平岩 弓枝 「ちっちゃなかみさん」
![]() | ちっちゃなかみさん 新装版 (角川文庫) (2008/09/25) 平岩 弓枝 商品詳細を見る |
向島で三代続いた料理屋の一人娘・お京も二十歳、
数々の縁談が舞い込むが、心に決めた相手がいた。
相手はかつぎ豆腐売りの信吉。
驚く親たちだったが、なんと信吉から断ってきて・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「信吉は手前どもでございますが・・・」
大人顔まけの挨拶で障子をあけて出て来たのは十歳くらいの少女だった。
地味な木綿の着物に赤い帯、前かけで手を拭く動作が、
世話女房の恰好だった。
客の風体をみて、すぐに豆腐を買いに来たものではないと悟ったらしく、
「どなたさまでございましょうか。
信吉は只今、商いに出かけて居りまして留守でございますが・・・」
嘉平は面くらった。
妻をみると、お照も茫然と突っ立っている。
止むなく嘉平は、身分を告げ、この近くまで来る用があったので、
ついでに立ち寄ってみたのだと、お照をうながして手土産を出させた。
「それは・・・わざわざお立ち寄り下さいまして有難うございます。
いつもお世話になりました上に、
頂戴物まで致しまして、お礼の申しようもございません」
一歳と六歳の幼い子供二人を置いて出て行ってしまった両親。
母親の弟である信吉が男手一つで豆腐作りから売り歩きから、
飯の仕度をしながら小さな甥と姪を抱えて悪戦苦闘の連日だった。
姪のお加代は利発な子で五歳くらいから飯たきの手伝い、
拭き掃除、弟の子守りして今では立派な信吉のおかみさん代わり。
信吉と相惚れの料理屋の娘お京だが、嘉平もお照も大反対。
しがない豆腐売りと料理屋では不釣り合いである事と
小さな子供がいる信吉の嫁に行かせるわけには行かない・・・
そんなある日、お加代が弟と料理屋「笹屋」を訪れ、
何とか兄ちゃんを養子にして欲しい、
お京さんと結婚させて欲しいと懇願する。
信吉がお京さんと結婚できないのは自分達二人がいるから・・・
「自分と弟はどこかへ行きます。
決してお邪魔にはなりません・・・
私は年より背が高いので、大きく見られます。
子守だって、洗いものだって、拭き掃除だって出来ます・・・
どこへ行ったって一生懸命になれば・・・
やれます・・・
兄ちゃんには知れないように出て行きます」と言う。
一と晩中、考えて加代は決心した。
これ以上、兄ちゃんの重荷になってはいけないのだ・・・。
妻のお照が嘉平に言います。
「あなた・・・お京を嫁にやりましょう
あなた、加代って子の言ったこと、考えて下さいまし。
十一かそこらの子が、六つの弟を連れて、
家出をしようと決心したんですよ。
この世でたった一人、杖とも柱とも頼む兄ちゃんの幸せを考えて・・・
どんなに辛かったか・・・悲しかったか・・・
心細かったか・・・」
「お京を嫁に出すと・・・寂しくなるぞ、お前も・・・俺も・・・」
「お京の代わりに、加代と治助を貰いましょう。
私たち、娘がしっかり者なのに安心して、
つい、年齢より年寄り臭くなっていましたけれど、
まだまだ子供の一人や二人、育てられますよ。」
「同情はいいが・・・あとで後悔するなよ。」
「あなた、この子たちの若い叔父さんは、
たった一人で、この子たちを守り抜く覚悟をしたんですよ。
私たちにも分別があります。
若い人よりは世の中を見ています。
自分の子なら、親は死に物狂いになったって、
守り抜いてみせるものです・・・。」
いつもありがとうございます

飼い主を助ける為にパトカーを誘導したお手柄犬 2015.3.14(土)
アメリカ・アラスカ州で
火事に巻き込まれた飼い主を助けようと、
警察のパトカーを誘導して
火事現場まで案内した1匹の犬がいたそうです。
その犬とは、
5歳のオスのジャーマン・シェパード「バディ」くん。
家が出火直後、この家の住人で、
バディーの飼い主であるベン・ヘインリッチズさん(23)が
直ぐに通報したものの、なかなかこない警察や消防車。
火はどんどん燃え広がる一方。
困り果てたベンさんがバディーに「助けが必要なんだ」と言った所、
その言葉に従い、すぐさま家を飛び出し、
通報を受けたものの道に迷っていた警察のパトカーを見つけ出し、
現場まで案内したという。
パトカーに取り付けられたビデオカメラがとらえた映像には、
暗闇の雪道を全速力で走るバディが、
ときどき後ろを振り返ってパトカーが着いてくるのを確認しながら、
燃えさかる納屋にたどりつくまでの一部始終が収められています。
いつもありがとうございます
火事に巻き込まれた飼い主を助けようと、
警察のパトカーを誘導して
火事現場まで案内した1匹の犬がいたそうです。
その犬とは、
5歳のオスのジャーマン・シェパード「バディ」くん。
家が出火直後、この家の住人で、
バディーの飼い主であるベン・ヘインリッチズさん(23)が
直ぐに通報したものの、なかなかこない警察や消防車。
火はどんどん燃え広がる一方。
困り果てたベンさんがバディーに「助けが必要なんだ」と言った所、
その言葉に従い、すぐさま家を飛び出し、
通報を受けたものの道に迷っていた警察のパトカーを見つけ出し、
現場まで案内したという。
パトカーに取り付けられたビデオカメラがとらえた映像には、
暗闇の雪道を全速力で走るバディが、
ときどき後ろを振り返ってパトカーが着いてくるのを確認しながら、
燃えさかる納屋にたどりつくまでの一部始終が収められています。
いつもありがとうございます

山本 周五郎 「季節のない街」
![]() | 季節のない街 (新潮文庫) (1970/03/18) 山本 周五郎 商品詳細を見る |
1.街へゆく電車
2.僕のワイフ
3.半助と猫
4.親おもい
5.牧歌詞
6.プールのある家
7.箱入り女房
8.枯れた木
9.ビスマルクいわく
10.とうちゃん
11.がんもどき
12.ちょろ
13.肇くんと光子
14.倹約について
15.たんばさん
・・・・・・・・・・・・
「プールのある家」が印象的でした。
ホームレスの親子二人の物語。
まだ40代の父親と6歳程の息子。
毎日小さい息子が古鍋を持ち歩き
お店の残飯を貰い歩く。
道中、敵も多い。犬・猫・そして人間・・・。
そんな日々の親子の楽しみは父親が語る理想の家。
いつかこんな建築物の家を作ろうと
息子と語り合う。
息子は父親の夢に「そうだね、うん、ほんとだ」
と同調し話を合わせる。
父親は、こんなに小さく健気な息子一人守る事も出来ず
夢を語るのみ。
博識で理性もある父親なのになぜこんな暮らしをしなければ
ならなくなったのか・・・
息子への愛情をどのように思っているのか・・・
第三者からは何とでも言える父親への厳しい思いも
誰も具体的に救うことはしない・・・
時代がそうさせるのか、寄せ付けない父親への諦めか・・・
そんなある日、息子が死んだ・・・
残飯の中にあった「しめ鯖」で食中毒を起こしたのだ。
息子は火を通してから食べた方が良いのではないかと言ったのに・・・
父親は、酢で締めた鯖だから大丈夫と言ってきかない・・・
数日間の苦しみの後に息子は死んだ・・・
そんな苦しみの中でも父親は夢の家を語るばかり・・・
息子は「だいじょうぶだよ、心配しなくってもいいよ。
ぼくはもうすぐ治るよ」と言う・・・
死に行く息子が最後に言った言葉は・・・
「ねえ、忘れてたけどさ、プールを作ろうよ」
父親は「そうだな、うんそうしよう」・・・
息子は死んだ・・・
父親はその後小さな仔犬と歩き暮らすようになる・・・
小さな息子に似た素直で可愛い仔犬と。
つめたい雨が降りだしたある日
父親は墓地の片隅の空き地の前に佇む・・・
「プールを作るのは賛成だね。
庭の芝生のまん中がいいかな。
エバー・グリーンのまん中に、
白タイル仕上げのプールがあるのは悪くないよ。
ちょっとしたブルジョワ気分じゃないか」
「大丈夫、きっと作るよ、きみがねだったのは、
プールを作ることだけだったからな・・・
きみはもっと、欲しい物を
なんでもねだればよかったのにさ・・・」
雨のしずくがたれるので、
彼はまた顔を手で撫で、
眼のまわりをこすった。
空はかなりくらくなり、
仔犬はふるえながら、
あまえるようになき声をあげた。
いつもありがとうございます
