山本 一力 「あかね空」

直木賞受賞作品。
豆腐職人の家族二代に渡る物語。
それぞれの胸の内がバラバラになったり分かり合えたり…
親が子を思う、子が親を思う、兄と弟、兄と妹…
両親が亡くなってしまい
豆腐屋は順調にやれるのか…
兄と弟と妹三人の仲は戻るのか…
同業の豆腐屋が潰しにかかる…
果たして三人は乗り越えていけるのか…
色んな不思議なご縁のお陰で三人は守られます。
それもこれも必死に守って来た両親のお陰。
前半は両親である永吉とおふみの
出会いと夫婦になってからの豆腐屋稼業の物語。
そこまでは夫婦二人の仲の良さと誠実な働きぶりで
地域又は遠くのお寺へまで商いを広げる事ができ
上々だったのですが、
子供が生まれてからの女房である「おふみ」の
変貌ぶりで夫婦仲まで悪くなります・・・
長男ばかり溺愛し、
次男と末娘に対する無関心が可哀想でしたし、
次男悟郎と末娘おきみの母親への思慕が切ないです・・・
しかし、永吉とおふみが亡くなった中盤からの流れは、
親として子供を、
そして次男の嫁を想う気持ちが深かった事を知ります・・・
長男の栄太郎の素行の悪さで両親から受け継ぐはずの
豆腐屋が危機を迎えますが
そこに登場したのは母親おふみから
「自分が死んだら子供達を見守って欲しい」と託された
幼馴染の鳶の頭「政五郎」でした。
鳶の頭「政五郎」と
長男栄太郎が出入りしていた賭場の頭「傳蔵」の
登場シーンは映像になったら圧巻と思いました。
二代に渡る家族再生物語を読んで、
陰で支えてくれた「ご縁」の有難さを深く感じました。
ただ一つ…
切ないなぁと思ったのは、
賭場の頭である傳蔵の生い立ち・・・
傳蔵も豆腐屋の息子でしたが、
4歳のある日迷い子になった事で
以来両親の元へ戻る事が出来ずに人生を送ります。
傳蔵が実は豆腐屋の息子であった事も知らない・・・
傳蔵の両親の豆腐屋は、永吉とおふみの豆腐屋「京や」を
陰ながら応援し、繁盛させるきっかけを作った事も知らない・・・
素行の悪かった栄太郎のせいで、
「京や」が敵対する同業の豆腐屋に乗っ取られそうになった時も、
自分の出生と「京や」の縁があった事も知らない・・・
ヤクザな世界に身を置きながらも、
「京や」の家族が団結して乗り越えようとする姿に、
乗っ取りを企てた豆腐屋を追い払い助けます。
傳蔵にとって家族は何より欲しいものでした・・・
本来なら傳蔵も同じ豆腐屋稼業で人生を送る事も出来たでしょう。
賭場の頭というヤクザな暮らしを過ごす事はなかったでしょうに・・・
この物語で脇役になっている傳蔵に惹かれました。
傳蔵の事だけは切なすぎて悲しかったです・・・
いつもありがとうございます

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