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安住 洋子 「夜半の綺羅星(よわのきらぼし)」


夜半の綺羅星 (小学館文庫)夜半の綺羅星 (小学館文庫)
(2007/10)
安住 洋子

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老舗の紙問屋の跡取りとして生まれた達造。

しかし、祖父、父が相次いで病死。

婿に入った継父とは不和。

弟妹が生まれ、居場所を失う。

子守奉公のおたえとの交流だけが、心の支え。

だが、やはり家に居づらく出奔。

庶民からは「犬」と疎まれる目明しの下っ引きになるが、

持って生まれた真摯さはなくしていない。

事件が起こる。

仲間の下っ引きが殺されたのだ。

犯人を追ううち、実家が火付け盗賊に遭い、

一家は惨殺、家は焼失の憂き目に。

女中のおたえだけが生き残る。

非運にもめげず、闇に潜む悪を追う達造だが…。

裏長屋の住民たちの人情や、

下層に生きる仲間たちとの交流を通して、

大きく成長していく一人の男の半生を描く、

感動の時代小説。

前作『しずり雪』の続編とも言える物語。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


佐喜蔵の夜泣きが収まった頃、
お光もまた夜泣きがひどくなり、
おたえは夜中に一人家を出て近くの聖天稲荷で
夜明けまで過ごすことがあった。

おたえがそっと開ける潜り戸の音を聞き、
達造は後を追いかけたことが何度かある。
朝までお光をあやしながら一人で過ごすなど、
幼いおたえには心細いだろうと思うと
足が自然に動いた。

「坊ちゃんは戻って下さいまし。
明日も手習いがありますし」
しかし、達造は朝まで一緒に付き合っていた。
灯りが消えた江戸の夜は闇に包まれていた。
聖天稲荷の境内の木々は、
大きな神社や寺に比べれば僅かなもので大木もない。
それでも闇の中、風に揺れている様は子どもにも落ち着かない。
夜空よりも黒く揺れている。
空を見上げた方が気が晴れる。
空には、一面星が輝いていた。

「降ってきそうだよ」
おたえも背にお光を揺らしながら顔を上げた。
おんぶ紐で首を絞められそうになりながら、
息を呑み見上げている。

「すごい数」

「江戸にいる人と同じくらい多いな」
この夜空の星が江戸に住む人ならば、
もうこの中には父と祖父はいないと、
達造はふと考える。
こんなに数え切れぬくらいの星が煌めいているというのに、
父も祖父もいないのだ。

「おたえと俺の星もあるのかなぁ」
夜空の闇に目が慣れてくると、
星はその数を増していく。

・・・・・・・・・・・・・・・・

悲しい生い立ちの「おたえ」。

五歳で達造のお店に子守り奉公にあがる。

五歳で奉公ですものねぇ・・・。

苦労しどうしのおたえの健気さが大変魅力的です。

おたえが達造を支えていなければ、

達造は、単なる下っぴきで荒れていたでしょう。

心根が優しくしっかりした達造の眼は、

後におたえと所帯を持ってからも十手を預かる岡っぴきとして

町の人々に信頼されるようになります。

安住洋子さんの描く物語は大好きです!



いつもありがとうございます
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小杉 健治 「はぐれ文吾人情事件帖」


はぐれ文吾人情事件帖 (宝島社文庫 「この時代小説がすごい!」シリーズ)はぐれ文吾人情事件帖 (宝島社文庫 「この時代小説がすごい!」シリーズ)
(2014/03/06)
小杉 健治

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普段は小間物の行商をしている文吾は、

女と火遊びをした商家の旦那を脅して小判をせしめるなど、

危ない裏の仕事屋が本当の姿。

しかし情に厚い文吾は、江戸庶民の生活を脅かす悪の存在を知るや、

悪と対峙し、事件解決に汗を流します。


浅草八軒町の「どぶいた長屋」の文吾は二十四歳。

細身で背が高く、細面の好男子だが、

どこか軽薄な感じを漂わせている。

小間物商のかたわら、大店の旦那の女遊びをネタに小判を稼ぐなど、

裏では危ない闇仕事もこなす「ちょいワル」。

それでも、人情には篤い文吾が出会ったなにやらいわくありげな夜鷹とは…。

書き下ろし時代小説の人気作家の手による下町人情事件帖シリーズ第1弾!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ちょっと差し出がましい口をきかせてもらいますが」
たまりかねて、文吾は口を開いた。

「おさんさんはお里ちゃんを自分が腹を痛めてた子のように慈しみ、
可愛がっておいででした。
失礼ですが、内儀さんは二度、お里ちゃんを捨てているんですぜ」

「何を言うのですか」
お紋が抗議をするように膝を進めた。

「私がどんな思いでお里と別れてきたか、あなたには・・・」

「違うでしょう」
文吾はお紋の言葉を遮った。

「最初は磯吉さんから逃げた。
そのとき、どうしてお里ちゃんを連れていかなかったんですかえ」

「お里と一緒では働きに出られないからです。
だから、泣く泣く・・・」

「じゃあ、弥勒寺橋では、どうしてお里ちゃんを
引き取ろうとしなかったのですか」

「それは、私のことを気づかって」
花扇堂が口をはさんだ。

「いや、違いますね。
内儀さんは、せっかく掴みかけた花扇堂さんの
内儀の座を失いたくなかったんですよ。
内儀さんは二度とも、お里ちゃんより自分の幸せのほうを選んだ。
そうなんじゃないですか」
お紋が俯いた。

「もし、お里ちゃんが大切だと思うなら、
花扇堂さんにすべてを話すべきだった。
それが出来なかったのは、
自分のほうが可愛かったからです」
反論しようと顔を上げたお紋を制して、文吾は続けた。

「かどわかされてはじめて気がついたと仰いましたが、
その程度のことで、
お里ちゃんを可愛がっていけるんですかえ。
いっときの感情が去ってしまえば、
またお里ちゃんが邪魔になる。
それに、仮に、花扇堂さんの商売が傾いたら、
内儀さんは自分だけの幸せのために、
またお里ちゃんを置き去りにして
勝手な真似をしてしまうんじゃないんですかえ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・

昔、商売をしていたお店に押し込み強盗が入り、

金銭だけではなく、凌辱された「おさん」。

財産も無くし、妻の辱めにも苦しんだ夫は自害する。

その憎い相手には太ももに大きな痣があった。

「おさん」は復讐をはたすために自ら夜鷹に身を落とす。

憎い男が見つかるが、すでに余命幾ばくもなく床に臥せており、

逃げた女房の行方を言い置いて息を引き取る。

残された幼い「お里」を母親「お紋」に託すべく弥勒寺橋で会うが、

「お紋」は引き取れないと踵を返してしまう。

幼い「お里」を文吾の助けにより、

人生のやり直しのために育てる「おさん」。

おさんと文吾の惹かれあいながらも一線を越えることなく、

想い合いながら物語が進んで行きます。

文吾とおさん、そしてお里とのふれあいを

いろいろな事件を絡ませながら描かれていて面白かったです。

第二弾も読みます!




いつもありがとうございます
プロフィール

cn7145

Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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