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高田 郁 「美雪晴れ みをつくし料理帖 ⑨」

美雪晴れ―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)美雪晴れ―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)
(2014/02/15)
高田 郁

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名料理屋「一柳」の主・柳吾から求婚された芳。

悲しい出来事が続いた「つる家」にとってそれは、

漸く訪れた幸せの兆しだった。

しかし芳は、なかなか承諾の返事を出来ずにいた。

どうやら一人息子の佐兵衛の許しを得てからと、気持ちを固めているらしい―。

一方で澪も、幼馴染みのあさひ太夫こと野江の身請けについて、

また料理人としての自らの行く末について、懊悩する日々を送っていた…。

いよいよ佳境を迎える「みをつくし料理帖」シリーズ。

幸せの種を蒔く、第九弾。

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「干し芋茎を使うのもそうだし、

時には魚のあらも青物の皮までも上手に利用して

美味しい食べ物に変え、

食べる人の心と身体を健やかに保とうと心がける。

例えば、母親が我が子を丈夫に育てたい、と願う。

あるいは医師が患者を健やかにしたい、と願う。

あなたはそんな気持ちを併せ持った料理人です。

『食は、人の天なり』という言葉を体現できる稀有(けう)の

料理人なのです。

私からすれば、あなたほど、揺るがずに、

ただひとつの道を歩き続けるひとは居ない。」

・・・・・・・・・・・・・・・・



いつもありがとうございます
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宇江佐 真理 「無事、これ名馬」


無事、これ名馬 (新潮文庫)無事、これ名馬 (新潮文庫)
(2008/04/25)
宇江佐 真理

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吉蔵は町火消し「は組」の頭。

火の手が上がれば、組を率いて駆け付け、命懸けで火事を鎮める。

そんな吉蔵に、武家の息子・村椿太郎左衛門が弟子入りを志願してきた。

生来の臆病ゆえに、剣術の試合にどうしても勝てない太郎左衛門。

吉蔵の心意気に感化され、生まれ変わることができるのか……。

少年の成長と、彼を見守る大人たちの人生模様を、

哀歓鮮やかに描き上げる、傑作時代小説。

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お春はひどい難産の末にお栄を産んだ。

一時はお春も命を取られるかと心配したものだ。

「お前さん、あたしが死んだら、この子を立派に育てておくれね。

あたしはこの子さえ無事に生まれたら、死んでも悔やまないよ」

苦しい息遣いでそう言うと、お春は気を失いかけた。

産婆が加減もせずにお春の頬を張った。

「お前が亭主と好きなことをして産む餓鬼だろうが。

最後まで落とし前つけな」

・・・・・・・・・・・・・・・・・


「女はすっこんでいろ!」

由五郎は却って逆上した。

ところが、すっこんでいろと言われたお栄の眼が三角になった。

着物の裾を捌いて(さばいて)片膝を立てた。

お栄が心底腹を立てた時に出る仕種だ。

案の定、「そうかい、お前さんはそんなに喧嘩がしたいのかい。

上等だ。

やって貰おうじゃないか。

ただし、ここであたしに三行半を書き、

は組の纏持ち(まといもち)の看板を下ろしておくれな。

そうしたら、何をやっても構やしない。

おう、お前さんにその覚悟があるならおやりよ。

さあ、さあ」と、凄んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「坊ちゃん、男にとって大事なことは何だと思いやす?」

金次郎は試すように訊いた。

「強くなることですか」

「へへえ、わかっていなさるじゃねぇですか。

男はおなごより強くなけりゃいけやせん。

なぜなら、男はおなごを守るさだめで生まれて来てるんですからね。

ところが坊ちゃんは昨日の試合に負けてしまった。

しかもおなごにね。

さあ、そいつはいったい、どうした訳でござんしょう」

「拙者が弱いからです」

「いいや、そうじゃありやせん。

坊ちゃんには気力がねェからです。

また負けるかも知れねェ、そう思って、試合をする前から及び腰に

なっていたからですぜ。

坊ちゃんは試合をする前に、もやは負けていたんでさァ。

こんな馬鹿なことがありやすかい。

ちょっとでも打ち込んでやろうという気にならねェ限り、

これからも勝つことはありやせん。

さあ、この先、坊ちゃんはどうしなさいやす。

負け続けやすかい」

「い、いやです」

太郎左衛門はその時だけ、きっぱりと応えた。

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「寝小便はな、心の奥底にある本心がさせるのよ。

いい子ぶっているが、

お前ェは、実は泣き虫の寂しがり屋だろうがってな」

由五郎はつかの間、遠くを見るような眼になって言った。

「確かに拙者は泣き虫の寂しがり屋です」

太郎左衛門は俯きがちになって応えた。

「坊ちゃんは、おっ母様にもっと甘えたいんですよ。

ところが、坊ちゃんには妹も弟もいる。

兄貴らしくしなきゃいけねェ。

それで、つい、気持ちが無理をしちまうんですよ」

由五郎は何も彼も承知している様子で続ける。

さすが寝小便の先輩である。


・・・・・・・・・・・・・・・・

「親馬鹿と笑うてくだされ。

倅は剣術も学問も芳しくござらぬが、

さしたる病もせず、また、人と喧嘩して傷を負うたこともござらぬ。

弟や妹には優しい兄でござる。

拙者は大層苦労して今の役目に就きましたが、

拙者と同じ苦労を倅に味わわせようとは思いませぬ。

いや、この先、倅が大きな失態を演じなければ、

拙者の跡を継いで、しかるべき役職に就くはずでござる。

恐らく倅は真面目にお務めを全うし、

平凡だが倖せな人生を送ることでござろう。

倅を駄馬と悪口を言う御仁もおりまする。

だが、拙者はそうは思いませぬ。

無事、これ名馬のたとえもござる。

倅は拙者にとってかけがえのない名馬でござる」

村椿五郎太はそれを言いたかったとばかり、声を高くした。

お栄と吉蔵は五郎太の親心に胸を詰まらせ、

そっと眼を拭った。


・・・・・・・・・・・・・・・・・

ごろちゃんこと五郎左衛門が7歳から30年後までの成長と

ごろちゃんを見守る火消し組の家族・親戚・近所のひと達のふれあいを、

面白ろ可笑しく、ちょっと悲しく切なく描かれた物語です。

吉蔵一家の一人娘お栄がとても光っています。

お栄にとって悲しい事も起こりますが、

それも人生。

ドラマになったらお栄は、ぜひ尾野真千子さんで!

と思うくらいピッタリな雰囲気です。

最後のごろちゃんの父親五郎太の親心の言葉に

ほろっとしました。

とってもオススメの一冊です!



いつもありがとうございます


宇江佐 真理 「春風ぞ吹く 代筆屋五郎太参る」


春風ぞ吹く―代書屋五郎太参る (新潮文庫)春風ぞ吹く―代書屋五郎太参る (新潮文庫)
(2003/09/28)
宇江佐 真理

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村椿五郎太、25歳。

先祖の不始末といまいち野心に欠ける遺伝子が災いして、

うだつのあがらぬ小普請の身。

目下の目標は、学問吟味に合格して御番入りを果たすことなのだが、

文茶屋での代書屋の内職も忙しい。

そんなのんびり男を焦らせたのは、幼なじみの紀乃。

学ならずんば、恋もままならず――。

どうする、五郎太!

代書屋に持ち込まれる騒動、そして一進一退の恋と学業の行方や如何に・・・

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「学問吟味は運の問題もありましょう。

わしも昔は勉強に飽いて、もう嫌だと自棄になったことがあります。

その時、わしの母親は学問吟味は運のものだから

一心不乱に学んだところで希望が叶えられないこともある、

『運は天にあり、牡丹餅は棚にあり』ぐらいの気持ちで

臨めばよいのだと申しました。

仮にそれが通らなかったからといって人生おしまいではない、

別の道がある、とな。

わしは母親の言葉でいっぺんに気が楽になったのです」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この物語の続きがありました。

「無事、これ名馬」。

五郎太と紀乃の息子が登場します。

これがまた・・・面白くて(笑)




いつもありがとうございます。

宇江佐 真理 「余寒の雪」

余寒の雪 (文春文庫)余寒の雪 (文春文庫)
(2003/09)
宇江佐 真理

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男髷を結い、女剣士として身を立てることを夢見る知佐。

行く末を心配した両親が強引に子持ちの町方役人と祝言を挙げさせようとするが―。

幼子とのぎこちない交流を通じ次第に大人の女へと成長する主人公を描いた表題作他、

市井の人びとの姿を細やかに写し取る短編集。

中山義秀文学賞受賞の傑作時代小説集。

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1.紫陽花

 元遊女で今は太物商「近江屋」の内儀になっているお直が、
ついに苦界から抜けられないまま死んだ遊女梅ケ枝の
野辺の送りに立ちあう・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.あさきゆめみし
 
「しかし、若旦那が金比羅亭に通ってらしたのは、
あれは何だったんでしょうね。
今じゃ狐に抓まれたような心地ですよ」
「あれはねえ・・・」
正太郎は独り言のように呟いた。
あれほど夢中になっていた気持ちに正太郎自身も
説明がつけられなかった。
「夢を見ていたんだろうよ」
「へ、夢ですか」
「そうさ。だって夢はいつかは覚めるものだもの」

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3.藤尾の局
 
今の自分は備前屋という商家の女房である。
藤尾の名はとっくに捨てたつもりだった。
しかし、息子達と微かながら和解の兆しが見えたのは、
その藤尾であった頃の逸話からであった。
最初は藤尾であったことで息子達から疎まれたのに・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・
4.梅匂う
 
番傘を拡げ、自宅に踵(きびす)を返した時、
ふと花の香りがした。
あの時の香りだ。大滝に初めて会った時に誘われた香りである。
隠居に譲った梅の鉢が雨に濡れながら、
植木棚にちんまりと置かれていた。
それが提灯の灯りにぼんやりと照らされていた。
もう、花はあらかた落ちて、
最後の一つがかろうじて咲いている。
花は隠居の供養とばかり、かぐわしい香りを辺りに振り撒いているのだろう。
助松はその香りを胸一杯に吸い込んだ。
大滝の香りだと思った。

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5.出奔
 
「兄はわたくしのことをきっかけに仕官を夢見ていたようでございます。
乱暴者で昔から両親に心配っさせてばかりおりました。
ですから勝蔵様がわたくしの様子を見にいらっしゃった時も
すげなく追い返してしまったのです。」

「わたくし、兄が亡くなっても少しも悲しいとは思いませぬ。
勝蔵様のことばかりが悲しく思い出されます。」

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6.蝦夷松前藩異聞
 
栄吉は自邸に貯蔵していた食料をニシパに分け与えた。
ニシパは和人は嫌いだが栄吉とその工藤は好きだと世辞を言って帰った。
栄吉の胸は久々に温かいもので満たされた。
時がすべてを解決する。
その気持ちは栄吉の中で揺るぎなかった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・
7.余寒の雪
 
「何ゆえ、武士の魂である刀を放り出された?」
「それは剣を捨てたという意味でござるか?」
「知佐殿」
乱暴に腕を取られた。
知佐は自分の二の腕を掴んだ俵四郎の力にうっとりとなった。
それは先刻、真剣に向き合った時の気持ちと似ていた。
「飾磨殿が迎えにいらしても、国に戻らぬと言うてくれませぬか」
俵四郎のいかつい肩が目の前にあった。
知佐は今しも、その肩に自分の頬を押し当てたい衝動に駆られていた。
そして、実際に俵四郎に抱き寄せられた時、
俵四郎の肩越しに余寒の雪を被る富士の山が見えた。
雪は、知佐の眼に滲みた。
白く、この上もなく白く・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・



いつもありがとうございます。

宇江佐 真理 「十日えびす」


十日えびす (祥伝社文庫)十日えびす (祥伝社文庫)
(2010/04/14)
宇江佐 真理

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~人生、なるようになるさ/お江戸日本橋を舞台に、

たくましく生きる母娘を描く人情時代!~

錺職人の夫が急逝し、家を追い出された後添えの八重。

実の親子のように仲のいいおみちと日本橋に引っ越したが、

向かいには岡っ引きも手を焼く猛女お熊が住んでいたからたまらない。

しかも、この鼻摘まみ者の息子におみちがほの字の様子。

やがて、自分たちを追い出した義理の息子が金の無心に現われる。

渡る世間は揉め事ばかり? 健気に暮らす母娘の明日はいかに。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

世の中には様々な揉め事がある。

揉め事なんて、なければそれに越したことはない。

だが、多かれ少なかれ、毎日、揉め事は起きる。

徒らに(いたずらに)くさっているばかりが能ではない。

時には、その揉め事から家族の結束が生まれることもあるのだ。

八重にとって、今がまさに、その時だった。

三右衛門の加護を感じた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「本当だね。どこの家もうまく行かないことの

一つや二つはあるものだねえ」

八重は大袈裟なため息をついて言った。

「要は気の持ちようね。

何があっても、その内、何とかなるさと気軽に構えればいいのよ。

落ち込むのが一番駄目ね。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「おっ義母さんの気持はよくわかるよ。

でもねえ、よそに引っ越ししても、

そこが必ずしもおっ義母さんの思い通りになるとは限らないのよ。

皆んな、それぞれに言い分がある。

早く言えば、皆んな、他人と折り合いをつけながら生きているのよ。

あたし、そう思う。

小母さんは他人の迷惑を考えない人だけど、

鶴太郎さんは、あの人の息子だったのよ。

小母さんを毛嫌いして引っ越ししたら、

鶴太郎さんが悲しむ。」

おみちは健気に言った。

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いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「彼岸花」


彼岸花 (光文社時代小説文庫)彼岸花 (光文社時代小説文庫)
(2011/08/10)
宇江佐 真理

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<つうさんの家>

家業が傾いたために見知らぬ「つうさん」に

預けられたおたえ。


『年老いて、何か望みがあるかと訊ねられ、

つうさんは、孫と少しの間でいいから一緒に

暮らしたいと洩らした。』


・・・・・・・・・・・・・・・

<おいらのツケ>

父親の病気で隣の梅次とおかつ夫婦に育てられた三吉。


『了簡の甘さがツケを増やし、

にっちもさっちも行かなくなったのだ。

自分も知らずに世の中のツケを増やしていたのだ。

本来は味わうはずだった寂しさのツケ、

しなければならなかった苦労のツケだ。』


・・・・・・・・・・・・・・・・

<あんがと>

小さな尼寺の四人の尼と捨てられたおと。


『「みょうみょう、あんがと」

おとは、はっきりとした声で応えた。

ありがとうと言っているのだ。

妙円は、はっとした表情になった。

初めておとから聞いた礼の言葉だった。

尼僧達の胸に感動のようなものが拡がった。』

・・・・・・・・・・・・・・・・

<彼岸花>

江戸の小梅村で庄屋を務める家に生まれたおえいは

気の強い母親と一家を切り盛りしていた。

武家に嫁いだ妹は時折物やお金を無心に実家を訪れる。

そんなちゃっかりした妹が許せないおえいは、

ある日母親の不在を理由に妹の頼みを断る。

やがて妹の婚家から届いた知らせは―。

嫁ぎ先でいじめ抜かれた妹に

手を差しのべられなかった姉の後悔・・・。


『おえいは、そっと白い布を引き上げ、

おたかの顔を見た。

おたかの顔はむくみ、灰色になっていた。

そして、閉じた眼から血の涙を流していた。

ここで死ぬのは、さぞ無念であったろう。

おりくが大人になるのは、まだまだ先のことだ。

だが、おえいは思う。

生きていたところで、おたかの苦労は続いていたはずだ。

生きるのが地獄なら、いっそ死んだ方がよかったのか。

おえいにはわからない。』

・・・・・・・・・・・・・・・・

<野紺菊>

ぼけた姑を義姉おさわと世話するおりよ。


『今、生きている人間の死を望むことは人の道に

外れることだ。

人は誰でも年を取る。

年を取ればおすまのように、

頭がまともに働かなくなることだってある。

それは、おすまの罪ではない。

そんなおすまの世話をするのは、

残された者のつとめだ。

理屈はわかっているつもりだが、

世の中には、そのつとめと無縁で過ごす者もいる。

天の神さんは不公平だと、おりよは時々考える。』

・・・・・・・・・・・・・・・・

「振り向かないで」

親友の夫と不義に耽る(ふける)おくら。


『おくらは、おけいの言葉の意味を胸で反芻した。

おけいが何も知らなければ、

あんな言葉は出る訳がない。

すっかり片がついたといえども、

男は昔の女を、そうそう忘れるものではないだろう。

ついこちらを見てしまった巳之吉をおけいは制したのだ。

振り向かないで。

もしかして、それはおくらに対して言った言葉なのかもしれない。

(おくらちゃん、もういいでしょう?

もう、うちの人に構わないで)

おけいは、そう言いたかったのだろう。』


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「ひょうたん」


ひょうたん (光文社時代小説文庫)ひょうたん (光文社時代小説文庫)
(2009/03/12)
宇江佐 真理

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本書五間堀にある古道具屋・鳳来堂。

借金をこさえ店を潰しそうになった音松と、

将来を誓った手代に捨てられたお鈴の二人が、

縁あって所帯をもち、立て直した古道具屋だった。

ある日、橋から身を投げようとした男を音松が拾ってきた。

親方に盾突いて、男は店を飛び出してきたようなのだが…(表題作)。

江戸に息づく人情を巧みな筆致で描く、時代連作集。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・


五間堀には鳳来堂という古道具屋がある。

主は定式幕で拵えた半纏(はんてん)を年中着ている。

女房は店番の合間に外に七厘を出し、

魚を焼いたり、煮物の鍋を掛けている。

時分刻にはうまそうな匂いが辺りに漂い、

通り過ぎる人々の腹の虫を鳴かせる。

この店には年中、友人達が集い、

なかよく酒を酌み交わしている様子でもある。

夜も更けて通りが静かになると笑い声が外まで聞こえる。

月に一度はそれが啜り泣きに変わることもある。

何でもその日は友人の月命日らしい。

泣いたり、笑ったり。

太平楽なものだと近所は噂する。

音松と友人達は、

そんな噂を意に介する様子もない。

相変わらず泣いたり、笑ったりを繰り返していた。

泣いたり、笑ったり・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

息子の長五郎が泣かせます。

女房のお鈴の料理する描き方がとても良い。

時に先走り、時に歯止めが聞かない所のある音松を

お鈴や息子長五郎、そして毎晩飲みに集まる幼馴染の友人達が

諌めたり、助けたり・・・。

この物語をシリーズ物にして欲しいなぁ。




いつもありがとうございます。

映画 「大脱走」   2014.2.7(金)


大脱走 [DVD]大脱走 [DVD]
(2012/09/05)
スティーブ・マックィーン、ジェームズ・ガーナー 他

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<ストーリー>

第二次大戦下、脱走不可能といわれていた
ドイツのスタラグ・ルフト北捕虜収容所から、
連合軍将兵250人が集団脱走を計画、実行した!
この信じられないような史実を
『荒野の七人』の巨匠ジョン・スタージェスが
豪華オールスター・キャストを配して映画化。
収容所の中で3本のトンネルを掘りながら、
脱走後の身分証明書、衣類等を調達する捕虜たち。
脱走の意思を秘め、壁に向かってキャッチボールを繰り返すマックィーン。
有名なエルマー・バーンスタインの『大脱走のマーチ』の音楽が
さらに作品を盛り上げる。

<ポイント>

●没後30年を経てもなお人々を魅了し続ける
永遠のスター、スティーブ・マックィーンの代表作!
巨匠ジョン・スタージェス&魅力のオールスター・キャストで贈る、
実話をベースにした傑作エンターテイメント。
マックィーンの独房でのキャッチボール、
バイクでジャンプする超有名シーンをはじめ、
スタージェスの男気溢れる演出は今なおファンを魅了する!


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本日BSで放映していました。

吹き替えだったのですが、

声優さん方がこれまた素晴らしい。

<キャスト&声優>

スティーブ・マックィーン(宮部昭夫)

ジェームズ・ガーナー(家弓家正)

チャールズ・ブロンソン(大塚周夫)

リチャード・アッテンボロー(宮川洋一)

ジェームズ・コバーン(小林清志)

素晴らしい俳優さんばかりですねぇ。

3時間位の長い映画でしたけど、

見応えありとっても面白かったです。

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(とうほく蘭展より)


いつもありがとうございます。

宇江佐 真理 「憂き世店(うきよだな)」


憂き世店 松前藩士物語 (朝日文庫 う 17-1)憂き世店 松前藩士物語 (朝日文庫 う 17-1)
(2007/10/10)
宇江佐 真理

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蝦夷松前藩がお国替えとなり、

浪人となった相田総八郎とその妻なみは

江戸・神田三河町の裏店に移り住む。

内職に勤しむ総八郎と、二人を見守る長屋の住人たち、

共に帰封を願う松前藩士たちとの貧しくも温かい暮らしの中で、

なみは総八郎の子供を身籠るが……

時代小説の名手が、鎖国体制がゆらぎはじめた時代を背景に、

人々の生きる悲哀を丹念に情感たっぷりに描いた、傑作長編時代小説。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


松前藩を移封となり、

大名から小名へと格下げにもなったので、

大幅な人事の異動があった。

その時、務めを解かれた者が多かった。

総八郎も務めを解かれた一人だった。

総八郎は陽気もよくなったこの頃、

日傭取り(ひようとり)などの仕事で毎日出かける。

もはや禄を当てにできないので、

総八郎はとにかく働いて金を稼がなければならなかった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

自然はすべて人の気持を映す小道具である。

空も雲も風も雨も。

せめて道端の名もない草花や、

木々のさやぎにつかの間でも気づく自分でいたいと

なみは思う。

たとい、どれほど辛いことがあったとしても。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


だが、それは総八郎の勝手な思い込みだった。

月日は容赦なく懐かしい景色を変える。

総八郎の周りにいた人々は自分にとって何者だったのだろう。

不遇をかこつ自分を慰めるために天が差し向けた使者だったのか。

そう思わなければ、

たった三年の間に何も彼も目の前から姿を消してしまうはずがない。

あの場所に帰りたい。

あの愛しい日々に戻りたい。

そこで自分がどれほど幸福であったかに総八郎は気づいた。

下谷に帰る足取りは重かった。

総八郎は自分の人生がもはや終わりに近いと感じた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

脇役陣が良い。

久しぶりの宇江佐さんの長編小説を読んだ。

流れが良いので読みやすかった。



いつもありがとうございます。

宇江佐 真理 「深川にゃんにゃん横丁」 


深川にゃんにゃん横丁 (新潮文庫)深川にゃんにゃん横丁 (新潮文庫)
(2011/02/26)
宇江佐 真理

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お江戸深川にゃんにゃん横丁。

長屋が並ぶこの場所は、その名のとおり近所の猫の通り道。

白に黒いの、よもぎにまだら。

愛らしい猫たちがあくびをしているその横で、

雇われ大家の徳兵衛は、今日もかわらず大忙し。

悲しい別れや戸惑いの出会い。

報われない想いや子を見守る親の眼差し──。

どんなことが起ころうと、猫がニャンと鳴けば大丈夫。

下町長屋の人情溢れる連作時代小説集。

・・・・・・・・・・・・・・・・


「何をするとは、こっちの台詞(せりふ)だよ。

何んだい、黙って聞いてりゃ、言いたい放題。

あんた、何様のつもいなんだよ。

冗談じゃないっつうの。

盗人猛々しいだ?

どうすれば、そんなことをほざけるんだよ。

そのお嬢さんは、まともな娘だったから、

さげんちゃんの後を追って来たんだよ。

てて親のすることが我慢できなかったからさ。

え?そうじゃないのかえ。

右向けと言われりゃ右向いているような娘じゃない。

世の中で何が大事か、ようくわかっているんだ。

さげんちゃんについて行けば間違いないと勘が働いたんだ。

いいかえ。

男は理屈であれこれ言うが、

女は勘で勝負するんだ。

その勘は滅多に外れないよ。

とくと覚えておきやがれ!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・

長屋の良いところだなぁ。

他人でも身内のように心配してくれたり世話をしてくれたり。

おせっかいが有難迷惑の時も多々あったとしても、

いざという時に動いてくれて事を丸く収めてくれて・・・。

諦めて自棄(やけ)になる事があっても、

何とか収まるよう直談判してくれたり、

足を運んで取り成してくれたり・・・

有難いなぁ。

一つの家族となって良くも悪くもさらけ出して暮らしている。

猫たちにとっても居心地のよい長屋の暮らしぶりに、

いつも可愛がって世話をしてくれた「おつがさん」が亡くなった時の、

ねこちゃん達の佇まいに、ほろっとさせられたり・・・。

心がほっこり温かくなる物語でした。



いつもありがとうございます。

松島 その1   2014.2.1(土)

松島へ行って来ました。

旅館のロビー付近。
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部屋は、ロビー近くの一階。
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部屋に入ってすぐに窓いっぱいの風景に
「わぁ~!!」と声が出ました。


窓から見える景色最高です。
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めずらしく「雪の松島」でした。
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松島で雪景色はなかなか観れないので「レアものですネ!」と
仲居さんに言われました(笑)
赤い橋は「福浦橋」。



絶景かな!
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時間を忘れて眺めていました。


食事は部屋食。
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カニ・カキのバター焼き・お刺身・酢の物・
牛タン・ずんだ餅・つみれ汁・カニ・・・
ずんだ餅の餅部分だけ残して他全部頂きました。



大きな器のフカヒレ茶碗蒸しは豪華でした。
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新鮮なお刺身はさすが松島。つぶ貝が柔らかくて甘い!
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大好きなサーモンが嬉しい。


カキとアジフライの甘酢あんかけ。
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トロ~リとした上品な味が美味しかったです。


お風呂場ののれん。
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お湯はヌルっとした感触。
肌に乳液を塗っている感じ。
お湯あがりの肌がしっとりしてとっても気持ち良かったです。


脱衣所。
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畳敷きの脱衣所が珍しい。


翌日の夜がしらじら明ける頃。
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朝日が昇り始めた頃。
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絵葉書でよく観る風景を実際観れて感激!


露天風呂からの眺め。
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雪が少し残っていて椿の紅と雪が綺麗でした。
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和食の朝食。
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しゃけと蒲鉾を自分で焼いて食べるのでホカホカの美味しさ。


食堂からもこんなに綺麗な景色が観れます。
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どの部屋からも絶景が楽しめるホテルです。

ホテルをチェックアウトして、松島散策へ。
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福浦橋を渡って、福浦島へ行きました。



いつもありがとうございます。
プロフィール

cn7145

Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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