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宇江佐 真理 「玄冶店(げんやだな)の女」


玄冶店の女 (幻冬舎文庫)玄冶店の女 (幻冬舎文庫)
(2007/08)
宇江佐 真理

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日本橋の玄冶店と呼ばれる路地で小間物屋を営むお玉は、元花魁。

身請けされた旦那と縁が切れた矢先、

芸妓屋の顔見知りの娘が通う手習い所の師範・青木陽蔵に出会う。

その清廉な人柄に、お玉は強く惹かれるが、

それは世間が許さぬ分を越えた恋だった…。

運命に翻弄されながらも健気に生きる女たちの

切なくて心温まる八つの物語。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「やい、手前ェ等、何しやがる。
こっちは、ちいと熱いとは思ったが、
後から来るお人のことを考えて、
じっと堪えて入ってるというのに、
手前ェ等は遠慮もなく水を埋めて、
ここは手前ェ等の貸切りかえ?
口を開けば雇い主の悪口三昧、
あまり調子に乗り過ぎて、
おう、そこの地黒のあまっちょ、
後ろに志の田の娘がいることも目に入らねェらしい。
手前ェの一言一句、あまさず今夜の内に
お内儀の耳に入るだろうよ。
ふん、一年こっきりの風まかせの奉公だ?
手前ェは明日の朝、お払い箱よ」

お喜代はいっきにまくし立てた。
二人の女中は青くなって言葉もなく、
その場に突っ立っていた。

「出ました!」
小梅はお玉の耳許に囁いた。
深川芸者だったお喜代は理不尽な場面に出くわすと、
相手が誰であろうと噛みついてゆく。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今まで顔を合わせていた人間がいなくなるのは寂しい。
いよいよ深まる秋ならなおさら。
その中で堀際の小菊だけは風に吹かれてながら、
いつまでも咲いていた。
女隠居の家の前を通る度、
お玉はいやでもその小菊が目についた。
葉も茎もすっかり茶色に枯れているのに、
錆朱の花びらだけは頑固に形を保っていた。
そんな花は嫌いだとお玉は思う。
いっそ、真っ先に花びらを散らしたらいいものを。
辛抱、勘忍。
女の持つ美徳、いや悪徳をお玉は菊の花に感じた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「今まで当たり前のように、お花やお喜代や
青木先生があたしの傍にいたじゃないか。
それがあっと言う間に皆いなくなる。
仕方のないことと思いながら、
あたしはつくづく世の中が恨めしいよ。
去られてみて、あたしは自分にとって、
お花やお喜代や、青木先生がどれほど大事だったか、
どれほどそれによって倖せだったかを
思い知らせたのさ。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


川の流れにできる渦のように皆んなと出会い、
また流れの勢いで渦はほどけ、
てんでんぱらばらにどこかへ流される。
これがひとの世であり、
誰もその流れには逆らえないのだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

女の幸せをお玉・お喜代・お花それぞれが向き合う形で

描かれています。

女一人で生きて行く事はできても、

一人の寂しさに耐えて行けるだろうか・・・

現代に置き換えて考えさせられた物語でした・・・。



いつもありがとうございます


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生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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