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山本 周五郎 「季節のない街」


季節のない街 (新潮文庫)季節のない街 (新潮文庫)
(1970/03/18)
山本 周五郎

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1.街へゆく電車
2.僕のワイフ
3.半助と猫
4.親おもい
5.牧歌詞
6.プールのある家
7.箱入り女房
8.枯れた木
9.ビスマルクいわく
10.とうちゃん
11.がんもどき
12.ちょろ
13.肇くんと光子
14.倹約について
15.たんばさん

・・・・・・・・・・・・

「プールのある家」が印象的でした。

ホームレスの親子二人の物語。

まだ40代の父親と6歳程の息子。

毎日小さい息子が古鍋を持ち歩き

お店の残飯を貰い歩く。

道中、敵も多い。犬・猫・そして人間・・・。

そんな日々の親子の楽しみは父親が語る理想の家。

いつかこんな建築物の家を作ろうと

息子と語り合う。

息子は父親の夢に「そうだね、うん、ほんとだ」

と同調し話を合わせる。

父親は、こんなに小さく健気な息子一人守る事も出来ず

夢を語るのみ。

博識で理性もある父親なのになぜこんな暮らしをしなければ

ならなくなったのか・・・

息子への愛情をどのように思っているのか・・・

第三者からは何とでも言える父親への厳しい思いも

誰も具体的に救うことはしない・・・

時代がそうさせるのか、寄せ付けない父親への諦めか・・・

そんなある日、息子が死んだ・・・

残飯の中にあった「しめ鯖」で食中毒を起こしたのだ。

息子は火を通してから食べた方が良いのではないかと言ったのに・・・

父親は、酢で締めた鯖だから大丈夫と言ってきかない・・・

数日間の苦しみの後に息子は死んだ・・・

そんな苦しみの中でも父親は夢の家を語るばかり・・・

息子は「だいじょうぶだよ、心配しなくってもいいよ。

ぼくはもうすぐ治るよ」
と言う・・・

死に行く息子が最後に言った言葉は・・・

「ねえ、忘れてたけどさ、プールを作ろうよ」

父親は「そうだな、うんそうしよう」・・・

息子は死んだ・・・

父親はその後小さな仔犬と歩き暮らすようになる・・・

小さな息子に似た素直で可愛い仔犬と。



つめたい雨が降りだしたある日

父親は墓地の片隅の空き地の前に佇む・・・

「プールを作るのは賛成だね。

庭の芝生のまん中がいいかな。

エバー・グリーンのまん中に、

白タイル仕上げのプールがあるのは悪くないよ。

ちょっとしたブルジョワ気分じゃないか」


「大丈夫、きっと作るよ、きみがねだったのは、

プールを作ることだけだったからな・・・

きみはもっと、欲しい物を

なんでもねだればよかったのにさ・・・」

雨のしずくがたれるので、

彼はまた顔を手で撫で、

眼のまわりをこすった。

空はかなりくらくなり、

仔犬はふるえながら、

あまえるようになき声をあげた。




いつもありがとうございます
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Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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