宇江佐 真理 「酒田さ行ぐさげ」

装具屋・花屋・呉服屋・廻船問屋など
江戸は日本橋で暮らす人々の
ホロリと切なかったり潔かったり…
読後感の良い物語6編でした。
表題作の「酒田さ行ぐさげ」は、
少し他の作品より切ない物語でした。
真面目にコツコツ働き番頭になった栄助と
何をやらせてもグズでのろまな権助。
江戸の店で番頭になった栄助。
江戸から酒田の出店に行かされた権助。
そこからの権助の意地の働きぶりは
酒田店の主人になるまでに出世。
江戸にやって来た権助の余りにもの羽振りの良さに驚き、
ひがむ気持ちを持ってしまう栄助。
そこまでなら権助の成功物語と読めたのですが、
権助の心の中は違っていたのです……
江戸から酒田に戻る船の中から栄助に向かって叫ぶ権助…
「栄助さん、おい、酒田さ行ぐさげ」
「酒田さ行ぐさげな」と叫びます。
権助にとってのただ一人の友達だと思っていた栄助への叫びでした。
権助が本当に言いたかった事とは……
栄助に見せたかった本当の思いとは……
今まで気付かなかった権助の思いを知った栄助……
もう二人が会うことはないだろう…
栄助の悔恨はその後の権助の悲しい人生を胸に刻む事になります……
余韻の悲しみがふつふつと蘇る切ない物語でした。
いつもありがとうございます

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