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水上 勉  「父と子」

水上勉父と子上




水上勉父と子下



高校で担任教師を小刀で刺してしまった息子と

児童本販売商売が

うまくいかない父親との二人旅を通して、

学校とは、社会とは何か、

そして現代の人間の生き方を問う物語。

物語は東北訛りで語られています。

父親竹一の育った環境は

「オンボー」と言われた

世間から格下に見られる仕事をしていました。

竹一の両親は、

今で言う所の「焼き場」いわゆる「火葬場」で

遺体を焼く仕事をしていた事で、

差別に遭います。

時代は約半世紀前の田舎の価値観。

人の嫌がる仕事を

貧しいながらも必死に全うした両親の元を

弟に任せて逃げるように東京に出て来た竹一。

結婚生活もうまくいかない中、

息子が担任の先生を刺してしまったと

連絡が入ります。

平謝りに謝る父親竹一ですが、

息子高志の言い分を聞くと、

理不尽な担任と校長の教育方針に、

無理に学校へ行かなくて良いと、

その日から息子と車での旅に出ます。

心を閉ざす息子高志と、

父親竹一の生まれ故郷で過ごす事で、

お互いの殻を破り男同士として語り合います。

父親竹一の弟妹達それぞれの人生を聞く事、

故郷で暮らす人々との触れ合いで教えられる事で、

息子高志は自分が犯した事件に対して向き合い

逃げる事なく将来の思いを決めます。

また父親竹一への苦労が理解できた事で

男として父親として尊敬するのでした。

作中、父親竹一の姉の百合が言います。

「親ってものは、

親の建前だけで苦しむ馬鹿なもんだ。

本音を言えばさっぱりするものを、

子供の年ごろは、お父やお母に反抗してたくせに、

自分のことは棚にあげて、

都合の良い建前で、

子を引き寄せようとしたって、

子はごまかしは見抜くだべさ…」

今の教育は、

聞き分けの良い子を育てようとしている。

上に立つものが役に立たない者だったら

どうするのか。

そんな役立たず者の為に

言いなりになる教育は間違いである。

自分をしっかり見つめ、

自分のやりたい本当の姿で

自立すべきだと語っています。




いつもありがとうございます
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宮本 輝 「いのちの姿」

いのちの姿

宮本さんの自伝的エッセイ集5篇。

1947年生まれですから今年73歳。

とても精力的とお見受けしている宮本さんですが、

40年位パニック障害の持病を抱えながら

暮らしているそうです。

幼少の貧しかった時代。

10歳の時に叔母のアパートに一年間預けられ、

その同じアパートの奇妙な住人達との日常。

阪神淡路大震災の年に

40日間をかけて旅したシルクロード。

両親、義叔父、腹違いの兄、会社の社長…

出会った人それぞれの「いのちの姿」を

物悲しくも尊く静かに語ります。

宮本さんは持病のパニック障害を抱えた事で

「得た宝もの」があると言います。

「他者の痛みが少しはわかるようになったということだけでも

充分ではないだろうか。」

「それからもう一つ、

心の力というもののすごさをわが身で知ったこと」

「さらに、悪いことが起こったり、

うまくいかない時期がつづいても、

それは、思いもかけない良いことが

突如として訪れるために必要な前段階だと

信じられるようになったのだ」

と語っています。

宮本さんは「ひらがな」を多用する事で、

噛み砕いて読み手に分らせてくれていると思いました。




いつもありがとうございます

種田 山頭火 「山頭火」

放浪の俳人。

さすらいの俳人。

自由律句の俳人。

山頭火7


山頭火8
約4㎝程のぶ厚い句集です。

片手で持てない程どっしりと重いです。

真っ白なページの左側は英語訳。

右側が句が書かれています。

分け入っても

次のページをめくると・・・

山頭火1
その句のイメージ写真を載せています。

・・・・・・・・・・・・・・

山頭火4



山頭火3


・・・・・・・・・・・・・・・


山頭火6



山頭火5



・・・・・・・・・・・・・・・

解説は嵐山光三郎さん。

とても分かりやすく心を込めた解説です。

山頭火11歳の時、

母親が釣瓶井戸に身投げして自殺します。

その衝撃の記憶が

山頭火の生涯の傷となったそうです。

山頭火は結婚もして子供も出来ましたが

家族を捨てて放浪の旅に出ます。

晩年山頭火の弟も自殺をし、

先をこされます。

酒に溺れ、神経衰弱だった山頭火。

知識人であった山頭火は、

早稲田大学に進学しますが、

持病の神経衰弱の為中退しています。

山頭火の最後は生活無能力者となり

出家して禅門に入りました。時に42歳。

53歳の時に山頭火自身も自殺をはかりますが、

死にきれず生きながらえます。

嵐山光三郎さんは、

山頭火の句を

「平明に見えつつ、その底に

知識人の孤独がひそんでいる」

と表現しています。

山頭火自身、日記に、

「無駄に無駄を重ねたような一生だった、

それに酒をたえず注いで、

そこから句が生まれたような一生だった」

と記しています。

脳溢血のため一草庵で生涯を閉じた山頭火。

享年58。

アメリカで親しまれている俳人は、

芭蕉の次に山頭火だそうです。




いつもありがとうございます


百田 尚樹 「錨を上げよ」

錨を上げよ

百田さん29歳の時の作品。

4部作の一巻目。

百田さんの自伝的作品だそうです。

昭和30年代の幼児期から

高校卒業までを描いています。

作田又三(百田尚樹)の幼少期は

悪ガキ、その後はいわゆる不良。

喧嘩が強くて学校でも問題児。

高校では5度の停学により一年落第

バイクで一人旅をして見知らぬ村では、

村民といざこざを起こす。

恋も描いていますが、

直上型の又三が、まだまだ幼い。

高校卒業してからの又三が

二巻より始まりますが、

私は一巻読了でお腹いっぱい…

百田さんのあの強気な発言が

納得出来ました。

低い学歴から大学まで進学し、

放送作家から

現在の人気作家にまでなるんですもんねぇ。

なかなかの悪ガキだったようですが、

物の考え方や信念は、

持って生まれた豊富な感受性と

頭の良さから来ていたんですねぇ。

長い長い物語ですが、

ここで挫折でありました…



いつもありがとうございます

浜田 廣介  「泣いた赤おに」

泣いたあかおに

いもとようこさんの挿絵が好きで選びました。

物語は悲しい結末になっています。

村人から恐れられ嫌われている鬼。

村人と仲良くなりたい赤鬼。

赤鬼のために青鬼が犠牲になります。

赤鬼は青鬼の犠牲のお陰で

村人と仲良くなり楽しい暮らしが

出来るようになります。

自分を助けてくれた青鬼は、

赤鬼の前から姿を消して

二度と会うことはありませんでした。

青鬼を失った赤鬼は悲しみ泣きます…

誰かの幸せの陰には

誰かの犠牲…

「お陰」があるという事でしょうかね。

浜田廣介さんのお父さんの生い立ちにも

かぶせている物語のようです。



いつもありがとうございます

浜田 廣介  「むくどりのゆめ」

むくどりのゆめ1

絵 : いもとようこ

母鳥が死んでしまったムクドリ父子の物語。

死んでしまったとは分からずにいる子供鳥の

母恋しさが切なく描かれています。

美しい自然描写と可愛らしい鳥の絵が

物語を鮮明に心に刻ませてくれます。

解説に、

「大人は感受性が鈍った上に諦めの術を知っているが、

子供は他の子供が備わっているいるものが、

自分に欠けている時、

それをそのまま不幸として

痛切に受け止める。」と書いてあります。

母恋しさに待ち続ける子供の思いが

夢の中で実現します。

一つの葉が風に揺れるかすれた音を

母鳥の声に聞こえる描写と

その一枚の葉を大切にする子供鳥が

ほろり切なくなります…

むくどりのゆめ2



いつもありがとうございます

松谷 みよ子 「かさじぞう」

かさじぞう1

絵 :黒井健

六人の子供を幼くして亡くしてしまった年寄り夫婦。

貧しい暮らしの中、

いかに昔は子供を育てることが困難であったか…

亡くした子供をお地蔵さんに見立て

親を思う子と子を思う親の姿を描いています。

黒井健さんの淡い色使いのふんわりとした絵が

表情まで優しく伝わります。


かさじぞう2




いつもありがとうございます

新美 南吉 「手ぶくろ買いに」

手ぶくろを買いに1

とても寒〜い北の国の母狐と子狐が

人間の住む町へ手ぶくろを買いに行きます。

母狐は子狐だけを買いに行かせます。

片方の手を人間の手に化けさせます。

決して間違わないように言いつけますが、

子狐はお店で自分の手を差し出してしまいます…

人間は狐に手ぶくろを売るのでしょうか…

解説に…

「新美南吉の生涯をかけて追求するテーマを

描いています。」との事。

テーマとは…

「生存所属を異にするものの魂の

流通共鳴」だそうです…

分かるような分からないような難しい言葉…

絵本で優しく新美南吉の思いを伝えています。

黒井健さんの絵が大変美しいです。


手ぶくろを買いに2




いつもありがとうございます

新美 南吉  「ごんぎつね」

ごんぎつね1

黒井健さんの作品を見たいと思うと、

この「ごんぎつね」を選びます。

言わずと知れた「ごんぎつね」。

新美南吉17歳の時の作品。

贖罪(しょくざい)の過程を

悲しい結末で描いています。

ごんも兵十も一人ぽっち。

理解し合えないままの悲しい結末を

「ごん、お前だったのか。

いつも栗をくれたのは…」

「ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、

うなずきました。」

と描く事で読み手に救いを与えています。

ごんと兵十の思いを悲しく描いた物語でした。

ごんぎつね2



いつもありがとうございます

林 明子 「こんとあき」 

こんとあき1

キツネのぬいぐるみの「こん」

あきが生まれた時からおもり役として

おばあちゃんの所からやって来た「こん」

あきが成長する事で「こん」は古びて来ました。

砂丘の町に住むおばあちゃんに

「こん」を直してもらおうと、

あきとこんは電車で向かう旅に出ます。

電車でも砂丘についてからも

大変な目に合う二人。

無事おばあちゃんの家に着き

「こん」を直してもらうまでのお話です。

かけがえのない存在のこんの為に

一生懸命なあきがとても可愛いです。

電車ではぐれて泣く場面。

駅弁を食べる場面。

砂丘でこんを探す場面。

おばあちゃんと三人でお風呂に入る場面。

おばあちゃんに「こん」を縫い直してもらう場面。

それぞれが愛情いっぱいの優しい物語。

こんとあき2




いつもありがとうございます
プロフィール

cn7145

Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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