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安住 洋子 「いさご波」


いさご波 (新潮文庫)いさご波 (新潮文庫)
(2012/03/28)
安住 洋子

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代々、赤穂藩に仕えながら、
浅野と吉良の刃傷事件から深川の裏店へ流れ着いた藤野親子。
父は武士の体面を捨て、一心に働くも
体を壊し絶望の中で生涯を終える。
浪人暮らしを経て、念願の仕官が叶った息子を待ち受けていたのは、
よそ者ゆえの残酷な使命だった――(「沙の波」)。

・・・・・・・・・・・・・・
幸右衛門は口元を歪めただけだった。
何かと引き替えでなければ、
恩人に刃を向けるなどできるものではござらぬ・・・。
そう言ったつもりだったが声にならなかった。

何かが聞こえる。
蛙の声だ。
今夜も盛大に鳴いている。
いや、波の音だ。

瞼の裏に淡い光が満ちてくる。
誰かが灯りをかざしているのかも知れない。

この明りは・・・。
ああ、瀬戸内だ。
朝もやが晴れ、広がる海に
陽が滑るように揺れているのだ。
坂越浦だ。
生島の濃い緑もなんと鮮やかであることよ。

江戸へ行こう。

「江戸へ行こうな、幸右衛門」
前を行く父がゆっくりと振り返ろうとしている。
その横顔にゆるゆると陽が差してくる。
父は笑みを浮かべてくれるだろうか、父は・・・。
幸右衛門は手を差し出した。




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生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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