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高田 郁 「今朝の春 みをつくし料理帖 ④」  


今朝の春―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-4 時代小説文庫)今朝の春―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-4 時代小説文庫)
(2010/09/15)
高田 郁

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月に三度の『三方よしの日』、

つる家では澪と助っ人の又次が作る料理が評判を呼び、

繁盛していた。

そんなある日、伊勢屋の美緒に大奥奉公の話が持ち上がり、

澪は包丁使いの指南役を任されて―――(第一話『花嫁御寮』)。

戯作者清右衛門が吉原のあさひ太夫を題材に戯作を書くことになった。

少しずつ明らかになってゆくあさひ太夫こと野江の過去とは

―――(第二話『友待つ雪』)。

おりょうの旦那伊左三に浮気の疑惑が!? 

つる家の面々を巻き込んだ事の真相とは―――(第三話『寒紅』)。

登龍楼との料理の競い合いを行うこととなったつる家。

澪が生み出す渾身の料理は―――(第四話『今朝の春』)。

・・・・・・・・・・・・・・・・


どんな時にも乱れない包丁捌きと味付けで、

美味しい料理を提供し続ける。

天賦(てんぷ)の才はなくとも、

そうした努力を続ける料理人こそが、

真の料理人

・・・・・・・・・・・・・・・


あのかたは、私にとっては、

御膳奉行の小野寺さまなどではなく

浪士の小松原さま。

これからも、ひとりの娘としてではなく、

つる家の料理人として、

時折りあのかたがお客として

ここに来られるのを待っていられたら、

それで充分です。

口にする料理であのかたを健やかに保ち、

お守り出来るなら、それで・・・。

脳裡に浮かん小松原の母の面影に、

詫びるように澪にそっと呟いていた。

・・・・・・・・・・・・・・・


あの水害さえなければ、澪は塗師(ぬし)の娘として

慎ましく育ち、おそらく今頃は職人の女房となり、

子の母となっていただろう。

また野江は淡路屋の末娘として何不自由なく暮らし、

同じく大店の若旦那のもとへ嫁いでご寮さんに

おさまるに違いなかった。

それが、あの天災を境に、

片や天涯孤独の身となり江戸で女料理人として生き、

片や、吉原へ売られて遊女として生きることとなってしまったのだ。

詮無いことだが、水害さえなければ、

と思わずにはいられない。

・・・・・・・・・・・・・・・・


「あんた、よう覚えときなはれ。

今度あさひ太夫に関わったら地獄を見ますで」

焦点の合わぬ濁った眼を向ける女衒(ぜげん)に、

澪はゆっくりとこう言い添えた。

「次は助けへん。

それどころか、

私のこの手ぇでお前はんを三枚に下ろしたるさかいに」

・・・・・・・・・・・・・・


「白雪の色わきがたき梅が枝に友待つ雪ぞ消え残りたる・・・

と、古い歌に詠まれています。

あとから降る雪を待って、

まだ消え残っている雪のことを、

そう呼ぶのですよ」

昔のひとは美しい心を持っていますね、

と言い残して源斉は帰って行った。

・・・・・・・・・・・・・・



いつもありがとうございます。
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Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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