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畠山 健二  「本所おけら長屋」⑥

おけら長屋6

 「2. ゆめとき」 から

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米屋に奉公している万造の生い立ちのお話。

万造は花見に行ったことが一度もない。

桜を眺めたこともない。

自分が捨て子だったことを思い出すから…

万造は、2歳の時の春の早朝、

ある長屋の井戸の柱に帯ごと結び付けられていました。

書き置きには

「このこ そだててください なまえ ありません」

とあるだけでした。

捨て子はその長屋の住人で面倒を見る慣わしだった為、

万造は五十歳の独り身の源吉が育てることになりました。

こまごました暮らしの面倒は、

長屋のおかみさんたちが見てくれました。

万造が10歳の時、源吉が亡くなってしまいます。

万造は10歳から今の米屋に奉公に出ました。

あれから17年…

万造は、源吉の夢を見ました。

源吉の若い時の夢…

源吉にも女房と娘がいたのです…

悲しい辛い過去の源吉の夢は、

万造にとって現実のことのように感じます。

子を思う親の切なさと、

捨て子として親への思慕を抱えていた万造が、

源吉の夢を通して交差します。

今まで、桜も花見も避けていた万造…

源吉が夢に出て来て、

万造が現在幸せに暮らせている事を教えるのでした。

・・・・・・・・・・・・・・・

おけら長屋住人の浪人島田鉄斎が万造に言います。

「万造さんは、自分を捨てた親を憎んでいる。

だから花見に行きたくないんだろう。

満開の桜を見たら、

親を憎む気持ちが甦ってしまうからな。

だがな、万造さん。その逆も考えられるぞ。

泣く泣く万造さんを捨てた親は、

年に一度、

自分のことをおもいだしてほしかったのではないかな。

だから桜が満開の日に万造さんを捨てた…

源吉さんは、

万造さんに長屋のみんなと花見に行ってほしかったのさ。

だから夢に出てきて、それを教えてくれたんだ。

そんな源吉さんの思いを

汲み取ってやってもいいんじゃないかな」

・・・・・・・・・・・・・・・

万造が言います。

「おれは、おれを捨てた親に、

礼を言わなきゃいけねえな。

だって、親に捨てられたから、

今、こんなに楽しい花見ができるんだからよ。」

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普段のふざけた万造とは違う姿を描いていて、

とても優しい気持ちにさせてくれる読後感でした。



いつもありがとうございます
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畠山 健二  「本所おけら長屋」⑥

畠山 健二 「本所おけら長屋」⑥

おけら長屋6

おけら長屋シリーズの中でも特に⑥巻がお気に入りです。

1.しおあじ

2.ゆめとき

3.とうなす

4.やぶへび

5.だきざる

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「1.しおあじ」は、

今で言うところのネグレクトのお話。

後家のお染がまだ15歳の頃に住んでいた長屋でのお話。

同じ長屋に住む又蔵の両親は、

まだ5歳そこらの又蔵の面倒を見ず、

呑んだくれ、荒んだ暮らしをしていました。

又蔵を風呂にも入れず、

食べ物も与えず放ったらかします。

長屋の住人にも嫌われている両親の為、

たった一人ぽっちで

灯りもない殺伐とした貧しい部屋に置かれる又蔵は、

長屋でもいじめられ、

毛嫌いされ、

いつも膝を抱えながら

部屋の隅で空腹に泣いていました。

その又蔵を助けたのは

当時15歳の後家のお染さんでした。

お染の家も貧しいのですが、

自分のご飯を残しておいて、

又蔵の為にお握りにして与えていました。

風呂に行けない又蔵の為、

長屋の人や両親がいない時に、

井戸水で体を洗い、

シラミだらけの頭を丸坊主に剃ってやり、

洗濯をして面倒を見ていました。

又蔵にとってお染は、

たった一人の味方であり救いの神でした。

そんなある日、

長屋で火事が起こり

又蔵の両親が焼け死に、

お染の両親も亡くなってしまいます。

又蔵もお染も火事のどさくさで、

それっきり会うことは出来なくなりました。

又蔵は遠い親戚に貰われ大工として成長し、

今では嫁も赤ん坊もいる一家の主として、

慎ましくも幸せに暮らしていました。

又蔵は、17年後の現在になり

偶然おけら長屋に住むお染と再会します。

小さい時の、あの辛かった日々の中で、

唯一楽しかったお染との触れ合いに感謝するのでした。

お染の優しさがしみじみ描かれる物語にホロっとします。



いつもありがとうございます

畠山 健二  「本所おけら長屋」 ⑤

畠山 健二  「本所おけら長屋」 ⑤

おけら長屋5

1.ねのこく
2.そめさし
3.はるこい
4.まさゆめ
5.わけあり
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「はるこい」が、辛く悲しい物語でしたが、

それで終わるのではなく、

冬は必ず春となるを期待できるような

津軽黒石藩の江戸詰め尾形清八郎の

藩主高宗への進言を描いています。

・・・・・・・・・・・・・・・

ある日、

三年前から江戸詰めをしている清八郎は、

津軽の実家で下男として働いていた佐助の娘美里と

吉原で再会します。

美里は清八郎が江戸に立った翌年の凶作により、

吉原に身を売って、

今はお葉と名乗っていました。

お葉は言います。

「みんなが辛い思いをして、悲しい思いをして…、

あたしたちが何か悪いことをしたのでしょうか。

どうすれば、こんな目に遭わずにすんだのでしょうか。

津軽の冬は長くて、厳しいですよね。

凍えそうになり、かじかんだ指先を摩りながら、

じっと我慢します。

我慢していれば必ず春が来るから。

あたしにも春は来るのでしょうか。」

・・・・・・・・・・・・・・・・

清八郎の藩主高宗への進言の言葉。

「そのお葉さんは、気の毒な娘さんだと思います。

仮に、そのお葉さんを

今の身の上から救うことができたとしても、

それはその場しのぎでしかありません。

江戸に売られてきたのは、

お葉さんだけではありませんし、

また凶作となれば、

同じような目に遭う者が出ることになるでしょう。

藩主がすべきことは、

一人の娘を救うことではありません。

政によって、

そのような者を出さない藩の体制を整えることです。

頂から全体を見渡し、

長い目で政を行わなければなりません。」

・・・・・・・・・・・・・・・・

まさに暮らしの礎を固めている

底辺の人々への救いの言葉に感動しました。



いつもありがとうございます

畠山 健二  「本所おけら長屋」 ④

畠山 健二  「本所おけら長屋」 ④

おけら長屋4

1.おいてけ
2.あかいと
3.すりきず
4.よいよい
5.あやかり
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何と言っても「よいよい」が笑い過ぎてお腹が痛くなりました(笑)

容姿端麗、文武両道に秀でている24歳の浪人錦之助。

勘定奉行を務める名家の嫡男にもかかわらず

勘当されてしまい浪人となってしまいます。

勘当の原因は

お酒にだらしない男であったから…

酒乱というような乱暴な酒癖ではなくて、

一口酒が入ると気が緩み、

しまりのない姿になってしまいます。

この錦之助と

思い込みの激しい娘お雅が、

おけら長屋に騒動を持ち込みます。

ひょんなことから

おけら長屋の万造と松吉と知り合った錦之助は、

万松から勧められるままにお酒を飲んでしまいます…

只者ではない酒癖に

流石の万松も逃げるほど…(笑)

ここからの酔っ払った錦之助の行動が笑えて笑えて、

涙流すほどに笑えます(笑)

どんな物語だったかどうでも良い位に、

錦之助の酔っ払った姿でオチになる程でした(^^)

キーワードは…

「阿波でーす!」(笑)

思い出すとまたクスクスが止まりません(笑)



いつもありがとうございます

畠山 健二  「本所おけら長屋」 ③

畠山 健二  「本所おけら長屋」 ③

おけら長屋3

1.うたかた
2.こばなれ
3.あいえん
4.ふろしき
5.てておや
・・・・・・・・・・・・・・

5.「てておや」で

療養所の女医者のお満が登場します。

万造とお満は何かと言うと口喧嘩をするのですが、

絶妙の掛け合いがとてもお似合いの二人として描いています。

長屋の大家徳兵衛には

若い頃娘がいたと言うお話から、

娘のお孝が徳兵衛に会いに来る事で騒動が起こります。

大家徳兵衛とお孝、

そしてお満と不仲の父親宗右衛門の為に、

おけら長屋の住人達が一肌脱ぎます。

特に万造は、

お満と喧嘩しながらも

父親である宗右衛門の娘への思いを語るシーンは、

江戸っ子らしい、きっぷの良い啖呵となっています。

またお満も何かにつけて万造に言い返していましたが、

父親からの思いを教えられ、

親子が雪解け出来た事を感謝するのでした。

これをきっかけに度々お満女医さんが登場するのですが、

万造との仲が進展するようなしないような

焦ったさで進んで行き、

二人の成り行きも楽しみな物語です(^^)



いつもありがとうございます

畠山 健二  「本所おけら長屋」 ②

畠山 健二  「本所おけら長屋」 ②

おけら長屋2

1.だいやく
2.すていし
3.まよいご
4.こくいん
5.あいおい
6.つじぎり
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「まよいご」が泣けました。

ある日、

おけら長屋の住人「万造」が仕事帰りの途中で

「勘吉」と言う5〜6歳の迷子を保護します。

自身番にも届けて勘吉の親探しをします。

やっと見つかった両親は

勘吉が迷子になったと言うのに

まるで他人のような冷たい扱いをします…

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勘吉は実は養子でした。

なかなか子供ができない両親が勘吉を貰ったのですが、

4年後子供が生まれ、

それからは勘吉を蔑ろにし、

辛く寂しい日々を送っていました。

万造はあまりに理不尽な勘吉への態度に

長屋に連れて帰り、

住人達と勘吉の世話をすることにしました。

それからの勘吉の生まれ変わったような

ハツラツさが描かれています。

しかし別れの時は来ました…

勘吉の本当の両親が見つかり

万造達とお別れをする事に…

勘吉は元々武士の生まれでした…

万造が勘吉へ本当の両親が見つかった事、

これからの事を

涙をこぼしながら伝えるシーンはもらい泣き…

別れの朝も万造は勘吉を見送らず

仕事へ出かけてしまいます…

勘吉が長屋から両国橋を渡って行く姿を

柳の陰から見送る万造の切なさが沁みる物語でした。



いつもありがとうございます

畠山 健二 「本所おけら長屋」①

またまた再読(^^)

2019.8月に最新刊の13巻目が出るので

それまでに再度最初から読んでみようと思いまして

読み始めているのですが、

忘れている物語もあって改めて面白く読書中です。

・・・・・・・・・・・・・・・

畠山 健二 「本所おけら長屋」①
おけら長屋1

1.だいくま
2.かんおけ
3.もののふ
4.くものす
5.おかぼれ
6.はこいり
7.ふんどし
・・・・・・・・・・・・・・・

おけら長屋の住人による笑いと涙の人情物語です。

落語さながらの流れがとにかく面白い!

締めのオチがあり読後爽やかになります。

一話目の「だいくま」を読んでこの本の面白さを感じ、

現在12巻まで出ていますが、益々面白くなっています。

長屋の住人達のキャラがとても良いです。

万造、松吉の「万松」。

浪人の鉄斎。

後家のお染。

八五郎とお里夫婦。

大家の徳兵衛。

頭が緩い金太。

真面目な久蔵。などなど…

一人一人にも人には言えない辛苦を持っています。

貧乏で日々苦しいながらも住人同士が助け合い

支えている家族以上の絆が、

時に騒動を起こしながらも、

人情解決して行きます。

会話を聞いているだけで笑っちゃいます(^^)

お節介の中にも心の闇には立ち入らない…、

一話目の「だいくま」では、

最近長屋に引っ越してきた「だいくま家族」が、

なんだかんだと言っては

支払いや家賃を踏み倒すので、

困った長屋の住人達が懲らしめるのですが、

ある日、懲らしめられた「だいくま家族」3人が

身投げをして一家心中してしまいます…

5歳になる男の子まで死んでしまった事で、

長屋の住人達は、大変心を痛めます。

ところが!

このだいくま家族は上手でした!

心中と見せかけて

騙してトンズラしていました!

全てだいくま達の企みで、

後に騙されたことを知った住人達でしたが、

万松他の住人達は、

小さな男の子が生きていてくれたと、

ただそれだけで泣きます。

だいくまへの恨みも憎しみも持たず、

子供が死なずにいてくれた事で

全て許す住人達でした…

自分たちへの仕打ちは、

自分たちへの借金となったとしても、

命を無くさなかった事で、

喜び合う住人達の心根が笑えて

ホロっとする物語でした。



いつもありがとうございます
プロフィール

cn7145

Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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