水上 勉 「五番町夕霧楼」
![]() | 五番町夕霧楼 (新潮文庫) (1966/04) 水上 勉 商品詳細を見る |
京の遊郭に娼妓となり、西陣の織元の大旦那に水揚げされながらも、
かつて故郷の寒村に薄幸の日々をともに送った不遇な学生との愛にいきて行く
貧しい木樵(きこり)の娘夕子。
しかしその胸はいつか病魔に蝕まれ(むしばまれ)、
夏の闇夜に炎上する国宝建造物鳳閣とともに、
悲恋は終わりを告げる。
色街のあけくれに、つかのまの幻のようにゆらめくはかない女のいのちを
描き胸に迫る珠玉(しゅぎょく)の名編。
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一年前に、夕子が三左衛門につれられて、鼠いろにかすんだ
経ケ岬をうしろに遠ざけながら、
京の五番町夕霧楼へゆくといって、
二人の妹といっしょに歩いた道である。
崖の裾は荒波が音をたてていたが、
風のふきあげてくる白い一本道は静かだった。
蜩(ひぐらし)が鳴いていた。
父娘(おやこ)が墓地を下り切ると、
夕子の背中へいつまでも花が散った。
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