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宇江佐 真理 「日本橋本石町 やさぐれ長屋」」 


日本橋本石町やさぐれ長屋日本橋本石町やさぐれ長屋
(2014/02/21)
宇江佐 真理

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日本橋本石町に弥三郎店と呼ばれる長屋があった。
事情を抱えた住人ばかりが住んでいて――。

「時の鐘」
 真面目一徹、そろそろ嫁をと周囲から勧められる鉄五郎。
そんな鉄五郎に気になる相手が現れたのだが、
若くして出戻ったおやすという莨屋の女だった。

「みそはぎ」
 おすぎは、老いた母親の面倒をみている。
ある日、勤め先の井筒屋に見慣れぬ男が来るようになった。

「青物茹でて、お魚焼いて」
 おときの旦那は錺職人。
次第に泊まり込みの日数が長くなり、しまいにはひと月にもなった。

「嫁が君」
 おやすはずっと旦那が家にいるおひさのことが羨ましい。
ある日、この旦那が寄せ場からきた人物だと噂になる。

「葺屋町の旦那」
 おすがのかつての奉公先の倅が、弥三郎店にやってきた。
どうやらこの倅、わけありのようで。

「店立て騒動」
 弥三郎店が店立てに?!
住人は緊急事態にてんやわんやの大騒ぎ。
どうにかこの事態をとめられないか。
長屋の住人が一致団結して行ったことは。

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「時の鐘」
 
 「鉄五郎さんが出戻りのあたしを女房にしたいって言ってくれるのは涙が出るほど嬉しいよ。だけど、鉄五郎さんがあたしに世間並の女房を求めているのなら願い下げだ。あたしはあたしだ。今も十年先も気性は変わらない。出戻りだからって遠慮するつもりもないのさ。そこを承知してくれるのなら考えてもいいけど」

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「みそはぎ」

 「みそはぎは仏様の花だそうですね」銀助は訳知り顔で言う。「ええ。いつもお盆の頃に咲きます」「仏様はみそはぎの花の露でなければ口にされないそうです」「そうなんですか」おすぎは初めて聞いた。「仏様に供える禊ぎ(みそぎ)の萩だからみそはぎと呼ぶのですよ」

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「青物茹でて、お魚焼いて」

 「ごめんよ、ごめんよ。おっ母さんがばかだった。もう、どこにも行かなくていいからね」おときはおちよを抱き締めて泣いた。作次にも、お前がいてくれたお蔭で、おっ母さんは助かったと言った。「おいら、尾張屋に戻らなくていいのか」作次はそれが肝腎とばかり訊く。「ああ、おちよも一緒だ。でも、おっ母さんは、また夜のお仕事を続けなければならないから、二人とも我慢しておくれよ」「平気だ、おいら。尾張屋にいるより何んぼかましだ」「あたいも、おしょさんの家にいるより留守番するほうがいい」「そうかえ。さあさ、ごはんを炊こうね。作次、通りに出て、納豆売りを見つけたら、買って来ておくれ」「合点!」作次は張り切った声を上げた。ようやくあらぬ夢から覚めた思いだった。うかうかと忠助について行ったら、どんな目に遭ったかわからない。自分は甘い女だった。茂吉が帰って来なくても、自分は子供達の母親でいようと、改めてそう思うのだった。

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「嫁が君」
  「あたし、滅法界もなく倖せ」おやすはうっとりした顔になった。ひと月の間の鬱陶しいものが、俄かに(にわかに)晴れるようだった。井筒屋で鉄五郎の猪口に酌をしながら、六助夫婦のことを話してやろうと思った。(六助さんは寄せ場帰りだけど、お前さんはそんなこと気にしないだろ?あの人はいい人だ。おかみさんのおひささんも亭主思いの女房だよ。ねずみの始末をつけてくれたのも六助さんなのさ)鉄五郎に話す言葉を、おやすはあれこれ考えていた。
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「葦屋町の旦那」

 「この弥三郎店はな、やさぐれ長屋とも呼ばれているんだぜ。だがよ、やさぐれている者なんざ一人もいやしねェ。皆、おまんまを喰うためにあくせくしながら稼いでいるんだ。お前ェ、ひと月余りも新場で働いたから、ちったァ、貧乏人の暮らしがわかったんじゃねェか。それとも、まだわからねェか。」「兄さん、何が言いたい」「実家をおん出て意気がっているお前ェは大ばか野郎だってことよ」

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「店立て騒動」

  「お前さん、あたし、夢を見ているみたい。世の中には、こんなことも起きるのね」その夜、おやすは蒲団に入ってからも興奮して、なかなか眠れなかった。「井戸替えしたから、井戸の神さんのご利益もあったかな」鉄五郎はそんなことを言う。「きっとそうね。自分達のためでなく、後の人のことを考えて井戸替えしたのがよかったのよ。皆んなの優しい気持ちが通じたのよ」「だな」鉄五郎は満足そうに肯く(うなずく)。



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生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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