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職場ランチ会   2015.5.28(木)

今日は、東京支店より営業担当者が来仙。

お昼を中華店で食べました。

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日替わりランチを頼んだ二人。

豚肉の炒め物。


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ごま団子付き。おいしそう~!


私は、麻婆豆腐。
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辛さが丁度良くて美味しかったです。


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ランチは、三人共750円でした。

お昼時の店内はあっという間に満席。

メニューが豊富で注文の時迷いに迷っていたお二人。

私は、バカの一つ覚えの如くマーボー豆腐と決めていました。

スープもご飯もサラダもお替り自由というのも嬉しいサービス。

でも誰もお替りしませんでしたけど(笑)

満腹でしたので夕飯は食べず。

・・・・・・・・・・・・・・・

乙川優三郎さんの暗い小説の後は、

畠山健二「本所おけら長屋」シリーズを再読。

落語のリズムで笑えてほのぼのしています(笑)

先日読んだ乙川さんの作品が、

あんまりやりきれない物語だったので

感情移入しちゃって

こちらまで暗くなってしまいました・・・

あぁ~感受性が豊って辛いわ~・・・・・・(アホ)



いつもありがとうございます
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乙川 優三郎 「むこうだんばら亭」

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江戸での暮しに絶望し、あてどない旅に出た孝助は、
途中で身請けした宿場女郎のたかと銚子へ流れ着いた。
イワシや醤油で賑わうとっぱずれの地で、
彼は酒亭「いなさ屋」を開き、裏では桂庵を営んだ。
店には夜ごと寄る辺なき人々が集う。
貧苦ゆえに売笑する少女、放埒な暮しに堕ちてゆく女……
思うにまかせぬ人生の瀬戸際にあって、
なお逞しく生きようとする市井の男女を描く連作短編集。


・・・・・・・・・・・・・・・

「椿山」の第一章の「ゆすらうめ」の続編。

ここで続編が出て来るとはこの本の解説を読むまで

気付かなかった。

なるほど、「孝助」「たか」の

男と女になれない微妙な関係が

孝助の過去の悔いで理解ができた。

「たか」も孝助から身請けされた身の上で

自分を受け入れてもらえないと思い、

6年もの間一つ屋根の下、

襖一枚隔てた部屋で暮らすことに耐えていたわけだ。

孝助は江戸の場末で姉と営んでいた小さな娼家で

女たちを食い物にして暮らしていた。

ある年、年季の明けた女と

人生を遣り直すつもりで奔走したが

女は結局貧困に喘ぐ肉親のために女郎に戻ってしまった。

見切りをつけた孝助は出奔し女を見捨てた・・・。

見捨てた女の名前が「たか」だった。

淫蕩な商売と金に埋もれてゆく自分がいやで出奔した孝助。

旅の途中で「たか」という宿場女郎を見たとき、

見捨てた女「たか」を思い出さずにはいられない。

女郎の「たか」のどん底の不幸を救うのは心の慰めだった。

それから6年。

たどり着いた港町銚子で「いなさ屋」を、

夫婦になりきれない二人で静かに営んで来た。

物語を通して寂寥とした港町を感じて寒々とします。

果てのない不幸と貧困に見る女の性が

何とも切ない悲しさで途中で読むのやめたくなる程。

最後の章でやっと救われる思いと明るさが味わえて

何とか読み切る。

詩情あふれる文体ですが、

悲しみや悔いに追い込まれそうな救いがたい物語に

誰が悪いわけでもないのに

責めたくなりました・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・

1.行き暮れて
 「でも、まだ終わっていないの、
もったいなくて終われないわね、
命がけで海へゆくのもそう、
あした死ぬとしても、それまでは悔いなく
生きてみたいの、
だから今日したいと思うことをするだけ、
いまさら死に急ぐつもりはありません」

・・・・・・・・・・・・・・

2.散り花
 うまくゆかないときはそんなもので、
ひとつ歯車が狂うと手の打ちようがなくなる。
すがの気力がいつまで続くか分からないが、
あとは見て見ぬ振りをして、
彼女と男の取引に関わらないでいるしか
ないように思われた。
いずれにしても、その手で味をしめた女は
もとに還れないだろう。


・・・・・・・・・・・・・・

3.希望
 「これは親切で言うんだ。
おまえさんは小りこうで目先のことは
何とかするらしい、
だが肝心なことは何ひとつ見ていやしない、
金だけを恃んで(たのんで)
金に縛られている、
だからほかの悦びを知らない、
そういう女は間抜けな男から
小金をせしめていい気になるが、
そのうち金に追われてくたびれてゆく、
そうなりたくなかったら、
まともな男に惚れてみることだな、
おまえさんのちっぽけな世間にも
ひとりやふたりいるだろう、
その男に本当の悦びを教えてもらうがいい」

・・・・・・・・・・・・・・・

4.男波女波(おなみめなみ)
 「生きている人を忘れるほうがむつかしいと思うわ、
泣いても叫んでも会えない苦しさは
同じかもしれないけど、
この世にいると思うと忘れようがないし」
「理屈じゃねえ」
「男の人に許されなくても女は受けとめて
生きてゆくしかないわ、
佐田蔵さんは男じゃない、
死んだ人に振り回されてどうするのよ」

・・・・・・・・・・・・・・・

5.旅の陽射し
 夫婦の行き着くさきは見えてしまったが、
そこへ向かう日々はこれまでとは
違うものになるだろう。
その証に意伯は見栄も誇りもかなぐり捨てて、
泥臭い素顔をさらしている。
死と隣り合わせの生を見つめているとしたら、
ある意味で残された月日は彼の一生にも
匹敵するに違いない。
だとしたら、このまま少しでも長く二人のときを
生きたいと願った。

・・・・・・・・・・・・・・

6.古い風
 外へ出ると、思ったよりも月が明るく、
川風も柔らかかったが、
彼女は行くあてのない気持ちで歩いていった。
ひとつのことが終わり、
ほっとした気持ちの裏に、
うそ寒い孤独が張り付いている。
いまさら悔やんでも仕方がない、
と気を引き立てて歩きながら、
彼女はこれで元に戻るだけだと自分に言い聞かせた。
何か違うとすれば、
このさきずっと住まうことになるひとりの家が
以前よりも冷たく、恐ろしく感じられることであった。

・・・・・・・・・・・・・・

7.磯笛
 彼は妻を亡くしてからの余白の人生が、
ここへきて急に終わりに近づいたように感じて、
身辺を綺麗にしたいという思いに追われていた。
働き者だった妻の霊がそのときを
知らせてきたのかもしれない。

・・・・・・・・・・・・・・

8.果ての海
 女が女を生きて失うものが、
たかにははじめからなかった。
情熱の向かうところへ身を投じられる月日が
女の若さなら、彼女ははじめから老女も同然であった。
肉体の若さが最も自然に光るころ、
彼女は檻の中にいた。
生きていることだけが人生の幸運であった。



いつもありがとうございます

煮物   2015.5.24(日)

ここんとこ大変お天気が良く、

昨日・今日と「仙台万博」なるイベントが中心部で開催されて

たいへんな賑わいだったようです。

昨日テレビで生放送されたのをちょこっと観ました。

お笑い芸人さんの「三四郎」さんの漫才を観たのですが、

面白いですネ!(笑)

ボケの小宮さんが、滑舌が悪くて何をしゃべっても

違う言葉でつっこまれると言うネタでした。

滑舌の悪さにつっこむよりも、

いつもネクタイをきちんと閉めない小宮さんに

私は一番つっこみたかったです(笑)

今日は、「クマムシ」が来仙したようですネ(^^)

地元名産品や楽天グッズやゲームも沢山あったようですヨ(^^)

今日は、煮物。

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他にめざしとほうれん草とベーコンの炒め物。

・・・・・・・・・・・・・・・・

昨日今日とお天気が良かったので

布団干しをして・・・

大物の洗濯して・・・衣服の整理して・・・

押入れ整理して・・・掃除して・・・と、

休み休み何とかやりました(笑)

毎日マメにやっていれば

休日にどっさりたまらなくて済むのですが・・・

だらしないって言うか・・・ものぐさって言うか・・・

面倒くさがりで、疲れやすいもんで(笑)

言い訳上手の整理下手・・・

妹の先輩Mさんは、市営アパートに住んでいるのですが、

狭い部屋を上手に整理して、

センス良い部屋にするシリーズの特集で、

全国版の主婦向け雑誌に掲載された事があるそうです。

ご主人と娘さんの三人暮らしで2部屋の古いアパートですが、

いつもお友達に感心されているそうです。

センスって大事ですよねぇ。

収納の工夫する頭の良さも窺われますしねぇ・・・

妹経由でご指南頂きたい程です・・・

掃除って本当、面倒くさいわぁ・・・



いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「昨日のまこと、今日のうそ・髪結い伊三次捕物余話」⑬

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伊三次が直面する、息子や弟子の転機。
不破龍之進ときいとの間に長男が生まれ、
伊三次一家も祝いのムードに包まれる。
一方、絵師としての才能に疑問を感じ始めた伊与太は、
当代一の絵師、葛飾北斎のもとを訪れる。


・・・・・・・・・・・・・・・・・

1.共に見る夢
 いつか旅仕度を調えたいなみと自分が
伊勢を目指して歩く姿が脳裏に浮かぶ。
吹く風は快く、鳥の囀りも耳に響く。
額に汗を浮かべながら一歩一歩進んで行くのだ。
共に見る夢ができたことを不破はしみじみ嬉しく思う。
いや、その前にいなみに言っておかなければならないことがあった。
自分より先に逝くな、と。
よしんば不幸にもいなみに先立たれた時は、
半年経ったら迎えに来いと約束させよう。


・・・・・・・・・・・・・・・・

2.指のささくれ
 「魚新の話を断った後で、
お父っつぁんは、しみじみあたいに言った。
お前がどんな男を亭主にしようが、
おれは実の倅と同じように可愛がるって。
あたい、それを聞いて心底安堵したよ。
あたいを嫁にしてくれる人なら
紙屑拾いだろうが日雇いだろうが構やしないと思ってさ」
おてんは涙を溜めた眼で言う。
おてんの髪はそそけていた。
この何日か髪を結う気にもならなかったらしい。
「おてんちゃんの亭主になる奴に
髪結いは入っていないのけぇ?」


・・・・・・・・・・・・・・・・

3.昨日のまこと、今日のうそ
 「おいらは髪結いの親方を張れる自信がありやせんよ」
「最初はそうでも、続けている内に格好がつく」
「ですが・・・」
「なに、そんな時は及ばずながら、おれも力になるぜ」
「梅床の客が流れたら、
あっちの親方も利助さんもいい顔しませんぜ」
「それも世の中よ。
梅床の親方は動けねぇ身体になっちまってるし、
利助にゃ親方を張れる器量はねぇ。
まあ、その内に親方の倅が戻って来て、
梅床を継ぐと言うかも知れねぇよ。
そうなったら、おれも安心して梅床から手を引くことができる」
「親方はそんなことまで考えていたんですか」
「いや、お前ぇがおてんちゃんと所帯を持つことが決まると、
そういう流れが見えて来たんだ。
久兵衛、お前ぇにゃ運がある。きっとうまく行く」
伊三次はきっぱりと言った。


・・・・・・・・・・・・・・・・・

4.花紺青(はなこんじょう)
 国直に国華、それに北斎。
自分の周りには錚々(そうそう)たる絵師がいる。
それはまずい絵を描く絵師の傍にいるより、
はるかに自分にとってはよい環境だろう。
恵まれている。改めてそう思う。
才のある絵師の勢いに乗じて自分も先へ進んで行くのだ。
雨音はやんだようだ。
梅雨が明ければ油照りの夏が来る。
汗を拭きふき、武者絵の背景を描く自分が
易々と想像できる。
伊与太は、そんな自分がいやではなかった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5.空蝉(うつせみ)
 蝉が鳴いていた。
以前よりもはるかに数が増えているようで、
その鳴き声も大きく聞こえる。
そうか、山中は蝉だったのだと龍之進は合点した。
学問や剣術に励み、山中家へ養子に入り、
内与力にまで出世した男は、
揺るぎない身分を手に入れると、箍(たが)が外れた。
山中は己れの先がないことを知らずに
悟っていたのだろうか。
我を忘れて女の色香にのぼせ、
それで朽ち果てても構わなかったのか。
龍之進にはわからない。
額から血を流し、奉行に許しを乞う山中を
呆然と見つめるばかりった。
地鳴りのような蝉の鳴き声は続いていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6.汝、言うことなかれ
 「あたし、うちの人のことなんて、
ひと言も喋っていないのに」
おとよは、しゃくり上げながら言った。
「へい、確かに。
お新造さんは何も喋っておりやせん。
ご新造さんは、八百金の旦那を殺したのは、
ご亭主じゃないかと疑っただけです。
なぜなら、一度人殺しをした人間は、
再び人殺しをするかも知れないと、
ご新造さんは心配していたからです」
「どうして・・・」
どうして自分の気持ちがわかったのかと、
おとよは訊きたかったらしい。
伊三次は、そんなおとよに笑顔を向けた。
「ご新造さん、坊ちゃん、お嬢ちゃんのために
踏ん張って下せぇ。
村田屋を潰さねぇで下せぇ」



いつのありがとうございます

一鳴きメイちゃん(動画)   2015.5.23(土)

白ミコちゃんとおしゃべりしていたら・・・

何気にやって来ました黒メイちゃん。

一鳴きして去って行くのでありました・・・(笑)

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ここで「メイちゃ~ん!」と追いかけますと

脱兎のごとく逃げます。

ツンデレメイでございます(笑)


いつもありがとうございます

最近の黒メイと白ミコ   2015.5.23(土)

小汚い部屋の中をそれなりに片付けしておりましたら

ちょっとだけ置いた箱の中に・・・・

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「メイ!これ使うんだからどいてちょ!」

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こんな残念な顔されましたら負けますがな・・・

て、ことで最近のメイちゃんのお気に入り場所となっております(笑)

・・・・・・・・・・・・・・・


写し方によって白ミコちゃんが細く見えます(笑)

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実態は・・・「おデブ」と呼ばれております(笑)

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メイは見た・・・

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・・・・・・・・・・・・・・

白いミコの黒いシルエット

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いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「名もなき日々を・髪結い伊三次捕物余話」⑫

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伊三次とお文に支えられ、
絵師修業を続ける息子の伊与太。
一方、女中奉公に出た茜の運命は、
大きく動きはじめ…
「家族」の意味を問いかける、人気シリーズ第12弾。


・・・・・・・・・・・・・・・・・

1.俯かず(うつむかず)
 「あたし、梅床で仕込んで貰おうと思っていたのだけど、
伯父さんと伯母さんが反対するんじゃ駄目ね。
いっそ、芸者になろうかなって言ったら、
伯父さん、お前のようなおへちゃには無理だって。
ひどいでしょ?あたし、夢も希望もなくんったよ」
お吉はがっかりした表情で言った。
「どうしても髪結いをやりたかったら、やればいい。
牢屋に入ることも罰金も覚悟するなら、
おれが仕込んでやるぜ。
女髪結いはそれを必要とする者がいる限り、
なくならねぇ。
その内に、お上の法も変わるかもしれねぇしよ」
伊三次は思い切って言った。


・・・・・・・・・・・・・・・・・

2.あの子、捜して
 「お吉はへそ曲がりだから、
そんなことを言うんだよ。
子供は誰でも実の母親に会えたら嬉しいはずだ」
お文が横から口を挟む。
「嬉しくない訳じゃないけど、
何で今まで放っといたのかと、少しは恨みに思うよ」
「だな」
伊三次は相槌を打ったが、お文は何も言わなかった。
おさえに会って、平吉が戸惑った表情をしていたことに
合点が行く思いだった。
お吉の言うことも一理ある。
「あたし、うちのおっ母さんが何があっても
子供を手放す人じゃないとわかっているから、
なおさらそう思うのかも知れない」
お吉は低い声で言った。
「お吉、お前、心底そう思っておくれかえ」
お文は感激した声で訊く。
「当たり前じゃない。あたし、口喧嘩しても、
心の奥底じゃ、おっ母さんを信じているもの」
お吉の言葉にお文は、しゅんと洟を啜った。
伊三次も同様だった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・

3.手妻師(てづまし)
 「お前ぇさんの気持ちはよくわかった。
だが、もう済んだことだ。
お前ぇさんはこの先、殊勝にお裁きを受けることだ。
恨みを抱いたまま死ぬのは切ねぇからな」
「髪結いさんには倅(せがれ)がいるのかい」
「ああ、おりやすよ。十七の倅が」
「いいな。倅が羨ましいよ。
おれもあんたみてぇなてて親がほしかった」
鶴之助の声にため息が交った。
伊三次も胸にぐっと来ていたが、
うまい言葉が出なかった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・

4.名もなき日々を
 星がやけに光って見える。
この広い江戸でつまらない悩みを抱えているのは
自分だけのような気がした。
ほおっと吐息をついた時、草叢(くさむら)から虫の声が聞こえた。
もう秋だ。
来年の今頃、自分はどのような気持ちで
過ごしているだろうかと、ふと思う。
皆目、見当もつかない。
しかし、来年の今になるためには、
同じような日々を過ごさなければならない。
その一日、一日を積み重ねるのが少し苦痛に思える。


・・・・・・・・・・・・・・・・

お栄が見せてくれたのは、破れ鍋に真紅の大きな牡丹を植え、
それをうっとり眺めている百姓らしき男の絵と、
杣人(そまびと)が地面に立てた大斧(おおよき)に凭れ(もたれ)、
空を渡る雁の群れを見上げている絵だった。
伊与太は思わず涙ぐみそうになった。
およそ風流とは縁のない暮らしをしている者でも、
美しい花を見れば美しいと感じる心がある。


・・・・・・・・・・・・・・・・

「毎日、毎日、伯母さんの髪を結っている内に
手が覚えるのさ。
だけど、うまく結うだけじゃ足りないんだよ。
その髪型がお客に気に入られなきゃ駄目さ。
うまい髪結いだと、一度結うと、
十日も形が崩れないんだよ」
「あたし、十日は無理。せいぜい三日ね」
「お客は十日もつ髪結いと三日で駄目になる髪結いと
どちらを選ぶ?」
「そりゃあ十日に決まっているよ」
「十日もつ髪結いにおなり」
お文はきっぱりと言うと、歩みを進めた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・
不破は赤ん坊を見つめ、
しばらく黙っていた。
心なしか眼が潤んでいる。
「旦那、何かお言葉を掛けて下さいまし」
お文が勧めると、不破は決心を固めたように、
ひとつ大きく息を吐いた。
「ようこそ不破家へ。
皆々、お待ち申しておりました。
これからは恙なく(つつがなく)成長されますことを、
不破、心よりお願い申し上げる次第に存じまする」
芝居掛かった台詞は、普段なら苦笑を誘うはずなのに、
誰も笑う者はいなかった。
本当に誰もが望んでいた子供の誕生だった。




いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「月は誰のもの・髪結い伊三次捕物余話」

ダウンロード (1)
超人気シリーズが、書き下ろし長編小説に!
髪結いの伊三次と芸者のお文。
仲のよい夫婦をめぐる騒動を、
江戸の夜空にかかる月が見守っている。


・・・・・・・・・・・・・・・・・

「いきんで、いきんで」
お浜の声が勇ましい。
お文は唇を噛み締めてがんばっている様子だ。
「さあ、もう一度。そうそう、上手、上手」
伊三次は座っていられず、
襖の前でじっと耳をそばだてた。
「お文、がんばれ」
そんな声が自然に出る。
「やかましい!今が正念場だ。
余計な半畳を入れるんじゃないよ」
お浜が憎らしい言葉を返して来た。
「余計な半畳って・・・」


・・・・・・・・・・・・・・・・・

月は誰のもの?
伊与太が要左衛門に問い掛けた言葉が思い出された。
月は誰のものでもない。皆のものでもない。
月は月だ。
ただ空にあって、青白い光を地上に投げ掛けるだけだ。
また、人の心持ちによって、
月は喜びの象徴ともなれば
悲しみの象徴ともなる。
なまじ満ち欠けをする月だからこそ、
人々の気持ちが投影されるのだろう。
いつも月を美しいと感じていられるように、
ありがたいと思っていられるように。
お文はそっと掌を合わせて祈る。
要左衛門はもしかして、
お文にとっては月のような存在だったのかも知れない。
そんな気がしてならなかった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・

「何かあった時って何ですか」
「そのう、行かず後家と深間になるとかよ。
男はなあ、女に言い寄られると悪い気持ちが
しねぇもんだな。
つい、ふらふらっと傾いちまう。
世間にはよくあることだ。
だが、お前ぇの女房は並の女じゃねぇ。
辰巳仕込みの芸者だ。
女房が孕んでいる時によその女に
懸想したとなったら決して許さねぇ。
あっさりお前ぇをお払い箱にしてしまうだろう。
女房はその気になりゃ二人の餓鬼ぐらい立派に
育ててやると啖呵を切るぜ」
松助は脅すように言った。
伊三次はようやく周りに心配させていると感じた。


・・・・・・・・・・・・・・・

「その通りだよ。
火事に遭った時は、これで何も彼もお仕舞いだと、
心底がっかりしたものだが、
実のてて親に会えたし、周りの人にも
口では言えないほど情けを受けたよ。
時々、あの火事は神さんがわっちを試したものかとも
考えるんだよ」
「試した?」
「ああ。どうだ、お文、これでお前はどん底だ、
様ぁ見やがれ。手前ぇの不幸に泣き、
喚くがいいってね。
だが、わっちは泣いてる暇もなかった。
目の前に片づけなければならないことが
山のようにあったからね。
今に見ていろって意地もあった。
すると神さんは感心して、
その後にご褒美を下さったのさ。
わっちはそう思っているよ」



いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「明日のことは知らず・髪結い伊三次捕物余話」⑪

ダウンロード
昔はよかったと言ったところで、
時間は前に進んでいくばかり。
過去を振り返っても仕方がない。
本作のタイトル通り、明日のことはわからないのである…。
大人気シリーズが誕生して二十年。
髪結いの伊三次と、その恋女房で深川芸者のお文。
仲の良い夫婦をめぐる人びとの交情が、
時空をこえて胸を震わせてくれます。


・・・・・・・・・・・・・・・・

1.あやめ供養 
 あやめを丹精することが生きがいの老婆が、
庭で頭を打って亡くなってしまう。
彼女の部屋から高価な持ち物が消えていることを
不審に思った息子は、伊三次に調査を依頼する。
暗い過去を持つ、花屋の直次郎が疑われるが……。

 「そいじゃ、お言葉に甘えて、
たったひとつだけほしい物がありやす」
「そ、そうか。それは何んですかな」
桂庵は、つっと膝を進めた。
「九兵衛に、わたしの弟子の九兵衛に
廻りの髪結いをする時の台箱を誂えて(あつらえて)おくんなさい。
一生持ってもガタが来ない頑丈で上等な台箱を」
「伊佐次さん・・・」
そう言ったきり、桂庵は言葉に窮した。
図に乗った願いだったろうかと伊佐次は慌てた。
だが、そうではなかった。
「弟子のために台箱がほしいのですか。
何んとも欲のない。他には何か」
「いえ、それだけで充分です」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2.赤い花 
 伊三次の弟子、九兵衛に縁談が持ち上がる。
相手は九兵衛の父親が働く魚屋「魚佐」の娘だが、
これがかなり癖のあるお嬢さんだった。

 するとおてんは、
本当に男に生まれたかったんだと胸の内を明かした。
伝五郎という若者はとぼけた表情をして、
喋ることも冗談交じりの男だった。
その伝五郎が、幾ら男に生まれたかったと言ったところで
無理な話ですぜ、お嬢さんはおなごとして
十八年も生きて来たんですからね、
今さら股の間から金玉が生えても困るでしょうと言った。
その言葉に男達は爆笑したが、
おてんは反対に咽び(むせび)泣いたという。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

3.赤のまんまに魚(とと)そえて 
 浮気性で有名な和菓子屋の若旦那は、
何度も女房を替えているが、
別れた女房が次々と行方知れずになるとの噂があった。
このことを聞いた伊三次は同心の不破友之進に相談する。
 
 「しかし、同じようなことが二度、三度も続いては、
黙っている訳にも行きやせんぜ。
夫婦喧嘩をして、
こんな女房はぶち殺してやりたいと思っても、
際にそんなことをする奴はおりやせん。
人が人をあやめちゃならねェと、
ぎりぎりのところで踏み留まるからですよ。
だが、世の中には踏み留まれず、
一線を越える者がおりやす。
一線を越えてしまえば、
次もその次もさして頓着しなくなるんでしょう。
もはやそいつは単なる下手人でなく、
鬼になっているんですよ。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

4.明日のことは知らず 
 伊三次の息子、伊与太が心惹かれ、
絵に描いていた女性が物干し台から落ちて亡くなった。
葬式の直後、彼女の夫は浮気相手と遊び歩いていた。
一方、不破家の茜は奉公先の松前藩で、
若様のお世話をすることになっていた。
 
(伊与太、優しい伊与太。
お前は元気で修業に励んでいることだろうね。
わたくしは大人の思惑に神経をすり減らしているのだよ。
自分が望んだ道とはいえ、わたくしは辛くてたまらない。
伊与太、子供の頃はよかったね。
何も悩みなどなく、思う通りに生きていたのだから。
わたくしが死んだら、
伊与太、涙のひとつもこぼしてくれるだろうか。
お前と夫婦になるなど、
よくも甘い夢が見られたものだ。
伊与太、愚かなわたくしを笑っておくれ)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

5.やぶ柑子(こうじ) 
  仕えていた藩が改易になった男。
知り合いの伝手を辿って再仕官しようとするが、
なかなか上手くはいかず、次第に困窮していく。 
 
「いいえ。
気に入らぬ芸者の顔を見ても、
おもしろくも何ともありませんから。
ですが、久慈様。
わっちもちょいと言わせていただきますよ。
料理茶屋に芸者を呼んで、芸者風情が口を挟むなとは、
ずい分なおっしゃりようでござんすね。
聞けば、昔、お世話になったお仕事仲間の息子が
浪人に甘んじているというのに、
面倒を見るどころか、近づくな、痛い目に遭わすぞとは、
血も涙もないやり方じゃござんせんか。
ご自分が士官の口にありつけば、
他の者はどうなっても構やしないということですか。
細川様もとんだ人間を抱えたものだ。
有田屋さん、袖の下はいかほど久慈様に差し上げたのですか。
わっちは口が軽いから、うっかり喋ってしまいそうですよ。
細川様のお留守居役の安藤様はわっちのご贔屓のお客様なんですよ。
それじゃ、ごめん下さいまし」
お文はいっきにまくし立てると廊下に出た。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6.ヘイサラバサラ
 不老不死の薬」を研究していた医者が亡くなった。
彼の家には謎の物体が残されていたが、
ひょっとしたらそれが高価なものかもしれない
と思った家主は、伊三次に調べてもらうことに。

 しかし、と伊三次は考える。
不老不死は、はたして本当に倖せなのことなのだろうかと。
人は生まれて寿命が尽きた時にぽきりと死ぬ。
それが悪いこととは思えなかった。
自分は家族のために一生懸命働き、
伊与太とお吉を一人前にし、孫の顔を見て死にたい。
お父っつぁん、逝かないで。
じいちゃん、死なないでと
惜しまれながら息を引き取るのは何んて倖せな最期だろうか。
この世には人が想像もできない不思議なものがある。
それを知ることも生きていればこそだ。
するとヘイサラバサラも沈香も生きている証に思えて来る。
それらは決して人のためになる目的でこの世に現れた訳でもないのに。
人は自然の様々な恩恵を受けて生きている。
いや、生かされているのだと伊佐次は思う。



いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「心に吹く風・髪結い伊三次捕物余話」⑩

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一人息子の伊与太が、
修業していた絵師の家から逃げ帰ってきた。
しかし顔には大きな青痣がある。
伊三次とお文が仔細を訊ねても、
伊与太はだんまりを決め込むばかり。
やがて奉行所で人相書きの仕事を始めるが…。
親の心を知ってか知らずか、
移ろう季節とともに揺り動く、若者の心。
人生の転機は、いつもふいに訪れるもの。


・・・・・・・・・・・・・・・・

1.気をつけてお帰り
 「ほう、辛さを乗り越える術とは?」
龍之進はきいの顔を覗き込んで訊く。
きいは恥ずかしそうに二、三度眼をしばたたいた。
龍之進から視線を逸らし、
「走ることですよ。
どうしようもなくなった時は
柳原の土手を息が切れるまで走るんです。
するとね、不思議に元気になるんです
と、
きいは低く言った。



2.雁(かり)が渡る
 「手前ぇの伜だから肩を持つ訳じゃござんせんが、
兄弟子さんが伊与太に任せずに
先様へ絵を持って行きなすったら、
こんなことにはならなかったんじゃ
ねぇですかい」
伊三次は顔を上げて豊光に言った。
おっしゃる通りです、と豊光は応えた。



3.あだ心
 「上田秋成という戯作者が言ったことだが、
世の中を実直に生きることは『まめ心」で、
音曲や絵、おなごにうつつを抜かすことは
『あだ心』であるそうだ。
秋成は、世の中はまめ心で生きるのが本意だが、
己れはあだ心に生涯を委ね(ゆだね)ると決心したそうだ。
伊与太、お前はまだ若い。若過ぎる。
ここであだ心に触れるのも修行になるやも知れぬ」



4.かそけき月明かり
 さとが出刃包丁を持ち、自分の首に切っ先を向けていた。
「おっちゃん、おいら、ここで死ぬ。
銚子に帰ぇるぐらいなら死んだほうがましだ」
「やめろ、危ねぇから、やめろ」
伊三次は両手で空を押さえる仕種をして宥める。
「脅しじゃねぇよ。ほら、見ろよ」
さとは、自分の腕に出刃を当て、そっと突いた。
赤い点がつき、すぐさま糸のような血が伝う。
やめて、やめて。おふさがまた悲鳴を上げる。
「死ぬなんざ怖くねぇよ。
おいら、今まで何度も死ぬより辛い目に遭って
来たからな。いっそ死んだほうが楽だよ」
さとは大粒の涙をこぼしながら叫ぶ。
「そんなことはねぇ。生きてりゃいいこともある。
銚子にゃ帰ぇらねくていいぜ。
ずっとここにいても構わねぇ」



5.凍て蝶
 「さとちゃんを産んだ女が、
いかにも手前ぇが佐登里の母親です、
と名乗りを挙げ、相手はこれこれこういう男で、
育てることができなくて寺に捨てました、
とはっきり喋っているなら別さ。
母親もはっきりしない、まして、てて親もわからない。
銚子の村で噂になっていたことを
鵜呑みにしているだけじゃないか。
そうじゃないかも知れないと、なぜお前さんは考えない。
それがわっちにはわからないよ」
お文の言うことに伊三次はぐうの音も出なかった。
「大人の思惑で妙な目で見ることこそ、
さとちゃんが気の毒だ。
え?そうじゃないのかえ」



6.心に吹く風
 「お嬢さん、別に宝物があるからいいんだって」
「別の宝物?」
お文は怪訝そうにお吉を見た。
女中のおふさも帰って、茶の間は親子三人だけだ。
そこに伊与太がいないので、
なおさら感じられる。
お吉の他愛ないお喋りが、
その時の伊三次とお文にとっては慰めだ。
「お嬢さんは兄さんの描いた絵を持って行ったのよ。
不破様のお庭の絵と、
お嬢さんの姿を描いたものよ。
とても気に入って、一生の宝物にするんだって」



いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「今日を刻む時計・髪結い伊三次捕物余話」⑨

ダウンロード (3)
江戸の大火で住み慣れた家を失ってから十年。
伊三次とお文は新たに女の子を授かっていた。
ささやかな幸せを
かみしめながら暮らすふたりの気がかりは、
絵師の修業のために家を離れた息子の伊与太と、
二十七にもなって独り身のままでいる不破龍之進の行く末。
龍之進は勤めにも身が入らず、
料理茶屋に入り浸っているという…。


・・・・・・・・・・・・・・・・

1.今日を刻む時計
 「不破の旦那は男でござんすよ。
奥様をずっとお慕いしていて、
奥様が吉原にいると聞くと矢も楯もたまらず
駈けつけたそうだ。
若旦那のお祖父様も偉かった。
何も言わず奥様の身請け料を工面なすったんだ。
奥様は旦那とお舅お姑さんの恩に報いるため、
一生懸命、同心の妻になろうと努められた。
これまで、若旦那は奥様に僅かでも吉原の匂いを
嗅いだことがありましたか?
奥様は武家の娘の気概を失っていなかったんだ。
わっちはとても奥様の真似なんてできない。
それなのに、若旦那は奥様のせいで縁談を断られたと
恨んでいるご様子。
若旦那がこれほど了簡の狭い男だとは思いませんでしたよ」



2.秋雨の余韻
 「似たようなお話があるのですよ。
縁談を断られた娘がおりまして、
父親はそれを不服として相手方へ談判に行き、
刃傷沙汰を起こしてしまいました。
その挙句、仰せつかっていた剣術道場指南役も下ろされ、
父親は抗議の意味で自害してしまったのです。
その娘も父親の後を追って自害致しました。
一家はそれにより離散する羽目となりました。」
「どなたのことをおっしゃっているのですか」
龍之進には心当たりがなかった。
「わたくしの実家のことです。
自害したのはわたくしの姉です」



3.過去という名のみぞれ雪
 「龍之進様は、ゆうが一番苦手な殿方に思えるの。
追い掛けたところで振り向いてもくれない人よ。
思いは膨らむ一方で、身も心もくたくたになりそう。
ゆうは、そういうのに堪えられないの」


・・・・・・・・・

みぞれ雪は人々の様々な思いを抱えて
降っているような気がした。
その思いとは、不破には皆、
過去を悔やむものばかりに感じられてならなかった。



4.春に候
 「手前ぇで言ってりゃ、世話ないよ。
伊与太、他人様の中で修業しているんだから、
意地を強く持っていなけりゃ踏むつけにされるよ。
それだけは言っておくよ。
困ったことが起きても、わっちとお父っつぁんは
すぐにお前の所へ駈けつけられないんだからね。
何でも一人でけりをつけるくせをつけなきゃ」



5.てけてけ
 「あたし、かけっこが得意だったんです。
大伝馬町にいた頃、近所の子供達と一緒に、
よく競争しました。
男の子と競争する時、女の子達は、
たけ、がんばれ、たけ、負けるなって応援するんです。
小平太は小さかったから、
その声がてけてけに聞こえたのでしょうね。
それからずっとあたしのことをてけてけと呼んで、
姉ちゃんとは呼んでくれなかったんです。」



6.我らが胸の鼓動
 「拙者、徳江さんとひと廻りも年が離れておりますゆえ、
当初、徳江さんを妻にすることは考えておりませんでした。
しかし、今は真剣にそう望んでおります。
お嫌でなければ拙者の申し出を受けていただきたい。
仲人を介するのどうのは、
拙者の性に合いませぬ。
これから拙者の家に参りましょう。
母上がうまくとり計らって下さいます。
いかがですかな。」
龍之進は照れも手伝って慇懃な口調になる。



いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「我、言挙げす・髪結い伊三次捕物余話」⑧

ダウンロード (4)
晴れて番方若同心となった不破龍之進は、
伊三次や朋輩達とともに江戸の町を奔走する。
市中を騒がす奇矯な侍集団、
不正を噂される隠密同心、
失踪した大名家の姫君等々、
自らの正義に殉じた人々の残像が、
ひとつまたひとつと、龍之進の胸に刻まれてゆく。
一方、お文はお座敷帰りに奇妙な辻占いと出会うが…。


・・・・・・・・・・・・・・・・・

1.粉雪
 「なぜですか。押し込みを働いたんですから、
こうなったのは自業自得ですよ」
「それはそうですが、もの心ついたころから、
薩摩へこ組として修業させられてきたのです。
よいか悪いかの判断もできず、
ただひたすら武士道を全うすることだけを教えられた。
その意味では、わたしも同じですよ。
祖父も同心、父親も同心の家に育ち、
ついには自分も同心となった。
同心は下手人を捕らえるのが仕事です。
そこに何の疑いも持たなかった。
仮に、仮にですよ。
ぽーんとよその土地に放り出され、
その土地の人々の価値観が同心を悪と見なしたとしたら
どうでしょう」


2.委細かまわず
 「旦那はお務めを退いたら、
お伊勢参りに連れてってくれると約束したんですよ。
それも反故になっちまった。
まあね、約束なんて守ってくれたためしはないから、
あたしも当てにはしていなかったけどね」
おひろは独り言のように呟く。


3.明烏(あけがらす)
 惚れるのも惚れられるのも、昔のことだった。
伊三次は、もはやお文の間夫(まぶ)ではなく、
正真正銘の亭主である。
それがいやだというのではなかったが、
お文はつかの間、自分の来し方、行く末を思う。
果たしてこれでよかったのだろうかと。
稼ぎの少ない亭主の不足を補うために
お座敷づとめを続けているお文である。
本当は家の中のことだけして呑気に暮したい。
息子の伊与太ともう少し遊んでやりたかった。


4.黒い振袖
 「姫、駕籠で参りましょうか」
龍之進がそう言うと、姫は首を振った。
「わらわは、そなた達と一緒に歩きたい」
姫の言葉に譲之進は嬉しさのあまり
「うふっ」と、野太い声で笑った。



5.雨後の月
 伊与太は縁側に腰を下ろし、
時々、足をばたばたさせながら伊三次を待っていた。
伊三次の姿に気づくと「ちゃん!」と甲高い声を上げた。
「待たせたな。勘弁してくんな。
これでも急いでやって来たんだぜ。
あれ、茜お嬢さんは?」
傍に茜の姿はなかった。
「お嬢はねんね」
伊与太はつまらなそうに応えた。
「そうか。お前ぇは昼寝をしなかったのか」
「うん。おうちじゃないから」
そう言った伊与太の眼は潤んでいた。
よほど寂しかったのだろうと思うと、
伊三次は胸が詰まった。
腕を伸ばすと伊与太はぶつかるようにしがみついてきた。



6.我、言挙げす(ことあげす)
 「古事記の中巻に倭建命が伊服岐能山(いぶきのやま)へ
山の神の退治に出かける話がある。
その時、倭建命は白い猪と出くわすのだ。
倭建命は、その猪を神の使者と思い、
帰り道でおまえを殺してやる、と猪に言う。
それがわが国最古の言挙げの用例とされておる」
松之丞は、おもむろに言挙げの謂れ(いわれ)を語った。
「そうしますと、自分の意志をはっきりと言うことが
言挙げになるのですね」



いつもありがとうございます

ネクタイアクセ   2015.5.19(火)

手作りのネクタイのリメイクのアクセサリーです。
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私が作ったんじゃないですヨ。

頂いたんです(^^)

自分不器用ですから・・・(by:高倉健)



メイちゃんとミコちゃんもお揃いです。
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メイちゃんもお似合いでしょ(^^)


金属系はすぐに赤くなったり痒くなったりするので

指輪やイラリングやネックレスなどは

直接肌に付けないようにしてるんです・・・。

「金のネックレスだったら大丈夫じゃない?」

と友人は言いますが、

本物を買えるほどの甲斐性がないので・・・

磁気ネックレスだったら大丈夫かも・・・(笑)

このネクタイアクセは、軽くて長さも調節できて、

手作りの暖か味がお気に入りです。

何より猫ちゃんとお揃いってのが

一番のお気に入りです!(^^)



いつもありがとうございます

今年3回目の猫の譲渡会   2015.5.17(日)

今日は朝から大変爽やか。

お祭り日和で譲渡会日和です(笑)
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他にもいたのですが、撮影が追い付きませんでした(^^)





いつもありがとうございます

仙台青葉まつり(宵まつり)   2015.5.16(土)

今日と明日は「仙台青葉まつり」。

今から30年前から始まった歴史としては浅いおまつりです。

伊達政宗没後350年の年から始まったようです。

武者行列や山鉾・神輿行列・すずめ踊りで街の中心部が賑わいます。



アーケードには明日の出番を待つ伊達政宗公山鉾。
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リアルな重厚感で人気の山鉾だそうです。


伊達家の家紋「竹に雀紋」
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こちらは絵馬山鉾。
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願い事がいっぱい!



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嬉しい願い事に感謝です。





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共にがんばろうネパール!


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飼えるようになると良いなぁ。


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地元サッカーチームですもんねぇ。

切実な願いです!



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アベカマとは、仙台名物「阿部の笹かまぼこ」の事です。



青葉まつりでは多くの団体が「すずめ踊り」でアーケード内や

定禅寺通りを踊り歩きます。

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こんな小ちゃくて可愛い子も沢山参加していました!

明日も楽しく踊ってネ!


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いつもありがとうございます

三人ランチ会とまたたび堂   2015.5.16(土)

今日は、三人でランチして来ました。

ちょっと横丁に入ったビルの二階のレストラン。
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お魚料理が美味しいお店。
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カレイだそうです。

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私は、まぐろのトマトソース。


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パスタ。

サラダはバイキング。

白ワインをそれぞれ二杯ずつ飲んで来ました(^^)


食後は、これまた横丁のビルの5階のアンティークなカフェ。
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店内では、LPレコードで音楽を流していまして

ジャズだったりフォークだったりと雰囲気ステキでした。

1人でも入りやすいカフェでした。


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マンデリン。

苦味の強いコーヒー。

私にはちょっと濃かったですが、友人達は美味しくて気に入った模様です。

朝に雨が降りましたが、ほどなく晴れて暑くもなく

気持良い一日でした。

・・・・・・・・・・・・・・・

猫グッズのお店見て来ました。
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こちらも横丁を入った所にあるお店です。

斜め向かいには猫カフェもありました。


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入口ドアの下には、猫ちゃんの置き物がお出迎え(^^)

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うちのメイちゃんに似てる~(親バカ)(^^)


ちなみに、うちのメイちゃんです。
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八割れ具合が似てる(笑)


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ぬいぐるみ類も沢山!

いろんな作品も飾られていて楽しめました(^^)


いつもありがとうございます

鳥の肝煮   2015.5.15(金)

今夜は鳥の肝煮。
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タコマリネ。
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ほや。
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ビールを一杯。
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仕事帰りにちょっと寄ったお気に入りの喫茶店の壁が素敵でした。
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全部、生の観葉植物。

センス良いなぁ~

ここの喫茶店は、店員さんが皆さんとっても感じが良いんです!

だから普通のコーヒーの味ですけどお気に入りなんです^m^

接客って本当大事ですよネ(^^)





いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「雨を見たか・髪結い伊三次捕物余話」⑦

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北町奉行所町方同心見習い組には六人の若者がいる。
伊三次の仕える不破友之進の嫡男、龍之進を始め、
緑川鉈五郎、春日多聞、西尾左内、
古川喜六、橋口譲之進という面々。
俗事に追われ戸惑いながらも、
江戸を騒がす「本所無頼派」の探索に余念がない。
一方、伊三次とお文の関心事は、
少々気弱なひとり息子の成長だが。


・・・・・・・・・・・・・・・・

1.薄氷(うすらひ)
 「よし、かしこいぞ。
さ、お前ぇもおさらいだ。こいつは誰だ」
九兵衛は自分を指差して伊与太に訊く。
九兵衛は最近、伊与太へ言葉を教え込むのに熱心だ。
それから、おつむてんてんとか、
にぎにぎとかの仕種も教えている。
「おえ・・・」
伊与太は九兵衛とうまく言えず、そうなってしまう。
「おえじゃねぇよ。
おえは、ものを吐きそうになった時、思わず出る声だ。
おいらは九兵衛だ。ほら、言ってみな」
「おえ」
「全く・・・そいじゃ、こいつは誰よ」
九兵衛は伊与太の鼻の頭をちょんと突いた。
「おた」
「伊与太」
「おた」
「駄目だなあ。おっ母さんの名前ぇは?」
「ぶん」
伊与太はその時だけ張り切った声を上げた。



2.惜春鳥(せきしゅんちょう)
 「うちの人、
お正月の宴で桃太郎さんに会ったのが嬉しくて、
何度も言っていたんですよ。
あたしもお顔が見れてよかったですよ」
酒の酔いで、ぽっと赤くなったおふじがきれいな
歯並びを見せて笑った。
「わっちはてっきり、
旦那に嫌われたものとがっかりしていたんですよ」
「桃太郎さん、うちの人は気に入った人に
邪険にする癖があるんですよ」
おふじは訳知り顔で言う。
「まあ、そうですか。
それなら、さしずめ一番邪険にされたのは
お内儀さんですね」
お文が軽口を叩くと、
おふじは腰を折って笑いこけた。
よい晩になったとお文は思った。


3.おれの話を聞け
 「そうですか。
男と女は夫婦になるまで、
色々、大変なんですね」
龍之進はた吐息混じりに言う。
「さいです。てぇへんです。
簡単にくっついた者は簡単に別れやす。
本当にこの男でいいのか、
この女でいいのかと悩みながら一緒になるんでさぁ。
しかし、ものの弾みで一緒になった者でも、
存外にうまく行く場合もありやすから、
一概には言えやせんが。
まあ、縁のもんでしょう」

 
4..のうぜんかずらの花咲けば
「のうぜんかずらとは、どんな意味なのですか」
龍之進は花を見つめたままで訊いた。
「のうは覆う(おおう)、
凌ぐ(しのぐ)という意味があります。
ぜんは大空で、かずらはつるのことです。
高くつるを伸ばし、
空いっぱいに咲き誇る花ということでしょうか」
それは、まさしくお梅にぴったりの花に思えた。
のうぜんかずらはまた、
猛暑を凌ぎ、
秋まで咲き続けるたくましさもあるという。



5..本日の生き方
 「骨接ぎ医見習い直弥、
辻斬りに加担するも、
裏切りによって命を絶たれ候。
その仕形、不届き千万と雖も(いえども)、
直弥、未だ若輩者にて御座候。
早過ぎる死は小生も気の毒に感じおり候。
本日の小生の生き方、上々にあらず。
下々にあらず。
さりとて平凡にもあらず。
世の無常を強く感じるのみにて御座候」



6.雨を見たか
 「こっちは雨を見たかい」
「いんにゃ、雨は見ねぇ。これからだろうよ」
船頭はそう言って水棹を持ち直した。
三人はそのやり取りを聞くでもなく聞いた。
「雨を見たかとは、おもしろい言い方ですね」
龍之進はふっと笑って言う。
「漁師は空模様を読みますからね。
言い回しもわたし等とはひと味違っていますよ」
「雨を見ましたよ。心の中で・・・」
龍之進は独り言のように言う。




いつもありがとうございます

ミートスパゲティ   2015.5.13(水)

今夜は、ミートスパゲッチ~。
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ソースはレトルトです(笑)

生協の特売です。

88円では買わずばなるまい(笑)


ほうれん草の胡麻和え。
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大根サラダ。
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ピエトロドレッシングでさっぱりと。


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・・・・・・・・・・・・・・・

早朝の地震。

我が地域は震度5弱。

緊急地震速報が流れてすぐに揺れが来ました。

久しぶりに飛び起きました。

いつもは起きるのもグダグダで、

「どれや!起きっかなと・・・」とか何回も言いながら

「よっこいしょっと・・・」と言って、

やっと布団から這い出すのですが、

今朝は、どこにあんな敏捷さがあったのか、

グラっ!と来た途端に

スパッと身軽に起きましたもんねぇ(笑)

真っ先に向かったのが仏壇です(笑)

押さえながら「メイちゃん!ミーちゃん!」と呼びかけました。

メイちゃんは「ニャ~」と押入れから返事あり(笑)

ミコちゃんはケージの中におり、

まん丸おメメでちょこんとしていました(笑)

揺れの時間も短かったので津波の心配もなく良かったです。

通勤で使う仙石線が止まっちゃって、

ホームで一時間程待ち。

駅もバス亭もタクシー乗り場も人であふれていました。

それでもイライラする人もなく落ち着いていました。

焦ってイライラしても仕方ないですもんねぇ。

一番焦って汗かいて大変だったのは駅員さん。

朝からお疲れ様でした(^^)

私は結局5分遅刻でした・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

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メイちゃん、グラグラ怖かったねぇ。




いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「君を乗せる船・髪結い伊三次捕物余話」⑥

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伊三次の上司である定廻り同心の不破友之進の嫡男、
龍之介もついに元服の年となった。
同心見習い・不破龍之進として出仕し、
朋輩たちと「八丁堀純情派」を結成、
世を騒がせる「本所無頼派」の一掃に乗り出した。
その最中に訪れた龍之進の
淡い初恋の顛末を描いた表題作他
全六篇を収録したシリーズ第六弾。


・・・・・・・・・・・・・・・・・

1.小春日和
 「おいら、髪結いになれますかね」
「それはお前ぇ次第よ」
「おいら、親方が好きだから、
きっと辛抱できると思います。
親方は無闇に怒鳴らないからいい」
「怒鳴らないからか・・・」
伊三次はそう言いながら
徒弟時代のことをふっと思い出していた。
伊三次の親方は姉のお園の連れ合いで
義理の兄に当たる男だった。
毎日のように怒鳴られ、殴られていた。
我ながらよく辛抱したものだと思う。
それと同じやり方を九兵衛にしたくなかった。



2.八丁堀純情派
 「連中は商家を襲うとか、
何か事件を起こしておりますか」
監物の小言が鉈五郎(なたごろう)に落ちる前に
龍之進は慌てて口を挟んだ。
「いや、今のところ、そのようなことはない」
「それでは連中の意図は何んでしょうか」
「わからん。だが、市中の人々は連中を
本所無頼派(ほんじょぶらいは)と呼んでおる」
「本所無頼派・・・」
龍之進と鉈五郎の声が重なった。
「本所で連中を見掛けることが多いからだ。
あるいは住まいが本所近辺にあるやもしれぬ。
向こうが無頼派なら、おぬし等は何派かの。
その初々しい顔を見れば、
さしずめ純情派とも言える。
八丁堀純情派だの」
監物は気の利いたことを言ったつもりなのだろうが、
龍之進は白けた。
本所無頼派とわざわざ並べる必要は一つもないと、
その時は思っていた。



3.おんころころ
 おんころころ せんだり まとうぎ そわか

この世には理屈のつけられない不思議がある。
それを信じる者と信じない者がいる。
伊三次はどちらかと言えば、信じない方の部類だ。
しかし、あの時、伊与太は確かに神仏に守られたと思う。
紫の小袖の娘が、あの寺に伊三次を導かなかったら、
伊与太はもしかして助からなかったかも知れない。
心底、ありがたいと思う。
伊三次は宣言通り、余左衛門親子を捕えた。
片岡と他の役人の助っ人があったものの、
取り敢えず、約束を果たした。
自分のやるべきことを全うする。
それしか娘に恩返しする術はなかった。



4.その道、行き止まり
 「九兵衛、おれは立派な同心になれると思うか」
龍之進は試すように九兵衛に訊いた。
「なれますよ。意地の強さは半端じゃねぇですから」
龍之進に嬉しさが込み上げた。
見習いとなって初めて聞く褒め言葉でもあった。
「九兵衛、おれが本勤になったら、
お前を小者に抱えてやる。
頭も毎朝やらせる。だからしっかり修行しろ」
龍之進は九兵衛にそう言った。
九兵衛は顔をくしゃくしゃにして喜んだ。



5.君を乗せる船
 眼を閉じた作蔵は眠っているだけのようにも思えた。
あぐりはおしかと手を取り合って泣いていた。
「こんなのはいやだよ、作蔵。
一緒に八丁堀へ帰るんだ。
さっきまで一緒だったじゃないか。
帰りも一緒だ。
提灯を照れしてくれなきゃ、
足許が危ないじゃないか。作蔵!」
「父っつぁんは自分の娘を吉原に取られている。
それをずっと悔いていた。
だから、身体を張ってあぐりお嬢さんを庇ったんだ。
父っつぁん、よかったな。
娘の仇ぁ、討てたよな」
伊三次も咽びながら言う。
心なしか作蔵の顔は微笑んでいるようにも見えた。



いつもありがとうございます

めざし   2015.5.12(火)

今夜は、めざし。
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頭から尻尾まで全部頂きます(^^)


バナナとカニカマと水菜のサラダ。
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大根のお味噌汁。
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えだ豆。
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しとしと雨が降っています。

日傘兼用のコンビニで買った黒い折り畳み傘がとても重宝しています。

デバートの傘売り場も見たのですが、

軽くてスリムでデザインもステキな傘があったのですが、

8,000円とかなんですよねぇ・・・

さすがデパート・・・

良いんだぁ、安い傘でも役目を果たしてもらえればさ・・・

と・・・シトシト雨の中トボトボ帰宅して玄関開けたら

メイとミコがお出迎えでニコニコ(笑)





いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「黒く塗れ・髪結い伊三次捕物余話」⑤

ダウンロード (2)

お文は身重を隠し、年末年始はかきいれ刻とお座敷を続けていた。
所帯を持って裏店から一軒家へ移った伊三次だが、
懐に余裕のないせいか、ふと侘しさを感じ、
回向院の富突きに賭けてみる。
お文の子は逆子とわかり心配事が増えた。
伊三次を巡るわけありの人々の幸せを願わずにいられない、
人気シリーズ第五弾。


・・・・・・・・・・・・・・・・・

1.蓮華往生
 「旦那は、最後は奥様とだけ眼を合わせたんだ。
それを見た姐さんが胸にぐっとこたえたんじゃないだろうか」
「わからねぇ。
旦那は奥様の後ろで喜久壽の方を見たんじゃねぇのか?」
「そんな余裕はあったかえ?
本当なら旦那は奥様にも素性を知られたくなかったはずだ。
だが、覚悟の上で蓮華に上がったのなら、
最後の最後に言い残す言葉があるのは姐さんじゃなく
奥様の方だ。
まして旦那は奥様の寺通いをやめさせるために、
あの寺を張っていたんだろ?
旦那は姐さんよりも奥様を選んだんだ」



2.畏れ入り谷の
「入谷の鬼子母神さんにねえ、行けるかえ?」
「・・・・・」
返事をしないのは大義だということだ。
無理もない。入谷は浅草寺から田圃を抜けた寺町の一郭にある。
すぐ傍は上野のお山である。
「何んでまた、そんな所に・・・」
しばらくしてから伊三次が口を開いた。
「この前、お座敷を掛けてくれたお客様に呼び出されたのさ。
だけどわっちは無理だからお前さんに代わりに行って貰いたいのさ」
「代わりに行ってどうするのよ。
おれは桃太郎の亭主でござんす、
女房は来られません。
お生憎でござんすね、と言うのか」
「なにを言うことやら。
一丁前に焼き餅を焼いているつもりかえ」
お文は悪戯っぽい表情で笑った。



3.夢おぼろ
 「旦那、建て主は富突きで大金を手にしたそうですぜ。
元の商売もうっちゃらかして浮かれていたんで、
こんなざまになっちまったんですよ」
伊三次は八兵衛の後ろからついて行きながら口を挟んだ。
「一の富だってねえ。
八十両もの金を持つ人間は、
この江戸でもそうそういませんよ。
しかし、どれほど大金でも遣うとなったら早いものです」
八兵衛はしみじみと言った。
「真面目に働くことが肝腎ですよね」
伊三次が子供のような口調で言うと、
儀右衛門はくすくす笑いながら、
「伊三次さんなら大丈夫ですよ」と言った。
「お金は大切にする人の所にしか集まりません。
そういうもんです」
八兵衛はきっぱりと言った。



4.月に霞はどこでごんす
 糊の瓶(かめ)から出て来たような赤ん坊は
お世辞にも可愛いとは言えなかった。
伊三次は情けない顔で笑った。
「さあ、ご亭主。ご苦労様でございます。
もはやお引き取り下さい」
いつまでもそこにいる伊三次に黄湖は苦笑混じりに命じた。
黄湖は産湯を使って小ざっぱりした赤ん坊を確認すると、
「まれに見る難産でした。
しかし、無事に生まれたということは、
よほど運の強いお子さんなのでしょう。
大事に育てて差し上げて下さい。
施術料は後ほどご請求します」と、
事務的に言って帰って行った。
伊三次は通りの外まで黄湖を見送った。
夜は白々と明け、朝靄が左内町の通りに立ち込めていた。



5.黒く塗れ
 明日のことはわからない。
だが、明日の夜はすべてが終わっている。
最悪の場合は長庵の尻尾が摑めず、
おつなが罪に問われることだった。
偽人参の廉(かど)で捕らえたとしても、
沙汰はさほど重いものにはならないだろう。
晴れて娑婆に戻った長庵は、また次なる獲物を探す。
同心の小者として、伊三次は初めて下手人に強い憎しみを抱いた。
夜は更けていた。
伊三次の影が襖に黒く映っている。
その影を見つめて伊三次は低く呟いた。
黒く塗れ、と。



6.慈雨
 伊三次は直次郎の背中をくいっと押して、踵(きびす)を返した。
直次郎はしばらくその場に佇んで、伊三次を見送った。
伊三次は曲がり角で振り向いた。振り向かずにはいられなかった。
直次郎がおずおずと戸に近づき、中へ声を掛けた様子である。
ほどなく、戸が開き、お佐和の白い顔が覗いた。
お佐和は泣き笑いのような表情をしている。
かぶりを振った。もう一度、かぶりを振った。
それからこくりと肯いた。
花を差し出す直次郎。
お佐和が嬉しそうにそれを受け取ると、
じっと直次郎を見つめた。
それから堪え切れずに直次郎に縋りついた。
直次郎はお佐和の勢いに少しよろけ、足を踏んばった。
(あちゃあ、やってくれる。まだ人目があるのによう)
雨が降る。まっすぐな雨が降る。
だが、この雨は暖かい雨だ。
すべてを洗い流し、代わりに何かを潤す恵みの雨だ。
そう伊三次は思う。
抱き合う二人の姿は、まるで紗を掛けた一幅の絵だった。




いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「さんだらぼっち・髪結い伊三次捕物余話」④

ダウンロード (1)

芸者をやめたお文は、伊三次の長屋で念願の女房暮らしを始めるが、
どこか気持ちが心許ない。
そんな時、顔見知りの子供が犠牲になるむごい事件が起きて―。
掏摸の直次郎は足を洗い、伊三次には弟子が出来る。
そしてお文の中にも新しい命が。
江戸の季節とともに人の生活も遷り変わる、
人気捕物帖シリーズ第四弾。


・・・・・・・・・・・・・・・・

1.鬼の通る道
 「坊ちゃんが口を噤(つぐ)んでいたのは、
あぐりお嬢さんが悲しむと思ったからですよ」
「知るかッ!」
「下手人をお縄にすれば、旦那はそれでいいんですかい」
伊三次は試すように不破に訊く。
「何?」
「あの下手人には娘がいた。
その娘がその先、どうなるかまで坊ちゃんは考えていたんですよ。
こいつは旦那より坊ちゃんの方がよほど人間のできがいい。
下手人の家族を世間様から守ってやるのも町方役人の
務めじゃねぇですか、違いますかい」



2.爪紅(つまべに)
 一日仕事して、お文と差し向かいで飯を喰い、
湯屋に行き、お文を抱いて眠りに就く。
何ということもない毎日である。
おおかたの江戸の人々の暮らしである。
これがつまり倖せなのだ。
このささやかな倖せを阻(はば)むものがあるとすれば、
よりうまい物を喰いたい、
いい着物を着たい、
辛い仕事をせずに楽をして暮らしたいという
人間の欲のせいに思えてならない。


3.さんだらぼっち
 「お須賀さん、後生だ。
お千代ちゃんが可哀想だから、もう堪忍してやって」
お文は哀願するような声で言った。
「お文さんが幾ら優しくしても、
この子の夜泣きは治まらないんですよ。
いいから、家の中に戻って下さいな」
お須賀の手には火の点いた線香ともぐさらしいものが握られている。
線香は一本どころか一束だ。
闇の中で火の点いた線香が赤くひかっている。
「お須賀さん、それじゃお千代ちゃんが火傷しちまう」
「いいんですよ。火傷しようがどうなろうが、
あんたの知ったことじゃありませんよ。
うるさいねえ、いちいち・・・」
お須賀は舌打ちをして吐き捨てる。
その言葉で、お文の胸の中で何かが弾けた。
「お千代ちゃんの泣き声より、
お前ぇの怒鳴り声がやかましいんだよ」
お文は低くしゃがれた声でお須賀に凄んだ。



4.ほがらほがらと照る陽射し
 「おれも何んでお文があんなことをしたのか、
最初はわからなかった。
不破の旦那の奥様がおっしゃったことによると、
夏の盛りに町方役人の親戚の娘が死んでいるんですよ。
お文はその死んだ娘と、どうやら顔見知りだったらしい。
ずい分可愛がっていたようなふしもあったから、
がっくり気落ちしたんだな。
それでまあ、夜泣きの娘が母親に叱られた時に、
死んだ娘と重なった気がして思わずやっちまったんだろう。
いずれにしても、
そん時のお文の気持ちは普通じゃなかったと思うが・・・」


5.時雨てよ
 お浜は六十を過ぎた年寄りだが、
まだまだ腕は衰えていない。
今まで三百人もの赤ん坊を取り上げたと自慢していた。
お文のことは乳首の色を確かめ、
腹を摩っただけで「はい、おもでとうさん。
養生して元気なお子を産みなさいよ」とすぐに言った。
ぼんやりしていたことに、はっきりと結論が出た。
しかし、お浜の家を出ると途端に心細い気持ちになった。
おみつにあんなことでもなかったら、
お文は真っ先に伝えただろうと思う。
きっとおみつは喜んでくれたはずだ。



いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「さらば深川・髪結い伊三次捕物余話」③

ダウンロード

「この先、何が起ころうと、それはわっちが決めたこと、後悔はしませんのさ」
誤解とすれ違いを乗り越えて、伊三次と縒りを戻した深川芸者のお文。
後添えにとの申し出を袖にされた材木商・伊勢屋忠兵衛の
男の嫉妬が事件を招き、お文の家は炎上した。
めぐりくる季節のなか、急展開の人気シリーズ第三弾。


・・・・・・・・・・・・・・・・

1.因果堀
 増蔵がお絹を庇ったのは、そうして置き去りにおしたお絹への
罪の意識だったのだろう。
増蔵はお絹への償いのために一緒に逃亡しようとしたのだ。
守るべき田のない村に戻ったところで栓のない話だったとしても。


2.ただ遠い空
 「姉さん、あたい、今まで勝手気儘にやって来て、
それはそれでちっとも悔んじゃいないけれど、
一つだけ心残りがあるんだ」
おこなはしみじみした口調でお文に言った。
「何だえ?」お文は洟(はな)を啜っておこなに訊いた。
「あたいも、あの真っ白い衣装でお嫁に行きたかったって」


3.竹とんぼ、ひらりと飛べ
 伊三次はお文の桜色の爪に器用に小鋏を当てた。
「手紙なんざ、書いたりするのか?」
伊三次はお文の足に視線を落としたまま、さり気なく訊いた。
「何の話だ?」
「いや、ただ手紙を書くこともあるのかって言ってるだけだ」
「・・・・・」
「とても倖せに暮らしているから、
このままそっとしておいてほしいって・・・そん手紙をよ」
返事をしないお文に顔を向けると、
その眼に膨れ上がるように涙が湧いていた。
やはり、と伊三次は思った。
「せめて最後に顔を見せてやったらよかったんだ。
手前ぇは薄情な女だぜ」
美濃屋のおりうが死んだことで伊三次は自然に詰る(なじる)
口調になった。
「会って・・・・どうするんだよう。
会ったって一緒に暮らせる訳もねぇ。
その後が切ないだけさ」


4.護持院ケ原
 「赤ん坊の頃、親に捨てられたそうだ。
寺の坊主が親身になって育てたが、あの顔だ。
城の殿様に目をつけられて色子にされて・・・
思えば気の毒な野郎だよ。
そういうことが重なれば、
どんなまともな奴もでなくなる」
留蔵の言葉に弥八と伊三次はつかの間、黙った。
留蔵は観念した源之丞から鏡泉の生い立ちを聞いたのだ。


5.さらば深川
 「増さんに、この際、所帯を持てと言われた」
伊三次は少し躊躇したような顔をして口を開いた。
お文は驚いて振り返った。
「それでお前ぇは何と応えた?」
「うんと言ったよ」
「・・・・・」
伊三次が黙っているお文を心配そうな表情で、
じっと見ている。
「お前ぇはひどい男だ。
わっちが家をなくしてから、ようやくそんな話をする」
お文は、しばらくしてから吐息混じりに言った。
「家持ちの辰巳の姐さんに、
廻りの髪結い風情が豪気なことは言えねぇと思ってよ」
伊三次は言い訳するように応えた。
「こんなふうになるのを待っていたのかえ?」
「そういう訳じゃねぇが・・・」
「もっと前にその台詞、聞きたかったねえ」
お文はしみじみした口調で言った。
「遅いのか?」伊三次は真顔で訊いた。
「さあて、遅いか遅くないかは、わっちでもわからない。
これが潮時と言われたら、そうかも知れないと応えるだけだ」




いつもありがとうございます

さばの一夜干し   2015.5.11(月)

今夜は、さばの一夜干し。
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湯豆腐
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青菜のお浸し
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とろろ昆布のすまし汁
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夜になりますと、やっぱり風が冷たくて薄着は気を付けたいですね。

先日、山形の友人からお便りが来ました。

ちょっとご無沙汰していたと思うと何かあるものですね・・・

帯状疱疹になって処方された薬による副作用で大変だったとか・・・

その後、病院を変えてだいぶ良くなったけど、

神経痛が出て現在も通院中とか・・・

歳を実感したとの事でした。

優しいご主人と親しいご近所さんとご親戚に助けられていると

言っていました。

それだけ彼女の人付き合いの良さが伺われました。

何でも自分でやろうとせず、

力を抜いて人に頼り甘える事も大事だなぁ・・・

頼りっぱなし、甘えっぱなしはいけませんが・・・。

時には頑張るのを止める事もオススメします。

とは・・・私が言われた言葉です(笑)

ですが私の場合、頑張る方向がオンチで、

明後日の方向に向かってバットを振っている感じ・・・。

しかもヘッピリ腰・・・

無駄な頑張り・・・疲れるわけだ・・・




いつもありがとうございます

水ぎょうざ    2015.5.10(日)

今日は「母の日」でしたね。

我が家でも妹と母へ贈り物を毎年しているのですが、

今年は「和菓子」を二人で贈る事にしました。

選んで買って来てくれるのは妹なのですが、

今日は仕事で遅くなるとの事で、

渡すのは明日に延期。

福岡に住んでいる姉は既に贈ってくれたそうですが、

到着が明日・・・

我が家の母の日は明日のお楽しみとなりました(^^)

今夜は、水ぎょうざ。
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煮物。
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果物はバナナとグレープフルーツ。
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・・・・・・・・・・・・・・・・・

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朝からメイちゃんを追いかけてばかりのミコちゃん。

あんまりしつこくするからメイちゃん怒っちゃって、

押入れに入ってしまいました。

ミコちゃん、遊ぶ相手がいなくなって寂しそうに外を眺めていました。

気が付くとこの格好のまま眠っていました(^^)



いつもありがとうございます

ランボー   2015.5.9(土)

ランボー

久しぶりに観ました。

もう33年も前の映画なんですねぇ。

偶然にも「ロッキー観たいなぁ」と思っていたら

スタローン繋がりでランボーが放映していまして、

ランボーも良いなぁと思い鑑賞致しました。

スタローンはあまり知られていないそうですが、

生れた時の医療ミスで、

「言語障害」と「顔面麻痺」の障害を持っているそうです。

子供時代はその事が原因でかなりイジメに遭っていたそうです。

12歳頃からは荒れだして

14校の学校を退学していた程の手に負えない少年だったそうです。

その後、演劇と出会い自分で作った脚本の「ロッキー」に

主演し大成功した俳優さん。

この時は、ノーギャラで出演した事は有名ですよネ。

さて、今回の「ランボー」という映画ですが、

独りのベトナム戦争帰還兵ランボーが、

ある片田舎での理不尽な偏見から起きた事件により、

奇しくもベトナム戦争時代の戦闘能力の高さ故の

たった一人対警察部隊とのサバイバルの銃撃戦となります。

町に異様な男を入れたくない保安官。

偏見と時代の排他主義による犠牲者ランボーが、

闘う事により間違った主張をしてしまいます。

娯楽映画として観るには、内容がシビアであり、

経験している帰還兵には観るに堪えない物語と思います。

銃器を乗せたトラックを運転し、検問車両をぶち抜け、

ガソリンスタンドを爆破し、

町の灯りを消し、警察署内を銃で打ちまくり破壊します。

山の廃坑を智恵と忍耐と技で切り抜け地上に到達するシーンは、

あてどない暗闇で戦い抜いて来たからこその突破であり、

それをたった独りで何百人もの警察官と渡り歩くさまは、

圧巻でした。

有名な、岩壁からスタントなしで落ちるシーンは、

確か、枝に落ちた所で肋骨を怪我したとか・・・

この映画は最後の最後が見せ処となっていますね。

元の指揮官との再会により、

ランボーが抱えている決して癒えない傷を語るシーンは、

何度見ても泣けます・・・

今回は吹き替えで観たせいなのですが、

声優さんが・・・すみません・・・

下手でした・・・残念です・・・

大事な大事なシーンなのですが、

声の表現が残念で、スタローンに似せようとし過ぎたのかな・・・

この映画は、音楽も有名ですね。

ロッキーもランボーも音楽で映像がすぐに浮かびます。

エンディング曲のダンヒル「It's a Long Road」が

ランボーと上官二人で歩くシーンにとても似合っていて

とてもお気に入りの曲です。





いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「紫紺のつばめ・髪結い伊三次捕物余話」②

ダウンロード

材木商伊勢屋忠兵衛からの度重なる申し出に心揺れる、
深川芸者のお文。
一方、本業の髪結いの傍ら同心の小者を務める伊三次は、
頻発する幼女殺しに忙殺され、
二人の心の隙間は広がってゆく…。
別れ、裏切り、友の死、そして仇討ち。
世の中の道理では割り切れない人の痛みを描く
人気シリーズ、波瀾の第二弾。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

1.紫紺のつばめ
「家は手入れをしなければすぐに古びや
汚れが目立って来る。
それは人にも言える。
蛤町の家もあんたも、そろそろ手入れが
必要じゃないのかね、
そのためにわたしはひと膚脱ぎたいのだよ」
「他意はないとおっしゃるんですか」
「ああ、ない」
忠兵衛はきっぱりと言った。



2.ひで
 それは夢か幻であったのだろうか。
伊三次の目の前を雷神の彫り物をした男の背中が
通って行った。
「ひで!」思わず声が出た。
伊三次に呼ばれた男は瞬間、振り返ったが、
陽の光がまともに男の顔を照らし、
その表情は定かにはわからない。
白い眩しい光を浴びた男は
微か(かすか)に伊三次に向けて
笑ったような気がした。
「ひで!」伊三次はもう一度叫ぶように男を呼んだ。
そんなはずはなかった。
日出吉は宵宮の朝に息絶えたのだから・・・。



3.菜の花の戦ぐ(そよぐ)岸辺
 「わっちは芸者だ。
客に愛想を振り撒いて銭を引っ張ることだって
ありますよ。
確かにわっちは伊勢忠の旦那に家も直して貰ったし、
着る物の世話も掛けた。
御祝儀(おはな)にしては高過ぎるかも知れない。
だが、わっちは伊勢忠の旦那の囲い者になったつもりは
ありませんよ。
亡くなった先代の好意だと思って受けてくれと
伊勢忠の旦那はおっしゃいましたよ。
銭に物を言わせてわっちを思い通りにしようなんて
野暮なお人じゃない。
仮にそう言ったとしたら、
わっちは伊勢忠の旦那の言い分を蹴っていたでしょうね。
これでも羽織芸者だ。
芸は売っても身体は売りませんよ」
お文がそう言うと、座敷の隅で話を聞いていた正吉が、
「よ!」と掛け声を入れて掌を打った。
「文吉姐さん、いっちすてき」
増蔵はものも言わず立ち上がり、
正吉の前に進んでその頭を張った。


「増蔵さん、これが慌てずにいられますか。
牢送りになった下っ引きがどんなことになるか、
あんたも満更知らない訳でもあるまい。
お白洲に出る前に苛め殺されちまいますよ。
牢の中には、あの人の顔を憶えている者が
何人もおりますからね。
しょっ引かれた恨みをここぞとばかり晴らすでしょうよ。
大番屋にいる内はまだましというものだ。
とにかく増蔵さん、本当の下手人を早く捜して。
あの人にもしものことがあったら、
わっちは一生恨みますよ。
いや・・・わっちは後を追うかもしれませんよ」
お文は増蔵を脅すように低く言った。
「きゃあ、姐さん、芝居の心中もののような台詞だ。
乙にすてき、すてき」
正吉の能天気な物言いに、
増蔵の手がまた伸びていた。



4.鳥瞰図(ちょうかんず)
 「おどきなさい」いなみは伊三次に厳しい口調で言った。
「いいえ、退きやせん」
「お若いの、いなみ殿がそれがしを斬らねば
是非もないとおっしゃられるなら、
老い先短いこの命、何んの未練がござろう。
存分にご無念を晴らしていただきましょう」
そう言った日向から微かに伽羅(きゃら)の香が匂った。
なぜか伊三次はその年寄りを死なせてはならないと思った。


 
5.摩利支天(まりしてん)横丁の月
 「お殿様は世間の噂になっているような人じゃなかったのよ。
ただ、あたし達が遊んで笑い合っているのを
喜んでいただけなの。
でも、そんなこと言っても誰も信じない。
何を言っても言い訳になるから、あたし黙っていたのよ」
「おみつ、湯屋のお内儀さんは嫌か?」
弥八は唐突におみつに訊いた。
「え?」おみつは呑み込めない顔で弥八を見た。
「知ってるだろ?おいら、親父の養子になったんだぜ。
親父には子供がいなかったからよ。
末は松の湯のご主人様よ。
だが、おみつはおいらなんて頼りにならねぇから
嫌なんだろ?」
おみつは返事ができなかった。
何と答えていいかわからなかった。
「嫌でもいいんだ。
嫌でもおいらの気持ちは変わらねぇ。
ずっと変わらねぇ・・・・」




いつもありがとうございます

白い小鳩   2015.5.9(土)

タンゴのワルツで有名な「白い小鳩」。

バンドネオン演奏でお気に入りの曲の一つです(^^)





いつもありがとうございます

さくらねこ   2015.5.9(土)

さくら猫

「さくら耳」は不妊手術済のしるしです。

日本のいろんな地域で、

猫たちがふえすぎて迷惑をかけないように、

ボランティアさんが獣医さんに運んで

不妊手術をしています。

この手術の時、麻酔中の痛くない間に、

お医者さんがメスで耳先を

桜の花びらみたいにV字にカットして、

さくら耳にします。

それが不妊手術済みのしるしとなります。

※しるしがないと手術済みの猫が

もう一度捕まえられて麻酔や開腹手術を

2度される危険があるのです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

TNR運動とは?
TNR (絵)

世界のノラ猫サイトで共通して出てくる言葉で、

ノラ猫問題の推奨される解決方法です。

Trap-Neuter-Return Program(略してTNR)


Trap :トラップ(捕獲器)で野良猫を捕獲すること。

     ここで使われるトラップは

     ヒューメイントラップ(人道的な捕獲器)のことで、

     猫を殺傷するようなトラップは含まれない。

Neuter :ニューター(不妊手術のこと) 

     オスもメスも含まれる場合が多い。
     

Return :リターン(元の生活場所に戻してやること) 

      Releaseが使われることもある。




いつもありがとうございます

サポートを必要としている人が持っているマーク   2015.5.9(土)

マーク

『このマークを持っている人を

電車やバスなどで見かけたら、席を譲ってください。

義足や人工関節を使っている人、

内部障害や難病など見た目ではわからないけれど

サポートを必要としている人が持っています。』




・・・・・・・・・・・・・・・・・




マーク


『呼び方は「耳マーク」。

聴覚に障害がある方は、見た目では不自由があることがわかりづらく、

日常生活で不利益な思いをすることが多くあります。

このマークで、自分の耳が不自由であることを自己表現し、

周囲に理解をお願いすることができます。』



・・・・・・・・・・・・・・・・・・



マーク


黄色のリボンを付けたわんちゃんを見かけたら、

『そっとしてあげてください。

黄色いリボンを付けたわんちゃんは

何かしらの理由があって訓練をしているわんちゃんだという事。

わんちゃんは人間よりも体が小さく、臆病な犬種の子もいます。

急に近づいてしまうとビックリして吠えたり、

恐怖心から噛んでしまったり、

更に人間という存在を恐れてしまう可能性があります。

体に障害を抱えていたり、

過去のトラウマで人間を恐れてしまい

”人間に慣れる訓練”をしている子、

また、動物を恐れているケースの子もいるので、

他のわんちゃんとの距離感も大切です。

あなたがもしもわんちゃんを連れてお散歩中の時に

黄色いリボンを付けているわんちゃんを見かけたら、

どうか、わんちゃん同士を近づけないであげてください。

可愛いな、撫でたいな、と思ったら、

まずはリードを引いている飼い主さんに一声かけ、

傍に近づいても大丈夫か確認できるといいですね。』





いつもありがとうございます

Mabel Katzさんの動画   

連合は力を作る * 団結は力!

La union hace la fuerza * Union is Strength

Posted by Mabel Katz on 2014年7月17日




いつもありがとうございます

宇江佐 真理 「幻の声・髪結い伊三次捕物余話」①

ダウンロード

本業の髪結いの傍ら、
町方同心のお手先をつとめる伊三次。
芸者のお文に心を残しながら、
今日も江戸の町を東奔西走…。
伊三次とお文のしっとりとした交情、
市井の人々の哀歓、
法では裁けぬ浮世のしがらみ。
目が離せない珠玉の五編を収録。
選考委員満場一致で
オール読物新人賞を受賞した渾身のデビュー作。

・・・・・・・・

1.幻の声
 伊三次は十二の時から京橋・炭町で内床を構えている
「梅床」十兵衛の弟子に入った。
十兵衛の女房のお園は伊三次の実の姉であった。
父親が普請現場の足場から落ちて怪我をして、
それが原因で呆気なく死ぬと、
もともと身体があまり丈夫ではなかった母親も
後を追うように半年後に死んでしまった。
伊三次はお園に引き取られた。
たった二人のきょうだいだった。

2.暁の雲
 「それは違う。もちろん一番悪いのはその浪人だ。
だが事が事だ。兄さんに慰めて貰おうなんざ甘い考えだ。
姉さんはもう芸者じゃない、堅気のお内儀だ。
昔は色が絡んだお座敷もあっただろうが、
それとこれとは別だ。
夫婦だから何でも喋っていいというものでもねエ。
むしろ喋らないことが兄さんに対する思いやりだ。
姉さんは自分の重荷を兄さんに背負わせただけだ。
むごい話だ、正直聞いて呆れる」

3.赤い闇
 不破はゆきの火打石のことは伊三次に口止めした。
卑怯と思われようが事の真相を晒す気はさらさらなかった。
「そうですよね。いまさら死んだ人間のやったことを
お白洲に持ち込んでもどうなるもんでもありやせんからね」
そう言った伊三次の言葉が唯一の不破の救いだった。
日向の御長屋に火をつけたのは、
あれはゆきのいなみに対する友情だったのだろうか。
ゆきの中にためらいはなかったのか。
いなみの無念が晴れる、いなみを喜ばしたい、
ただそれだけの理由で事が起こせたのか、
不破にはわからなかった。

 
4.備後表
 おせいはそれから一年後に死んだ。
喜八の子供に産湯を使わせ、
お君の産後の世話を果たし、
さらに表を二十畳も拵えて(こしらえて)から
おせいは逝った。
自分の表を酒井家の奥で見たことが唯一の誇りだと
死ぬまで言っていたそうだ。
いつもは忙しさに紛れて暮らしている伊三次だったが、
菊の咲く頃、決まっておせいを思い出した。
それは少年の頃の少し寂しくて切ない思い出も伴った。
菊は葉も茎も立ち枯れても、
なお花の部分だけは鮮やかに形を保つ辛抱強い花だ。
そんな菊はまるでおせんのようだと伊三次は思う。

5.星の降る夜
 「そうでしょうか。わたくしも弥八もお金で鳧(けり)の
つくことではないですか。お金さえあれば余計なことは
考えなくて済みますもの。
さきほど不破はたかが三十両と言いましたよね?
たかがと吐き捨てるほどには右から左へと動かせるお金では
ありません。それは不破もわかっております。
もちろん、うちにもそのようなお金はありません。
たかがと言うなら、たかが同心の家に三十両もの
大金はある訳がないと言うべきですわね。
でも不破のお義父様はわたくしのために
二十八両を工面なさいました。
先祖代々からの書画骨董を処分なさったからです。
その中には先代の上様にまつわる物もあったそうです。
そのような大切な物が、たかが二十八両で買い叩かれ、
たかが遊女一人に遣われたのです。

お義父様は金で済むことなら大したことではないと
おっしゃいました。
お金でわたくしの一生が買えたのなら安いものだと
おっしゃいました。
いなみは悪いのではない、
悪いのは世の中だ。
のう、いなみはこのように良い嫁女だ、
友之進にはもったいないくらいだ、と・・・。」




いつもありがとうございます

プレゼント   2015.5.8(金)

先日誕生日を迎えた友人へプレゼント。

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花が大好きな彼女へカーネーションの鉢物にしました。

子供さん二人いるのですが、

母の日にプレゼントをもらった事がないと言っていたので

母の日気分も味わってもらおうとカーネーションにしました(笑)

彼女の柔らかい雰囲気に似合うピンク色にしました。

黄色いカーネーションの花言葉が「軽蔑」なんだそうですね。

くれぐれも贈る時は気をつけたいものですね。

・・・・・・・・・・・・・・

友人宅の近くにいる野良猫ちゃん。
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望遠で撮影しました。

近づくと威嚇してかなり怖い顔をします。

目の所が少し腫れているような・・・

長毛の品のある猫ちゃん。

逃げるのが速かったです・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・

友人宅のご近所さんのツツジが満開!
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丸く綺麗に刈られていてとっても綺麗でした。

・・・・・・・・・・・・・・・・

少し時間があったのでお茶して来ました。
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こちらは「塩キャラメルラテ」だそうです。

甘塩っぽくて美味しかったですヨ(^^)



いつもありがとうございます

ミコの前足   2015.5.6(水)

ケージの中でお昼寝から覚めたミコちゃんです。


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前足が可愛い(^^)



いつもありがとうございます

お墓参り   2015.5.5(火)

今日は、妹も休みの為皆んなでお墓参りに行って来ました。

道中、混雑を予想して7時に出発。

行きも帰りもスムーズでした。

途中で見える蔵王連峰。

山の方はやっぱり少し肌寒かったです。

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ランチは、仙台に帰ってから、

中華店へ行きました。
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お昼前だったので空いていて静かでした。

サラダバーがあって食べ放題。



母はエビチリ定食。
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甘辛くて美味しいと言っていました。


妹は、ニラレバ定食。
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ニラが極端に少なくて、

もやしばっかりだったのでモヤレバ定食ですね。

定食のご飯もお替り自由だそうですので、

若い方や男性には助かるメニューと思いました。


私は、マーボーラーメン。
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初めてのお店では必ず頼む麻婆豆腐。

麻婆豆腐が美味しいと他のメニューも美味しいと思っています。

中華店の良しあしは麻婆豆腐で決まる!(持論ですが・・・)

こちらのお店は麺は細麺。

麻婆豆腐は、見た目程辛くなく食べやすかったです。

香辛料も感じなかったので飽きない味と思いました。

店内も綺麗で落ち着ける雰囲気のお店でした。

シェフは中国人で元気いっぱいにお料理を作っていました。

食事を終えて自宅に向かう途中渋滞に巻き込まれました。

仙台新港の近くにあるアウトレットモールへ行く車で渋滞。

他県ナンバーが多かったです。

我が家からアウトレットモールへは、

自転車でも10分位で行ける距離(私は20分)

年内にはモールのすぐ近くに仙台市水族館が新設され、

ますます渋滞になる事と思われます。

近くに住んでいるお蔭で車を使わずに自転車で

スイスイ(私はヒイヒイ)行けるので助かります。

せっかくなので水族館が出来たら行ってみようと思います(^^)




いつもありがとうございます

それぞれの寝床   2015.5.3(日)

メイちゃんはお母さんの隣りの椅子で。
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ミコちゃんは、ケージの上で(笑)
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今日の仙台は、日中は大変お天気が良かったのですが、

ほんの少し、風は涼しかったです。

夜になるとやっぱり少し肌寒い感じなので

少しだけファンヒーターをつけました。

薄着には気を付けましょう。




いつもありがとうございます

にら玉・なめこ汁・人参シリシリ・菜の花   2015.5.3(日)

今夜は、にら玉
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なめこ汁
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人参しりしり
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なの花のおひたし
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オレンジヨーグルトとべったら漬けを添えて。

野菜いっぱいの食事で満足でした(^^)

手を合わせて「いた~だきます!」と言うところを

「おかえりなさ~い」と言ってしまった(笑)



いつもありがとうございます

花めぐり   2015.5.3(日)

連休いかがお過ごしでしょうか。

お天気が良くて行楽にはもって来い日和ですね。

我が家は、昨日から自宅内整理。

衣類整理・細かい模様替え・家計簿整理。

本日は、母と散歩がてら近所の100均に

細かい整理品を買いに行きました。

帰りに農協に寄って花の観賞をして来ました。

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クレマチス




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マリーゴールド





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バラ






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ラベンダー





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バラ






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花ミズキ






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ミニ盆栽






お茶タイムは、こちらのお店で売っているソフトクリーム。
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濃厚で美味しいんですヨ!

・・・・・・・・・・・・・・・・・

連休前に耳鼻咽喉科に行って診察して頂き薬を処方してもらいました。

3種類貰って来たのですが、

「1つの方が眠くなるかもしれません」との事。

ホント眠くなります・・・

朝と晩に飲むのですが、

夜に飲むとぐっすり眠れてお蔭様で不眠解消。

ですが、朝飲むと一日眠気との戦い・・・

連休のうちは良いけど、

休み明けの仕事に支障が来そう・・・

次回病院に行った時にちょっと先生と相談しよう・・・

お薬のお蔭で鼻の調子は悪くないです。

眠いのだけがちょっと困ります。

仕事中だったら・・・

ヤバイよヤバイよ~!(出川風)







いつもありがとうございます
プロフィール

cn7145

Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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