おんな職人時代小説アンソロジー 「てしごと」

6人の女性作家が作った
江戸時代に生きたおんな職人の物語です。
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表紙の絵が古風で色合いも渋く素敵!
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西條奈加「姉妹茶屋」
あさのあつこ「おもみいたします」
2編が特に面白かったです。
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西條奈加「姉妹茶屋」は
姉妹が秩父の山あいで営む「茶屋」なのですが、
くるみ餅とそばが絶品!
姉が祖父から手ほどきを受けて幼い時から修行した技。
姉と夫婦約束をした江吉が盗賊の濡れ衣を着せられます。
江戸でお金を稼いで戻ってくるまでの辛抱と
姉妹、特に姉は頑張るのですが、
思わぬ江吉の盗賊疑惑に二人の行く末はいかに・・・
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あさのあつこ「おもみいたします」は、
全盲のもみ師の少女が大店の主への
「凝り」の原因となっていた
不安・後悔・懺悔・疑念・辛抱・・・
それぞれを全て取り除きます。
身体の隅々の一つ一つの凝りの解明。
主人は過去と将来の店への執着により
一人苦しみ辛抱の連続。
自分を縛り付ける事で大店としての存続を維持。
そんな主へもみ師の少女が言います。
「もうがまんしなくていいです。
痛いなら痛いって叫んでください。
辛かったら辛いと吐き出して泣いていいんですよ」
主は、大人の男として初めて大泣きします・・・
陰ながら妻が主人の為にもみ師を呼んだ事・・・
主人は、改めて妻ともみ師に感謝します・・・・
そして、今まで信用していた
ある者の不正を見抜く事が出来たのでした・・・
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江戸時代におんなが男と同じ立場で仕事をこなす事は
大変な苦労だった時代に
男をうならせる程のプロの職人技への尊敬の思いで
女性作家6人が描いた本作は心に響く作品でした。
いつもありがとうございます

加藤 元 「四百三十円の神様」
ギョーザとか煮物とか・・・ 2020.5.24(日)
天袋のメイ 2020.5.23(土)
福澤 徹三 「任飯(おとこめし)」
ポトフと波佐見焼のマグカップ 2020.5.21(木)
森下 典子 「いとしいたべもの」

面白い!
「プッ!」と吹き出し笑い!
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昭和の懐かしくも愛おしいたべものエッセイ。
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オムライス・くさや・カレーライス・さっぽろ一番みそラーメン・
羊羹・どん兵衛・おこわ・たい焼き他・・・
・
それぞれの食べ物に対する表現の大げさな事!(笑)
だけど言い得て妙!
そこが笑える表現になっています(^^)
・
「くさや」にはアントニオバンデラスや
ロミオとジュリエットが登場して、
何の関係があるのか?!(笑)
ところが「なるほど~!」となるんですねぇ。
・
「カレーライス」に関しては、
まだ、カレーの具が、
その家の経済状態を反映した時代だったので、
それぞれの家庭で具がいろいろ・・・
いろんな具がありましたなぁ~(笑)
・
こればかりは昭和時代の人しか感じる事が出来ない
初期の感動物語となっています(^^)
・
沢山のいとしいたべものの中で
最後に語られた
「この世で一番うまいもの」とは・・・
・
森下さんのお母様の愛情溢れる
誰でも食べた事のある
身体の芯まで生き返らせてくれるたべものでした(^^)
さてそれは何でしょう(^^)
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ページごとに描かれているおいしいたべものの絵は
全て森下さんが描いています(^^)
いつもありがとうございます

カスタメイズ 2020.5.14(木)
行成 薫 「本日のメニューは。」

料理を通して人を幸せにする5つのお話。
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行成薫さんは、仙台市の作家さん。
東北学院大学教養学科卒だそうです。
現在41歳。
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物語の一つ一つが感動します。
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「四分間出前大作戦」
小さな兄弟が入院中のお父さんの為に
ラーメン屋さんから4分間で運ぶお話。
到底出来ない速さを
周りの大人たちの連携で達成出来ます。
お父さんの喜ぶ姿と
その後の切なさがじんわりします…
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「おむすびラプソディ」
インスタ映えばかりを気にして
不味い料理しか作らない母親との葛藤を描いています。
たかがおむすび、されどおむすび。
母娘の再生の優しい物語です。
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「闘え!マンプク食堂」
若くして病気で亡くなった息子が
死ぬ間際に言った言葉「腹、減った…」。
元気だった頃のいつものセリフ…
以来父親は自分の店で
満腹になるまで食べさせるメニューを作り続けます。
そんなある日、
来店した大食いの冴えない青年との交流から
一世一代のメニューを考え出します。
息子に味わわせたかったマンプクを
冴えない青年に賭ける心意気がホロリ笑えるお話。
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「或る洋食屋の一日」
50年も続けた小さな洋食店の
閉店に伴う夫婦の在り方と、
デミグラスソースを継ぎ足し続けた店主の料理に対する
「人を幸せにする」お話は、これで終わり?
と少し残念に思って読んだら、
次の最後の物語「ロコモーション」に繋がって、
とっても素敵な行方となっていました(^^)
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お料理を食べること、
作ることの幸せを
じんわり、ほんわか感じる
とても癒される作品でした(^^)
いつもありがとうございます

河合 隼雄 「泣き虫ハァちゃん」

河合さんの幼少期を描いています。
感受性豊かで泣き虫ですが、
その一つ一つの泣く理由が
とても可愛らしくじ~んとします。
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二才で亡くなった弟。
あまりの悲しさに
毎日お仏壇の前で泣くお母さん。
その時にずっとそばで
一緒に泣いていたハァちゃん。
以来ハァちゃんは、
感動したり可哀想だったり
悔しかったりすると泣いてしまいます。
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お母さんは
「男の子だって泣きたい時には泣いたら良い。」
と言います。
厳格でも包容力のあるお父さんと
優しく見守るお母さん。
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6人兄弟で
明るくたくましく育つハァちゃんの物語。
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ところどころに描かれている挿絵が
とても素敵です。


童話のような語り口なので
小学低学年から読めます。
優しい気持ちになるお話でした。
いつもありがとうございます
