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中島 京子 「樽とタタン」

樽とタタン20210225
3歳から12歳まで小さな喫茶店に預けられた少女「タタン」。

訪れる客をタタンの目線で語られる物語。

後に小説家となった女性が幼い頃を語る9つのお話。

・・・・・・・・・・・・

訪れるお客様たちのそれぞれの人間模様が

タタンの幼い目を通して描かれているので

大人の汚い部分や闇も

ふわ~っと靄がかかるように

やわらかく表現されています。

・・・・・・・・・・・・・・・

そんな中でも

「ぱっと消えてぴっと入る」と言う章が

とても印象的でした。

人の死についての

おばあちゃんの考えが素敵です。

息子が戦死。

南のどこかの戦地から帰って来なかった息子。

骨も戻って来なかった・・・

息子はどこでどうしてどんな思いで亡くなったのか・・・

そんなおばあちゃんは、

「死んだら、ぱっと、電気が消えるみてえに、

生きてたときのことがみんな消えるんじゃねぇかなと、

おれは思ってんだ。」

と言います。

・・・・・・・・・・・・・

「マサオは戦地から帰ってこなかったしさ。

骨も戻ってこなかったんだで。

そうするとマサオは、

南の島のどこかで死んで、

六文銭も持たずに三途の川を渡ろうとして

着物をがはがされたんでべえか。

それとも南の島のどこかで、

いまでも帰りてえなぁと思ってるんだべえか。

そういうことを考えるとな、

ぱっと電気が消えるみてえに

死んでしまうんでなきゃあ、

理屈に合わねえと、おれは思ってんだ。」

・・・・・・・・・・・・・・

「マサオがどこかで、

いまでも帰りてえなぁと思ってたら、

あんまり、そりゃあ、かわいそうだんべえ。

ぱっとこう、さっとこう、

死んでしまうんじゃあないとなあ」

・・・・・・・・・・・・・・

「人が死ぬだろ。

そうすると、人はもう、そのときに、

電気が消えるみたいに、

気持ちや痛みやなんかも全部ぱっと消えて、

楽になるんだ。」

・・・・・・・・・・・・・・

「死んだ者は、

地獄へ行ったり、

そんなつれえことやなんかは、

ねえはずだと、おれは思ってんだ。

生きてるうちに、

さんざんつれえことがあって、

あの世に行ってもいろいろあるんじゃあ、

理屈に合わねえ」

・・・・・・・・・・・・・

「死んだ者は、

もう、苦労はなくなる。

痛みも、つれえことも、なくなる。

それはみんな、生きてる者の中に、

ぴっと入ってくるんじゃねえかなと思ってんだ。」

祖母はまた、とんとんと、

自分の胸を指でつついた。

・・・・・・・・・・・・・・

おばあちゃんの息子への

悲しくも思いやる死生観に

泣けました・・・。









いつもありがとうございます
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Author:cn7145
生れも育ちも仙台。外見も性格もとても地味。物があふれているのが苦手。食べ物の好き嫌いほぼ無し。本と猫好き。好きな言葉「喫茶喫飯」。

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