吉村 昭 「仮釈放」

菊谷50歳。
妻の浮気現場にて包丁で刺殺。
相手の男も負傷させ、右半身が不自由になる。
逆上した菊谷は男の自宅に放火。
男の母親が焼死。
判決は無期懲役。
模範囚となり16年後に仮釈放となり、
保護観察を受けながらも晴れて自由の身に…。
ここまでなら良くある話。
この物語では、
仮釈放になってからの
菊谷の日々が細やかに描かれています。
常に誰かに監視されているような錯覚に怯え、
世間とのズレに戸惑い、
自分の過去を隠しながらの緊張した生活。
後に保護司の勧めにより再婚。
菊谷の過去を承知で妻となった女との夫婦生活は、
ひと時菊谷に心からの癒しを与えてくれた。
しかし…
菊谷には消すことの出来ない凄惨な過去が
夢の中まで喰らいついては離れない…
ある日、妻となった女が
踏み込んではいけない
菊谷の闇の領域に入り込んで来た時、
菊谷の忍耐は限界を超える…
罪を犯す。
罪を償う。
不自由に身を置き、
いつか自由の身への夢を抱いていた…
しかし本当の自由ではなかった…
水上勉の「その橋まで」も同じテーマですが、
吉村昭さんも水上勉さんも
罪を犯した者への描き方と
受け入れない世間との関係性を描いて、
読み手に問いかけるという
重いテーマの物語でした…。
いつもありがとうございます

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