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立原 正秋 「冬の旅」

長年生きて来て、唯一の趣味である読書。

結構多く読んでいるつもりですが、

その多くの本の中で一番好きな本です。

20180918冬の旅表紙

昭和44年版です。

裏表紙。
20180918冬の旅裏

単行本一冊 450円! 時代を感じますねぇ。

文庫本も持っていますが、

やはりこの本に関しては単行本で読むのが好きです。

高校一年の時に初めて読みました。

次が高校卒業し進学の際に再読。

社会人になって数年たった時に再々読。

それからはだいたい節目節目の年齢で読み続けています。

高校一年の時に読んで本当に良かったです。

学校の図書室で見つけた本。

綺麗な装丁と題名に惹かれました。

読み始めから夢中になりました。

当時は徹夜も出来る年齢だったので

いっきに読んだ覚えがあります。

今回は一週間以上かかって読み終えました(^^)

当時購入した時のまま、薄汚れてしまいましたが

大事な大事な本です。

なぜこんなにこの本に感銘するのか・・・

立原正秋さんの文章の素晴らしさ言葉の素晴らしさ

ストーリーとその人物の感情表現、

読み手を裏切る流れもあり、

あまりに切なく哀しい中に

読後しっかり考えさせられる余韻の素晴らしさ・・・

青春時代に読み、

社会人の時に読み、

年齢が進む毎に読む・・・

どの年代で再読しても深く心に残る物語です。

・・・・・・・・・・・・・・・

価値観は50年前。

昭和40年代です。

美しい母澄江と行助(ぎょうすけ)16歳。

5歳の時に父親が亡くなり、

母親が再婚した相手は大手企業の社長宇野理一。

社会的にも人物的にも申し分のない優しい義父。

この物語は、義兄修一郎19歳が、

美しい母澄江を凌辱するところから始まります。

修一郎が乱暴している場面を目にした行助が

修一郎と揉み合います。

「俺をばかにしやがって!」と言って

台所から包丁を持ち出した修一郎。

行助と揉み合いの中

誤って自分の足を自分で刺してしまった修一郎。

しかし警察には自分が刺したと言う行助。

母澄江も行助の言葉に従います。

修一郎は母親澄江と行助の事を

「女中と女中の子に刺された」と供述します。

義理の息子に凌辱された事を言わない澄江と行助。

結局供述通りとなり行助は少年院送致となります。

・・・・・・・・・・・・・・・

ここから少年院内の事が描かれます。

再婚先の家族と少年院内での仲間とを

平行して描いています。

義父理一は一貫して

実の息子である修一郎に対して疑いを持ちます。

行助を信じ実の息子を嫌います。

・・・・・・・・・・・・・

行助の少年院内での態度を通しても

誰もが人を刺すような行助ではないと

判断されますが行助は何も言いません。

冷静で穏やかで知能指数の高い優秀な行助。

院内においてもそんな行助に

生涯を通しての大切な仲間が出来ます。

・・・・・・・・・・・・・・

なぜ行助は本当の事を言わなかったのか・・・

行助が考えている事はただ一つ・・・

生涯修一郎を劣等感の中でしか生きられないようにすること。

その為に真実を語る事なく

少年院生活を送るのです。

・・・・・・・・・・・・・

約9ケ月で卒院した行助は、高校に復学します。

少年院での生活の間、義兄の修一郎は

自宅ではなく祖父母宅で生活を送っていました。

自分に甘く、祖父母からの過保護と

元来の目先の事しか考えない浅はかさで

堕落した生活を送っていた修一郎。

自動車事故を起こせば祖父が裏に回って示談にし、

大学も裏口入学。

小遣いも好きなだけ祖父母からもらえ遊び三昧。

・・・・・・・・・・・・・

父親理一と修一郎の確執はぬぐいきれず、

父親は修一郎が和解したいと申し出ても拒否。

行助が修一郎を刺したのではないことは明白。

何度修一郎に真実を聞き出しても応えない。

義理の母親と義弟を女中と女中の子との認識でいる限り

修一郎と共に暮らす事を許さない理一。

・・・・・・・・・・・・・・・・

修一郎はだんだん何かが胸の奥にずっしり淀む事を

考えるようになります。

そうして、なぜ自分だけ疎まれなければならないのか。

あいつは少年院に入っているのに罪の意識は

自分にだけ寄せ集まるのはなぜなのか・・・

行助ばかりをかばい義理の母親と三人だけで

幸せに暮らしている事に対する憎悪を増す修一郎。

ある日、憎悪が殺意へと変わり行動を起こします。

自宅に侵入した修一郎は父親を刺し殺そうとします。

すんでの所で行助が止めにはいります。

行助は修一郎の持参したナイフを取り上げ

今度は本気で殺意を込めて脇腹数センチ刺します。

ナイフを抜きながら行助は修一郎へ

とどめの言葉を言います・・・・・

行助は、修一郎に何と言ったのか・・・

・・・・・・・・・・・・

裁判において修一郎の殺意は執行猶予付きとなります。

行助は弁護士も付けず、一貫して「殺意があった」と言います。

父親理一は行助の弁護に回り証言をしますが、

行助のある一言で、擁護証言は覆り少年院送致が決まります。

行助が父親理一に行った言葉とは・・・・・・

それは父親理一と修一郎の親子としての

修復の鍵となる言葉でした・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

二度目の少年院は、前回の少年院とは違い

殺伐とした荒涼の刑務所のような辛い場所でした。

ここでの暮らしについても実際の少年院の位置づけを

描いています。

一番の問題は、毎度の食事の少なさと種類のなさ。

麦飯と3切れの沢庵と鯨の煮つけや青菜の煮つけ。

徹底して野菜不足。

少ない野菜の味付けは醤油だけ。

行助はこの刑務所のような少年院では、

広大な敷地を耕し、少しでも食事の足しになるよう

農芸部に所属して精を出します。

・・・・・・・・・・・・・・

一方、相変わらず堕落していた修一郎は、

父親理一との修復を強く思うようになります。

理一は行助からある言葉を裁判の時に言われた事により

修一郎を自分の会社に入社させ、

社内で一番厳しい役員を修一郎の教育係とし、

平社員から徹底的に教育します。

時間がかかりながらも徐々に

修一郎と修復して行きます。

そんな修一郎がある日、

自分のして来た事への悔恨と行助への懐かしさから

沢山の黄色いレンギョウの花束を持って

直接少年院を訪れ行助に面会に行きます。

修一郎は行助に「和解出来るだろうか?」と聞きます。

行助はこうして花を沢山持って来てくれたことに対して

修一郎への和解への気持ちを汲みますが、

「戻ることはない」と告げるのでした・・・

面会を終えた修一郎は、

「結局、自分は何をしても、どんな事をしても

行助にはかなわない」

と実感するのでした・・・

そうして生涯持つであろう

行助への劣等意識を自覚するのでした・・・

・・・・・・・・・・・・・

行助には心に秘めた厚子との出会いがありました。

一度目に入った少年院で親友となった安の奥さんです。

厚子も行助との出会いにより

二人は惹かれ合いますが、お互い心の奥底に秘めたまま。

安は少年院を出てから行助の父親理一の援助を受けながら

小さいラーメン店を厚子と開きます。

数年後、安は理一に援助を受けた分を完済します。

安が将来に対する晴れやかな気持ちでいた矢先、

黄色信号を無理に横断中に交通事故で亡くなります。

深い悲しみの厚子と行助や仲間たち。

これからの事を思うと、

厚子と行助は自然な結ばれ方をするはずも、

後に行助は・・・

厚子の事を考えるとき辛さがさきにたつ事の確実さを

厚子を目の前にして思うのでした。

そして死んだ安を考えるとき、

苦痛は倍加してくるような気がするから・・・

「俺は、たぶん、あのひととはいっしょにならないだろう」

そう結論づけるのでした・・・

・・・・・・・・・・・・・・

最終章は「旅の終わり」

相模灘に面している少年院に南下して来るカモメを待つ行助。

あと二週間もすれば少年院から出られる事になった行助。

広大な畑を耕す事を好んでいた行助。

次の院生に引き継ぐ為にぎりぎりまで耕す行助。

土に触れ、土を愛し、土に感謝する行助。

そんな矢先・・・

行助はその土に短い生涯を閉ざされる事になります・・・

苦しみの中、夢に出て来る懐かしい人々・・・

親子の仲を修復した父親と修一郎・・・

親友の安と厚子・・・

美しい母澄江・・・

亡くなった実父・・・

そして・・・

あれだけ待ち望んでいたカモメが・・・

無数のカモメが飛び交い羽ばたきの音を聞きます。

「ああ、カモメが南下してきた!

俺は、おまえ達が来るのをどんなに待っていたことだろう・・・」

そうして最後の行助の言葉は・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・

行助という人間は、

倫理そのものだったのではないでしょうか・・・

毎回読み終わると心がじ~んとします。

哀しさと切なさで何度読んでもやっぱり涙がこぼれます・・・

本当に読んで良かった一冊です。

貴重な大事な本「冬の旅」でした。



いつもありがとうございます
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生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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