
5.五年の梅
友を助けるため、主君へ諫言(かんげん)をした
近習(きんじゅう)の村上助之丞。
蟄居(ちっきょ)を命ぜられ、
ただ時の過ぎる日々を生きていたが、
ある日、友の妹で妻にとも思っていた弥生が、
頼れる者もない不幸な境遇にあると耳にし・・・。
・・・・・・・・・・・・・・
今作品の物語に共通するのは、
自分の不運や不幸を相手のせいにして、
自分を見つめないと言う事。
その為にかけがえのない人を失うことになる・・・
そのギリギリのところでやっと身の振りを反省し、
取り返しがつかないところをやり直そうと
踏ん張ります。
未来が厳しい事や、過去への懺悔を背負いながら、
これかれも生きて行こうとする姿にも
強さと潔さを感じる作品群でした。
お互いを思いやれたならどんなにか幸せだった事だろう・・・
失って初めてわかる切ない物語ばかりでしたが、
それでも未来への光も描いているのが救われます・・・
いつもありがとうございます。

外猫ダーちゃん
乙川 優三郎 「霧の橋」
![]() | 霧の橋 (講談社文庫) (2000/03/15) 乙川 優三郎 商品詳細を見る |
刀を捨て、紅を扱う紅屋(べにや)の主人となった惣兵衛(そうべえ)だったが、
大店(おおだな)の陰謀、
父親の仇(かたき)の出現を契機に武士魂が蘇った。
妻は夫が武士に戻ってしまうのではと不安を感じ、
心のすれ違いに思い悩む。
夫婦の愛のあり方、
感情の機微を叙情豊かに描き、
鮮やかなラストシーンが感動的な傑作長編。
第七回時代小説大賞受賞作品。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ここに父の刀があります」と言った。
「商人のわたくしにはもう用がないものです、
ここへ置いてゆきますので、
父と思い、どうかあなたの側へ置いてあげてください、
そのほうが父も喜ぶでしょう」
そして静かに刀を置くと、これでお別れいたしますと言った。
それでいいと思った。
もう二度と刀を取ることはないだろうと思う一方で、
どうしても捨てられずにいた過去の置き所が
ようやく見つかったような気がしていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・
短編集が多い乙川作品ですが、
こちらは一冊長編です。
とにかくラストの描写が素晴らしいです!
感動的で名文です。
霧と橋にちなんでの夫婦の描写がとても素敵です。
超おすすめ作品です。
この作品は「生きる」の次に読んだ作品ですが、
こちらの作品を読んで以後、
乙川作品は全て読んでいます。
それ位、乙川さんの作品は素晴らしいと思っています。
装丁は日本画家「小村雪岱(こむらせったい)」。
泉鏡花の「愛艸集(あいそうしゅう)」の
見返しに使われたものだそうです。
見返しとは・・・
表紙と裏表紙の内側の部分に貼られる紙。
中身を保護することと、表紙と中身の接着を補強する意味があます。
いつもありがとうございます。

乙川 優三郎 「生きる」
![]() | 生きる (文春文庫) (2005/01) 乙川 優三郎 商品詳細を見る |
この装丁の書は墨の造形作家村田篤美さん。
素晴らしい書ですよね。
乙川さんの本は、装丁がいつも綺麗で大好きです。
さて本作品の「生きる」は、
1.生きる
2.安穏河原
3.早梅記
の三作品収録。
再読しました。
読み直す度に新しい感想が湧きます。
1.生きる
亡き藩主への忠誠を示す「追腹」を禁じられ、
生き続けざるを得ない初老の武士。
周囲の冷たい視線、嫁いだ娘からの義絶。
そして息子の決意の行動・・・。
惑乱と懊悩(おうのう)の果て、
失意の底から立ち上がる人間の強さを格調高く描いて
感動を呼んだ直木賞受賞作品。
・・・・・・・・・・・・・・・
2.安穏河原
「この眺めをようく覚えておくんだよ」
彼は言って、胸の底から吐息をついた。
娘はようやく安心したのか団子を食べている。
「いいね、ここから本当のことがはじまるのだから・・・」
言いながら、織之助は自分自身にも支えとなるものを
見つけた安堵に心が緩むのを感じた。
人が生きてゆく限り、不運や障害も生まれ続けて絶えることはないだろう。
童女ですら戦っている。
生きている証からも逃れようとして、
織之助は長い間、背を丸めて生きてきたような気がした。
・・・・・・・・・・・・・・・
3.早梅記
「わしには堪えられそうにない、それなのに何もできない」
「時とともに忘れられることもあります」
「しょうぶは強いな」
「いいえ、変われないだけです」
彼女はそう言ったが、喜蔵よりも遙かに気持ちはしっかりとしていた。
貧しい足軽の家に生まれ、
幼いときから思うようにならないほうが当たり前の
境遇に生きてきたから、自力で立ち直る術を知っているのだろう。
喜蔵が味わってきた貧しさとは比較にならない生い立ちが、
彼女を強くしたようであった。
いつもありがとうございます。

河北書道展と花寅(はなとら)
本日は、仙台市青葉区藤崎デパートで開催中の
河北書道展を鑑賞してまいりました。
私の友人は委嘱作家として出品しておりました。
河北賞を受賞した事のある彼女の作品です。

かな書ですね。

美しい文字の流れにしばし見惚れました。
復興に関する書も多くて、
印象に残る作品もたくさんありました。
その中でも千葉蒼玄さんの「海に降る雪」という作品が
大変素晴らしく印象に残りました。
ちょっと調べたら、蒼玄さんは2011年の楽天イーグルスのポスターを
書いた方でした。すばらししい!
さて、書の鑑賞を満喫した後は、
友人三人とランチして来ました。
和食処「花寅」

女性好みの小鉢です。
こういうのが嬉しいですよねぇ。
食後のデザートとコーヒー。

マンゴームースでした。
コーヒーも器が趣ありますねぇ。
こちらは、お手洗いの洗面台。

これ瀬戸物です。
素敵ねぇ~(^^)
店内は、個室で静かでゆったりで、とても落ち着けました。
おしゃべりに花が咲き、あっという間の2時間でした(^^)
ランチ後、またお茶して来ました。

一番町アーケード内にある「ロイヤルホスト」
買い物客が一番多く通るショッピング街ですが、
今日は、お盆最終日だからでしょうか、
思った程人出はなく静かでした。
ここでまた2時間おしゃべり・・・
しかしよくしゃべる事あるなぁ・・・ってネ^m^
山形から来た友人を高速バス乗り場までお見送りして、
本日のワタクシの楽しい一日はこれにて閉店ガラガラ・・・(笑)
いつもありがとうございます。

河北書道展を鑑賞してまいりました。
私の友人は委嘱作家として出品しておりました。
河北賞を受賞した事のある彼女の作品です。

かな書ですね。

美しい文字の流れにしばし見惚れました。
復興に関する書も多くて、
印象に残る作品もたくさんありました。
その中でも千葉蒼玄さんの「海に降る雪」という作品が
大変素晴らしく印象に残りました。
ちょっと調べたら、蒼玄さんは2011年の楽天イーグルスのポスターを
書いた方でした。すばらししい!
さて、書の鑑賞を満喫した後は、
友人三人とランチして来ました。
和食処「花寅」

女性好みの小鉢です。
こういうのが嬉しいですよねぇ。
食後のデザートとコーヒー。

マンゴームースでした。
コーヒーも器が趣ありますねぇ。
こちらは、お手洗いの洗面台。

これ瀬戸物です。
素敵ねぇ~(^^)
店内は、個室で静かでゆったりで、とても落ち着けました。
おしゃべりに花が咲き、あっという間の2時間でした(^^)
ランチ後、またお茶して来ました。

一番町アーケード内にある「ロイヤルホスト」
買い物客が一番多く通るショッピング街ですが、
今日は、お盆最終日だからでしょうか、
思った程人出はなく静かでした。
ここでまた2時間おしゃべり・・・
しかしよくしゃべる事あるなぁ・・・ってネ^m^
山形から来た友人を高速バス乗り場までお見送りして、
本日のワタクシの楽しい一日はこれにて閉店ガラガラ・・・(笑)
いつもありがとうございます。

午前様
社会人になってすぐに親しくなった友人と飲み会。

お刺身5点盛り。
手羽先唐揚げ。
焼き鳥。
しらすと水菜のサラダ。
茄子の漬物。
お通しはホタテ焼き。感動!
電話やメールばかりで、実際に会うのは2年ぶり。
久しぶりに会うと沢山話題があって時間が足りない。
さすがに午前様になり帰って来ました。
結婚している彼女なのでご主人の話や
仕事の話・趣味の乗馬の話・
はては、老後の話まで出て話題が広かった~(笑)
そうそう!旅行の話も出て、
北海道旅行に行こう!と盛り上がる。
北海道は数回行っている彼女。
またぜひ行きたいと思っているとの事。
私は一度だけ行った。修学旅行で・・・。
旅行実現すると良いなぁ(^^)
楽しい飲み会でした(^^)
いつもありがとうございます。

お刺身5点盛り。
手羽先唐揚げ。
焼き鳥。
しらすと水菜のサラダ。
茄子の漬物。
お通しはホタテ焼き。感動!
電話やメールばかりで、実際に会うのは2年ぶり。
久しぶりに会うと沢山話題があって時間が足りない。
さすがに午前様になり帰って来ました。
結婚している彼女なのでご主人の話や
仕事の話・趣味の乗馬の話・
はては、老後の話まで出て話題が広かった~(笑)
そうそう!旅行の話も出て、
北海道旅行に行こう!と盛り上がる。
北海道は数回行っている彼女。
またぜひ行きたいと思っているとの事。
私は一度だけ行った。修学旅行で・・・。
旅行実現すると良いなぁ(^^)
楽しい飲み会でした(^^)
いつもありがとうございます。

乙川 優三郎 「椿山」
![]() | 椿山 (文春文庫) (2001/11) 乙川 優三郎 商品詳細を見る |
1.ゆすらうめ
その眼で成れの果てまで見届ける気にはなれなかった。
おたかにしろ、できることなら見られたくはないだろう。
案外あれが精一杯の虚勢ではなかったろうか。
だがそれももうたくさんだと思った。
いればいるだけ堕ちてゆくしかない女たちを見るのは
心底たくさんだった。
(こんなところにいたら・・・)
自分も堕ちるだけだと思いながら、
孝助はふと、散り尽くしたゆすらうめを思い浮かべた。
根づく場所さえ違えば見違えるほど生き生きとするだろうに、
ここではひとりで散ってゆくしかない。
そうと知っていながら、おたかも戻ってくるしかなかったのだろう。
2.白い月
(もう一度だけ)
言い暮らしてきたはずの言葉が胸の中で
きらきらと輝きはじめたのを感じながら、
おとよはふと、案外とんでもない賭けをしているのは
自分かも知れないと思った。
3.花の顔(かんばせ)
白髪に凍り付いた雪を丁寧に除いてやりながら、
さとはたきの最期の一念を見たような気がしていた。
幻のように仄かに光る雪明りの向こうに、
たきは自分の辿ってきた暗い道を見ていたのかも知れない。
惚けなければ素直に礼も言えぬほど、
家に縛られ、辛い思いをしてきたのだろう。
だとしたら、せめて辛かった分だけ、
老いて惚けて何が悪いだろうか・・・。
(おかあさまは・・・。)
きっと、わたくしが同じ道を辿らぬようにと念じて、
救ってくださったに違いない。
そう思ったとき、さとはようやく姑と心が通じたような気がして、
深い溜息をついた。
4.椿山
小藩の若者たちが集う私塾・観月舎。
下級武士の子・才次郎はそこで、道理すら曲げてしまう身分というものの
不条理を知る。
「たとえ汚れた道でも踏み出さなければ・・・」
苦難の末に権力を手中に収めたその時、
才次郎の胸に去来した想いとは・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
いつもありがとうございます。

終戦の日
本日は、終戦の日。
昭和20年8月15日が終戦ですから、
68年もたちますね。
母も戦争体験者です。
日本人ですが、台湾で生まれ育った母は、
終戦と同時に日本へ引き上げて来ました。
自宅に二度被弾の経験を持っています。
一度目は全てを粉々に破壊する爆弾。
防空壕に避難してかろうじて助かった母一家でしたが、
2㍍以上もの土砂が防空壕に被り、
近所の人達に掘り出されたそうです。
二度目は燃やして破壊する焼夷弾。
これでほとんどの思い出の品物を失ったそうです。
まだ若かった母が受けた衝撃は大きく、
戦争の話となると口が重くなります。
終戦を迎え日本へ引き上げて来て右も左も分からず、
取りあえず祖父の実家へ向かったそうですが、
混乱の中、大変秩序良く誘導し世話をしてくれたのが、
多くの学生さんがただったそうです。
積極的に動きお世話する姿を見て、
自分達の大変さも乗り越えられると思ったそうです。
不思議と学生さん達に悲壮感がなく、明るかったそうです。
「あ~戦争はもう終わったんだ。
これからは空襲警報や爆弾に怯えることはないんだ・・・」
というのが母が実感した終戦の日だったそうです。
いつもありがとうございます。
昭和20年8月15日が終戦ですから、
68年もたちますね。
母も戦争体験者です。
日本人ですが、台湾で生まれ育った母は、
終戦と同時に日本へ引き上げて来ました。
自宅に二度被弾の経験を持っています。
一度目は全てを粉々に破壊する爆弾。
防空壕に避難してかろうじて助かった母一家でしたが、
2㍍以上もの土砂が防空壕に被り、
近所の人達に掘り出されたそうです。
二度目は燃やして破壊する焼夷弾。
これでほとんどの思い出の品物を失ったそうです。
まだ若かった母が受けた衝撃は大きく、
戦争の話となると口が重くなります。
終戦を迎え日本へ引き上げて来て右も左も分からず、
取りあえず祖父の実家へ向かったそうですが、
混乱の中、大変秩序良く誘導し世話をしてくれたのが、
多くの学生さんがただったそうです。
積極的に動きお世話する姿を見て、
自分達の大変さも乗り越えられると思ったそうです。
不思議と学生さん達に悲壮感がなく、明るかったそうです。
「あ~戦争はもう終わったんだ。
これからは空襲警報や爆弾に怯えることはないんだ・・・」
というのが母が実感した終戦の日だったそうです。
いつもありがとうございます。

熟女会だ~!
宇江佐 真理 「ほら吹き茂平」
![]() | ほら吹き茂平 (祥伝社文庫) (2013/07/24) 宇江佐 真理 商品詳細を見る |
ほら吹き茂平他5篇の短編集。
茂平シリーズかと思ったら、
別のお話の短編集。
「せっかち丹治」
「律儀な男」
の2篇が面白かったです。
せっかち丹治は、丹治の娘の嫁入り話が柱。
裏店の長屋住まいの娘に
表店の米問屋の若旦那との縁談が持ち込まれ、
人も羨む結婚かと思いきや、
結局、米問屋の舅姑の世話をしてくれる嫁なら
誰でも良いという理由だけで、
縁談が来ます。
高齢で一日中介護しなければならない嫁の事を
結局は女中がわりと思うだけの若旦那一家。
丹治の娘は二人。
長女を嫁に欲しい米問屋一家の若旦那の姉が、
丹治達夫婦が年老いた時の世話は妹にして欲しいと言います。
嫁に行くのではなく、妹に婿を取ってもらわないと、
自分の家が迷惑すると言います。
自分達の事しか考えていない米問屋一家の縁談を断った丹治家。
その後、米問屋に嫁が来たが、10日で逃げられてしまう。
結局、女中を二人雇って親の世話をさせる事になります。
丹治は、女房が自分の親の面倒を見てくれた事を思い出します。
古い長屋から縁あって新築の長屋へ引っ越す事ができる時に、
いままで仲良くすごした古長屋の人達にも声をかけます。
みんなで新しい長屋へ引っ越すことによって、
丹治は女房を寂しくさせないよう配慮したわけです。
それが愚痴一つ言わず面倒をみてくれた女房への
丹治が出来る感謝の形でした。
娘は、丹治の元で働く青年の元へ嫁ぐ決心をします。
自分の身の丈にあった暮らしが、
本当の幸せであると丹治から教えられたわけです。
裏店の娘が表店の女房になる事は
夢のような玉の輿であるのは承知ですが、
慎ましくてもお互いが寄り添って
助け合う夫婦の在り方が一番の幸せなんだと
丹治夫婦から学んだ娘でした。
・・・・・・・・・・・・・・・
おきよは笑って応える。
銀太郎の申し出にすぐに返事はしなかった。
だが、おきは知っていた。
いずれ、弁天長屋で銀太郎と所帯を持つ自分を。
それで、井戸端に集まり、
長屋の女房達と毎日、埒もないおしゃべりをする自分を。
親戚でもきょうだいでもない店子達と毎日顔をつき合わせ、
嬉しい時は一緒に喜び、悲しい時は一緒に涙をこぼすのだ。
それがいい。
それが自分の身の丈に合った倖せだと、
ようやく思えた。
丹治がそれとなく自分に教えてくれたのだ。
いつもありがとうございます。

藤井邦夫「夢芝居」
![]() | 夢芝居-知らぬが半兵衛手控帖(20) (双葉文庫) (2013/05/16) 藤井 邦夫 商品詳細を見る |
神田明神の境内で野菜売りをしていた百姓が、
大身旗本の倅白崎紀一郎に無礼打ちにされた。
北町奉行所臨時廻り同心の白縫半兵衛は、
紀一郎の高慢で冷酷な所業を糾弾すべく、
町方が手出しできない旗本白崎家の周辺を
探りはじめるが・・・。
「世の中には私たちが知らん顔をした方がいいことがある」
と嘯く(うそぶく)、半兵衛が最後に下した決断とは・・・
人気書き下ろし時代小説シリーズ、遂に最終巻!
・・・・・・・・・・・・・・・
緋牡丹、散る・・・
最早(もはや)知らぬ顔は出来ぬ、
半兵衛、最初で最後の果し合い!
・・・・・・・・・・・・・・・
帯の文面からして、
緋牡丹の鶴次郎に何かがあったわけですが・・・
それに対する半兵衛の覚悟と
仲間達の絆が感動します。
最終巻なんですよねぇ。
息の長いシリーズ物として楽しみにしていたので、
とても残念です。
鶴次郎の半兵衛に告げる言葉が
鶴次郎らしく粋です。そして涙です・・・。
