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宇江佐 真理 「うめ婆行状記」

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北町奉行同心の霜降三太夫を卒中で亡くしたうめは、
それまでの堅苦しい武家の生活から抜け出して一人暮らしを始める。

醤油問屋「伏見屋」の長女として生まれたうめは、
“合点、承知"が口癖のきっぷのいい性格。

気ままな独身生活を楽しもうと考えていたのだが、
甥っ子の鉄平に隠し子がいることが露見、
大騒動となりうめは鉄平のためにひと肌脱ぐことを決意するが……。

昨年急逝した著者の遺作となる最後の長編時代小説。
朝日新聞夕刊に短期集中連載の後、緊急出版!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

だが、おひでは、結局、この世は生きている者のために
あるのですからね、と低い声で言った。

「おひでさんの言う通りよ。
先祖の供養は、もちろん大事だけれど、
それより残された者が元気に楽しく暮らすほうが
大事だと思うの。
めそめそ泣いているばかりじゃ、しょうがないもの」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2015.11.17に亡くなった宇江佐真理さんの最後の小説。

朝日新聞に掲載されていたんですねぇ。

夫を亡くした妻のこれからの生きがいを考える物語です。

現代では多きにありえる事でも、

江戸時代、家族に縛られて暮らして来た女の一人暮らしは大変な覚悟。

「おうめ」は人柄と裕福な実家のお蔭で、

助け合いながら一人暮らしを始めますが、

実家の家族のすったもんだがらみで、

なかなか落ち着いた静かな一人暮らしとはいきません。

それもこれも「おうめ」の面倒身の良さときっぷの良さが

人に頼られひと肌脱ぐ気性に拍車をかけます。

隣りに住む年配の女房おつたさんが急に亡くなるシーンが印象的。

「人によっては、こういう例もございます。
幸い、苦しまれたような様子もありませんし、
眠るようにあの世へ逝かれたのですな。
不謹慎ではありますが、医者の立場から申し上げれば、
羨ましい限りの最期でございます」

寿庵のもの言いに、うめは、かッと頭に血が昇った。

「何言ってんだい、このすっとこどっこい。
おつたさんの本心は、
そこにいる亭主を看取ってから自分の番だと思っていたんだよ。
亭主より先に逝ったことは悔しくてたまらなかったはずだ。
それも知らずに羨ましい限りの最期だって?
言うに事欠いて、とんでもないことを喋る。
この藪!」


聞いてるこちらがスカっとする言い回しに、

いつもの宇江佐節と感動しました。

残念ながら、途中で終わっている物語ですが、

「おうめ」の行く末は、読み手それぞれが思い描けるかのようです。

人は一人で暮らす事は出来ても生きて行く事は出来ません。

一人だとか、孤独だとか実感する事も多々ありますが、

ふと周りを見ますとどうしたって人とのふれあいが不可欠。

人を頼るのではなく、一人でもきちんと暮らして行けるよう

身の丈にあった工夫をする事が大事であり、

日々を大事に楽しく心豊かに過ごす事の大切さを感じました。

また、人が死ぬ事と残された者の心情が、

乳癌で亡くなった宇江佐真理さんの人生と重なり、

物語の節々に現われているようでした。

大切な一冊です。



いつもありがとうございます
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Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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