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細谷 正充編 「情に泣く」アンソロジー

無題

時代小説アンソロジー市井もの7編。

・・・・・・・・・・

●宇江佐真里「隣の聖人」

番頭に掛け取り金を持ち逃げされた

呉服屋一家が夜逃げ同然で

仕舞屋に引っ越して来ます。

その裏に住む儒者一家との交流により、

お互い助け合います。

心の豊かさを気持ちよく描いています。

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●北原亞以子「吹きだまり」

故郷の貧しい暮らしを嫌って

江戸に出て来た作蔵。

日庸取りの左官の仕事をしながら

コツコツ貯めたお金で、

一年に一度料亭での宿泊を楽しみに生きて来た。

しかしその料亭で働く女中の

貧しい家庭環境を盗み聞きした事で、

今までの楽しみに終止符を打ち、

女中にお金を渡します。

作蔵はまだ25歳。

腕の良い左官の仕事を日雇いではなく

天職としてやる覚悟を描いています。

何故吹きだまりと言うタイトルなのか…

北原さんの作蔵の心情が上手いです。

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●杉本苑子「橋のたもと」

失踪した若君を探す流浪の旅の末、

物乞いにまで堕ちた老藩士の物語。

身体も壊し物乞いでなんとか日々を過ごしていた勢州。

何日かに一度必ず一文銭を恵んでくれる

優しい娘との縁をきっかけに、

老藩士勢州の若君を見つけ出すという

本懐を遂げる事に繋がります…

杉本さん流石です。

これは泣けますよ…

・・・・・・・・・・・・

●半村良「じべたの甚六」

どぶどろを読んでいたので、

最後を覚悟して読んだのですが、

こちらはホッとする読後感でした。

馬鹿にされながら

長屋住人の使いなどで小銭稼ぎをしている甚六は、

実は凄腕の…………でした(^^)

半村良さんの

ひねりの持っていきかたが秀逸であります。

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●平岩弓枝「邪魔っけ」

母親を早くに亡くして弟と妹二人、

体の弱い父親の面倒を見ながら

麦湯店で働く良くできた長女。

一人で苦労を背負って

世間様からも気働きの出来る娘と評判。

弟、妹達は全く手伝うことはせず

姉ばかりが苦労して

いつしか婚期も過ぎてしまう…

と、ここまで読むと

弟妹達のだらしなさや苛立ちを感じるのですが、

さすが平岩さん。

実は姉が邪魔っけだったと言うオチ。

何故邪魔っけなのか……。

なるほど子供を育てることへの

教えにもなっている物語でありました。

「木が大きく枝葉をひろげて

下の者をかばおうとすると、

下の者はお日さまに当たれなくて

伸びようとしても伸びられない。

程よく育ったら一人一人、

根分けして一本立ちになって行く。

お前は少々根分けするのが遅かったんだ。」

・・・・・・・・・・・・

●山本一力「御舟橋の紅花」

江戸の片隅の老いらくの恋。

61歳になる泰蔵は、

自分は年寄りで、

もう恋などできようはずがないと思っている。

真面目で不器用な泰蔵のために

長年付き合って来た長屋の差配。

泰蔵にいつも冷たい態度ながら

泰蔵への尊敬の念を持っていた。

その差配が、

泰蔵にほのかに想っている女性がいることを知り、

密かに老いらくの恋のために奔走します。

今まで真面目に生きて来た泰蔵への

大きなご褒美を友人が贈ると言う

江戸っ子らしい人情物語です。

・・・・・・・・・・・

●山本周五郎「七日七夜」

旗本の四男坊と言えば単なる穀潰しであり、

下男より下の扱い。

吝嗇家の兄嫁からの

日々の屈辱に耐え兼ねたある日、

憎き兄嫁から金を強奪し出奔した昌平。

積年の鬱憤を晴らすべく遊郭で大騒ぎの遊び三昧。

しかし搾り取られ金が尽きると

世間からも手のひら返しの冷たさを味わいます。

なけなしの銭で入った

居酒屋での縁が昌平の人生を変えます。

昌平は居酒屋でも酔いつぶれ

騒ぎを起こし喧嘩しますが、

殴られ蹴られながらの最中に発した

昌平のある一言で、

喧嘩がおさまります……

悲しいひと言です……

昌平が幼い時から受けた悲しい状況が分かります。

ですが、昌平は世間に出た事で

本当の自分と暮らしを得ます。

劣悪な環境からの昌平の生き返る様が、

心に残る物語でした。



いつもありがとうございます
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Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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