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向田 邦子 「思い出トランプ」

思い出トランプ (新潮文庫)思い出トランプ (新潮文庫)
(1983/05)
向田 邦子

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浮気の相手であった部下の結婚式に、妻と出席する男。

おきゃんで、かわうそのような残忍さを持つ人妻。

毒牙を心に抱くエリートサラリーマン。

やむを得ない事故で、子どもの指を切ってしまった母親。

日常生活の中で、誰もがひとつやふたつは持っている弱さや、

狡さ、後めたさを、人間の愛しさとして捉えた13編、

直木賞受賞作「花の名前」「犬小屋」「かわうそ」を収録。


・・・・・・・・・・・・・・・・

「犬小屋」が面白かったです。


かっちゃんは、三日にあげず顔を出すようになった。
お見舞いと称して、白身の魚を持ってきては、
景虎に食べさせていた。
恐縮する達子の母に、残りものだから、
好きでやっているのだから、と言い訳を言い、
「大丈夫。わたはちゃんと抜いてありますよ」
食べさせる前に必ず見せに来た。
現金なもので、犬はカっちゃんになつき、
アラを入れる石油カンを持った彼の姿が見えると、
大人の腕ほどもある太い尻尾を、
犬小屋の羽目板に打ち付ける音が、
茶の間にいても聞こえるほどだった。


話題がと切れて、じゃあそろそろ、
と言われるのがこわい、といった風に、
引っ切りなしにしゃべり、煙草に火をつけた。
煙草が煙を立てている間は、
お開きにしましょうと言われない事を知って、
そうしているように思えた。

こういうとき、カッちゃんの目は笑っている癖に
泣きべそをかいているようにみえた。
泣きべその目で、カッちゃんは犬地図のはなしをした。
誰かの受け売りらしいのだが、
犬には犬地図というのがあるという。
これは人間の考える地図とは全く別のもので、
どことどこの電柱と垣根にはおれの匂いをつけてある。
どこにいじめっ子がいて、
どこにご馳走をくれるうちがあり、
どこに憧れの牝がいるか、
ちゃんと頭の中に描いてあるのだ、としゃべった。

「犬地図ねぇ」と呟いた母に、
「ありゃ自分のことだな」
父は、よく判っているようであった・・・。




いつもありがとうございます。
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生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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