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北原 亜以子 「花冷え」

花冷え (講談社文庫)花冷え (講談社文庫)
(2002/02/15)
北原 亞以子

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紺屋の大店の末娘おたえは、幼くして両親を亡くし、

叔父の店で育った。

奉公人の弥吉は、五つ年上の型付け職人。

いい仲になった二人を、

叔父は夫婦養子にと考えていたのだが…。

ささやかな幸せを求め健気に生きている、

そんな女の一途な想いを

情感溢れる筆致で細やかに描いた、

珠玉の時代小説七篇を収録。

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いい縁談だと思う時には、

その人に心をひかれているの。

心をひかれている女と、

気がかりな女では勝負になりゃしない。

自分の気持ちをたしかめたいっていうのは嘘で、

ほんとうは、気がかりをなくして

その人と一緒になりたいんでしょう?

ええわたしだって、それぐらいわかる。

だって、二十(はたち)だもの。

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いつもありがとうございます
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煮魚・ふき煮    2014.3.28(金)

今夜は、煮魚。
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ふきとさつま揚げの煮物。
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笹かまとチンゲン菜のおかか炒め。
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とろろ。
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今日はとてもお天気が良くて、風もなく気持ちの良い一日でした。

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職場近くの橋の欄干にずら~っと並んでお見事!

のどかですなぁ~。


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いつもありがとうございます

ランチ   2014.3.27(木)

今日は、本社から部長と営業担当が来仙。

ランチご馳走になりました。

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お腹いっぱいで、

夕飯いらず。

でも、納豆ご飯を一膳食べましたけど(笑)


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いつもありがとうございます

畠山 健二 「本所おけら長屋」 「本所おけら長屋2


本所おけら長屋 (PHP文芸文庫)本所おけら長屋 (PHP文芸文庫)
(2013/07/17)
畠山 健二

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本所亀沢町にある「おけら長屋」は、

大家の徳兵衛、米屋奉公人の八五郎、

後家女のお染など、ひと癖ある店子が入り乱れて毎日がお祭り騒ぎ。

それもそのはず、お金はないけど人情に厚く、

かっとくるけど涙もろい。

自分より他人のことが気になって仕方がない。

こうした面々が、12世帯も軒を並べているのだ。

鉄斎がやってきた。

津軽の某藩を辞去し、江戸へ流れてきたのだ。

剣の腕がたち、冷静に物事に対処できる鉄斎は、

おけら長屋の連中が頼りにする心強い「旦那」。

鉄斎を迎えて、何かと騒がしい長屋の面々が遭遇する事件とは……。


著者は、本所育ちで演芸の台本などで複数の受賞歴を誇る手練の書き手。

今回は満を持して、文庫書き下ろし時代小説に初挑戦。

2013年本屋大賞作家・百田尚樹氏も「

この小説には、やられた! 」と太鼓判の出来ばえ。

江戸落語さながらの笑いと人情にあふれる作品世界をとくとご堪能あれ!

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「江戸は面白いところですなあ。

まだ半日だというのに、

次々と事件が起こる。

自分たちの振る舞いが、

天に恥じないことならば、

なんとかなるはずです」

この手の話に弱い八五郎が泣き出した。

「島田の旦那、あっしは旦那に惚れました。

あっしら三人、命に換えても、

お幸ちゃんを守ってみせます」


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本所おけら長屋(二) (PHP文芸文庫)本所おけら長屋(二) (PHP文芸文庫)
(2014/03/10)
畠山 健二

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笑いあり、涙あり。

テンポのいい会話と肩の凝らない文体で、

「新しい時代小説だ! 」と大好評を博した

『本所おけら長屋』の続編がついに登場。

お騒がせコンビ万造・松吉に、振り回される大家の徳兵衛、

わけあり浪人・島田鉄斎に左官の八五郎、おかみさん連中……。

「人情に厚く、おせっかいで大間抜け」な江戸っ子パワーはさらに倍増。

婚礼を控えた久蔵とお梅を思うあまりの

万松(万造・松吉の略)のおせっかいが大波乱を巻き起こす「だいやく」、

万造と迷子の勘吉との胸に迫る交情を描いた「まよいご」、

鉄斎の元主君・高宗が長屋を訪れて大騒動になる「こくいん」など、

読みだしたら止まらなくなる力作6篇を収録。

前作以上に、笑える、泣ける、温まるの江戸落語さながらの世界を、

小説で表現した意欲作。

『永遠の0』の百田尚樹氏をして「あかん、泣いてもうた! 」と

感嘆せしめた絶好調の連作時代小説シリーズの第2弾、満を持しての登場。

文庫書き下ろし。

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「人は血でつながってるんじゃねえ。

心でつながってんだ。

このおけら長屋の連中を見てみろ。

もとはみんな他人じゃねえか。

なのにこうして他人のことに必死になってやがる」

「あんた、重い荷物を一人で背負い込む気なのかい。

おけら長屋は何のためにあるんだい。

その重い荷物を、みんなで少しずつ分け合うためだろ。

この長屋に住む貧乏人はね、

そうやって生きていくのさ」

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いつもありがとうございます

安住 洋子 「夜半の綺羅星(よわのきらぼし)」


夜半の綺羅星 (小学館文庫)夜半の綺羅星 (小学館文庫)
(2007/10)
安住 洋子

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老舗の紙問屋の跡取りとして生まれた達造。

しかし、祖父、父が相次いで病死。

婿に入った継父とは不和。

弟妹が生まれ、居場所を失う。

子守奉公のおたえとの交流だけが、心の支え。

だが、やはり家に居づらく出奔。

庶民からは「犬」と疎まれる目明しの下っ引きになるが、

持って生まれた真摯さはなくしていない。

事件が起こる。

仲間の下っ引きが殺されたのだ。

犯人を追ううち、実家が火付け盗賊に遭い、

一家は惨殺、家は焼失の憂き目に。

女中のおたえだけが生き残る。

非運にもめげず、闇に潜む悪を追う達造だが…。

裏長屋の住民たちの人情や、

下層に生きる仲間たちとの交流を通して、

大きく成長していく一人の男の半生を描く、

感動の時代小説。

前作『しずり雪』の続編とも言える物語。

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佐喜蔵の夜泣きが収まった頃、
お光もまた夜泣きがひどくなり、
おたえは夜中に一人家を出て近くの聖天稲荷で
夜明けまで過ごすことがあった。

おたえがそっと開ける潜り戸の音を聞き、
達造は後を追いかけたことが何度かある。
朝までお光をあやしながら一人で過ごすなど、
幼いおたえには心細いだろうと思うと
足が自然に動いた。

「坊ちゃんは戻って下さいまし。
明日も手習いがありますし」
しかし、達造は朝まで一緒に付き合っていた。
灯りが消えた江戸の夜は闇に包まれていた。
聖天稲荷の境内の木々は、
大きな神社や寺に比べれば僅かなもので大木もない。
それでも闇の中、風に揺れている様は子どもにも落ち着かない。
夜空よりも黒く揺れている。
空を見上げた方が気が晴れる。
空には、一面星が輝いていた。

「降ってきそうだよ」
おたえも背にお光を揺らしながら顔を上げた。
おんぶ紐で首を絞められそうになりながら、
息を呑み見上げている。

「すごい数」

「江戸にいる人と同じくらい多いな」
この夜空の星が江戸に住む人ならば、
もうこの中には父と祖父はいないと、
達造はふと考える。
こんなに数え切れぬくらいの星が煌めいているというのに、
父も祖父もいないのだ。

「おたえと俺の星もあるのかなぁ」
夜空の闇に目が慣れてくると、
星はその数を増していく。

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悲しい生い立ちの「おたえ」。

五歳で達造のお店に子守り奉公にあがる。

五歳で奉公ですものねぇ・・・。

苦労しどうしのおたえの健気さが大変魅力的です。

おたえが達造を支えていなければ、

達造は、単なる下っぴきで荒れていたでしょう。

心根が優しくしっかりした達造の眼は、

後におたえと所帯を持ってからも十手を預かる岡っぴきとして

町の人々に信頼されるようになります。

安住洋子さんの描く物語は大好きです!



いつもありがとうございます

小杉 健治 「はぐれ文吾人情事件帖」


はぐれ文吾人情事件帖 (宝島社文庫 「この時代小説がすごい!」シリーズ)はぐれ文吾人情事件帖 (宝島社文庫 「この時代小説がすごい!」シリーズ)
(2014/03/06)
小杉 健治

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普段は小間物の行商をしている文吾は、

女と火遊びをした商家の旦那を脅して小判をせしめるなど、

危ない裏の仕事屋が本当の姿。

しかし情に厚い文吾は、江戸庶民の生活を脅かす悪の存在を知るや、

悪と対峙し、事件解決に汗を流します。


浅草八軒町の「どぶいた長屋」の文吾は二十四歳。

細身で背が高く、細面の好男子だが、

どこか軽薄な感じを漂わせている。

小間物商のかたわら、大店の旦那の女遊びをネタに小判を稼ぐなど、

裏では危ない闇仕事もこなす「ちょいワル」。

それでも、人情には篤い文吾が出会ったなにやらいわくありげな夜鷹とは…。

書き下ろし時代小説の人気作家の手による下町人情事件帖シリーズ第1弾!

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「ちょっと差し出がましい口をきかせてもらいますが」
たまりかねて、文吾は口を開いた。

「おさんさんはお里ちゃんを自分が腹を痛めてた子のように慈しみ、
可愛がっておいででした。
失礼ですが、内儀さんは二度、お里ちゃんを捨てているんですぜ」

「何を言うのですか」
お紋が抗議をするように膝を進めた。

「私がどんな思いでお里と別れてきたか、あなたには・・・」

「違うでしょう」
文吾はお紋の言葉を遮った。

「最初は磯吉さんから逃げた。
そのとき、どうしてお里ちゃんを連れていかなかったんですかえ」

「お里と一緒では働きに出られないからです。
だから、泣く泣く・・・」

「じゃあ、弥勒寺橋では、どうしてお里ちゃんを
引き取ろうとしなかったのですか」

「それは、私のことを気づかって」
花扇堂が口をはさんだ。

「いや、違いますね。
内儀さんは、せっかく掴みかけた花扇堂さんの
内儀の座を失いたくなかったんですよ。
内儀さんは二度とも、お里ちゃんより自分の幸せのほうを選んだ。
そうなんじゃないですか」
お紋が俯いた。

「もし、お里ちゃんが大切だと思うなら、
花扇堂さんにすべてを話すべきだった。
それが出来なかったのは、
自分のほうが可愛かったからです」
反論しようと顔を上げたお紋を制して、文吾は続けた。

「かどわかされてはじめて気がついたと仰いましたが、
その程度のことで、
お里ちゃんを可愛がっていけるんですかえ。
いっときの感情が去ってしまえば、
またお里ちゃんが邪魔になる。
それに、仮に、花扇堂さんの商売が傾いたら、
内儀さんは自分だけの幸せのために、
またお里ちゃんを置き去りにして
勝手な真似をしてしまうんじゃないんですかえ」

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昔、商売をしていたお店に押し込み強盗が入り、

金銭だけではなく、凌辱された「おさん」。

財産も無くし、妻の辱めにも苦しんだ夫は自害する。

その憎い相手には太ももに大きな痣があった。

「おさん」は復讐をはたすために自ら夜鷹に身を落とす。

憎い男が見つかるが、すでに余命幾ばくもなく床に臥せており、

逃げた女房の行方を言い置いて息を引き取る。

残された幼い「お里」を母親「お紋」に託すべく弥勒寺橋で会うが、

「お紋」は引き取れないと踵を返してしまう。

幼い「お里」を文吾の助けにより、

人生のやり直しのために育てる「おさん」。

おさんと文吾の惹かれあいながらも一線を越えることなく、

想い合いながら物語が進んで行きます。

文吾とおさん、そしてお里とのふれあいを

いろいろな事件を絡ませながら描かれていて面白かったです。

第二弾も読みます!




いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「古手屋喜十為事(しごと)覚え」  

古手屋喜十 為事覚え (新潮文庫)古手屋喜十 為事覚え (新潮文庫)
(2014/02/28)
宇江佐 真理

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お江戸は浅草のはずれ、田原町で小さな古着屋を営む喜十。

恋女房のおそめと二人、子がいないことを除けば

日々の暮らしには不満はない――はずだったのに、

何の因果か、たまりにたまったツケの取り立てのため、

北町奉行所隠密廻り同心・

上遠野(かとの)平蔵の探索の手助けをする破目になる。

人のぬくもりが心にしみて、思わずホロリと泣けてくる、

人情捕物帳の新シリーズ、いよいよスタート!

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「女房は可哀想な奴なんですよ。
てて親は材木問屋をやっておりましたが、
ダチに騙されて借金を背負い、
店を潰されてしまいました。
それだけならまだしも、
てて親は、がっくりと力を落として死んじまったんですよ。
母親もてて親の後を追うように半年後に・・・。

一人ぼっちになった女房は
柳原の土手で首隘り(くびくくり)をしようとしたんですよ。
まあ、それを助けた縁で、わっちは女房と一緒に
なったんですがね。
首隘り(くびくくり)なんざ、するもんじゃありませんよ。
女房はそれが原因で、
でかい声が出せなくなったんですから」

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よくある捕り物帳やおせっかいお世話人のもめ事解決とは

ちょっと違って、どちらかと言うと、

懇意にしている隠密同心に頼まれたから

仕方なく事件を解決して行くという感じです。

事件自体もよくある話ですが、

古手屋という中古の着物から謎を解いていくパターン。

着物は生活にかかせない物ですし、

その人となりもうかがえる品物なので、

事件性があるとなると、

喜十は仕事ほったらかして奔走します。

たいして儲けにならなくても喜十や女房おそめには、

縁のある事件もあり、ひとごととは思えない。

人情味豊かな人柄がほろっとさせられる物語でした。

第二弾では、

喜十夫婦が捨て子の赤ん坊を養子にするらしいですヨ。

だけど、その捨て子のきょうだいと名乗る人物が現れて、

これまたいろいろ無茶な事がおこるみたいですネ。

第二弾も楽しみなシリーズです。



いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「おちゃっぴい」


おちゃっぴい―江戸前浮世気質 (文春文庫)おちゃっぴい―江戸前浮世気質 (文春文庫)
(2011/01)
宇江佐 真理

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札差駿河屋の娘お吉は、町一番のおてんば娘。

鉄火伝法が知れわたり、ついたあだ名がおちゃっぴい。

どうせなら蔵前小町と呼ばれたかったけれど、

素直にゃなれない乙女心、やせ我慢も粋のうち…。

頑固だったり軽薄だったり、面倒なのに、なぜか憎めない江戸の人人を、

絶妙の筆さばきで描く傑作人情噺。

大笑い、のちホロリと涙の六編集。

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1.町入能(まちいりのう)

「あいにくだが、こちとら生まれつき物覚えがいい質でな、
小汚ねエ裏店住まいは骨の髄まで滲みついていらアな。
手前エのその仏頂面は忘れようにも忘れられねエ。
こいつは棺桶に入エるまでついて回るというものだ。
手前エも今後、侍とつき合う時は、
もちっと目立たねエように振舞うことだ。
そうでなけりゃ、おれのように一生その顔を
覚え続ける羽目になるんだからな。
わかったか、初五郎!」

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2.おちゃっぴい

「惣助、お前は武家出が自慢らしいが、
そんなものは今じゃ何の役にも立ちゃしないよ。
貧乏御家人の子だくさんで、お前のおっ母さんは
可哀想に三十を過ぎたばかりだったのに、
うちのおばば様より老けて見えた。
喰う物も喰わずに、お前のお父っつあんは労咳に倒れ、
医者だ薬だと金を遣った挙句に死んじまったそうじゃないか。
残されたのは借金と腹を空かせた五人の子供達。
長男のお前を士官させようにも紋付も二本差しも質に入れて、
何とも恰好がつかなかったと聞いてるよ。
よしんば士官が叶ったとしても、
小普請組からいただく雀の涙のような禄じゃ、
到底暮らしが成り立つはずもない。
お前のおっ母さんは、侍なんてたくさんだと言っていたよ。
うちのお父っつぁんが畏(おそ)れながらと礼を尽くして
お前を手代に抱えることで借金を帳消しにしてやった。
そうでもなかったら、お前の所は一家心中で、
今頃は投げ込み寺に卒塔婆(そとば)が六基、
立っていたに違いない。
武家の頃の許嫁だって?笑わせるんじゃないよ。
向こうさんだってほっとしてるわ。
少なくてもお前と一緒になって貧乏に喘ぐ(あえぐ)よりましさ」
 お吉はいっきにまくし立てた。
お玉は驚くよりお吉の啖呵(たんか)に感心した顔をしていた。

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3.れていても

「れていても、れぬふりをして、られたがり、
でございましたね、若旦那」
備前屋は、また知ったかぶりの川柳を振り回した。
「何だよ、備前屋、れていてもって」
与四兵衛が飲みこめない表情で備前屋の分別臭い顔を見た。
「上にほの字をつけてごらんよ、与四兵衛」
菊次郎が訳知り顔で言った。
「あ、惚れていてもね?なある・・・
いいね、その文句。あちきも今度遣おう。」
「ふん、野暮はこれだから困る。
備前屋、珍しくわたしの気持ちはわかってくれたね?」
「わかりますとも」
備前屋は大きく肯いた。

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4.概ね(おおむね)、よい女房

「おときさん・・・」
おすまはそう言ったきり、再び喉を詰まらせた。
男達は俯いたきりである。
武家の家の複雑な事情が重くのし掛かっていた。
誰しも、これで素町人の暮らし方が案外倖せなのかも知れないと、
そっと思ったはずである。
幸右衛門も女のような仕種で眼を拭っていた。
重苦しい雰囲気に苛立ったように、
今朝松が突然、声を上げた。
「ふんとにもう・・・」
勘助店の連中はその声で一斉に顔を上げ、
ぷっと噴き出した。
梅吉などはそのまま顎をのけぞらせて馬鹿笑いしている。
おすまは今朝松の方を向いて
「ふんとにもう、人の口真似ばかりして、この子は」と、
呆れたように言った。
その顔はもう、いつものおすまだった。

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5.驚きの、また喜びの

「親分、あっしがこいつを十四でこさえた話は
聞いていなさいますね?」
「ああ・・・」
「あっしとおそでは所帯を持つことを親に許して貰いやしたが、
暮らしの面倒は一切見ないという約束でほっぽり出されやした。
正直、苦労しやした。広い世間に二人ぽっちでした。
米が買えなくて一人分の飯を粥にして啜ったことが
何日も続きやした。
こいつが生まれても暮らしはそうそう変わるもんじゃありやせん。
いや、むしろ、ますます苦しくなった。
今度ァ一人分の飯を三人で分け合う暮らしでさァ。
だが、おそでが言ったんですよ。
うちは三人で一人前だから、何でも三人で力を合わせて行こうってね。
おそでは三つになったこいつにも噛んで含めるように言いやした。
こいつは殊勝に肯いておりやしたよ。
娘達が生まれても、そいつは同じでさァ。
何をするにも家族で一緒になってやって来ました。
て組に入って梯子乗りを任された時ァ、
怖じ気をふるって断ろうかと考えていたら、
子供達が言うんですよ。
ちゃん、肝っ玉が小せェんだよって。
その言葉に励まされて、あっしはやりましたよ。
あっしは手習所にもろくに通わなかったし、
倅や娘達に教える物は何もねェ。
せめて梯子乗りの技と纏(まとい)持ちの心意気だけは
伝えようと決心したんでさァ。」

・・・・・・・・・・・・・・・
6.あんちゃん

祝言の日、おかねは、おゆきの店で誂えた白無垢の衣装で輿入れして来た。
おゆきも祝言の機会に、しっかり商売っ気を見せ、
それにも菊次郎はうんざりだった。
何ほど極上の衣装か知れないが、
これほど花嫁衣裳の似合わない娘もいなかった。
こってりと白造りに白粉を塗った顔は、
たちの悪い雪女、京紅を塗った大きな口から見える歯が、
やけに黄ばんで見えた。
嬉しさにその顔で菊次郎に笑い掛けるものだから、
菊次郎はおかねの綿帽子をぐっと引き下げた。
おかねはおとぎ話の鉢かずき姫のようになって、
それでも祝言の席では殊勝にしていた。



いつもありがとうございます

友人とのお別れ会   2014.3.12(水)

高校時代の同級生が先日病気で亡くなりました。

本日、お別れ会に参列し私は受付もお手伝いさせて頂きました。

亡くなるには早すぎる為、受け入れる事が出来ない状態です。

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ご両親が娘に対してご焼香する姿があまりにもせつなかったです・・・

キャンドルを友人一人一人捧げました。




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我々友人一同で贈らせて頂いたお花です。

急なお知らせでしたが、本日皆んな仕事を休んで参列しました。




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お別れ会の後のお食事の時。

思い出話に時間がいくらあっても足りません。

お二人のお嬢さんが気丈に振舞っていましたが、

火葬扉が閉じた途端に泣き崩れていました・・・

昨日は少し雪がちらつき、

本日は朝から小雨が降りました。

涙雨ですね・・・




いつもありがとうございます

北原 亞以子 「深川澪通り燈(ひ)ともし頃」


深川澪通り燈ともし頃 (講談社文庫)深川澪通り燈ともし頃 (講談社文庫)
(1997/09/12)
北原 亞以子

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江戸で5指に入る狂歌師となった政吉は、

野心のあまり落ちこぼれて行くが、

唯一救いの燈がともっていて・・・。

幼い頃親を失ったお若は、

腕のよい仕立屋になれたが、

1人の心細さがつのる時は、

まっすぐに深川澪通りに向って・・・。

辛い者、淋しい者に、無条件に手をさしのべる木戸番夫婦を描く

傑作時代長編。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「三ちゃん、お前、姉ちゃんが好きなんだろう?

吾兵衛さんは、その姉ちゃんが好きになった人なんだよ」

吾兵衛が、薄く目を開いた。

三次郎は、姉に会いに行っても、台所にすら上げてもらえなかったことを

思い出していたのかもしれない。

かたくなに押し黙って俯いていた。

「お前は姉ちゃんと甥っ子を、塩売りで食べさせているんだろう?

姉ちゃんの内職で食べさせてもらって、

姉ちゃんに子守歌をうたってもらっているわけじゃないんだろ?

それだけ一人前になった男が、

どうして姉ちゃんの好きな男に愛想のいい顔を向けてやれないんだよ」

だって・・・と、三次郎は言ったように見えた。

が、その言葉は口の中で消えて、

あとにつづく筈だった不平も、胸のうちで呟いているようだった。

お若は、三次郎と膝を突き合わせた。

「お前も来年は十七だろ?

姉ちゃん母子を養ったり、

おみやと所帯をもとうとしたり、

もう立派に一人前じゃないか。

一人前なら、もっと見栄をお張り。

姉ちゃんを吾兵衛さんにとられたのが口惜しくっても、

姉ちゃんに甘ったれられなくって淋しくっても、

そんなことは平気だって顔をおし。

一人前の男が、それくらいの見栄を張れなくってどうするんだよ」

言っているうちに、お若は、自分を叱っているような気がしてきた。




いつもありがとうございます

同級会   2014.3.2(日)

今日は、久しぶりに高校時代の部活仲間4人でお茶飲み会。

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ここは仙台駅に隣接しているホテルメトロポリタンのレストランです。

外が見えて静かな雰囲気が大好きです。

ついつい話に花が咲き4時間近く長居してしまいました(笑)

何杯もコーヒーをお替わりしちゃいました(笑)

カレー屋さんの手伝いをしているメンバーがいまして、

次回またあつまる時は、

そのカレー屋さんでランチしましょうと約束して解散(笑)

ちなみにこちらのお店で食べた食事は、ビーフカレーでした(笑)

カレー
一応、左側がワタクシであります(笑)



いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「涙堂(なみだどう)  琴女癸酉日記(ことじょきゆうにっき)」


涙堂 琴女癸酉日記 (講談社文庫)涙堂 琴女癸酉日記 (講談社文庫)
(2005/08/12)
宇江佐 真理

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同心だった夫・高岡靫負はなぜ斬られたのか?

蟠る疑問を胸に妻の琴は、

侍を捨てて浮世絵師となった息子・賀太郎と日本橋通油町で同居を始める。

幼なじみで医師の清順や汁粉屋の伊十と親しみ、

移ろう江戸の風物に目を向けて筆を執るうちに、夫の死の謎が解けてきて…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・


日本橋通油町(とおりあぶらちょう)

この町と人々を慈しみ、元同心の妻・琴が綴る笑いと涙と優しさに溢れた日々。

江戸市井小説の名手が描く連作短編集。

「白蛇騒動」

弥生25日。

4代目鶴屋南北の「於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)」、

大層な評判なり。


「近星」

皐月19日。

願人坊主になる物乞い、うたって踊るのが大層流行する。


「魑魅魍魎」

葉月10日。

何としたことか米価下落する一方。


「笑い般若」

長月20日。

今度はきたな細工の料理が流行す。


「土中の鯉」

霜月晦日。

新和泉町、境町、葺屋町が全焼す。火はさらに新乗物町にも及ぶ


「涙堂」

師走大晦日。

妾の涙堂、中ぐらい。琴。

・・・・・・・・・・・・・・・


琴は人間の心の中にある闇を垣間見た思いがした。

弱さとは無縁であるはずの般若も、

時にはだらしなく表情を弛める(ゆるめる)ことがあるのだ。

それと同時に、人間の幸福は未来永劫に続くものではないとも

感じた。

ある日突然、幸福ががらがらと音を立てて崩れる時がある。

琴について言えば、それは夫の死であろうか。

そこから何かが確実に変わったと思う。

せめて何が起きても潰(つぶ)れない覚悟を

常日頃から心掛けておくべきかも知れない。

乃江は、それを琴に身を以て教えてくれたのだろう。

そう思わなければ、乃江のことはあまりに切な過ぎた。

・・・・・・・・・・・・・・・・


「涙堂(なみだどう)とはいあなる建物にあるや。

人の涙を満々と湛えた湖に浮かぶ東屋(あづまや)のごときものか。

その中に供えるものは、また涙なるか。

しかし、涙堂、この世にあるを知らぬ。

それ、人の心の中にひそかに建立したるものにあらぬか。

涙堂の備え、大きなる人こそ、その悲しみも深しと思ゆ」

・・・・・・・・・・・・・・・・

いつもありがとうございます

プロフィール

cn7145

Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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