FC2ブログ

高田 郁 「残月 みをつくし料理帖 ⑧」   2014.1.16(木)


残月 みおつくし料理帖 (ハルキ文庫)残月 みおつくし料理帖 (ハルキ文庫)
(2013/06/15)
高田 郁

商品詳細を見る



吉原の大火、「つる家」の助っ人料理人・又次の死。

辛く悲しかった時は過ぎ、澪と「つる家」の面々は新たな日々を迎えていた。

そんなある日、

吉原の大火の折、又次に命を助けられた摂津屋が「つる家」を訪れた。

あさひ太夫と澪の関係、

そして又次が今際の際に遺した言葉の真意を知りたいという。

澪の幼馴染み、あさひ太夫こと野江のその後とは―――(第一話「残月」)。

その他、若旦那・佐平衛との再会は叶うのか?

料理屋「登龍楼」に呼び出された澪の新たなる試練とは・・・・・。

雲外蒼天を胸に、料理に生きる澪と「つる家」の新たなる決意。

希望溢れるシリーズ第八弾。


・・・・・・・・・・・・・・・・

「塩のあてかたにも、紙塩、立て塩、振り塩、撒き塩、

と色々あるの。

料理の味を決めるにも塩はとても大切で、

例えば『塩梅(あんばい)』と言う言葉は、

塩と梅酢が出会うと双方の味が丸くなり、

味わいが増すことから来ているのよ」

・・・・・・・・・・・・・・・


「この齢になってわかることだが、

残された者が逝っちまった者のために出来ることは、

そう多くは無ぇのさ。

中でも大事なのは、心配をかけないってことだ」

店主の言葉に、ふきは涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げる。

種市は湯飲みの中身をぐっと干して、少女に向き直った。

「そのひとを大事に胸に留めて、毎日を丁寧に生きようじゃねぇか。

身の回りの小さな幸せを積み上げて、なるたけ笑って暮らそうぜ。」


・・・・・・・・・・・・・・・

赤や黄、橙や茶、飴色など、樹木が彩りの衣を纏う(まとう)季節となった。

お裾分け(おすそわけ)か、色付いた葉がひとびとの頭上にはらはらと降り、

一陣の風に絡め取られる。

神保小路の日蔭に吹き寄せられた落ち葉が、今朝は白っぽく見えた。

じっと目を凝らせば、薄く霜が降りて凍えている。

道理で寒いはずだわ、と澪は小さく身震いして、

無防備な両の手に息を吹きかける。

吐いた息は一瞬、白く凍り、僅かに掌を湿らせてすぐに消えた。

・・・・・・・・・・・・・・

「子の幸せと親自身の幸せを混同しないことです。

いっぱしに成長したなら、子には自力で幸せになってもらいましょうよ。

そして、親自身も幸せになることです。

ひとの幸せってのは、銭のあるなし、身分のあるなしは関係ないんです。

生きていて良かった、と自分で思えることが、何より大事なんですよ」

・・・・・・・・・・・・・・・

「秋に蒔かれて芽吹いた麦は、冬の間、こうして雪の下で春を待つのです。

陽射しの恩恵をじかに受けるわけでもなく、

誰に顧みられることもない。

雪の重みに耐えて極寒を行き抜き、やがて必ず春を迎えるのです。

その姿に私は幾度、励まされたか知れない」

・・・・・・・・・・・・・・・

柳吾は外の陽射しに見入ったあと、改めて、強い志の宿る瞳を芳に向けた。

「亡くなった嘉兵衛さんへの想いもあるでしょう。

気持に区切りをつけることは難しいかも知れない。

けれど、私はそうした想いも全て受け止めて、

あなたというひとと生きていきたいのです」

ゆっくりと、柳語は畳に両手をついた。

「芳さん、どうか、私のもとにいらしてください。

あなたが受けてくださるまで、この命のある限り、待たせて頂きます」

耐え切れず、芳は顔を覆って泣いている。

その姿が昨夜の芳の後ろ姿と重なった。

これまで幾度も幾度も、芳の涙を見てきたけれども、

今の涙はこれまでのものとは全く違う。

澪にだけはわかることだった。

泣き続ける芳に腕を差し伸べて、澪はその背中を撫でる。

ご寮さん、どうぞ幸せになっておくれやす。

・・・・・・・・・・・・・・・

澪・芳・ふき・種市・・・

それぞれの方向性が具体的になって来ます。

澪のさらなる料理人としての旅立ちの決意。

芳の幸せ。

ふきの料理人としての成長。

そんな周りの者を寂しくも覚悟の上で見守り背中を押す種市。

まだまだ試練はやって来るも、

澪の料理人としての迷いはなく、

先を観る目と常なる精進が潔いです。


いつもありがとうございます。
関連記事
スポンサーサイト



comment

Secret

プロフィール

cn7145

Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

カレンダー
07 | 2020/08 | 09
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
日記
4245位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
その他
1700位
アクセスランキングを見る>>
最新コメント