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小杉 健治 「雨上がりの空 はぐれ文吾人情事件帖 ③」


はぐれ文吾人情事件帖 雨上がりの空 (宝島社文庫 「この時代小説がすごい!」シリーズ)はぐれ文吾人情事件帖 雨上がりの空 (宝島社文庫 「この時代小説がすごい!」シリーズ)
(2014/05/08)
小杉 健治

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表の顔は小間物屋、本業・裏仕事師の文吾。
想い人と一緒になるために真面目に働こうと決めたのだが、
ついまた博打に手を出し、素寒貧になってしまう。
そんな文吾に、同じく博打で負けた大店の不良息子、藤次郎が
「手伝ってほしいことがある」と声をかけた。

小間物屋の行商のかたわら、危ない仕事をこなすくせに、
想い人には本心を打ち明けられない文吾。
非情のふりをしつつも、
つい人情に流され事件に巻き込まれる。
そんな文吾に仕事を持ち込んだ、
賭場仲間で大店の不良息子・藤次郎が殺されてしまった!
そして文吾のまわりに「殺し屋」の影が…。
書き下ろし時代小説の人気作家による
「ちょいワル」文吾の下町人情事件帖シリーズ第3弾!

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「おさんさん。お願いがあるのですが」
「なんでしょう」
文吾が懐から財布を取り出した。中には十両入っている。
「この財布、預かっていただけないでしょうか」
「これは?」
「十両あります。じつは、お恥ずかしいのですが、
博打で稼ぎました。
でも、この金を持っていると、また博打に手を出しそうで。
出せばすってんてんになっちまう」
おさんはじっと文吾の目を見つめた。
黒目が濡れているように思える。
そこに吸い込まれそうだ。
そうだ、お良さんもこんな目をしていた。
「文吾さん」
やっとおさんが口を開いた。
「文吾さんは危ない仕事をしているのではないでしょうね」
りんとした顔つきに、文吾が肩をすくめた。
「とんでもねえ」
「お金になるからと言って、危険な仕事はいけませんよ。
私、とても心配なんです」
おさんは諭すように言う。
「ほんとに、あっしのことを心配してくださるんで」
「当たり前でしょう」
おさんは叱るように言う。
「ありがてえ」
文吾はうれしかった。
それからしばらくして、
おさんやお里が引き止めるのを振り払って、
文吾はおさんの家をあとにした。
いつまでもいっしょにいると、何を口走るかわからない。
自分がまっとうになってから、おさんに告白すべきなのだ。

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いつもありがとうございます
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cn7145

Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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