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吉川 英明 「失われた空 日本人の涙と心の名作8選」


失われた空: 日本人の涙と心の名作8選 (新潮文庫)失われた空: 日本人の涙と心の名作8選 (新潮文庫)
(2014/09/27)
吉川 英明

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小説はきっと、最後の砦かもしれない――
浅田次郎、立原正秋、藤沢周平、宮尾登美子、
宮部みゆき、山本周五郎、吉川英治、吉村昭。
優しい涙や人のなさけの輝きがここに。
当代一の本読みが選び抜いた珠玉だけのアンソロジー。

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1.浅田次郎 「五郎冶殿御始末」

 五郎冶は始末屋であった。藩の始末をし、家の始末をし、
最も苦慮したわしの始末もどうにか果たし、
ついにはこのうえ望むべくもない形で、
おのれの身の始末もした。
男の始末とは、そういうものでなければならぬ。
けっして逃げず、後戻りせず、能う(あとう)限りの最前の方法で、
すべての始末をつけねばらなぬ。

 
2.山本周五郎 「不断草」

 もしや良人(おっと)はこんどの事件の起こることを知り、
その結果を知っているために、
そして妻にその累を及ぼしたくないために離縁したのではないだろうか、
そう考えると思い当たることが多い。
そうだ、それに違いない、菊枝はそう思うとともに、
自分は登野村を出るべきではなかったと気づいた。


3.宮部みゆき 「庄助の夜着(よぎ)」

 庄助は、おゆうが嫁いでゆくのを知っていた。
そのことを、五郎兵衛とおたかが心から喜んでいたことも知っていた。
おゆうがその縁組を幸せに思っていることも知っていた。
だが・・・もしも彼が、おゆうを想っていたとしたらどうだ。
口には出すまい。死んでも言うまい。そんなことを言ったら、
五郎兵衛やおたかがどれほど困るか、彼はよく知っていた。
おゆうを困らせることになるということも、誰よりもよく知っていたろう。



4.藤沢周平 「吹く風は秋」

 日が立ち上がり、江戸の町に鋭く突きささってきたころ、
弥平は猿江橋を渡っていた。
川風が旅仕度の合羽の裾をはためかせた。
胸の中まで吹きこんで来るひややかな秋風だった。
風の中に、明るい笑い声も聞いたような気がした。
おさよの声のようでもあったが、
死んだ女房の声のようでもあった。
無心な笑い声だった。
そうさ、そうでなくちゃいけねえ、と弥平は思った。
もう、これっきり江戸にはもどれねえかも知れねえな。
弥平はそう思いながら、足をはやめた。
少しまぶしすぎるほどの日が、
弥平がいそぐ小名木川通りの真向かいにかがやいていた。


5.吉川英治 「べんがら炬燵(こたつ)」
6.宮尾登美子 「自害」


7.吉村昭 「飛行機雲」

 医科大学の付属病院を出て、
ゆるい勾配の坂をくだりはじめた私は、
信玄袋を手にした和服の男が、
陽光を掌でさえぎるように空を見上げているのに気づいた。
男につられて空に眼をむけた私は、
澄んだ空に飛行機雲が長々と尾をひいているのを見た。
先端にギヤマンのように透けた大型機が動き、
翼の下から四条の白い筋が湧き、
それが互いにとけ合って太い一条の筋になり、
後方にゆくにつれて乱れ、
淡く拡散している。


8.立原正秋 「流鏑馬(やぶさめ)

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プロフィール

cn7145

Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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