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小杉 健治 「冤罪(えんざい)」   

冤罪


渾身の長編時代サスペンス

一夜限りの女のために獄門台に首をさらすのか。

無実を晴らすことができるのは、倉賀野宿で出会った女郎だけ。

だが、女は大店の主と幸せを掴もうとしていた。

故郷から江戸にもどってくると、

見に覚えのない押し込みの疑いがかけられていた。

追手を振り切った半次郎は、殺しのあった夜、

一緒にいた宿場女郎を探し出す。

だが、女は大店の若主人に身請けされ、盛大な婚礼を間近にひかえていた。

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それにしても、半次郎は自分の前に現れることがあるのだろうか。お里と所帯を持つため身を粉にして働こうとした半次郎だ。なまじ、すれがらしの者ではなく、真正直な人間だけにお里っを追い求めて来るかもしれない。そう思ったとたん、半次郎との一夜が唐突に思い出され顔が熱くなった。半次郎を恐れながら、懐かしむ気持ちがあるのかと知って、驚いて顔を背けた目に隅田堤の緑がいっそう濃くなって飛び込んで来た。

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濡れ衣を着せられた半次郎の悲しい物語です。

やるせないと言うか・・・

あまりにに理不尽でくやしい気持ちの残る読後感です。

まだ25歳の半次郎の人生を、

やってもいない罪を自分がかぶる事で終わらせて良いのか・・・

裏切られ自棄になり荒れていた半次郎を救ってくれた人達・・・

半次郎を目の敵にして執拗に追いかける岡っ引き・・・

スピード感のある表現にあっと言う間に読み終え、

半次郎に手を合わせるような気持ちで本を閉じました・・・。

装丁の絵が素晴らしい!



いつもありがとうございます
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外で食事の一日   2014.5.24(土)

今日の仙台は、風も陽射しも気持ち良くて、

友人とドトールのサンドとコーヒーを買って、

定禅寺通りのベンチで外ランチして来ました。


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丁度、「伊達ふぇす@定禅寺」という和文化活性イベントをやっていました。

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ライブもやっていました。
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和楽器の演奏は、尺八でポップ調。

以外に合うんですねぇ。


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定禅寺通りはやっぱりいいなぁ~!
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夕飯もこれまた、外のテーブルで中華を食べて来ました。

EDEN(エデン)というこじゃれたスポットがありましてね。

仙台駅前正面すぐの所にあります。

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麻婆豆腐・飲茶セット。
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夕方になるとさすがに涼しくなりましたが、

外テーブルで頂く食事もたまには良いものですねぇ。

店内は「合コン」で賑わっていましたヨ。

賑わっていたけど、うるさい人がいなくて、マナーのよい若者ばっかりでした。

こういう合コンなら、参加してみたいナ!




若かったらね・・・



いつもありがとうございます

藤沢 周平 「雪明り」  


新装版 雪明かり (講談社文庫)新装版 雪明かり (講談社文庫)
(2006/11/16)
藤沢 周平

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女性の捉えかたが秀逸な傑作短編8本を収録美しく心優しい女の哀れ、
世の片隅で生きる博徒のせつなさ。武家社会の終息を予感する武士の慨嘆。
小さくも己の世界を懸命に生きる人々の姿を暖かく描く短編集!

貧しくも、明日への夢を持って健気に生きる女。
深い心の闇を抱えて世間の片隅にうずくまる博徒。
武家社会の終焉を予想する武士の慨嘆。
立場、事情はさまざまでも、
己の世界を懸命に生きる人々を、
善人も、悪人も優しく見つめる著者の目が全編を貫き、
巧みな構成と鮮やかな結末とあいまった魅惑の短編集。

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1.恐喝
 
 三つの時に両親に死なれて、伯父の勘七に引き取られた。勘七は早死にした妹が残したたった一人の子供を不愍(ふびん)がったが、伯母のおはつは、なぜか執拗に竹二郎を苛めた。おたかの下の麻吉が、竹二郎と同年だったことも理由だったようである。もっともそれはかなり大きくなってから気づいたことである。鮮明にひとつの記憶がある。勘七はうだつの上がらない左官の下職だったが、おはつはその頃から近くの小料理屋に、通いの仲居で勤めていた。商売柄おはつは毎晩のように酔って帰った。そして四半刻もすると、大てい近所構わずの喧嘩が始まり、喧嘩になるとおはつは、決まり文句のように竹二郎を飯ばっかり喰らう厄介もの、と罵った(ののしった)。

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2.入墨
 
 突然瀬戸物が割れる音が、静かな店の中に響いた。卯助が立ち上がっていた。卯助の右手には、底が欠けて鋭い割れ口を見せている銚子が握られている。不思議なものをみるように、乙次郎は近づいて来る卯助を眺めて声をかけた。「どうかしたか、じいさん。これはお遊びじゃねえんだ。近寄ると怪我するぜ」だが卯助はゆっくりした足の運びを止めなかった。二人に近づくと、足をひらき腰をためるように落として、銚子を逆手に持ち替えた。「お父っつぁん、やめて」お島が叫んだのと、乙次郎が牧蔵を突き離して、卯助に向き直ったのが同時だった。卯助はそのまま踏み込んでいた。

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3.潮田伝五郎置文

 潮田は、どういうわけで勝弥に果たし合いなど申し込んだのだろう。七重にはいくら考えても解らない。潮田伝五郎は、ある時期弟のまわりにいた男たちのなかで、一番目立たない人間だった。辛卯の年の暮、屋敷から救い出してくれたのが、伝五郎だと知ったときは驚いたが、偶然だろうと思っていた。果たし合いは、伝五郎の方から申し込んだと聞いている。どうのような理由からそうなったかを語る者は誰もいない。七重に解っているのは、一人の男が、いまの七恵にとって大切な人間の命を奪ってしまったことだけである。・・・あのような眼でみられるいわれはない。七重は、憎悪を含んだ眼で自分を見つめてくる潮田の老母に、憤りを感じた。風もない、穏やかな日射しの中で、二人の女は、なおしばらくきつい眼でお互いを見合った。

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4.穴熊

 「町人」刀を下げたまま、黒い影が引き返してきた。塚本伊織だった。・・・斬られる。と浅次郎は思った。「お前も、この女と寝たか」「へい」浅次郎は顫(ふる)える歯を噛みしめて、辛うじて答えた。「申し訳ござんせん、旦那」「お前が悪いわけではない。悪いのはこの女だ」塚本は暗い声で言った。月明りを背にしていて、表情は見えなかった。「だが、二度とわしの前に顔を出すな。今度出会ったときは斬る」塚本は言うと、くるりと背を向け、橋に戻るとしゃがみ込んで、倒れている佐江の身体を抱き起こし、背負った。「旦那」浅次郎は橋に駆け上がった。血の匂いが鼻を衝いてきた。橋板は夥しい(おびただしい)血に黒く染まっている。「斬っちまったんですかい」言ったとき、浅次郎は不意に涙がこみ上げてくるのを感じた。涙声で言った。「何も殺さなくとも、よかったんじゃありませんかい。むごいことをなさる」歩きかけていた塚本が、ゆっくりと振返った。「これは、わしに斬られる日を待っていたのだ」

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5.冤罪
 
 ・・・ああして、兄はこれからも城に通い続けるのだ。と源次郎は思った。妻子を養うためには、同僚を過失で死なせたことにも、死んだ同僚が冤罪を着て家を潰されたことにも、眼をつぶり、口を噤み(つぐみ)、ひたすら事なかれと通い続けるのである。そういう兄を、非難出来ないのを、源次郎は感じる。兄の生き方は、どこかもの哀しいが、源次郎の非難など受け付けない強靭なものを秘めているようにも思われた。まるめた背が、源次郎が七つの時に死んだ亡父に似てきた、と思う。その背に、兄は小禄ながら五代にわたって続く堀家の、すっしりとした重味を背負って、城と屋敷の間を往復している。

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6.暁のひかり

 今にして思えば、おことは市蔵がもう戻ることが出来ない世界から声をかえてきた、たった一人の人間だったように思うのである。おつなや、小梅の伊八、富三郎がいて、油煙を煙らせる賭場があるところではなく、人々が朝夕の挨拶をかわしたり、天気を案じたり、体のぐあいを訊ね合ったりし、仕事に汗を流し、その汗でささやかなしあわせを購う(あがなう)場所。そこに戻ることが、どんなに難しいかは、さっき会ってきた親方の源吉を思い出せばわかる。

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7.遠方より来る

 ・・・しかし、気楽だろうな。と思った。喰うためには、何かしなければならないだろうが、それは城に雇われている人間も一緒である。家もなく妻子の煩(わずら)いもないというのは気楽なものかも知れないと思った。ただ人は、その孤独に耐えられないときがあるだろう。曾我平九郎が、この家に立ち寄ったのもそういうことで、いっとき人恋しかっただけかも知れぬ。

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8.雪明り
 
 ・・・由乃は、跳べと言っている。そうやって、由乃と夫婦になるしかないのだと思った。汚物にまみれ、骨と皮だけになった由乃を宮本の家から救い出したときから、そのことはわかっていたのだった。そして由乃もそれをわかっていたのだ、と思った。・・・江戸に行くのだ。菊四郎は坂に背を向けて、ゆっくり歩きだした。

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いつもありがとうございます

猫譲渡会のお手伝い   2014.5.17(土)

今日は、猫の譲渡会のお手伝いに行ってまいりました。

お手伝いって言うか・・・・枯れ木も山の賑わいという役です(笑)

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子猫ちゃんは、全て里親さん決定しました!

愛おしむように子猫ちゃんを抱っこする里親さん。
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ランチは、メンバーさん手作りのマイタケご飯と

ズッキーニとマッシュルームと鳥肉のケチャップ炒め。

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ズッキーニって食べず嫌いでしたが、食感が良いですねぇ!

お料理上手のメンバーさん、

忙しいのに朝早くから皆んなのお弁当作りに頭が下がります。

ちなみにお弁当代は、一人100円です!

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今日は、成猫ちゃんはご縁がありませんでしたが、

気にかけて検討して下さる方もいらっしゃいました。

皆さん、じっくり考え、係りの方の説明を聞いて、

ご家族で納得行くまで真剣に考えていらっしゃいました。

簡単に決めず、迷ったらやめるのが良いと思います。

必ず、この猫ちゃんだ!と思えるご縁があると思いました。

うちのメイも頂いた時にどうしてもこの猫ちゃんが良い!と

直感が働き現在に至ります。

ご縁てそういうものかもしれませんね。

良き縁にするもしないも責任を伴なった飼い主次第と思いました。

今日は、「青葉祭り」があり、

仙台中心部では「すずめ踊り」で賑わっていたようです。

明日が、本祭りなので、多くの人出になる事と思います。

お天気は、強風ですが気持ち良い陽ざしの仙台でした。



いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「日本橋本石町 やさぐれ長屋」」 


日本橋本石町やさぐれ長屋日本橋本石町やさぐれ長屋
(2014/02/21)
宇江佐 真理

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日本橋本石町に弥三郎店と呼ばれる長屋があった。
事情を抱えた住人ばかりが住んでいて――。

「時の鐘」
 真面目一徹、そろそろ嫁をと周囲から勧められる鉄五郎。
そんな鉄五郎に気になる相手が現れたのだが、
若くして出戻ったおやすという莨屋の女だった。

「みそはぎ」
 おすぎは、老いた母親の面倒をみている。
ある日、勤め先の井筒屋に見慣れぬ男が来るようになった。

「青物茹でて、お魚焼いて」
 おときの旦那は錺職人。
次第に泊まり込みの日数が長くなり、しまいにはひと月にもなった。

「嫁が君」
 おやすはずっと旦那が家にいるおひさのことが羨ましい。
ある日、この旦那が寄せ場からきた人物だと噂になる。

「葺屋町の旦那」
 おすがのかつての奉公先の倅が、弥三郎店にやってきた。
どうやらこの倅、わけありのようで。

「店立て騒動」
 弥三郎店が店立てに?!
住人は緊急事態にてんやわんやの大騒ぎ。
どうにかこの事態をとめられないか。
長屋の住人が一致団結して行ったことは。

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「時の鐘」
 
 「鉄五郎さんが出戻りのあたしを女房にしたいって言ってくれるのは涙が出るほど嬉しいよ。だけど、鉄五郎さんがあたしに世間並の女房を求めているのなら願い下げだ。あたしはあたしだ。今も十年先も気性は変わらない。出戻りだからって遠慮するつもりもないのさ。そこを承知してくれるのなら考えてもいいけど」

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「みそはぎ」

 「みそはぎは仏様の花だそうですね」銀助は訳知り顔で言う。「ええ。いつもお盆の頃に咲きます」「仏様はみそはぎの花の露でなければ口にされないそうです」「そうなんですか」おすぎは初めて聞いた。「仏様に供える禊ぎ(みそぎ)の萩だからみそはぎと呼ぶのですよ」

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「青物茹でて、お魚焼いて」

 「ごめんよ、ごめんよ。おっ母さんがばかだった。もう、どこにも行かなくていいからね」おときはおちよを抱き締めて泣いた。作次にも、お前がいてくれたお蔭で、おっ母さんは助かったと言った。「おいら、尾張屋に戻らなくていいのか」作次はそれが肝腎とばかり訊く。「ああ、おちよも一緒だ。でも、おっ母さんは、また夜のお仕事を続けなければならないから、二人とも我慢しておくれよ」「平気だ、おいら。尾張屋にいるより何んぼかましだ」「あたいも、おしょさんの家にいるより留守番するほうがいい」「そうかえ。さあさ、ごはんを炊こうね。作次、通りに出て、納豆売りを見つけたら、買って来ておくれ」「合点!」作次は張り切った声を上げた。ようやくあらぬ夢から覚めた思いだった。うかうかと忠助について行ったら、どんな目に遭ったかわからない。自分は甘い女だった。茂吉が帰って来なくても、自分は子供達の母親でいようと、改めてそう思うのだった。

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「嫁が君」
  「あたし、滅法界もなく倖せ」おやすはうっとりした顔になった。ひと月の間の鬱陶しいものが、俄かに(にわかに)晴れるようだった。井筒屋で鉄五郎の猪口に酌をしながら、六助夫婦のことを話してやろうと思った。(六助さんは寄せ場帰りだけど、お前さんはそんなこと気にしないだろ?あの人はいい人だ。おかみさんのおひささんも亭主思いの女房だよ。ねずみの始末をつけてくれたのも六助さんなのさ)鉄五郎に話す言葉を、おやすはあれこれ考えていた。
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「葦屋町の旦那」

 「この弥三郎店はな、やさぐれ長屋とも呼ばれているんだぜ。だがよ、やさぐれている者なんざ一人もいやしねェ。皆、おまんまを喰うためにあくせくしながら稼いでいるんだ。お前ェ、ひと月余りも新場で働いたから、ちったァ、貧乏人の暮らしがわかったんじゃねェか。それとも、まだわからねェか。」「兄さん、何が言いたい」「実家をおん出て意気がっているお前ェは大ばか野郎だってことよ」

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「店立て騒動」

  「お前さん、あたし、夢を見ているみたい。世の中には、こんなことも起きるのね」その夜、おやすは蒲団に入ってからも興奮して、なかなか眠れなかった。「井戸替えしたから、井戸の神さんのご利益もあったかな」鉄五郎はそんなことを言う。「きっとそうね。自分達のためでなく、後の人のことを考えて井戸替えしたのがよかったのよ。皆んなの優しい気持ちが通じたのよ」「だな」鉄五郎は満足そうに肯く(うなずく)。



いつもありがとうございます

小杉 健治 「雨上がりの空 はぐれ文吾人情事件帖 ③」


はぐれ文吾人情事件帖 雨上がりの空 (宝島社文庫 「この時代小説がすごい!」シリーズ)はぐれ文吾人情事件帖 雨上がりの空 (宝島社文庫 「この時代小説がすごい!」シリーズ)
(2014/05/08)
小杉 健治

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表の顔は小間物屋、本業・裏仕事師の文吾。
想い人と一緒になるために真面目に働こうと決めたのだが、
ついまた博打に手を出し、素寒貧になってしまう。
そんな文吾に、同じく博打で負けた大店の不良息子、藤次郎が
「手伝ってほしいことがある」と声をかけた。

小間物屋の行商のかたわら、危ない仕事をこなすくせに、
想い人には本心を打ち明けられない文吾。
非情のふりをしつつも、
つい人情に流され事件に巻き込まれる。
そんな文吾に仕事を持ち込んだ、
賭場仲間で大店の不良息子・藤次郎が殺されてしまった!
そして文吾のまわりに「殺し屋」の影が…。
書き下ろし時代小説の人気作家による
「ちょいワル」文吾の下町人情事件帖シリーズ第3弾!

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「おさんさん。お願いがあるのですが」
「なんでしょう」
文吾が懐から財布を取り出した。中には十両入っている。
「この財布、預かっていただけないでしょうか」
「これは?」
「十両あります。じつは、お恥ずかしいのですが、
博打で稼ぎました。
でも、この金を持っていると、また博打に手を出しそうで。
出せばすってんてんになっちまう」
おさんはじっと文吾の目を見つめた。
黒目が濡れているように思える。
そこに吸い込まれそうだ。
そうだ、お良さんもこんな目をしていた。
「文吾さん」
やっとおさんが口を開いた。
「文吾さんは危ない仕事をしているのではないでしょうね」
りんとした顔つきに、文吾が肩をすくめた。
「とんでもねえ」
「お金になるからと言って、危険な仕事はいけませんよ。
私、とても心配なんです」
おさんは諭すように言う。
「ほんとに、あっしのことを心配してくださるんで」
「当たり前でしょう」
おさんは叱るように言う。
「ありがてえ」
文吾はうれしかった。
それからしばらくして、
おさんやお里が引き止めるのを振り払って、
文吾はおさんの家をあとにした。
いつまでもいっしょにいると、何を口走るかわからない。
自分がまっとうになってから、おさんに告白すべきなのだ。

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いつもありがとうございます

フリーマーケット祭り   2014.5.11(日)

今日は、地域のフリーマーケット祭りに参加して来ました。

ステージでは音楽・クイズ・地域の学校の生徒さん達による催しと盛り沢山。

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屋台もいっぱい。

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きゅうりの一本漬けと言うのがあって、串に刺したきゅうり漬けを歩きながら

食べている人がいて、と~っても美味しそうでした(笑)

最近の綿あめって水色もあるんですね。びっくりしちゃった。




秋田犬を連れている人がいたのですが、

とってもおりこうな犬で人気者!

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私たちのブース。
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小振りの器とガラス製品は完売。

服は、男の子用のTシャツやパーカーは即完売でした!


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手作り品コーナーが人気で、しゃがんでじっくり選び、

いろいろな種類の手作り品を何個も買って下さいました。

手作りの苔玉は、完売でした!


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私は、本・服・靴を出品。

服と靴は完売。

本は半分売れました。

お昼は屋台で焼きそば(\350)を買って皆でランチ。

この焼きそばが、肉の量も多く、

玉ねぎ・ピーマン・にんじん・キャベツがしっかり入っていて、

皆んなで良心的な焼きそば屋さんだね~!

などと語りあっている時に、

急に太陽の陽が蔭ったと思ったら、

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飛行船が太陽を横切っていました。

真っ青な空に飛行機雲と並走して気持良さそう。

お天気も最高!風もほど良い!

紫外線対策はバッチリ!(笑)

楽しい一日でした。



フリーマーケットの帰り道で見つけた堀。

ツツジが満開。
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いつもありがとうございます

彩りご飯   2014.5.8(木)

今夜は、豆腐茶碗蒸し。
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きはだまぐろのお刺身。
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彩りご飯。
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ひき肉そぼろ・炒り卵・いくら・絹さや。




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いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「おはぐろとんぼ」


おはぐろとんぼ 江戸人情堀物語おはぐろとんぼ 江戸人情堀物語
(2009/01/21)
宇江佐 真理

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父親の跡を継ぎ、日本橋小網町の料理茶屋で料理人を勤めるおせん。上方で修業をし、新しくおせんの親方になった板前の銀助と、上方の料理を店に出すことを嫌うおせんとはたびたび意見が食い違う。そんないらいらした気分の日々が続くとき、おせんは、店にほど近い稲荷堀の水を眺めて心をしずめていたが、ある日湯屋で銀助と娘のおゆみと鉢合わせしたことから心に小さな変化が――仕事一筋に生きてきた女に訪れた転機と心模様を描く、表題作の「おはぐろとんぼ」ほか、薬研堀、油堀、源兵衛堀、八丁堀などを舞台に、江戸下町で堀の水面に映し出される、悲喜交々の人情のかたち六編。江戸市井小説の名手が描く感動の傑作短編集です!

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1.ため息はつかない
 
「お嬢さんは、うちのお袋のことをどんな女だと思っていました?」「柳橋の芸者さんだったってね。普段着を着ていても様子が垢抜けていたよ。勘助の話じゃ、お前を引き取ってからも後添えの話があったらしいよ。だが、皆、先様に子供がいる人ばかりだった。お前を連れて後添えに入れば、お前だけを可愛がる訳には行かない。また、子供のいない男は甲斐性なしで、先行きが不安だった。それでとうとう独り身を通してしまったんだよ」胸が熱くなる。喉が苦しい。豊吉は掌を口許に押し当てて咽んだ。「お前のおっ母さんこそ、ため息をつきたかっただろうね。あたしは、そう思うよ。」

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2.裾継(すそつぎ)
 
彦蔵は大きく肯いた。表櫓と裏櫓を繋ぐ意味の裾継は、まるで何かの象徴のようにも、おなわには思えた。いや、おなわはわかっていた。裾の補強に当てられた布は、おなわ自身であると。おみよが去って行った不足を補うのが、おなわの役目だったからだ。そう考えると、裾継という場所におなわがやって来たことの意味が腑に落ちる。

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3.おはぐろとんぼ
 
「うちがおらんかったら、小母さんはお父ちゃんと一緒になってくれはるの」おゆみは箸を止めて、おせんに訊く。「おゆみちゃん」おせんは何んと応えていいかわからなかった。「そいじゃ、うち、よその子になるし」おゆみが言った途端、おせんはたまらず掌で口許を覆った。父親を思うおゆみの気持が切なかった。「そういうことじゃないのよ、おゆみちゃん。小母さんはおゆみちゃんのおっ母さんになる自信がないだけなのよ」おさとは噛んで含めるように言った。「うち、言うことを聞くよ、小母さん。稲荷湯で百数えるまで湯舟に浸かるよ。それでもあかん?」

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4.日向雪(ひなたゆき)
 
竹蔵は死んで、ようやくほっとしたのかも知れないと梅吉は思った。(もう、金の工面をしなくてもいいぜ。竹、安心したろ?)梅吉は竹蔵の入った棺桶に胸で話し掛けた。荒縄で括られた棺桶は松助と与吉に伴われて静かに助次郎窯を出て行った。梅吉と職人達は掌を合わせて、それを見送った。瓦のけりをつけたら、助蔵に休みを貰い、すぐに梅吉は後を追うつもりだった。春だというのに、ちらちらと雪が舞っていた。空は明るい。それもそのはず、頭上には陽が出ていた。陽射しは源兵衛堀に柔らかな光を落としていた。「日向雪ね。お天道さんも竹蔵さんの供養をしているみたい」潤んだ眼をしたおちよが呟いた。

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5.御厩河岸(おうまやがし)の向こう
 
「向こうのおっ母さんが、ままを炊いて仏壇に供えると、鼻から湯気を呑むようで温かかった。仏さんには温かいものを供えるといいんだよ。線香の煙も温かくてよかったよ」「仏壇に毎日ままを供えているかい」「ええ。時々、忘れてお姑さんに叱られることもあるけどね」「時々なら忘れても構いやしないよ。忙しかったら、墓参りも無理にすることはない。肝腎なのは死んだ者のことを時々、思い出してやることさ」

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6.隠善資生の娘
 
「苦労したのだな」隠善がそう言うと、おみよは泣き笑いの顔で「でも旦那とお知り合いになれて、あたしは嬉しかった。おまけに、旦那の娘じゃないかと思って下さるなんて」と言った。「十六年前におれは前の家内を亡くしておる。家にいた中間に襲われたのだ。家内は助からなかったが、その時、家にいた女中と一緒に娘がいなくなったのだ。未だに行方知れずのままだ。おれも親だから、いつまでも娘のことが忘れられない。おみよを見て、前の家内に似ていると思うと、ここへ通わずにはいられなかったのだ。

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いつもありがとうございます


 

宇江佐 真理 「高砂 なくて七癖 あって四十八癖」


高砂 なくて七癖あって四十八癖高砂 なくて七癖あって四十八癖
(2013/08/31)
宇江佐真理

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四人の子持ちで飲んだくれの畳職人、
小普請組の武家に嫁いだ大工の娘、
幼い頃から見世を支えた口入れ屋の若お内儀…
倖せの感じ方は十人十色。
懸命に生きる男と女の縁を描く、心に沁み入る珠玉の人情時代小説。

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1.夫婦茶碗
 
「おれの気持ちなんざ、何もわかっていねェくせに、勝手なことをするな」「お前の気持ちだと?わかっているさ。備後屋の親方に仕込まれた通りの仕事をしたいのに、娘の婿がそうはさせないんだろ?それでやけになってお前は酒に溺れた。わかりやすい理屈だ。それも無理はなかろうと、お前は人から同情されたいんだろう。だが、そうは問屋が卸さない。お前の仕事はお前のものだ。たとい、娘の婿に言われたことでも最後に責めを負うのはお前だ。酒に溺れるより先にどうして娘の婿に喰って掛からない。こんな店を辞めてやると、なぜ言えない。小僧の時からこの道ひとすじにやってきたお前だ。その腕があれば、どこの畳屋でも使ってくれる。え、そうじゃないのか」

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2.ぼたん雪
 
金というのは厄介なものである。それがなければ人は生きて行けない。それゆえ、人々はあくせく金を稼ごうとするのだ。だが、あまりに金に固執する者は人はよく言わない。又兵衛も子供の頃から両親に、金、金と言うものではないと戒められた。世の中は金で回っていると知っていながら、実は金から眼を背けているようなところがひとにはある。

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3.どんつく
 
「ちゃん!」伝蔵が大声で叫ぶ。その声に女達は貰い泣きせずにはいられなかった。「あっしはまだ、お前ェのちゃんじゃねェ。よその小父さんと呼びな」浜次は吐き捨てるように言った。「どんつく・・・」孫右衛門は独り言のように呟いた。「抱き締めてやんな。当分、また顔を見られねェからよ」又兵衛はそう言った。その拍子に浜次の顔が歪んだ。涙を堪えたその顔はめちゃくちゃで、こんな場面でなかったら噴き出していただろう。

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4.女丈夫(じょじょうぶ)
 
「この世の中、男と女で成り立っているんだ。甲州屋も夫婦で商売をしているから信用があるんですよ。亭主を追い出した恐ろしい女房の見世に、誰が仕事を頼みたいものですか。おみささんは自分の力で甲州屋が続いてきたと思っているようですが、実は旦那の力もあるんですよ。あたしはそう思いますよ。旦那がおきささんと一緒に怒鳴り散らしていたら、奉公人なんて居着きませんよ。そうでしょう、お内儀さん」

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5.灸花(やいとばな)
 
「おれはみっちょを見ていると不思議な気持ちになるんだよ。親が何んの不足もなく産んでやったのに、真面目に働くこともせず、酒に溺れたり、浮気に走ったり、他人様の迷惑になるようなことをする奴がいるじゃないか。おなごだって同じだ。人よりいい所へ稼ぎたい、貧乏なんてごめんだという者が増えているよ。家の中のことをするより手前ェの楽しみを先に考えるんだ。口を開けば他人の悪口だ。そういう連中がみっちょより人間が上等とは思えないんだよ。それでもそういう連中はみっちょのことをばかにする。おかしな話じゃないか」
 

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6.高砂
 
しみじみ、よい夫婦だとも思う。夫婦はこうあらねばならぬということを策庵夫婦から教わったような気がした。すると、自分の言葉も自然に頭に浮かんだ。(おいせ。お前の人別を入れるぞ。おれ達が死んだ後に子供達が金のことで揉めるのはいやだ。おいせ、ここはきっちり決めてくれ。どうするもこうするもお前次第だ。おれは文句を言わん)家に帰ったら、又兵衛はそう言おうと思った。桂順に名前を呼ばれ、薬を貰っても、又兵衛の気持は上の空だった。早く会所に戻っておいせに伝えたい。そればかりに気がはやっていた。

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いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「夜鳴きめし屋」 


夜鳴きめし屋夜鳴きめし屋
(2012/03/17)
宇江佐 真理

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本所五間堀にある「鳳来堂」。
父親の古道具屋を、息子の長五郎が夜鳴きめし屋として再開。
朝方まで営業している店には、父親の友人たちや、近くに住む武士、
芸者や夜鷹までさまざまな人々がやってくる。
その中に、かつて長五郎と恋仲だった芸者のみさ吉がいた……。
『ひょうたん』の世界から十数年後、待望の続編登場!

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1.夜鳴きめし屋
 
「薄情だぜ、お父っつぁんとおっ母さんは」長五郎は仏壇に灯明を上げて恨み言を言ったものだ。お鈴が亡くなると、長五郎はしばらく腑抜けのようになった。これからは一人で何でもしなければならないとだと頭でわかっていても身体が言う事を聞かなかった。見世の口開けの時刻も、以前なら七つ(午後四時頃)だったのが、どんどん遅くなり、暮六つ(午後六時頃)の鐘が鳴っても暖簾を掛けなくなった。手前ェ一人が喰えればよいという気持ちもあったからだ。だが、とにかく、見世は休むことなく毎日開けた。それはお鈴の遺言でもあった。たとい客が来なくても、商売をする家は毎日見世を開けるのが肝腎なのだと。

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2.五間堀の雨
 
これからどうなるのだろう。長五郎はぼんやり思う。惣助と出会う機会があったということは、亡き両親の思し召しだろうか。そんな気がする。惣助が持ち帰った万年青(おもと)の鉢を窓框(まどかまち)に飾り、それを眺めるみさ吉の白い顔もぼんやり頭に浮かんだ。

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3.深川贔屓(ふかがわびいき)
 
「惣助は・・・おいらの倅になるんですかい」長五郎の問い掛けに、みさ吉はつかの間、黙った。それから長五郎を上目遣いに見ながら口を開けた。「どうしてそんなことを訊くの?」「どうしてって、そんな気がしてならねェからですよ」「思い過ごしですよ。おおかた駒奴が余計なことを喋っていたのね。そんな訳があるもんですか」みさ吉は怒ったように言った。「しかし、それなら、なぜ湊屋は惣助を引き取らねェんで?」「それはあたしが惣助を育てると先様に言ったからですよ。引き離されるのはいやだったの。もう、あたしには惣助以外、身内と呼べる者はいなかったし」

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4.鰯三昧(いわしざんまい)
 
「姐さんは肝腎なことをひとつも言わない。おいらが惣助を気にするのは、もしかしてあいつが手前ェの倅じゃなかろうかと思っているからですよ。しかし、姐さんはそうじゃねェときっぱり言った。そのくせ、菱屋の奉公の話が持ち上がると、さして考えもせず決めちまった。どういうことなんで?普通は別の店にするんじゃねェですかい。思わせぶりなことばかりするあんたに、おいらも惣助もいい加減、うんざりしますよ」

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5.秋の花
 
「ここからずっと外の様子を見ていたのよ。和泉屋はきれいさっぱり壊されちまった。建てる時は何か月も掛かるのに壊すとなったら、あっという間ね。お蔭で酔いも醒めちまった」みさ吉は存外落ち着いた声で応えた。「駒奴と増川姐さんは無事でした。お内儀さんは気絶して自身番に運ばれたそうですが」「そう・・・」「これからどうしますか」「わからない」「姐さんの身寄りは誰も残っていないんでげしょう」「そうね。でも、惣助を奉公に出した後でよかった。親子で路頭に迷うなんてみじめだもの」「身を寄せる所がないなら、そのう、鳳来堂に来ませんか。おいらは独り者ですから遠慮はいりませんよ。見世の二階には狭いですけど寝る部屋もありますし」

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6.鐘が鳴る
 
「実は女房を待っているんですよ」「え?」浦田は驚いて長五郎をまじまじと見た。「女房がいたのか」「以前に惚れたおなごがいたと申し上げたことがありますが」長五郎は浦田の視線を避け、落ち葉に眼を向けて言う。「うむ、それは聞いた」「そいつですよ。十年以上も離れていたんですが、その間に倅まで拵えていたんですよ」「ほう!」浦田は力んだ声になる。わしの知っているおなごか、と浦田は続けた。「和泉屋で駒奴と一緒にお座敷に出ているみさ吉という芸者ですよ」「聞いたことがあるような、ないような。もう一度会えば、はっきりわかるだろう」「倅にもてて親だと明かしました。これから親子三人で生きて行くつもりなんですが、肝心のみさ吉が、果たしてここへ来るかどうかわかりやせん。もう四つを過ぎましたよね」長五郎は不安な気持ちを浦田に言った。「きっと来る。拙者も一緒に待ってやろう」「ありがとうございます」

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いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「銀の雨 堪忍旦那為勘八郎」 


銀の雨―堪忍旦那為後勘八郎 (幻冬舎文庫)銀の雨―堪忍旦那為後勘八郎 (幻冬舎文庫)
(2001/08)
宇江佐 真理

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北町奉行所の同心、為後勘八郎は見廻りの道すがら、 

見なれぬ路地に通う近くの少女、おみちを目にする。

おみちは客引きの中年男、富蔵のもとを訪ねているらしい。

おみちを案じた勘八郎が探索すると、

二人には意外な真相があって…。

男と女、家族の情を描いた「その角を曲がって」ほか、

市井の人々を温かくみつめた超一級の味、人情捕物帳。

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1.その角を曲がって
 
「おじさん、そんなこと言わないで。お父っつぁんが死んでもこの角はあるのよ。いつだってあるのよ。ここはお父っつぁんが死ぬと同時になくならなきゃいけないのに・・・」勘八郎はつかの間、黙った。勘八郎も同じような気持ちになったことがあって。母親が死んだ翌朝、いつも通り納豆売りが組屋敷の前を通ったのに驚いた。すると庭の樹がいつもと変わりなく葉裏を見せて風にそよいでいるのも、空が青いのも、雀がうるさく鳴く声もすべて不思議に思えた。

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2.犬嫌い
 
「やい、おりせ。何だ手前ェは。犬をけしかけて小夜に怪我をさせたくせに、大きな口を叩くな。犬で騒ぎを起こしていなごが振り向くと思ったのか?八百屋お七の真似はこの節、流行らねェんだよ」八右衛門が慌ててゆたを制した。「ゆた、お前は黙っていなさい」しかし、ゆたは黙らなかった。「いなごもいなごだ。おりせのお面のいいのに騙されて、おりせの犬が当の噛みつく犬だと見抜けなかったのか?とんちき!見習い同心が聞いて呆れる」玄之丞がぷッと噴き出した。「いなごとは拙者のことでござるか?」


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3.魚棄てる女
 
「あんた女だろ?女が大の男に恥を掻かせていいと思うのか?そりゃあ兄さんは落ちぶれて今は干物売りなんぞしている。でれでれ酔っ払う。だけどその理由はあんたも十分に知っているはずじゃない。兄さんが悪いんじゃないだろう>兄さんを陥れた奴等が悪いんだろ?身に降り掛かった火の粉を払え、だ?阿保抜かせ。おいらの親父はな、火事の手伝いに行って火の粉を浴びて死んじまったい!簡単に言うない。あんたは自分の祝言の相手だった男が落ちぶれているのが恥ずかしいんだ。あんたが恥ずかしいんだ。干物を売ってどこが悪い?悪いことをして暮らしている訳じゃないんだ。あんた、兄さんの干物、買うばかりで喰ったことがあるかい?そりゃあうまいんだぜ。江戸髄一の味だぜ。ああそうか。あんたは喰ったことないよな?皆、堀に棄てているからなッ!」

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4.松風
 
「為後殿のなされたこと、拙者、すべてが間違っていっとは思われませぬ」「ほう・・・」「人間のすること故・・・お上の御定書では収まり切れぬこともございます」「よく言うた、主馬。ならばお父上を許せるな?」「・・・・」「許せるな?おれを許せるのなら、お父上のことも許せるはずだ。お父上は腹を切られて落とし前をつけられた。おれはそのまま生き恥を晒しておる。お父上は男らしく生涯を終えたのだ。そう思ってやれ」

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5.銀の雨
 
主馬はこの頃、二代目堪忍旦那と呼ばれるようになった。十代の頃のようにぎりぎりと下手人を追及しないせいだろう。主馬が勘八郎の二代目のように呼ばれることはこそばゆい。養子に入ったからと言って何もそこまで真似することはないのだ。真似ではないと主馬は言う。水が低いところに流れるように自然にそうなったのだと。心なしか主馬の眼は優しくなった。勘八郎はまた余生のことを考えていた。太一郎が見つめる雨は仄白い銀色をしている。勘八郎はその銀の雨を飽かず眺めた。

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蝶が舞うリースの時計
プロフィール

cn7145

Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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