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薬丸 岳 「ハードラック」


ハードラック (講談社文庫)ハードラック (講談社文庫)
(2015/02/13)
薬丸 岳

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二五歳にもなって
日雇い仕事すら失い、
「大きなことをするため」闇の掲示板で
四人の仲間を募った仁は、
軽井沢で起きた放火殺人の汚名を着せられてしまう。
なぜ俺を嵌めた?
信じられるのは誰なんだ?
手探りで真犯人を探す仁、
闇世界の住人たち、追う刑事。
物語は二転三転し、慟哭の真相へと向かっていく。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あの待受け画面も仕込みだったということか。
待受け画面を見つめながら家族のことを語る芝田に、
一時でも同情した自分が馬鹿に思える。
「本当は電話になんか出ないでこのままシカトしてようかと
思ったんだけど、
きみがあまりにもおめでたくて哀れだからさ、
忠告してあげようと思ってね。」
「忠告?」
「言っただろう。
今の世の中は搾取する者と搾取される者に分かれるってさ。
立場の弱い・・・まあ、おれに言わせれば、
馬鹿な奴はいつも搾取されるだけってこと。
わかる?」
胸の底から激しい怒りがこみ上げてきた。
ずっと搾取されてきた。
だけど、それは自分が馬鹿だからではない。
おまえみたいな腐った人間が世の中にあふれているからだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ジンの人生はそんなに価値のあるものだったの?」
舞の言葉に束の間、自分の人生に思いを巡らせた。
今まで考えたこともなかったが、
自分の生きてきた時間のどれもが
どうしようもなく愛おしく、貴重なものに思えた。
秀雄と比較され続けてきた学校時代も、
長野の食品加工会社の仕事も、
あっけなくクビを切られた工場の派遣の仕事も、
劣悪な環境であった日雇い仕事の記憶さえも、
そのどれもが今の自分にとってはまぶしい記憶に思える。
なぜなら自分の努力次第で
いくらでも道を切り拓けたのだから。
今抱いている絶望とはまったく比較にならない
光り輝いた時間だったのだ。
どうしてもっと早くそのことに気づけなかったのだろうか。


・・・・・・・・・・・・・・・・・

「奴らが使っていた騙す相手のリストの中には
ところどころにペンで『BL』やら
『HL』の記号が書いてあった。
これがどういう意味かわかるか?」
成海に訊かれて、仁は首を横に振った。
「『BL』はバッドラック、つまり運の悪いやつで
うまく引っかかったカモのことさ。
また引っかけられるかもしれない上得意だ。
『HL』はハードラック。
さらに運の悪いやつで首をくくっちまって
もう用なしって意味さ。」


・・・・・・・・・・・・・・・・

「仁・・・」
初めて発した母の声にためらいながら振り返った。
「裁判所で言えなかったことを言うわ。
わたしが生きている間に出てきてちょうだい」
仁は少し顏を上げて母を見た。
「こんなアクリル板に隔てられていたらあなたのことを
叩けないから。
そんなこと、刑事さんにも、裁判官にも頼めないでしょう。
それができるのはあなたの親だけなんだから・・・」
その言葉を聞いた瞬間、
どうにも感情が抑えきれなくなって
その場に崩れ落ちた。


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いつもありがとうございます
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Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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