FC2ブログ

乙川 優三郎 「椿山」

椿山 (文春文庫)椿山 (文春文庫)
(2001/11)
乙川 優三郎

商品詳細を見る



1.ゆすらうめ 
  
  その眼で成れの果てまで見届ける気にはなれなかった。
  おたかにしろ、できることなら見られたくはないだろう。
  案外あれが精一杯の虚勢ではなかったろうか。
  だがそれももうたくさんだと思った。
  いればいるだけ堕ちてゆくしかない女たちを見るのは
  心底たくさんだった。
  (こんなところにいたら・・・)
  自分も堕ちるだけだと思いながら、
  孝助はふと、散り尽くしたゆすらうめを思い浮かべた。
  根づく場所さえ違えば見違えるほど生き生きとするだろうに、
  ここではひとりで散ってゆくしかない。
  そうと知っていながら、おたかも戻ってくるしかなかったのだろう。
  


2.白い月
 
 (もう一度だけ)
  言い暮らしてきたはずの言葉が胸の中で
  きらきらと輝きはじめたのを感じながら、
  おとよはふと、案外とんでもない賭けをしているのは
  自分かも知れないと思った。


3.花の顔(かんばせ)

 白髪に凍り付いた雪を丁寧に除いてやりながら、
 さとはたきの最期の一念を見たような気がしていた。
 幻のように仄かに光る雪明りの向こうに、
 たきは自分の辿ってきた暗い道を見ていたのかも知れない。
 惚けなければ素直に礼も言えぬほど、
 家に縛られ、辛い思いをしてきたのだろう。
 だとしたら、せめて辛かった分だけ、
 老いて惚けて何が悪いだろうか・・・。
 (おかあさまは・・・。)
 きっと、わたくしが同じ道を辿らぬようにと念じて、
 救ってくださったに違いない。
 そう思ったとき、さとはようやく姑と心が通じたような気がして、
 深い溜息をついた。


4.椿山

 小藩の若者たちが集う私塾・観月舎。
下級武士の子・才次郎はそこで、道理すら曲げてしまう身分というものの
不条理を知る。
「たとえ汚れた道でも踏み出さなければ・・・」
苦難の末に権力を手中に収めたその時、
才次郎の胸に去来した想いとは・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・


いつもありがとうございます。
関連記事
スポンサーサイト



comment

Secret

プロフィール

cn7145

Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

カレンダー
07 | 2020/08 | 09
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
日記
3606位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
その他
1462位
アクセスランキングを見る>>
最新コメント